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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科64巻1号

1992年01月発行

雑誌目次

トピックス 副鼻腔のエアロゾル療法

序にかえて 副鼻腔炎とネビュライザー療法

著者: 坂倉康夫

ページ範囲:P.9 - P.10

 ネビュライザー療法は慢性副鼻腔炎の保存的療法の一手段として最も用いられることの多い治療法である。
 このように慢性副鼻腔炎に対してネビュライザーが重要な治療法となった理由として;①全身投与された薬剤が常に有効な局所濃度として鼻腔・副鼻腔の粘膜に到達する可能性に疑問があるのに反し,ネビュライザー療法では容易に局所有効濃度がえられる。

エアロゾル療法用の機器の現況と将来の展望

著者: 佐藤素一

ページ範囲:P.11 - P.16

 はじめに
 アメリカのAARC (American Association forRespiratory Care)が刊行している月刊誌Respi-ratory Careの1991年5月号に,Dr.D.J.PiersonをはWhat's New in Respiratory Care?の表題で,過去数十年間をふりかえる一方,1990年に行われたAARC総会の演題のなかからWhat’s Newのトピックスを取りあげ解説している1)(図1)。
 AARCは,主に米国内の吸入療法技師の集まりであって,現在3万人以上おり,4年間の修練を経て医師の指示で治療を実施している。本論文で,D.J.Piersonは,総会のなかから4つの口演内容をとりあげているが,そのうちの2つがエアロゾル療法機器(equipment)についてのもので,その内容は本療法に使用する薬剤の開発,改良と同時にこれらとどのように組み合わせて疾患の改善に結びつけるかを追究したものである。

ネビュライザー療法に用いる抗生物質

著者: 椿茂和

ページ範囲:P.19 - P.22

 はじめに
 ネビュライザー療法は薬剤を局所に直接投与することにより,少ない薬剤量で大きな効果を期待することができ,しかも副作川の少ない治療法として耳鼻咽喉科の日常臨床では重要な処置となっている。
 第15回日本医用エアロゾル研究会(1991.10.6,新潟)のシンポジウムを機会に,耳鼻咽喉科のネビュライザー療法の現状についてアンケート調査を行った。耳鼻咽喉科医250名からの回答には,1)ネビュライザー療法を実施している医師は241名,96.4%,2)対象疾患は副鼻腔炎が91.7%で第1位,3)使用薬剤は抗生物質が96.6%で第1位,4)抗生物質の種類はアミノグリコシドが68%で断然多く,残り32%は他の9種の抗生物質であった。以上のことから,耳鼻咽喉科のネビュライザー療法は,副鼻腔炎を対象にアミノグリコシドを使用した方法が主になっていることがわかった。

保険医療よりみたネビュライザー療法の現状と将来の展望—医療保険論の視点から

著者: 北嶋俊之

ページ範囲:P.23 - P.28

 I.はじめに
 ネビュライザー療法が社会保険医療の場に適用され,脚光を浴びて登場したのは昭和26年である。
 それは青森県より発議された社保診療上の疑義照会に対する,医療課長発簡の「疑義解釈通知」による。
 しかしこの通知は既に消去されて存在しない。現在最も古い通知として残っているのは昭和27年4月静岡県基金発議に対する通知である。ネビュライザー療法については社保適用の当初から使用薬剤の選択と用量,対象疾患と部位,施行期間など,多くの制約を抱えて現在に至りているのがその歴史の断面である。
 今回は使用薬剤,特に起点となる昭和40年代からの「医薬品再評価」および「薬事法第7次改正」前後の状況を資料・文献と共に紹介し,医療保険可論の視点に立って問題点の解析論究を試みる。

副鼻腔炎術後治療への応用—術後副鼻腔の抗生剤分布濃度

著者: 山岸益夫 ,   中野雄一

ページ範囲:P.29 - P.33

 はじめに
 慢性副鼻腔炎術後はネビュライザーによって上顎洞にかなり高濃度の薬液が到達し,本療法のよい適応になると思われる。しかし実際にどの程度の薬液が術後上顎洞に到達するのか詳細はいまだ不明である。そこで今回は臨床に即し,術後5日目の上顎洞における薬剤分布濃度を検討した。さらに薬剤分布濃度と上顎洞体積あるいは交通路の面積との関係についても検討を加えた。

