当科における副咽頭間隙腫瘍の臨床的観察
著者:
栗原秀雄
,
高木摂夫
,
吉村理
,
酒井昇
,
福田諭
,
田中克彦
,
犬山征夫
ページ範囲:P.807 - P.812
はじめに
副咽頭間隙(Parapharyngeal space)はその底面を頭蓋底におく逆ピラミッド状の間隙で,外側壁を翼突筋,下顎骨,耳下腺深葉,顎二腹筋後腹,内側壁を咽頭粘膜,後壁を椎前筋膜により形成され,その内部に頸動脈,静脈,舌咽神経,迷走神経,副神経,交感神経幹,副咽頭リンパ節など種種の臓器を含む1)。したがってここにはさまざまな腫瘍が発生し得るとともに,位置的関係により腫瘍が発生した場合,長期間無症状で経過し,かなりの大きさになって初めて臨床症状を呈し,治療に難儀することが少なくない。
この部位に発生した腫瘍の診断,手術的治療に際しては解剖学的位置関係を知ることが必須であり,画像診断によって得られる情報が重要となるが最近の画像診断の進歩により以前にもまして副咽頭間隙腫瘍について正確な情報が得られるようになってきた。
今回われわれは1980年から1989年までの10年間に当科で経験した副咽頭間隙腫瘍の症例を用いて,術前診断の観点から画像診断を中心に再検討し手術所見と対比した。さらに治療方針との関係についても考察し報告する。