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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科64巻5号

1992年05月発行

雑誌目次

トピックス 補聴器の処方

最近の補聴器の種類と特徴

著者: 小寺一興

ページ範囲:P.323 - P.326

 はじめに
 補聴器の改良と開発は,近年積極的に行われており,その進歩は著しい。新しいさまざまな特徴をもつ補聴器が登場するにつれて,価格と外観を考慮しなくても,患者にとって最適の補聴器を選択することは難しくなっている。
 もちろん従来の補聴器は,難聴によるコミュニケーション障害の改善に十分有効である。そこで,多種多彩な補聴器を利用できる現時点における課題は,特徴のある補聴器をその特徴がとくに有効な患者に利用させることである。
 ここでは,さまざまな補聴器が備える特徴について概括し,補聴器の適応のある患者への器種選択と指導や,患者が使用している補聴器の特徴と問題点を知るための参考に供したい。

補聴器の性能と特性

著者: 涌井慎哉

ページ範囲:P.327 - P.334

 はじめに
 補聴器については細かな規定がたくさんあって,厳密に述べていくと紙数も不足し,ますます補聴器を敬遠する人が増えそうなのでできるだけ簡略に説明する。そのため厳密性には若干欠けることを御容赦願いたい。

補聴器の適応と適応決定のための検査

著者: 田内光

ページ範囲:P.335 - P.340

 はじめに
 難聴を訴えて来院した人々に,われわれはまず診察をして難聴の原因が何であり,治療の必要性を判断し,改善しない場合,この難聴は治りませんと宣言するわけである。ここまでは耳鼻咽喉科医であれば今までも一般に行ってきたことである。しかし話をさらに一歩進めて,難聴は治りませんから補聴器をつけてみてはいかがですか,と勧める医師がどれだけいるであろうか。最近は耳鼻咽喉科医の中にも,補聴器に関心を持つ医師が多くなってきた。大学病院クラスの大病院では,専門の補聴器外来を持つ病院も多くみられるようになってきた。しかし,開業をしている実地医家の医師も含めて考えるとまだまだ少ないのが現状である。
 なぜ補聴器への関心が薄いのか。まず補聴器に対する無理解,最初から補聴器は難しいものであるという思い込みもあるであろう。しかしながら,補聴器の基本的な構造はさほど難しいものではないし,医師がその細かい構造にまで熟知する必要はないのである。

初歩からの補聴器フィッティング

著者: 細井裕司

ページ範囲:P.341 - P.348

 はじめに
 補聴器のフィッティングとは,難聴者に最も適合した補聴器を選択,調整することであるが,難聴者の希望は難聴の程度,性質や難聴者の社会的立場によって異なってくる。会議で重要な情報を正確に聞き取る必要がある人,音をキャッチできればその目的を達成する人,またワンマンバスの運転手のように左側からの音声が特に重要な人など様々である。しかし一般的には,音声言語情報を正しく,快適に得ることが補聴器の目標となると考えられるので,「正しく」と「快適」を念頭において作業を進めていくことになる。
 現在補聴器のフィッティングに関して,普遍的に最上とされる方法は確立されていない。Car-hart1)が述べているように,補聴器の選択法は個個の補聴器の将来における日常生活での有効性を予測するものでなければならないが,現在はこのことを最も効率的に実現する力法を研究中の段階であり,この点に関しては多くの記述がある2〜6)。このような観点から,われわれも補聴器のフィッティングや評価に関し種々の試みを行い,日常の補聴器外来で応用しているが,この中には将来の補聴器のための研究的側面を持ったものもある。また補聴器外来も大学病院などと第一線の開業の先生方とは設備,規模などの点で相違があると考えられるので,本稿ではまず第1段階として厳密な方法や研究中の方法,ならびに理論などは省略しておおざっぱに述べ,とりあえず初めての方がフィッティソグに取り組んで頂けるようにし,より厳密な記載は第2段階,解説,注などとしてその後ろに記載することにした。したがって,これから補聴器に取り組もうとされている先生方は,まず<第1段階>の部分を読んで実際にフィッティングして頂きたい。

補聴器使用上の問題点

著者: 友松英男

ページ範囲:P.349 - P.353

 はじめに
 難聴はコミュニケーション障害の一つであり,難聴者自身にとっては大きなハンディキャップである。このハンディキャップを克服あるいは軽減する一方法として補聴器装用がある。補聴器の原理はいたって簡単である。基本構造は①音声信号を電気信号に変換するマイクロホン,②電気信号を増幅調整する電気増幅器,③電気信号を音に変換するイヤホンから構成されている。補聴器内部の信号処理はアナログ型からアナログ・デジタルの混合型,最近では純デジタル補聴器も開発,製品化された。しかしながら人間の高度な聴覚の代役には現在いまだつとまっていない。
 補聴器のフィッティング原理も簡単である。原理は言語周波数帯域を補聴器で増幅し,難聴者の残存聴野に入れようとするものである。しかし,実際のフィッテングは非常に困難でかつ繁雑である。なぜなら難聴者の聴覚・聴能に関していまだ未知の部分が多く,また装用環境,心理的要因が深く関与しているからである。