副鼻腔炎術後のネビュライザー療法

著者: 横田明 ,   馬場駿吉

ページ範囲:P.35 - P.40

 はじめに
 慢性副鼻腔炎手術の術後感染予防には抗生物質の全身投与が今や常識となっている。一方,細菌感染性の副鼻腔炎に対しては,抗生物質ネビュライザー療法が有効であることは,周知の事実である。しかし,術後感染予防としての抗生物質ネビュライザー療法に関する研究は未だ報告がない。ただし,この問題に対する認識はされている。手術後に各副鼻腔の排泄口が広く開放された状態においてエアロゾルは最も有効に局所に到達するので,術後のエアロゾル療法を進めるべきであると,内田は総説1)でのべている。
 術後感染予防療法の評価については,症状の変化が手術の結果に由来するものか,感染子防療法に由来するものか,判断するのが困難である。だが細菌学的側面から評価することは可能であろうと考えられる。このたび,副鼻腔炎術後に抗生物質ネビュライザー療法を行い,術前,術後の上顎洞内の細菌叢の変遷を観察する機会が与えられたので,その概要を報告し,本療法の有効性につき考察する。

鼻茸切除術後におけるネビュライザー療法の効果

著者: 北南和彦

ページ範囲:P.41 - P.44

 はじめに
 鼻茸は鼻疾患のうちでも比較的ありふれた疾患であり,慢性副鼻腔炎と合併していることが多くみられる。切除術が広く行われているが,再発しやすいのは周知の事実である。そこで,種々の薬物療法を組み合わせることが考えられている。中でもステロイド剤は単独でもその効果が認められている1)。一方,慢性副鼻腔炎の検出菌はグラム陽性菌ではS.aureus,グラム陰性菌ではPseudo-monas aeruginosa,Hemophilus influenzae,Proteus属Klebsiella属,嫌気性菌ではPeptostrePtococcus,Bac-teroidesなどが多い2)。硫酸ジベカシンは嫌気性菌には感受性がほとんど見られないものの,S.aureusなどのグラム陽性菌および Pseudomonas aeruginosaなどのグラム陰性菌に対して抗菌力を有する。また,安定性が高い,苦みが少ない,抗原性が低いなど利点が多いためネビュラィザー用薬剤として適している3)。今回われわれは鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎患者の鼻茸切除術後に硫酸ジベカシン+デキサメタゾンあるいは,硫酸ジベカシンのみをネビュライザーにて投与し,その効果について検討した。

目でみる耳鼻咽喉科

振子様扁桃

著者: 横山晴樹

ページ範囲:P.6 - P.7

 振子様扁桃は1885年,Juraszが初めて報告して以来,本邦でも多数の報告があり,臨床診断上,一般的には表に示すような分類がなされているが,本邦での報告例のほとんどはいわゆる振子様扁桃であり,真性振子様扁桃の症例の報告はほとんどみあたらない。今回巨大な咽頭腫瘍を主訴とした真性振子様扁桃の症例を経験したので供覧する。
 症例は6歳の男性で,溶連菌感染症のため某病院小児科に入院中に小児科医により巨大な咽頭腫瘍を発見され,当院を紹介され,1991年3月5日に当院を初診した。1歳頃よりいびきがひどく,最近はsleep apnea様の症状も出現しており,構音障害のため言葉がはっきりしない状態であった。初診時の咽頭所見を図1に示す。視診の所見と咽頭側位高圧撮影(図2),CT scan (図3)の結果から右の口蓋扁桃から発生した腫瘍として,右の扁桃腺ごと腫瘍を摘出する方針とした。同年3月20日に当院に入院し,3月22日全身麻酔下に手術を行った(図4)。摘出物を図5に示す。摘出物の病理組織所見では重層扁平上皮からなる粘膜下にリンパ濾胞が存在(図6)し,腫瘤の中心は不規則な線維化を示しており,組織学的には扁桃腺組織そのものであった。したがって本症例の咽頭腫瘍は振子様扁桃と結論されたが,CT scan(図3)や摘出物(図5)の所見をみても有茎性の部分は認められず,扁桃全体が振子様を呈した真性振子様扁桃と考えられた。症例の術後経過は良好で,いびき,構音障害は手術後ただちに消失し,3月29日に当院を退院した。

原著

気圧外傷による顔面神経麻痺の1例

著者: 吉田昭男

ページ範囲:P.45 - P.48

 はじめに
 気圧外傷による顔面神経麻痺の報告は比較的少ない。1967年Benett1)が飛行中に発生した例を初めて報告し,本邦では込田2)らが1985年に一過性の麻癖1例を報告している。麻痺は一過性であることが多く,持続的な麻痺は稀である。今回持続的な麻痺例を経験したので報告する。

頭蓋内に進展した,麻痺のない顔面神経鞘腫の1例

著者: 児玉章 ,   永末裕子 ,   川島悦子 ,   長井大二

ページ範囲:P.49 - P.55

 はじめに
 顔面神経鞘腫は従来比較的稀な疾患とされてきたが,画像診断の進歩もあって,必ずしも少なくない疾患とされ,顔面神経麻痺をみた場合,念頭に入れておくべき疾患のひとつとなっている。
 しかし,顔面神経鞘腫が頭蓋内に大きく進展しているにもかかわらず,顔面神経麻痺を示さず,難聴が唯一の主症状であった症例を今回われわれは経験した。本例の臨床経過を述べるとともに,過去に報告された頭蓋内に進展あるいは発生した顔面神経鞘腫症例の臨床像,画像診断,治療について文献的に調べたので報告する。

