icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科64巻12号

1992年11月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

顎関節の滑膜性骨軟骨腫症の2症例

著者: 野本実 ,   今野昭義 ,   金子敏郎

ページ範囲:P.792 - P.793

 滑膜性骨軟骨腫症(synovial osteochondromato-sis)は,滑膜が軟骨化生を起こし,多発性に骨軟骨結節を生じる疾患で,好発部位は膝,肘,股関節で,顎関節に発生することは稀である。今回,われわれが経験した顎関節の滑膜性骨軟骨腫症の2症例を示す。臨床症状は顎関節部の腫脹,疼痛で,耳下腺腫瘍との鑑別が問題となるが,顎関節X線,CT,MRI,骨シンチが参考となる。手術所見として,軟骨様の関節内遊離体が存在することが多く,組織学的に滑膜細胞の軟骨化生が認められれば確定診断となる。良性疾患であるが,悪性化した例も報告されている。
 症例1:23歳男性,主訴は左耳前部の腫脹,疹痛。1年前に左耳前部の腫脹,疹痛出現し,一時軽快したが’半月前より再び同症状出現したため,当科受診。左耳前部に圧痛のある2×2cmの硬い腫瘤を触知。RI:骨シンチ陽性,Gaシンチ陰性。

原著

直達外力による外リンパ瘻症例

著者: 大山義雄 ,   滝沢竜太 ,   山口潤 ,   馬場俊吉 ,   八木聰明

ページ範囲:P.795 - P.798

 はじめに
 外リンパ瘻は,内耳窓より鼓室内に外リンパが漏出する病態で,昭和58年に診断基準が呈示されその認識が高まっている。
 内耳窓破裂の原因として,先天性奇形に伴うものや手術,腫瘍,外陽などの後天性のもの,さらに原因不明(特発性)のものがあげられる。
 外傷性外リンパ瘻は,1968年Feeら1)が初めて報告して以来,本邦でも数多くの報告例が認められる2〜8)。しかし,経外耳道直達外力による外リンパ瘻症例の報告は比較的稀である。今回われわれは耳カキなどの直達外力により外リンパ瘻をきたした6例を経験したので,その症状,所見,術後経過などにつき若干の文献的考察を加えて報告する。

鼻アレルギーにおけるMASTの有用性—ことにRASTおよび皮内テストの比較から

著者: 高橋英毅 ,   二宮洋 ,   若林徹 ,   小倉美貴 ,   室井昌彦 ,   亀井民雄

ページ範囲:P.799 - P.802

 はじめに
 1966年石坂ら1)によって発見されたIgE抗体は,その翌年,Wideら2)によって創案されたアレルゲン特異的IgE,抗体測定法であるradioaller-gosorbent test3,4)(以下,RAST)により広い臨床応用への道が拓け,現在では本法はアレルギー性疾患における原因アレルゲンの同定に不可欠な検査法となっている。しかしRASTは放射性同位元素を用いること,および一度に測定できる抗原の数が限られていることなどの欠点もある。そこでわれわれは,新しく開発された酵素抗体法を用いる特異的IgE抗体測定法であるmultiple antigen simultaneous test5,6)(以下,MAST)を用い,鼻アレルギー患者における原因抗原の検索を試みると同時に,あわせてRAST,皮内テストなどとの関連を検討した。

口蓋扁桃におけるクラミジア陽性率の検討

著者: 千葉恭久

ページ範囲:P.803 - P.806

 はじめに
 クラミジアは,DNA,RNAの2種類の核酸を有し,宿主細胞に取り込まれ細胞内で増殖をくり返す微生物である。泌尿器科や産婦人科領域の非淋菌性尿道炎や子宮頸管炎などは,これが原因で発症すると報告されている1)。頭頸部領域におけるクラミジアは,扁桃炎や咽頭炎患者さらに中耳炎患者からの検出が報告されている2〜4)
 扁桃炎や咽頭炎患者からのChlamidia trachomatisやChlamidia peumoniaeの検出率には,報告により差が認められる。すなわち,Jonesら2)は3.5%,McDonaldら3)は6.3%と報告しているが,小川ら5)は,扁桃陰窩から検体を採取した場合のC.tracho-matisの検出率は細胞培養法で26.7%であるとしている。さらに,これらの検出率の相違は,検体採取方法の違いによるものであるとしている5)

