唾液腺腫瘤
著者:
林崎勝武
,
角原滋子
,
尾関由里子
,
鈴木晴彦
ページ範囲:P.265 - P.269
はじめに
大唾液腺に腫脹をきたす疾患には,耳下腺を例にとってみると,流行性耳下腺炎などの炎症,シェーグレン,ヘールホルト,ミクリッツ症候群,唾液腺症,仮性肥大,外傷による唾液漏や唾液嚢胞,唾石,異物,軟部好酸球肉芽腫症,腫瘍類似疾患(先天性嚢胞やbenign lymphoepithelial lesion)に加え,良性,悪性,転移性の腫瘍などがある。ことに腫瘍では良性,悪性を問わず多彩な組織型のものがあり,また悪性腫瘍は組織型や分化度の違いによって著しく予後が異なることは良く知られている。一般に頸部の腫瘤性疾患ではbiopsyは播種や血管,神経損傷の危険性があるため禁忌とされており,術前診断としてはシアログラフィー,超音波断層法,CT,MRI,RIなどを含めた総合画像診断により良,悪性を鑑別し,ある程度まで組織型を類推するに止まっているのが現状である。
最近おもに外科領域で急速に拡まりつつある超音波ガイド下の細針吸引生検法(fine needle aspi-ration biopsy,FNA)は,リアルタイム超音波映像下に操作することによってより,安全,確実に細胞の採取が可能であり,高い評価を得ている。著者らは本法を頭頸部領域に応用すべく改良を加え,1984年より臨床応用を行っているが1,2),今回,唾液腺腫瘤のうち耳下腺腫瘤を対象として,術前の良,悪性の鑑別診断,さらに組織型診断における本法の成績ならびに有用性について述べたい。