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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科64巻11号

1992年10月発行

雑誌目次

耳鼻咽喉科・頭頸部外科 症候群事典

A

ページ範囲:P.5 - P.13

Aarskog症候群
〔同義語〕facial-digital-genital症候群,Aarsko—g-Scott症候群
〔特徴〕Aarskogが1970年に報告した特異な顔貌,低身長,手足の奇形,性器奇形を特徴とする疾患で,X染色体性劣性遺伝をする。

B

ページ範囲:P.14 - P.24

Baller-Gerold症候群
〔同義語〕craniosynostosis-radial aplasia症候群
〔特徴〕頭蓋骨癒合症と橈骨欠損を特徴とする常染色体劣性遺伝疾患である。

C

ページ範囲:P.25 - P.37

Caffey-Silverman症候群
〔同義語〕Infantile,cortical,hyperostosis
〔特徴〕軟部結合組織の腫脹を主とする。乳児の皮質骨化症である。

D

ページ範囲:P.38 - P.47

大動脈炎症候群
〔同義語〕高安病(Takayasu's disease),高安動脈炎(Takayasu's arteritis),脈なし病(pulseless disease),大動脈弓症候群(arotic arch syndrome),大動脈炎症候群(aortitis syndrome)
〔特徴〕本症候群は,大動脈,主幹動脈,肺動脈の非特異的炎症と,その瘢痕収縮とにより内腔の狭窄や拡張を生じ,このため種々の症状をきたす疾患である。地域別分布は日本に最も多く,インド,中国などの東洋諸国,およびロシア,メキシコ,南アフリカなどでも多い。男女比は約1:9で,年齢別分布ではピークが30歳代にある。病因としては,遺伝的素因,感染,アレルギー,自己免疫などの関与があるとされている。

E

ページ範囲:P.48 - P.52

Eagle症候群
〔同義語〕symptomatic elongated styloid pro—cess
〔特徴〕茎状突起が平均の長さ(25mm)を越したり,舌茎状靱帯の化骨化が生じたりし,それらの先端を走行する神経や血管を刺激し,頸部痛や異物感の原因となること。茎状突起が正常の長さであっても,症状が起こる症例もある。

F

ページ範囲:P.54 - P.58

Fabry症候群
〔同義語〕angiokeratoma corporis diffusum universale
〔特徴〕1898年にAndersonとFabryにより別別に報告された先天性糖質代謝障害に基づく全身性疾患である。Lysosome系酵素α—galactosidase A活性の低下によりceramide trihexosideと少量のceramide digalactosideが蓄積し多彩な臨床症状を呈する。伴性劣性遺伝(Xq22)を示し,原則として男性に発症するが女性保因者でも部分症状をみることがある。おもな臨床症状は10歳頃までに始まる発疹と四肢の疼痛を伴う毛血管拡張性小丘疹であり多くの患者は思春期以後に皮膚所見から診断されるものが多い。中枢神経症状を欠く唯一のsphingolipidosisである。

G

ページ範囲:P.59 - P.65

眼窩尖端部症候群
〔同義語〕上眼窩裂症候群,眼窩漏斗尖端部症候群,眼窩先端部症候群,Orbital Apex症候群
〔特徴〕上限窩裂には動限神経,滑車神経,外転神経に加えて,鼻毛様神経,前頭神経,涙腺神経が走行している。炎症(結核や梅毒などの慢性炎症,感冒などの急性炎症,副鼻腔炎,急性あるいは慢性のクモ膜炎,海綿静脈洞炎,血栓症),腫瘍(下垂体腫瘍,鼻咽腔腫瘍,髄膜腫,頭蓋咽頭腫,転移性腫瘍),血管障害(内頸動脈瘤,頸動脈海綿静脈洞瘻),外傷(前頭蓋底骨折)により障害をうける。

H

ページ範囲:P.66 - P.73

Hajdu-Cheney症候群
〔同義語〕acroosteolysis
〔特徴〕末節骨の溶解,特異な頭蓋,歯牙の早期脱落や低身長などを特徴とする。HajduとKauntzeが1948年に報告し,さらに同症候群の家族発生症例をCheneyが1965年に報告している。常染色体優性遺伝であるが,単特独例の報告が多い。

