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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科64巻2号

1992年02月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

咽頭梅毒—扁桃組織内における梅毒スピロヘータの証明

著者: 黒田浩之 ,   雲井一夫 ,   天津睦郎 ,   今井幸弘

ページ範囲:P.84 - P.85

 性風俗の多様化に伴い,口腔咽頭領域にも梅毒症例の報告が散見される1)。診断には主に血清学的方法が用いられ,局所のスピロヘータを証明するのは困難とされている。我々は,鍍銀染色,螢光抗体法を用いて組織内にスピロヘータを証明し,咽頭梅毒と確信した1例を経験した.
 症例:29歳女性,ホステス

原著

甲状腺未分化癌の2例

著者: 金栄治 ,   斎藤優子 ,   荻野享 ,   新保慎一郎 ,   鷹巣晃昌

ページ範囲:P.87 - P.90

 はじめに
 甲状腺癌は乳頭癌が39〜81%で最も多く1,2),未分化癌は7〜16%である3,4)。未分化癌は乳頭癌に比し著しく予後不良である4)。今回われわれは2例の未分化癌を経験した。1例は乳頭癌の既往歴があり,今回手術時摘出臓器に乳頭癌の残存が認められた。他の1例は広汎な肺転移を認めた。未分化癌の臨床上の特徴および組織発生について考察を加え報告する。

頬部放線菌症の1症例

著者: 小川雅浩 ,   杉本太郎 ,   奥常幸

ページ範囲:P.91 - P.95

 緒言
 放線菌症は,人の常在菌である放線菌によって発症する特異的肉芽腫性炎である。放線菌は,口腔,咽頭,腸管,唾液腺,涙腺に常在している。その中でも口腔内の歯石やう歯に常在する放線菌が原因となり,放線菌症が発症する場合が多い。そのため顎口腔を含めた顔面,頸部領域が放線菌症の好発部位となっている。
 放線菌は抗生物質に感受性が高い。そのため,放線菌症は抗生剤の普及により解決されたかに思われた。しかし,近年の抗生剤の頻用傾向のためか,抗生剤の投与にもかかわらず治癒に至らない例や一時的に軽快を認めるものの再燃するといった例の報告が増加している。特に顎口腔以外の顔面,頸部領域で腫瘤を形成する例では,腫瘍に似た臨床像を呈することがあり,腫瘍との鑑別がしばしば必要となる。

腺房細胞腫瘍の3症例

著者: 中之坊学 ,   北原哲 ,   井上鐵三 ,   相田真介

ページ範囲:P.97 - P.102

 はじめに
 唾液腺悪性腫瘍のひとつに,腺房細胞腫瘍aciniccell tumorがある。これは,古くは唾液腺のaciner-like-cellからなるadenomaと分類され1),その後悪性例も報告されたためacinic cell carcinomaと呼ばれたこともあった2,3)が,現在では悪性の潜在能を有するlow grade malignancyとして位置付けられており,頭頸部癌取扱い規約でもcarcinomaという言葉の代りにtumorという言葉を用いている4)。この腫瘍は,主として耳下腺に発生し,小唾液腺には稀なものとされている。
 1984〜1990年の6年間にわれわれの経験した腺房細胞腫瘍は3例あり,1例は耳下腺から発生したものであったが,他2例は上顎洞の小唾液腺類似付属腺および上咽頭の小唾液腺から発生したと考えられるものであった。これら3症例の臨床経過および病理組織学的所見を呈示するとともに,文献的考察を加えて報告する。

めまいに対する交流分析的心理療法—有効であったメニエール病症例を中心に

著者: 酒井丈夫 ,   水田邦博 ,   野末道彦

ページ範囲:P.103 - P.107

 はじめに
 従来よりメニエール病を含む耳性めまい疾患の発症・病状には心因の関与が指摘されている。最近,精神分析の口語版と言われる交流分析によって,症状が軽快したメニエール病症例を経験したので,メニエール病およびその他の耳性めまい疾患患者の自我状態の特徴と併せて報告する。

