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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科64巻3号

1992年03月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

口腔咽頭性行為感染症(STD)

著者: 荒井秀一 ,   白幡雄一

ページ範囲:P.166 - P.167

 近年,性の解放,性行為の多様化などに伴い,性行為感染症(Sexually Transmitted Disease以下,STDと略)の種類ならびに内容も多様化してきた。その中で口腔咽頭領域のSTDも増加の傾向にあり,われわれ耳鼻科医は,口腔咽頭疾患患者に接するにあたり,STDに対しての配慮も必要不可欠なことと考えられる。われわれは,経口感染が原因と考えられたクラミジア咽頭炎と口腔咽頭梅毒の2例を経験したので紹介する。
 症例1:26歳,既婚男性,自由業

原著

GVHDにみられる外耳皮膚病変

著者: 鈴木雅明 ,   八木沼裕司 ,   朴沢孝治 ,   志賀伸之 ,   高坂知節

ページ範囲:P.169 - P.172

 はじめに
 輸血による副作用として移植片対宿主病(graftversus host disease:GVHD)が注目されるようになってきた。GVHDはその疾患自体は新しいものではないが,その報告は最近わが国で著しく多く,しかも重篤な経過を辿る場合も少なくないためトピックスになっている。
 GVHDはその臨床像から急性型および慢性型に分けられるがともに皮膚病変が高率に出現し,かつ他病変に先行することが多い。そしてその皮膚病変が最初に現われやすいのは手掌,足蹠,そして外耳という1)

同種乾燥硬膜と自家筋膜の二重グラフトによる鼓室形成術

著者: 坂井真 ,   佐藤むつみ ,   小松信行 ,   加賀達美 ,   新川敦

ページ範囲:P.173 - P.177

 はじめに
 鼓膜欠損の修復材料については種々の材料が用いられ,現在では側頭筋膜が最も広く利用されている1〜4)。われわれは,以前より同種乾燥硬膜(lyophilized homograft dura,以下LHDと略)を用いて症例を積み重ねてきたが5),鼓膜形成においてLHDと自家側頭筋膜の二重グラフトという独自の術式で良好な結果を得ることができたので報告する。

血清抗体測定によるChlamydia PsittaciおよびChlamydia trachomatisと耳鼻咽喉科疾患との関連性に関する検討

著者: 小川浩司 ,   橋口一弘 ,   和山行正

ページ範囲:P.179 - P.183

 はじめに
 クラミジアは微生物学上の分類ではⅡ 門(Bac-teria)第18部(Rickettiales目,Chlamydiales目)に属し,1科1属で,現在はChlamydia psittaci,Chlamydia trachomatis,Chlamydia pneumoniaeの3種からなる。
 C.Psittaciはおうむ病(psittacosis)の病原体でC.trachomatisはトラコーマ,鼠径リンパ肉芽腫,近年では非淋菌性尿道炎などの性感染症や乳児の無熱性肺炎を起こすことが明らかになった菌である。筆者らはC.pneumoniaeと耳鼻咽喉科疾患との関連性については,血清学的に調べても非常に高いものがあることを認め本誌上で報告した1)。また,滲出性中耳炎や種々の扁桃炎患者からC.tra-chomatisを分離培養し,これらの耳鼻咽喉科疾患における病原性について論じてきた2〜4)

術後にABRの正常化を示した聴神経腫瘍の3症例

著者: 青柳優 ,   横田雅司 ,   鈴木利久 ,   喜連照夫 ,   金慶訓 ,   小池古郎 ,   中井昴

ページ範囲:P.185 - P.191

 はじめに
 近年,ABRやMRIの普及によって聴神経腫瘍の診断は容易になり,聴力障害の軽度なうちに診断される機会が多くなってきており,これに伴い術後聴力保存例や聴力改善例の報告も多くなってきた。一方,聴神経腫瘍の早期診断におけるABRの診断的意義については多くの報告があるが,ABR所見の変動や術後のABR所見の改善についての報告はほとんどない。
 われわれは1988年以降,比較的早期の聴神経腫瘍7例に対して脳外科の協力のもとに中頭蓋窩法摘出術を施行してきたが,そのうち5例は術前会話音域聴力レベルが30 dB以内であり,聴力保存を試みた。うち3例において術前と同じ聴力を保存して摘出し得たが,これら3例全例において術後にABRの正常化を認めたので報告し,聴神経腫瘍におけるABR所見の変動について考察する。