I

ページ範囲:P.74 - P.74

immotile cilia症候群
〔同義語〕dyskinetic cilia症候群,ciliary dys-function症候群,primary ciliary dyskinesia,Kartagener症候群
〔特徴〕身体内の線毛や鞭毛が系統的に障害される疾患である。1975年にAfzeliusらは,男子不妊患者で生きてはいるが,動かない精子の鞭毛中に超微細構造の異常の存在を認め,dynein arms欠損による精子鞭毛運動障害を報告した。線毛や精子鞭毛のdynein armはATPase蛋白よりなり,線毛や鞭毛の運動に重要な働きをしていると考えられており,1977年にEliassonらが身体中の線毛や鞭毛の系統的な観察から類似の構造異常を見いだして,これをimmotile cilia症候群と提唱した。しかし,最近の検索では線毛運動が喪失した例は少なく,運動性は保持されているものの,同一細胞の線毛間でも協調性が失われたり,多方向性を示す例が多いことが指摘されており,primary ciliary dyskincsia (原発性線毛運動不全症)という概念も提案されている。

J

ページ範囲:P.75 - P.77

Jackson-Lawler症候群
〔同義語〕Jadassohn-Lewandowsky症候群,先天性厚硬爪甲
〔特徴〕四肢の皮膚およびその付属器,口腔,喉頭に角化異常,白色変性をきたす常染色体優性遺伝性疾患。9:5で男性に多い。1910年Jadas-sohn and Lewandowskyの報告に始まる。

K

ページ範囲:P.79 - P.86

歌舞伎メーキャップ症候群(Kabuki make-up)
〔同義語〕新川・黒木症候群
〔特徴〕1981年,新川らと黒木らが初めて記載した原因不明の多発奇形症候群で,特徴的な下眼瞼外反が歌舞伎役者の隈取りを想わせることより名づけられた。日本人に多くみられる。本症の成因に関して,常染色体優性遺伝性疾患で,すべて新しい突然変異で生じたものと考えられているが,一部染色体Yp11.2を含む領域の構造異常の可能性もある。

L

ページ範囲:P.87 - P.92

Landau-Kleffner症候群
〔同義語〕acquired aphasia with convulsive disorder in children,verbal auditory agnosia in children,てんかん・失語症候群
〔特徴〕本症候群の約80%が3歳から8歳の間に発症する。発症までは言語発達が正常である。後天性の失語ないし広義の聴覚失認と,てんかん性の脳波異常が必発症状である。臨床発作のない例もある。発作は抗てんかん剤により多くは抑制される。

M

ページ範囲:P.93 - P.109

Maffucci症候群
〔同義語〕enchondromatosis and hemangioma-tosis
〔特徴〕多発性内軟骨腫に皮膚血管腫を伴う稀な疾患である。1881年にMaffucciの報告に始まり,これまでに150例ほどの報告がある。原因は不明である。

N

ページ範囲:P.111 - P.114

Nager症候群
〔同義語〕(Nager's) acrofacial dysostosis,man—dibulofacial dysostosis with radial defcts
〔特徴〕第1・第2鯉弓由来の顎・顔面の形成不全と上肢椀側の形成不全の合併を特徴とする症候群である。まれな疾患であり,孤発例が多いため遺伝形式は不明であるが,常染色体劣性遺伝とする説がある。

O

ページ範囲:P.115 - P.118

Omohyoid Muscle症候群
〔同義語〕The Omohyoid症候群
〔特徴〕嚥下時に肩甲舌骨筋に沿った領域に異常な索状のあるいは腫瘤状の隆起が出現する。この隆起は安静時には消失する。病因は不明であるが,筋の変性あるいは走行異常などが考えられている。一側性である場合が多いが両側性のこともある。男性に多い。嚥下時の異様な外見(frog neck),咽喉頭異常感,疼痛のいずれかを伴う場合に本症候群と診断する。

P

ページ範囲:P.119 - P.127

Papillon-Leage-Psaume症候群
〔同義語〕OFD症候群(Type I)
〔特徴〕古くからさまざまな名称で呼ばれてきた症候群であるが,Papillon-LeageとPsaumeが1954年に特徴的な舌,鼻,唇などの形成障害からなる疾患と定義した。X染色体性優性遺伝性疾患。発生率は出生児50,000人に1人と推定されている。