口腔底腫瘍と鑑別困難であった巨大な歯石の症例

著者: 柴崎修 ,   宗田靖 ,   木村伸一 ,   和田哲郎 ,   武山実 ,   草刈潤

ページ範囲:P.109 - P.111

 はじめに
 歯石とは歯の表面にできる硬い沈着物であり,口腔内細菌と主にCa反応性タンパク質からなる細菌間基質とから構成された歯垢,歯苔あるいは菌苔と呼ばれる軟らかい沈着物にCa,Pなどのミネラルが沈着し,石灰化したものである1-3)。歯科領域においてはごくありふれた存在であり,一般にはその診断に苦慮することはまれと思われる。
 今回われわれは,口腔底腫瘍による下顎骨の露出と鑑別困難であった巨大な歯石を有した症例を経験し,その機序について若干の考察を加えたのでここに報告する。

軽微な聴・平衡覚症状にて発症した小脳橋角部クモ膜嚢胞の症例

著者: 室伏利久 ,   小林武夫

ページ範囲:P.113 - P.115

 緒言
 小脳橋角部腫瘍としては,聴神経腫瘍が代表的であり,典型的な症例の診断は容易である。しかし,軽微な聴力障害,平衡障害を主訴に耳鼻咽喉科を受診するもののなかにも,様々な小脳橋角部病変を有する症例が含まれている1)。今回,われわれは,軽微な聴覚障害,平衡障害を主訴に受診した小脳橋角部クモ膜嚢胞の症例を経験したので,その神経耳科学的所見,および,画像所見を中心として報告する。

鼓室形成術1,006耳の検討

著者: 八木聰明 ,   奥田稔

ページ範囲:P.117 - P.121

 はじめに
 鼓室形成術は,最近では一般的な手術として各施設で広く行われ,多くの成果をあげている。しかし,1,000例を越えるようなまとまった鼓室形成術の報告は,必ずしも多くはない。今回,日本医科大学付属病院耳鼻咽喉科で鼓室形成術を行ったもののうち,少なくとも手術の一部は著者が施行した1,006耳の統計的検討を行った。同一術者が行った手術例を解析することは,その手術方式が比較的均一であることによる統計的分析上の利点があると考えたからである。

下咽頭梨状窩瘻症例

著者: 金田宏和 ,   大坂正浩 ,   北奥恵之 ,   田中治 ,   宮原裕 ,   松永喬

ページ範囲:P.123 - P.126

 はじめに
 下咽頭梨状窩瘻は急性化膿性甲状腺炎を惹起する疾患として,最近注目されている。臨床上,今日でも前頸部膿瘍との診断のもとに頸部切開,排膿を繰り返すという病歴も多く,基礎疾患である本症の存在が見落とされることもしばしばで,本症の存在が念頭になければ診断,治療に困惑することも少なくない。
 今回,われわれは急性化膿性甲状腺炎を反復した下咽頭梨状窩瘻の1症例を経験し,摘出手術にあたっての染色法の有用性も検討したので報告する。

頸部extra-abdominal desmoid tumorの1例

著者: 大蝶修司 ,   松井和夫 ,   峯田周幸 ,   安原秋夫 ,   野末道彦

ページ範囲:P.129 - P.133

 はじめに
 Extra-abdominal desmoid tumor(以下,EADTと略)は組織学的には良性であるが,臨床的にはその局所浸潤性と易再発性が問題となる線維性腫瘍である。好発部位は筋肉や腱であり,頭頸部領域に発生するのは比較的稀と言われている。
 今回われわれは,38歳男性の左頸部に発生したEADTを経験した。MRIと手術所見を対比した結果興味ある知見が得られたので,その臨床的特徴について文献的考察を加え報告する。

上顎神経伝達麻酔による副鼻腔手術時の出血抑制について

著者: 野村俊五 ,   吉田泰行

ページ範囲:P.139 - P.143

 緒言
 上顎神経伝達麻酔(以降“伝麻”と略称する)により,副鼻腔手術時に出血抑制が起こることは昔から知られている。この出血の抑制に関して,著者は1950年,第279回日本耳鼻咽喉科学会東京地方部会例会において,伝麻による出血抑制が明らかに起こることを報告し,さらにMatas法による伝麻では,77.8%に著明に出血が抑制されたことを報告した。
 この出血抑制機序の説明としてBraun1)は,伝麻時に翼口蓋窩入口部に刺入した注射液による顎動脈の圧迫により出血抑制が起こるとしていた。斎藤(寛)2)は,伝麻による出血抑制は起こるが,その機序は,副交感神経の麻酔によるものと1957年に発表している。著者は,はじめはBraunの主張のように,顎動脈の注射液による圧迫と解していたが,現在では,翼口蓋神経節が上顎神経の麻酔と同時に麻酔されるため,副交感神経の麻痺が起こり,相対的に交感神経の緊張が高まり,術側の顔面毛細血管の収縮が起こるものと解釈している。斎藤(成司)3)も,出血抑制は副交感神経の影響が大きいとしている。特に著者の臨床例では,伝麻が正円孔内またはその直前で行われた時に,必ず強い出血抑制が起こることを経験している。