目でみる耳鼻咽喉科

口腔咽頭内に浸潤を認めた白血病症例

著者: 西山耕一郎 ,   設楽哲也

ページ範囲:P.320 - P.321

 白血病は,口腔咽頭部の出血,潰瘍等の症状を呈しやすい全身性の悪性腫瘍である。化学療法の進歩により白血病患者の生存期間が延長し,それにともない腫瘤形成性白血病を含めた,髄外性再発の報告が散見されるようになった。

原著

耳鼻咽喉科外来患者のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染について—ある乳児院における連続発症例を含めた検討

著者: 小川浩司 ,   橋口一弘 ,   山下亮子 ,   中村ちなみ ,   吾妻猛 ,   福田沢子 ,   鈴木孝美

ページ範囲:P.355 - P.359

 はじめに
 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin-resistant Staphylococcus;以下MRSAと省略)はわが国では1980年代はじめより増えはじめ,現在も増加傾向にあるといわれている。この菌が注目されるのは,ペニシリンばかりではなく,多剤に対し耐性を示し,高齢者などの免疫能が低下している患者(compromised host)などでは,MRSAの感染によって死に至る場合があること,そしてこの菌が多くの場合院内感染の関与,とくに医療従事者の手指を介して伝搬されることが指摘されているからである1,2)。したがって医事訴訟をはじめとする社会的な問題に発展する可能性すらあるからである。
 一般的には入院での感染が多く外来患者では少ないとされているが,われわれは最近一乳児院(児童福祉施設)で多発したMRSAによる耳感染症を経験した。おそらくこども達を世話する保母(父)を介して伝搬したのではないかと考え,保母(父)たちの鼻前庭より検体を摂って調べ,MRSA保有率がきわめて高いことなどの興味深い知見を得たのでこれを報告し,耳鼻咽喉科外来での本菌の検出状況や治療上の問題について考えてみたい。

稀な頭頸部結核症の2例—乳児症例と口腔癌治療後発症例

著者: 立石晃 ,   野代忠宏 ,   山田長敬 ,   福山宏 ,   梶原康巨 ,   斉藤猛彦

ページ範囲:P.361 - P.365

 緒言
 結核患者の発生は戦後,予防接種の普及ならびに国民の食生活,衛生管理の向上により急激に減少し現在の患者数は約24万人と30年前に比べ約7分の1となっている。しかし結核症は今日でも年間5万3千人に罹患し3千人以上が死亡するという最大の感染症であることに変わりはない。また近年では悪性腫瘍の治療中または治療後に結核症を併発する症例も報告され,また新たな問題となっている。今回私達は初発が生後10ヵ月という乳児と頬粘膜癌手術後2年3ヵ月後に発症した頭頸部にのみ限局した結核症の2例に遭遇したのでその概要を報告する。

See-saw nystagmusの1症例

著者: 新井基洋 ,   徳増厚二 ,   藤野明人 ,   吉尾知 ,   長谷川一子 ,   石井豊太 ,   井口芳明 ,   北原行雄 ,   設楽哲也

ページ範囲:P.367 - P.374

 緒言
 See-saw nystagmusとはあたかもシーソー様に両眼球が互に逆方向の垂直運動を繰り返す異常眼球運動であり,回旋要素を含む。その成因病巣部位については充分解明されてはいない。われわれは,頭部外傷の16年後にsec-saw nystagmusを伴う鼻腔内脳瘤症例を報告し,眼球運動の成因についての若干の知見を加えた。

診断困難であった鼻性眼窩内骨膜下嚢胞の1症例

著者: 水谷陽江 ,   伊藤光子 ,   金子行子 ,   石井哲夫

ページ範囲:P.375 - P.378

 はじめに
 副鼻腔と眼窩は隣接臓器であるために,副鼻腔疾患により種々の眼症状をきたすことが多く,眼球突出,視力障害などはしばしば経験する。
 今回われわれは前頭洞炎,篩骨洞炎を原因とする眼窩内骨膜下嚢胞に対してCT scanにて診断困難であったため,MRIを施行し診断に有用であった症例を経験したので報告する。

鼻腔底に発生した血管平滑筋腫の1例

著者: 渡邉昭仁 ,   大島収 ,   川堀眞一 ,   松井英夫

ページ範囲:P.383 - P.387

 はじめに
 耳鼻咽喉科領域において扱う鼻腔腫瘍は副鼻腔腫瘍に比べて病理組織が多彩であるといわれている。そのなかで良性腫瘍は乳頭腫,血管腫の占める割合が多く認められ平滑筋腫の報告は比較的稀である。今回われわれは左鼻腔底に発生した血管平滑筋腫症例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する。

鏡下咡語

老人の蓑

著者: 清水哲夫

ページ範囲:P.380 - P.381

 老人の蓑
 昨年の暮,体調を崩し歳が歳だけにまさかと思い,正月休みの明けるのを待って検査入院し,肥満を指摘された。初めて入院してみたが,まことに退屈なもので随筆を書き始めた。窓越しに降る雪を見ていると不思議に心が鎮まり,過ぎ去った歳月が想い出される。
 原爆,月への第一歩,ソ連邦の崩壊,等々予想外の劇的な事が次々と起こり,有史以来何千年という時の流れの中で,時間を濃縮したような時代に偶然にも生まれ合わせた。今後何が起きるのか予測できないが,少しでも生きながらえ時勢の変遷を見たいと思う。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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