頸部縦隔に広範な蜂窩織炎がみられたLudwig's anginaの1剖検例

著者: 杉原志朗 ,   小川晃 ,   佐竹文介 ,   牧野総太郎 ,   松浦鎮 ,   鈴木忍 ,   本間学 ,   中里洋一

ページ範囲:P.193 - P.197

 緒言
 Ludwig's anginaは1836年にLudwig1)により最初に記載された顎下部の蜂窩織炎である。しばしば急性の経過をとり,生命を脅かす予後不良の疾患である。Ludwig's anginaを引き起こすさまざまな要因が考えられるが,歯髄炎や口腔内の炎症などが報告されている。その他糖尿病などのさまざまな病態での本症の発生が認められる。われわれは本症と思われる1剖検例を経験したので報告する。

上咽頭癌に対するガンマナイフ治療の試み

著者: 木田義久 ,   小林達也 ,   山中孝幸 ,   森美雅 ,   服部智司 ,   村橋けい子 ,   池田流美

ページ範囲:P.199 - P.204

 はじめに
 上咽頭部に発育する腫瘍の中で,上咽頭癌は通常手術的摘出が不可能であるため,化学療法の他,放射線外照射あるいは腔内照射が行われている。放射線感受性は高く初期には比較的良好な反応が認められるものの,長期生存例は少なく,5年生存率は30〜45%とされ,いま十分な成果が得られていない。ガンマナイフは主に頭蓋内病変の定位的放射線治療(radiosurgery)を目的にスウェーデンのLeksell1)により開発された装置であるが,眼窩,頭蓋底,鼻咽頭病変への適応が可能である。今回,当病院に新たに導入したガンマナイフにより,上咽頭癌を治療する機会を得たので,ここに紹介する。

頸部リンパ節転移による頸動脈過敏症候群の3例

著者: 中本節夫 ,   清水猛史 ,   竹内万彦 ,   宮原幸則 ,   間島雄一 ,   坂倉康夫 ,   坂倉健二 ,   高橋志光

ページ範囲:P.205 - P.208

 はじめに
 頸動脈洞過敏症候群は,腫瘍が頸動脈に浸潤や圧排されることなどにより,頸動脈洞が刺激され,過敏状態となり,それによる徐脈・低血圧を主徴とする種々の症状をきたす疾患である。頭頸部腫瘍の頸部リンパ節転移を有する患者にしばしば認める。今回われわれは3例の頸動脈洞過敏症候群を経験したので報告する。

MRIにて術前診断が可能であった垂直部を中心とした顔面神経鞘腫症例

著者: 和田哲郎 ,   武山実 ,   芹沢富士子 ,   柴崎修 ,   渡利容子 ,   西川典秀 ,   原晃 ,   草刈潤 ,   黒崎喜久

ページ範囲:P.209 - P.212

 緒言
 中耳に発生する腫瘍は近年その報告が増えてきているとはいえ比較的頻度は低く,その発生部位・進展方向によっては術前に診断をする際,苦慮する場合がある。今回われわれはMRIによって術前に真珠腫と鑑別し得た顔面神経垂直部より発生した神経鞘腫の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。

