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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科64巻10号

1992年10月発行

雑誌目次

トピックス 内視鏡による診療・最近の進歩

電子スコープ

著者: 丘村煕

ページ範囲:P.719 - P.723

 はじめに
 電子スコープ(electronic endoscope)とは先端部に超小型テレビカメラが組み込まれた新しい内視鏡で,硬性鏡ファイバースコープに次ぐ,第三世代の内視鏡といわれている。電子スコープは1983年米国のWelch Allyn社からVideo Endoscopeの名称のもとに初めて紹介され,1985年には国産品が登場し,現在ではオリンパス光学,富士写真光機,東芝—町田,旭光学の4社から市販されている。
 電子スコープは先端部に内蔵された“電子の眼(固体撮像素子)”で画像を電気信号に変換して伝送し,テレビモニター上に画像を再現するので,画像を光のままで伝送するファイバースコープとは全く異なっている。

超微細ファイバースコープによる経耳管的鼓室内観察

著者: 山口秀樹 ,   木村仁 ,   舩坂宗太郎

ページ範囲:P.725 - P.729

 はじめに
 内視鏡の最近の発達にはめざましいものがあり,耳鼻咽喉科領域でも広く臨床で利用され,きわめて有効な検査法となっている。種々の型の内視鏡が開発されているが,これまでのものは外径が約2〜7mmであり鼓室内の諸構造や病変を観察することができない。したがって鼓膜穿孔のない中耳疾患の診断は,機能検査,X線検査などの結果から推測するが,手術中に観察する以外に確かめることができない。針状鏡による鼓室の観察1〜3)も試みられているが,鼓膜に穿孔のない場合,鼓膜切開が必要となってくる。
 われわれは以上のような点を考慮して,鼓膜穿孔のない症例に対し非手術的に鼓室内を観察できるファイバースコープ(superfine fiberscope;S.F.F.)の開発を試みてきた。そして,開発に当たっては下記のような条件を満たすようにした。
 ①鼓膜に穿孔のない症例が対象となるので,耳管経由で鼓室に到達できること。②内径約1.4mmの耳管内を通過させるため,プァイバースコープの外径がそれ以下であること。③軟性ファイバースコープであること。④非観血的であり,しかも比較的短時間で,終了する検査であること。
 以上の点から,外径が0.6〜0.8mmで軟性のファイバースコープとそのシステムが開発された。これを用い,坐位局所麻酔下に鼻腔内から耳管を通り,耳管鼓室口より鼓室内の状態を観察することができた。ここでは,S.F.F.システムによる鼓室の観察方法,所見などについて述べることとする。

超細径ファイバースコープを用いた唾液腺導管内観察

著者: 持田晃 ,   沼田勉 ,   今野昭義 ,   金子敏郎

ページ範囲:P.730 - P.734

 はじめに
 最近の光学的技術の進歩により直径の極めて細いファイバースコープが開発されている。これらの新たに開発されたファイバースコープは,その直径が1mm以下と従来のそれとは異なる次元の検査機器であり,今までアプローチを試みられなかった対象に対して内視鏡的検討を可能としたものである。
 私たちは,この新たに開発された超細径ファイバースコープを唾液腺導管,ステノン管およびワルトン管に応用,その内腔の観察が可能であることを確認した。

ファイバースコープ(撓性内視鏡)を用いた耳鼻咽喉科手術

著者: 中之坊学

ページ範囲:P.737 - P.740

 はじめに
 耳鼻咽喉科疾患の多くは頭頸管腔内に生ずるため,ファイバースコープ(撓性内視鏡;以下,ファイバーと略)の導入は,その診断手技において飛躍的進歩をもたらした1)。さらに最近では,手術手技のひとつとしても用いられつつある。
 耳鼻咽喉科手術にファイバーを用いる場合も,その使用法は多岐にわたるが,本稿では大別して,Ⅰ.ファイバーによる気道・食道異物摘出術Ⅱ.ファイバー下レーザー手術(Flexible endos-copic LASER surgery)Ⅲ.ファイバーを用いた音声外科的手術(Flex-ible endoscopic phonosurgery)について述べる。