ヘッドホーンステレオを利用したマスカー療法の試み

著者: 相原康孝 ,   小林謙 ,   佐久間文子 ,   石田祐子 ,   上村敏夫 ,   井上英輝 ,   神尾友和 ,   河村和雄

ページ範囲:P.145 - P.148

 はじめに
 耳鳴が外界の音によって遮蔽される現象を耳鳴治療に応用し,耳鳴の遮蔽のために雑音を用いたのがマスカー療法である1)。マスカーによる耳鳴治療では耳鳴の周波数に近い帯域雑音で完全に耳鳴が遮蔽されることが重要であり1),従来より用いられてきたボックス補聴器型マスカー治療器は5kHz以上の周波数の耳鳴に対しては,マスキングノイズのピッチを合わせることができず,5kHz以下の耳鳴に比べ効果が劣るとされている2)
 今回われわれは症例ごとに耳鳴にできる限り近似し,5kHz以上の高音域でも帯域雑音を発生できる装置を開発し,それによるマスキングノイズをカセットテープに録音し,ヘッドホーンステレオ(ウォークマン;SONY)を用いてマスカー療法を試みた。

30名の人工内耳植え込み患者の臨床試験成績

著者: 舩坂宗太郎 ,   本庄巖 ,   形浦昭克 ,   野田寛 ,   熊川孝三

ページ範囲:P.149 - P.157

 はじめに
 22チャンネル人工内耳(Cochlear Pty Ltd,Sy-dney,Australia)の日本での臨床応用は,1985年12月東京医科大学において髄膜炎後聾となった女性患者に行われたのが最初である1)。以来,本治験に参画した東京医科大学,京都大学,札幌医科大学,琉球大学,虎の門病院において30名の患者に応用された、すべての患者は言語の聴取能を再獲得し,いわゆる「日常的な使用者(regular user)」となっており,環境音も認識することができる。少なくとも6人の患者は電話の使用が可能となっている。このように,本人工内耳は聾患者に対して大きな福音となっている。
 このレポートでは,22チャンネル人工内耳システム,適応基準,植え込み手術,適用患者について概略的に説明し,そして言語治療士の肉声ならびに人工内耳患者用に特別に作られたビデオテープによる人工内耳患者の言語聴取能の評価結果および副作用の有無について報告するものである2〜5)

鏡下咡語

白衣の天使が飛べるように—看護教育の高度化に想う

著者: 松永喬

ページ範囲:P.136 - P.137

 「看護婦になって25年の歳月が流れた。何時のまにか40歳の坂も越えた。“私,20年も看護婦やるなんて考えられない”という若い看護婦も現実にいる。しかし今日まで私は看護婦を辞めたいと思ったことはないし,むしろ元気に働ける間は死ぬまで看護婦の仕事に燃えて熱中したいと思っている。ところで私が看護婦を続けている理山は何なのだろう?改めて自分にこう問いかけてみると考え込んでしまうのである。もっと楽で収入の多い仕事は他にもあるだろう。看護婦は3K (きつい,汚い,危険)だの,8K (3Kプラス給料が低い,勤務時間が長い,休暇がとれない,結婚できない,化粧ののりが良くないなど)だのと言われてもやはり私は看護婦が好きなのだ,それ以外の道は考えられない」(宮内美沙子著,木もれ日の病棟から,未来社)。
 これはあるベテラン看護婦の日記の一節である。この3Kや8Kの背景に横たわっているのは基本的に「看護職員が足りない」という現実である。この酒護職員不足問題解決策のキーワードは看護職員の定数配置基準の見直し,給与の改善,生活条件の改善,労働条件の改善,社会的地位の向上,やりがいのある看護の追求などといわれている。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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