症候性三叉神経痛—4症例の経験から

著者: 鰐渕伸子 ,   石塚洋一 ,   丸山敬史 ,   秋元淑子

ページ範囲:P.213 - P.217

 はじめに
 三叉神経痛は,三叉神経知覚根部周辺の刺激によって生じる顔面三叉神経領域の疼痛であるが,頭部,顔面,眼,鼻咽腔,口腔,歯の疼痛として初診時に各科を受診し,とくに他科領域の疾患で,自覚症状や臨床症状に乏しい場合には,原因不明の三叉神経痛として長期間経過していることがある。今回われわれは,初診時に特発性三叉神経痛として診断され治療を受け,後にその原因疾患が明らかとなった篩骨洞嚢胞,硬膜外膿瘍を合併した前頭洞嚢胞および脳腫瘍2例の記4症例を経験したので報告する。

側頭骨線維性骨異形成症の2症例

著者: 岩崎聡 ,   水田邦博 ,   伊藤久子 ,   星野知之

ページ範囲:P.219 - P.225

 はじめに
 線維性骨異形成症(Fibrous dysplasia)は線維性組織と骨組織の増殖が主体の良性の骨病変である。単骨性に出現するmonostoticの型と,多骨性に出現するpolyostoticの型があり,後者のうち皮膚の異常色素沈着,内分泌異常を伴うものをAlb-right症候群と呼んでいる。臨床の場において頭頸部領域で遭遇することは少なく,その中でも上顎骨,下顎骨に多く認められ,側頭骨にみられるのは比較的稀である。
 今回われわれは,外耳道狭窄,難聴が主訴で,側頭骨に生じた線維性骨異形成症の症例に対して,外耳道形成術を施行し,長期経過観察し得た2症例を経験したので,その症例を報告するとともに,治療方法,術後経過などについて若干の文献的考察を加えて検討した。

外耳道有生異物(フタトゲチマダニ)の2症例

著者: 大井聖幸 ,   小野寺亮 ,   河田藤治 ,   山口昇

ページ範囲:P.227 - P.231

 緒言
 外耳道有生異物では一般に昆虫が多いが,ダニ,マダニ類の報告例は少ない。
 マダニ類は主として野生物動や家畜に寄生するが,ときに人体にも寄生し,ピロプラズマ病,野兎病,再帰熱,ライムボレリア症などの細菌感染症や,ロシア春夏脳炎や出血熱などのウイルス感染症,ロッキー山紅斑熱や丘疹熱などのリケッチア感染症を媒介する1)ので,臨床上も重要である。近年,マダニ類の人体寄生例の報告は増加しているが,その多くはマダニ属のものであり,チマダニ属の症例は少なく2),また外耳道に寄生した症例は極めて少ない。

鏡下咡語

「診断書の価値」—補償に係る診断書

著者: 調所廣之

ページ範囲:P.234 - P.235

 診断書は聖域か
 刑法第180条には『医師が公的機関に提出する診断書に虚偽の記載をした場合』三年以下の禁錮または二万円以下の罰金を科することになっている。これは刑事罰を科すことによって,医師の診断書の信用度を高めていることにほかならない。従って,医師の診断書は公的機関の補償の判断あるいは裁判において信頼すべき資料として用いられ,保険会社はこれを信頼して査定を行うことになる。しかし,現実には裁判あるいは保険会社の算定などにおいて,医師の診断書はそれほど信頼されていないのである。事実,診断書の中には,いい加減なものも少なくない。医師は故意に冒頭の刑法に触れるような虚偽の診断書を記載することはない。ところが疾病や傷害の医学的,あるいは社会的認識に欠けた診断書は少なくないのである。
 事実,最近の損害賠償の裁判などでは,医師の作成した診断書は単なる意見として扱われる傾向にある。過去には,診断書の証拠としての価値は絶対的なものであった。従って,医師に対するる証人尋問も,当該医師により作成されたか否かの確認子続きに限られしていた。しかし現在では診断書の内容は,医師の個人的意見とみなされる傾向が強くなっている。そのためその意見の根拠,すなわちカルテの内容そのもの,診断経過などが損害賠償訴訟の争点になることが少なくない。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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