内視鏡的篩骨洞微細手術の実際

著者: 大西俊郎

ページ範囲:P.741 - P.745

 I.内視鏡的鼻内手術を巡る東西の流れ
 1985年にKennedy1)がFunctional Endos-copic Sinus Surgery(FESS)を報告して以来,内視鏡的鼻内手術が世界の注目を集めるようになり,その後のStammberger,Kennedyらの努力により,この手術は飛躍的な発展をとげたといえる。
 FESSのポイントは慢性副鼻腔炎の病変の源とされるostiomeatal unit (参考文献1,9,11中のosteomeatal unitは誤り)の病変を内視鏡的手術により取り除くことによって副鼻腔の換気が保たれ,線毛運動も回復するとしてKennedyはこの方法をfunctional surgery (機能的手術)と命名した。この方法は実際には中鼻道と前篩骨洞を開放する局部的な手術であり,外来患者を対象に行われ,術後タンポンを必要としない保存的な手術である。

目でみる耳鼻咽喉科

舌根部の腫瘤性疾患

著者: 鎌田利彦

ページ範囲:P.716 - P.717

 舌扁桃肥大を除いて舌根部における腫瘤性病変は比較的稀であり,良性疾患では嚢腫,悪性疾患では扁平上皮癌,悪性リンパ腫が知られている。われわれは開院以来20年間に経験した舌根部の腫瘤性疾患を集計した。良性,悪性とも男性に多く認められた(表1)。良性腫瘤は上皮性由来として嚢腫と乳頭腫が,結合組織由来として脂肪腫,骨性分離腫があげられる(図1,2,3,4)。乳幼児の舌根嚢腫を除いて,咽頭違和感や無症状で偶然自分でみつけた例が多い。悪性腫瘤は咽頭痛,出血,頸部腫瘤で受診することが多く,癌腫では扁平上皮癌,腺様嚢胞癌,肉腫では平滑筋肉腫,悪性リンパ腫があげられる(図5,6,7,8)。また,多形腺腫は4年後に癌化しており,腫瘤によっては十分な経過観察が必要である。

原著

口蓋扁桃に転移をきたした肝細胞癌の1例

著者: 佐伯忠彦 ,   戸田茂 ,   藤田博 ,   田中仁 ,   森田弘毅 ,   曽我部仁史

ページ範囲:P.747 - P.751

 はじめに
 頭頸部領域の悪性腫瘍は,そのほとんどが原発性であり,他臓器からの遠隔転移は比較的稀である。頭頸部に遠隔転移をきたす癌腫の原発部位としては腎癌,肺癌の順に多く,転移部位としては鼻・副鼻腔が最も多いとされている1〜3)。肝細胞癌の頭頸部領域への転移は稀であり,特に口蓋扁桃に転移した報告は極めて少なく,本邦で論文報告されたものは船井ら4)の1例のみである。
 今回われわれは,原発性肝細胞癌が口蓋扁桃に転移した1例を経験したので,その臨床経過について若干の文献的考察を加えて報告する。

拡大僧帽筋皮弁による上顎癌術後(血管吻合皮弁利用不能例)の2次再建

著者: 提箸延幸 ,   大門路子 ,   安岡義人 ,   清水祐二 ,   豊田晴代

ページ範囲:P.753 - P.756

 はじめに
 頭頸部の術後再建では血管吻合による皮弁の移植が有用であるが,2次再建例では初回手術時の頸部リンパ節郭清や抗癌剤の動注療法などによる軟部組織,血管系組織への障害により,再建術式が限定される。僧帽筋皮弁による腫瘍切除後の頭頸部,頭蓋底部の再建例がすでに報告されているが1〜3),術式の限定される2次再建例でも有力な術式と考えられ,特に眼窩内容摘除を伴う上顎部の広範な組織欠損例に対して皮弁領域を拡大した拡大僧帽筋皮弁4)が有用である。しかし,安全に作成し得る皮弁の範囲が不明確で問題を残している。このような上顎癌術後症例の口蓋,鼻腔,眼窩の同時再建を目的として,拡大僧帽筋皮弁による再建術を行ったので報告する。

