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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科64巻6号

1992年06月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

中咽頭に下垂した巨大な上顎洞性後鼻孔ポリープ

著者: 岡田博文 ,   宮田啓史 ,   今井準 ,   森淳子

ページ範囲:P.396 - P.397

 鼻腔にみられる鼻茸のうち,上顎洞より発生し後鼻孔に至り,後方に下垂するものは上顎洞性後鼻孔ポリープと呼ばれており,摘出手技の困難さなどから,その治療法には先達の工夫が凝らされている。この疾患は,日常診療においてもしばしば経験されるが,中咽頭に達し,口腔内より視診し得るほど巨大なものは稀である。

原著

抗T3自己抗体を認めた慢性甲状腺炎を合併したシェーグレン症候群の1例

著者: 石山哲也 ,   謝孝佳 ,   勝野哲 ,   久米田茂喜 ,   牧内正夫 ,   田中喜一郎

ページ範囲:P.399 - P.403

 はじめに
 自己免疫疾患と考えられるSjogren症候群(以下,SjS)は,反復性耳下腺炎,乾燥性角結膜炎など多彩な症状を呈するが,しばしば甲状腺疾患を合併することがある。今回,抗triiodothyronine(T3)自己抗体を認めた慢性甲状腺炎を合併した,SjSを経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

頸部放線菌症の2症例

著者: 西山耕一郎 ,   高橋廣臣 ,   八尾和雄 ,   鎌田利彦 ,   井口芳明 ,   設楽哲也

ページ範囲:P.405 - P.410

 はじめに
 抗生物質のない時代には,放線菌症は皮膚に腫脹,硬結,瘻孔を形成し,極めて治療がむずかしく,慢性に経過する難治性の疾患であった。しかしペニシリンをはじめ種々の抗生物質の出現で,症例数は減少し,また定型的な症例も少なくなってきている。われわれは,2例の頸部放線菌症を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

頭頸部手術におけるフィブリン糊の応用

著者: 高橋光明 ,   上戸敏彦 ,   長野悦治 ,   荻野武 ,   本間裕 ,   吉田真子 ,   東松琢郎 ,   今田正信

ページ範囲:P.411 - P.414

 はじめに
 近年,ヒト濃縮フィブリン糊が商品化され耳鼻咽喉科領域では耳科手術1〜9),鼻出血や鼻内手術1,8,10),ガマ腫11),口蓋扁桃摘出術12)などへの応用が増えつつある。このうち特に耳小骨など骨組織からなる中耳の手術でのフィブリン糊の有用性が高く,数多くの報告がなされている1〜9)。しかし,頭頸部領域でのフィブリン糊の使用経験の報告はそれほど多くはない7)
 頭頸部手術の問題の1つに顎顔面や頭蓋底部の露出骨の処理の問題がある。上顎腫瘍摘出後の露出骨創面の治癒遷延や腐骨,また,頭蓋底手術に伴う髄液漏などが厄介な術後合併症としてしばしば問題になる。われわれは上記の頭頸部手術の骨部術創にフィブリン糊を応用し良好な結果を得たのでその有用性について報告する。

顔面神経麻痺を合併した小児の結核性中耳炎症例

著者: 兵頭政光 ,   西原信成 ,   中村光士郎 ,   柳原尚明

ページ範囲:P.415 - P.419

 はじめに
 近年の予防医学ならびに化学療法の進歩により結核性疾患に遭遇することは稀となったが,今なお臨床医にとっては重要な疾患である。しかし本疾患は稀であるがゆえにしばしば見過ごされたり,あるいは他の疾患と誤まって治療を受けていることも少なくない。
 今回,われわれは他院にて長期間にわたり中耳炎の加療を受けていたにもかかわらず,顔面神経麻痺を合併しその後に結核性中耳炎と判明した小児の1症例を経験したので,その概要を報告するとともに本症の診断および治療に関し若干の文献的考察を加える。

副咽頭間隙に発生した神経節細胞腫の1症例

著者: 吉田友英 ,   小田恂 ,   長舩宏隆 ,   内藤丈士 ,   野村俊之 ,   蛭田啓之 ,   佐藤良子

ページ範囲:P.421 - P.424

 はじめに
 副咽頭間隙は局所解剖学的に複雑な場所であり,重要な血管,神経を含んでいる。副咽頭間隙に発生する腫瘍の多くは良性腫瘍であり,神経鞘腫と多形腺腫が大部分を占めている。神経節細胞腫は,一般に腹部交感神経,縦隔,副腎髄質に発生しやすいといわれており,副咽頭間隙に発生することは稀である。今回,私たちは,副咽頭間隙に発生した神経節細胞腫の1症例を経験したので文献的考察を加えて報告する。