当科における副咽頭間隙腫瘍の臨床的観察

著者: 栗原秀雄 ,   高木摂夫 ,   吉村理 ,   酒井昇 ,   福田諭 ,   田中克彦 ,   犬山征夫

ページ範囲:P.807 - P.812

 はじめに
 副咽頭間隙(Parapharyngeal space)はその底面を頭蓋底におく逆ピラミッド状の間隙で,外側壁を翼突筋,下顎骨,耳下腺深葉,顎二腹筋後腹,内側壁を咽頭粘膜,後壁を椎前筋膜により形成され,その内部に頸動脈,静脈,舌咽神経,迷走神経,副神経,交感神経幹,副咽頭リンパ節など種種の臓器を含む1)。したがってここにはさまざまな腫瘍が発生し得るとともに,位置的関係により腫瘍が発生した場合,長期間無症状で経過し,かなりの大きさになって初めて臨床症状を呈し,治療に難儀することが少なくない。
 この部位に発生した腫瘍の診断,手術的治療に際しては解剖学的位置関係を知ることが必須であり,画像診断によって得られる情報が重要となるが最近の画像診断の進歩により以前にもまして副咽頭間隙腫瘍について正確な情報が得られるようになってきた。
 今回われわれは1980年から1989年までの10年間に当科で経験した副咽頭間隙腫瘍の症例を用いて,術前診断の観点から画像診断を中心に再検討し手術所見と対比した。さらに治療方針との関係についても考察し報告する。

副咽頭間隙に発生した巨大腫瘍の1例

著者: 西岡信二 ,   青地克也 ,   西川邦男 ,   小池聰之

ページ範囲:P.813 - P.816

 はじめに
 副咽頭腔は,解剖学的に非常に複雑であり,頭蓋底を底とし舌骨大角を尖端とする錐体状の腔をなし,周囲を耳下腺,下顎骨,咽頭収縮筋,椎前筋群などに囲まれている。内部には内頸動・静脈,舌咽神経,迷走神経,舌下神経,交感神経など重要な血管,神経を含む。
 したがって,これら血管,神経を可能な限り温存し,副咽頭腔に発生した腫瘍を摘出する外科的手技は容易ではなく,各種の手術法が報告されている。

頸動脈小体腫瘍の1例

著者: 八木沼裕司 ,   橋本省 ,   佐藤三吉

ページ範囲:P.817 - P.821

 緒言
 頸動脈小体腫瘍は化学的受容体である頸動脈小体から発生する比較的稀な腫瘍であり,極めて血管に富むため摘出が困難なことで知られている。今回われわれは,MRI (Magnetic Resonance Imag-ing)が診断に有用であり,また双極電気凝固器(バイポーラー)を用いて少量の出血で全摘し得た症例を経験したので報告する。

特異な形態の骨新生を認めた原発性上顎洞嚢胞症例

著者: 小崎寛子 ,   洲崎春海 ,   鈴木美奈子 ,   今村哲夫

ページ範囲:P.823 - P.826

 はじめに
 副鼻腔疾患で新生骨を認めることは遊離骨片をはじめとして以前より知られている1,2)が,われわれは上顎洞嚢胞に特異な骨新生を伴った1例を経験したので報告するとともに,新生骨の形成について検討したので報告する。

耳下部巨大腫瘤の2症例

著者: 李雅次 ,   吉田知之 ,   佐伯哲郎 ,   大橋伸也 ,   岡田卓也 ,   山口秀樹 ,   田中豊 ,   舩坂宗太郎

ページ範囲:P.827 - P.831

 はじめに
 頭頸部軟部組織から発生する大きな腫瘤としては,リンパ管腫,血管腫,耳下腺由来の腫瘤などがある。いずれも容貌に関連するため,患者は早期に受診するのが常であるが,中には長期にわたっての放置や急激な増大のため巨大腫瘤となってから来院することもある。今回,完治し得た巨大な顔面部腫瘤の2例について検討を加えたので報告する。

鼻中隔原発線維肉腫の1例

著者: 瀬成田雅光 ,   和田哲郎 ,   芳田之 ,   高橋邦明 ,   草刈潤 ,   斎藤澄

ページ範囲:P.833 - P.837

 はじめに
 鼻中隔に原発する悪性腫瘍は鼻腔内の他の部位や副鼻腔より発生する悪性腫瘍に比較して極めて稀であるが,特に間葉系の腫瘍である線維肉腫は世界でも数例報告されているに過ぎない。今回われわれは偶然にも篩骨洞嚢胞を合併したことにより,鼻中隔原発の線維肉腫を早期に発見し,手術および放射線療法により良好な結果を得た症例を経験したので文献的考察を加え報告する。

口蓋扁桃に発生した線維腫の1症例

著者: 大井聖幸 ,   小野寺亮 ,   並木恒夫 ,   古和田勲

ページ範囲:P.839 - P.842

 はじめに
 口蓋扁桃における有茎性腫瘤には,1)真性振子様扁桃,2)いわゆる振子様扁桃,そして腫瘍である,3)振子様腫瘤とがある。腫瘍では悪性リンパ腫を主とする悪性腫瘍が多く,良性腫瘍は比較的少ない。一方,線維腫は線維芽細胞および膠原線維を実質とする良性腫瘍で,頭頸部領域では歯肉,舌,口唇,口腔粘膜などに多くみられるが,口蓋扁桃に発生することは稀である。今回,われわれは口蓋扁桃に発生した線維腫の1症例を経験したので,文献的考察を加え報告する。