滲出性中耳炎と慢性副鼻腔炎を合併したImmotile cilia症候群の1例

著者: 波多野篤 ,   斎藤龍介 ,   宇野芳文 ,   金谷真 ,   古賀浩徳 ,   安田英己

ページ範囲:P.757 - P.761

 はじめに
 気道粘膜には多数の線毛細胞が存在し,上皮表面の線毛運動により異物や細菌を運搬除去して生体の防御機構の一端を担っている。Immotile cilia syndromeはこれらの線毛の先天的異常のため線毛運動不全を起こし,上,下気道に感染を反復したり,精子鞭毛運動不全による男子不妊などさまざまな症状を呈する疾患である1,2)。この度,長期にわたって肺炎を反復し,臨床的に慢性副鼻腔炎と滲出性中耳炎を合併したImmotile cilia syndromeの1例を経験したので報告する。

術後の咽頭皮膚瘻(唾液瘻)に対するD-P皮弁を利用した一期的閉鎖法

著者: 木村洋 ,   戸島均 ,   中村正 ,   小池吉郎 ,   原田浩二

ページ範囲:P.763 - P.766

 はじめに
 喉頭癌や下咽頭癌の術後などに咽頭皮膚瘻を形成し唾液瘻の発生に悩まされることがある。その際の咽頭皮膚瘻の閉鎖法にはいくつかの方法があるが,今回われわれはD-P皮弁を用い,皮弁の先端部に島状皮弁を作成し折り返すことにより一期的に粘膜欠損と皮膚欠損を修復する方法を経験したので,その概要につき報告する。

耳下腺単形腺腫4症例の画像診断—多形腺腫との画像上の比較

著者: 田中利善 ,   石尾健一郎 ,   飯沼壽孝 ,   佐久間信行 ,   小山和行

ページ範囲:P.771 - P.776

 はじめに
 耳下腺の良性上皮性腫瘍の多くは多形腺腫で,単形腺腫は比較的少ない。単形腺腫はWHO分類(1972年)で病理組織学的所見よりさらに細分類されている(表1)。われわれは単形腺腫の分類の中で,その他の型に属する基底細胞型,明細胞型のおのおのの2症例を経験した。単形腺腫の報告例の多くは腺リンパ腫(ワルチン腫瘍)で,その他の型の腺腫の報告例は少なく,画像診断上の所見の報告も稀である。今回の症例報告ではX線CTとMRIによる画像所見で,単形腺腫と多形腺腫の画像所見から鑑別上での問題点を比較検討した。

鼻咽腔血管線維腫3症例の治療経験

著者: 五十嵐文雄 ,   野々村直文 ,   川名正博 ,   中野雄一

ページ範囲:P.777 - P.782

 はじめに
 鼻咽腔血管線維腫は思春期の男性に好発する比較的稀な疾患である。組織学的には良性腫瘍であるが,易出血性で,解剖学的に複雑な周囲組織に進展しやすいため,治療の困難性が指摘されている。今回は昭和60年より平成3年までの7年間に当科で治療した鼻咽腔血管線維腫3症例の臨床経過について,文献的考察を加えて報告する。

鏡下咡語

サルとヒト

著者: 舩坂宗太郎

ページ範囲:P.768 - P.769

 サル年ということもあり,また日本の霊長類学の「開祖」であられる今西錦司博士が他界された年であり,そして筆者は「化石人類学一人の進化」に興味をもっているので,稿を求められたのを機に「サルとヒト」と題してチンパンジンについて駄文を弄したい。
 ヒトは自分の都合のよいように解釈するものらしい。たとえば,ヒトの特徴を「直立二足歩行をする」とか,「道具を使う能力を持つ」とか,「言語を操る」と決めて,他の動物より優れた存在と勝手にみなしてきた。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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