鼻内内視鏡を用いた眼窩内壁骨折の治療

著者: 渡邉昭仁 ,   篠原宏 ,   野平久仁彦 ,   坂村律生

ページ範囲:P.425 - P.430

 はじめに
 眼窩吹き抜け骨折は下壁骨折が多く,内壁骨折は少ないといわれてきた。しかし,CT検査が多くの施設にてルーチンに行われるようになった今日では,眼窩内壁骨折も容易に見つかるようになり珍しいものではなくなってきた。
 これら内壁骨折の治療は内眼角切開,頭皮冠状切開を用いたアプローチが行われることが多い。われわれは鼻内内視鏡を用いたアプローチを行い整復術を行っている。本方法は手術侵襲も少なく,眼窩内壁骨折治療には有用な方法と考えられたので報告する。

亜急性甲状腺炎で発見された異所性甲状腺の1例

著者: 片桐聡 ,   最上朗 ,   森岡稔勝

ページ範囲:P.431 - P.433

 はじめに
 異所性甲状腺は発生学的異常により生じるもので,その多くは正常甲状腺と同様に機能し無症状に経過するとされている。したがって,何らかの原因による腫大あるいは機能低下などの症状が発生したときや偶然の機会に発見されるに過ぎない。今回われわれは,亜急性甲状腺炎と推察される炎症により発見された異所性甲状腺の1例を経験した。異所性甲状腺の亜急性甲状腺炎は過去に報告がなく,若干の文献的考察を加え報告する。

CO2レーザー下甲介手術—その適応と有効性について

著者: 窪田市世 ,   鍋島みどり ,   森田恵 ,   石井哲夫

ページ範囲:P.435 - P.440

 緒言
 下甲介手術におけるLaser Surgeryの応用はまだ歴史が浅く,1977年Lenz1)のArレーザーによる報告から10年余といったところであるが,この間各施設でさまざまな改良が加えられ,かなり完成された形で現在臨床化されている。本邦ではCO2レーザーと接触型Nd:YAG (以下,YAGと略)レーザーが主流になっているが,CO2レーザーは粘膜表層のみを蒸散させる下甲介焼灼術であるのに対し,接触型YAGレーザーは下甲介切除術に近い組織深達性があり多少趣を異にする。すなわちCO2レーザー光はその性質上吸収率が高く,また反射散乱率も低く,色素選択性がないため2),鼻アレルギーなどの疾患において鼻粘膜表層のみを効率よく安全に焼灼するのに適しているといえる。今回われわれは難治性の鼻閉疾患としてハウスダスト(以下,HDと略)アレルギーおよび,血管運動性鼻炎,花粉症,肥厚性鼻炎症例に対してCO2レーザー下甲介手術を施行し,その適応と有効性について検討した。

小児男子の喉頭癌症例

著者: 石田恭子 ,   松田真一 ,   岸本勝 ,   武田直広 ,   小笠原寛 ,   菱川良夫

ページ範囲:P.441 - P.444

 はじめに
 喉頭癌は一般に高齢者に多くみられ,60歳以上の症例が70%近くを占め,50歳以上でみると約90%を占める。一方,20歳以下の若年者群はきわめて稀であり,日本TNM分類委員会頭頸部小委員会の資料(1979〜1987)1)によると,1979〜1987年の間に全国主要施設を訪れた喉頭癌患者(n=2,950)のうち20歳未満症例は1例を数えるのみである。今回私たちは小児(12歳)の男児に発症した喉頭癌を経験したので文献的考察を加えて報告する。

術後に生じた鼻性髄液漏の耳鼻科的アプローチ

著者: 小川晃弘 ,   西岡慶子 ,   明海国賢 ,   中川文夫 ,   三宅新太郎 ,   真鍋武聡 ,   浅野拓 ,   塩田知己

ページ範囲:P.445 - P.451

 緒言
 脳外科的あるいは耳鼻科的な手術後に起こる髄液漏は,ときに部位診断に手間取ったり,ひとたび髄液漏を生じるとしばしば難治性となり,治療に難渋することがある。
 今回われわれは,脳外科での海綿静脈洞動脈瘤,脳下垂体腫瘍の術後,および耳鼻科での副鼻腔炎手術の術後に生じた鼻性髄液漏に遭遇し,耳鼻科的アプローチにより治療を試みた。これらの症例を報告するとともに若干の考察を加えた。