化学療法後に特発性血小板減少性紫斑病を合併した舌癌の1症例

著者: 矢後忠之 ,   尾崎桃子 ,   小勝敏幸 ,   山崎健 ,   持松いづみ ,   佃守 ,   澤木修二

ページ範囲:P.847 - P.851

 はじめに
 近年,頭頸部癌の治療として化学療法が繁用されている。なかでもシスプラチン(CDDP)と5-Fluorouracil(5-Fu)を併用するCF療法は奏効性の高い化学療法と考えられている。
 このCF化学療法の主な副作用としてはCDDPの腎毒性,消化管障害,大量の5-Fu投与による口内炎,骨髄抑制,心毒性が知られている。今回,CF療法をinduction chemothcrapyとして用いた舌癌の症例で,従来の5-Fuで誘発される骨髄抑制とは異なった著明な血小板減少症をきたし,さらに特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic throm-bocytopenic purpura;ITP)を合併した症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

鏡下咡語

シンポジウムとパネルディスカッション

著者: 平野実

ページ範囲:P.844 - P.845

 学会に行くと宿題報告,特別講演,教育講演,シンポジウム,パネルディスカッションなどの特別ショーがある。それぞれ違った目的をもち,形式も違う。ただ,日本の耳鼻咽喉科・頭頸部外科関係のほとんどの学会では,シンポジウムとパネルディスカッションとの間に,ほとんど違いがない。
 私はアメリカの学会にしばしば呼ばれて,シンポジウムやパネルディスカッションに度々参加してきたが,アメリカではこの2つははっきりと区別されている。中身が違うからこそ,カテゴリーが違うのである。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

95巻13号(2023年12月発行)

特集 めざせ! 一歩進んだ周術期管理

95巻12号(2023年11月発行)

特集 嚥下障害の手術を極める! プロに学ぶコツとトラブルシューティング〔特別付録Web動画〕

95巻11号(2023年10月発行)

特集 必見! エキスパートの頸部郭清術〔特別付録Web動画〕

95巻10号(2023年9月発行)

特集 達人にきく! 厄介なめまいへの対応法

95巻9号(2023年8月発行)

特集 小児の耳鼻咽喉・頭頸部手術—保護者への説明のコツから術中・術後の注意点まで〔特別付録Web動画〕

95巻8号(2023年7月発行)

特集 真菌症—知っておきたい診療のポイント

95巻7号(2023年6月発行)

特集 最新版 見てわかる! 喉頭・咽頭に対する経口手術〔特別付録Web動画〕

95巻6号(2023年5月発行)

特集 神経の扱い方をマスターする—術中の確実な温存と再建

95巻5号(2023年4月発行)

増刊号 豊富な処方例でポイント解説! 耳鼻咽喉科・頭頸部外科処方マニュアル

95巻4号(2023年4月発行)

特集 睡眠時無呼吸症候群の診療エッセンシャル

95巻3号(2023年3月発行)

特集 内視鏡所見カラーアトラス—見極めポイントはここだ!

95巻2号(2023年2月発行)

特集 アレルギー疾患を広く深く診る

95巻1号(2023年1月発行)

特集 どこまで読める? MRI典型所見アトラス

94巻13号(2022年12月発行)

特集 見逃すな!緊急手術症例—いつ・どのように手術適応を見極めるか

94巻12号(2022年11月発行)

特集 この1冊でわかる遺伝学的検査—基礎知識と臨床応用

94巻11号(2022年10月発行)

特集 ここが変わった! 頭頸部癌診療ガイドライン2022

94巻10号(2022年9月発行)

特集 真珠腫まるわかり! あなたの疑問にお答えします

94巻9号(2022年8月発行)

特集 帰しちゃいけない! 外来診療のピットフォール

94巻8号(2022年7月発行)

特集 ウイルス感染症に強くなる!—予防・診断・治療のポイント

94巻7号(2022年6月発行)

特集 この1冊ですべてがわかる 頭頸部がんの支持療法と緩和ケア

94巻6号(2022年5月発行)

特集 外来診療のテクニック—匠に学ぶプロのコツ

94巻5号(2022年4月発行)

増刊号 結果の読み方がよくわかる! 耳鼻咽喉科検査ガイド

94巻4号(2022年4月発行)

特集 CT典型所見アトラス—まずはここを診る!

94巻3号(2022年3月発行)

特集 中耳・側頭骨手術のスキルアップ—耳科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻2号(2022年2月発行)

特集 鼻副鼻腔・頭蓋底手術のスキルアップ—鼻科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻1号(2022年1月発行)

特集 新たに薬事承認・保険収載された薬剤・医療資材・治療法ガイド

icon up
あなたは医療従事者ですか?