高アミラーゼ血症の2症例

著者: 小出明美 ,   本堂潤 ,   山田真幹 ,   渡辺暢浩 ,   金洋 ,   伊藤伸介 ,   馬場駿吉

ページ範囲:P.57 - P.60

 はじめに
 耳鼻科領域において,高アミラーゼ血症は流行性耳下腺炎等唾液腺疾患でよく経験されるが,1985年から1990年の間にわれわれは,膵臓に異常がなく,また唾液腺にも異常がない,原因不明の高アミラーゼ血症の2症例を経験した。
 唾液腺型高アミラーゼ血症は,まず耳鼻咽喉科を受診するであろう事,および唾液腺型高アミラーゼ血症をすべて唾液腺疾患と考え過剰な検査が行われる可能性,さらに重大な疾患を放置する危険性,以上の3つの理由から,報告する。

Coronal incisionの前頭洞手術への応用

著者: 勝野哲 ,   石山哲也 ,   田口喜一郎

ページ範囲:P.61 - P.64

 緒言
 脳外科領域では,coronal incisionは前頭開頭において通常用いられる皮切法である。耳鼻科でも最近前頭蓋底領域の手術に際し,coronal incisionおよび前頭開頭が主に脳外科医とびの協力下で行われるようになってきた。
 今回われわれは,両側前頭洞嚢胞に対し耳鼻科単独でcoronal incisionを用い,鼻外前頭洞手術を行いその有用性を認めたので,この皮切法の長所を含め若干の考察を加えて報告する。

学会トピックス

国際鼻科学会議

著者: 海野徳二 ,   野中聡

ページ範囲:P.65 - P.67

 ICR'91(International Congress of Rhinolegy)—国際鼻科学会議—は,9月23日から28日の6日間にわたって東京で開催された。会場は京王プラザホテルで,3,4,5階を主に用い,42,47階もプログラムによっては使用するという盛大なものであった。9月21日から23日にかけては,第3回世界睡眠時無呼吸といびき症会議(3rd World Congress on Sleep Apnea and Rhonco-logy,III WCSAR)が開かれていたから,9日間という長期の滞在を強いられることになった.なお,直前のイタリアでの国際会議に行かれた方は一層苛酷な出張になったことと思われる。
 ICR'91は,内容的には3つの学会の合同会議である。開会式で述べられた高橋良名誉教授のAddrcssによると,今までの歴史や経緯は次のようなことであった。ICRは1956年,Maurice Cotte教授によりコネチカットで開催されたのが第1回目であった。手術技法の習得とか,あるテーマについての受講というような専門医としての研修の形式で行われたことが大部分であり,開催国もアメリカが最も多い。一方,InternationalRhinologic Society (IRS)もCottle教授によって,1961年に創立されていたが,日本がこれに加盟したのは比較的遅い。これは,北アメリカ,南アメリカ,ヨーロッパ,アジアの4ブロックに分かれている。日本鼻科学会がIRSに加盟するに当たっては,学会員の数からいっても研究・臨床のレベルからいっても,経済的基盤からいっても,当然学会開催の要諺があった。当時の日本鼻科学会理事長は高橋良教授で,シンポジウム,フリーペーパーなど一般の学会形式で行うことを条件として,lCRの会長を引き受けたのである。従って,今回のICRの会長は高橋教授である。

第3回世界睡眠時無呼吸といびき症会議

著者: 臼井信郎

ページ範囲:P.69 - P.71

 第3回世界睡眠時無喚呼吸といびき症会議が昨年9月21日から23日までの3日間,戸川 清会長(秋田大)のもと東京・京王プラザホテルで開催された。私は本会議のプログラム委員に任命され,その編成に携わった。そこで主としてプログラム委員としての立場から,本会議のおよそ2年間にわたる経過をまとめ記してみたい。

鏡下咡語

Sir John C.Ecclesのサイン

著者: 市川銀一郎

ページ範囲:P.74 - P.75

 いささか旧聞に属するが,1990年11月9日に日本学術振興会主催によるJohn C.Eccles卿の特別講演,Theultimate human problem:our mind with our brain(人類の究極の問題:脳を持つ心)を聴講した。
 エックルス卿は1903年ナーストラリア,メルボルンに生まれた。丁度米寿の歳にあたる。卿は近代的な神経生理学の開拓者であり,特に神経シナプスには興奮性のものの他に抑制性のものもあることを発見した。また脳と心の関連について大変ユニークな学説を発表してきた。1963年,神経細胞のシナプスに関する研究が評価されノーベル医学生理学賞を受賞している。わが国の学会にも多大な影響を与え,1986年(昭和61年)勲二等を授与された。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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