R

ページ範囲:P.129 - P.135

Rapp-Hodgkin症候群
〔特徴〕常染色体優性遺伝。口唇裂,口蓋裂,心奇形のため生後早期に死亡。
〔症状〕毛:頭髪発毛遅滞,ブロンド,針金様,薄い。眼:外側眉毛,睫毛。羞明,眼瞼炎。涙点閉鎖。性器発育不全。鎖肛。尿道下裂。乏歯症。発汗減少。円錐歯冠。口唇裂,口蓋裂。爪発育異常。

S

ページ範囲:P.136 - P.147

先天性風疹症候群
〔同義語〕congenital rubella
〔特徴〕胎内で風疹ウイルスに感染したために起こる先天異常である。オーストラリアの眼科医Greggが先天性白内障の多発と風疹流行との関係に着目したことに始まり,その後多彩な症状が報告されている。白内障,心疾患,難聴を三主徴とするが,胎内感染の時期により症状の組合せに特徴があり,難聴のみの場合が最も多い。

T

ページ範囲:P.149 - P.155

Tapia症候群
〔同義語〕Vagohypoglossal症候群
〔特徴〕喉頭麻痺に他の脳神経麻痺が加わった状態を混合性(連合性)喉頭麻痺(associated laryn-geal paralysis)という。従来は下位脳神経つまりIX,X,XI,XIIの脳神経麻痺が合併したものを真性の混合性喉頭麻痺と定義されていたが最近は広義に解釈されることが多い1)。その中で迷走神経と同側の舌下神経の障害による喉頭および舌の一側性の麻痺をTapiaの症候群という。

U

ページ範囲:P.156 - P.156

Usher症候群
1858年にVon Graefeによって初めて報告され1914年にUsherによって詳細に報告された,網膜色素変性症と感音難聴を有する常染色体劣性遺伝の疾患として知られている。近年では遺伝子解析で,異常遺伝子の座が報告されている。精神発達遅滞や平衡障害を合併する例もある。
〔発生頻度〕諸外国では10万に3人,わが国では0.6人と少ない。

V

ページ範囲:P.157 - P.161

van Buchem症候群
〔同義語〕adult hyperphosphatasia,endosteal hyperostosis
〔特徴〕骨皮質の過形成に伴うさまざまな神経症状を特徴とする常染色体劣性遺伝疾患。

W

ページ範囲:P.162 - P.169

Waardenburg症候群
〔同義語〕Klein-Waardenburg症候群,Inter—oculo-irido-dermato-audtitive症候群
〔特徴〕日本人,ヨーロッパ人,アメリカ人,黒人に発症し,人種による発症の差はないとされている。また男女差もほとんどない。1951年にWaardenburgが以下のような特徴ある症状をもった新しい症候群を発表した。

Y

ページ範囲:P.170 - P.170

Yunis-Varon症候群
〔同義語〕Dysplastic clavicles,sparse hair and digital anomalies
〔特徴〕鎖骨の形成不全,栂指や第1中足骨の欠損,末梢性無指(趾)症などを特徴とする。1980年にYunisとVaronが5症例を発表した報告に始まる。常染色体劣性遺伝の可能性が高い。新生児期に死に至ることが多い。

Z

ページ範囲:P.171 - P.172

前下小脳動脈症候群
〔同義語〕橋下部外側症候群Lateral pontme—dullary症候群
〔特徴〕めまいを訴える症候として,末梢前庭疾患をはじめとし中枢疾患,とくに中枢血管系その中でも小脳,脳幹領域における血管障害は重要性が高い。前下小脳動脈は,橋延髄外側部および小脳下外側部への灌流をつかさどり,この部の梗塞に伴う脳神経症状とともに迷路動脈の乏血をも生じるため,患側の内耳障害も存在する。これはメニエール病と最も類似する発症様式をとり,同様の症状とともにV,VI,VIIの脳神経症状を伴うことを特徴とする。その鑑別には細心の注意をはらい診断をくださなければならない症候である。

索引

ページ範囲:P.173 - P.177

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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