頬部軟部好酸球肉芽腫症例

著者: 石川雅洋 ,   大西かよ子 ,   金丸眞一 ,   重松聡子 ,   田辺正博

ページ範囲:P.453 - P.457

 はじめに
 軟部好酸球肉芽腫は,木村氏病1)ともいわれている。原因不明の比較的稀な疾患で,全身の軟部組織,特に耳下腺部,顎下腺部,頸部,肘部などに単発性ないしは多発性に発生する。無痛性の軟部組織腫瘤あるいはリンパ節の腫脹を主訴として,血中の好酸球およびIgEの増多と,特異な病理組織像によって診断される。しかし初診時耳下腺腫脹を主訴とする場合が多く,耳下腺腫瘍との鑑別は必ずしも容易ではない。今回,われわれは耳前部,頬部から耳下部にかけて発生した巨大な軟部好酸球肉芽腫症例を経験し若干の知見を得たので報告する。

医療ガイドライン

パーソナルコンピュータを用いた入院患者データベースシステム

著者: 森園徹志 ,   八木聰明 ,   山口潤 ,   青木秀治 ,   山野辺滋晴

ページ範囲:P.458 - P.462

 はじめに
 過去の入院患者の病歴を検索する作業は,臨床研究を行う際には必須であり,日常の診療においてもたびたび必要な作業である。病名,治療内容などさまざまな面からの病歴の検索が必要になるが,単純で時間のかかる集計作業をそのつど台帳を繰って行っているのが大方の現状であろう,一方,ここ数年のパーソナルコンピュータの発達は著しく,何年か以前には大型コンピュータを必要としたような作業のうちかなりのものは,パーソナルコンピュータで十分行えるようになってきている,,データの集計に関しても,手軽に使えるデータベースソフトが市販されており,容易にデータの入力,集計,検索などができるようになり,われわれの日常診療でもデータ整理の強力な道具となっている。ところがこのデータベースソフトを入院患者のデータ登録に応用しようとすると幾つかの点で工夫が必要になる。すなわち,①一症例につき複数の疾患,治療を入力可能にし,しかもメモリの使用効率を下げないようにしようとすると処理が複雑になる(単純に処理しようとすると情報の少ない症例のデータには空白の欄ばかりできることになる),②病名を統一したかたちで入力しておかないとうまく検索できない,③その半面コード表をいちいち調べるのは入力に手間と時間がかかりすぎる,④データベースソフトの使用に馴れていないと誤操作により以前に入力したデータを破壊するおそれがある,⑤コンピュータを使うこと自体に抵抗感がある,などである。
 これらの問題点を解決してデータベースシステムを作った。すなわち,①④⑤に対してはプログラムを作成し,データベースソフトの操作を知らなくても,画面の指示に従うことにより入力や検索が容易に出来るようにし,②に対しては後述するICD−9を基に当科で作成したコード表に従って入力するようにした。さらに③に対する解決策として病名コードそれぞれに対応して憶えやすい略号を設定して,主な疾患についてはコード表を見なくても略号を人力することにより,それに相当する病名コードを自動的に検索するように工夫した。

鏡下咡語

眼振の魅力と不思議

著者: 徳増厚二

ページ範囲:P.464 - P.465

 眼球の律動的な,持続する往復運動である眼振は,生体の神秘を伺わせる。温度刺激眼振の記載をはじめとする一連の研究でノーベル賞を獲得したR.Barany以後,温度限振や,回転後眼振で,生体の平衡機能を調べる時代がながく続いたが,それを,故福田精先生は,バラニーの呪縛といわれた。眼振は,1方向へ動く風景を眺める時の視運動性限振,頭部を回転した時の回転眼振が,本来の姿であり,迷路の半規管刺激による回転眼振も,動く対象を見るために働いているというのである。複雑な神経機構が完成された,われわれの体で,どこかに異常が起こると,奇妙な現象が観察される。病的な自発眼振,頭位眼振がその部類に入る。多くの奇妙な病的眼振が報告され,その発現機序についても説明がされているものがあるが,説明出来ないものも少なくない。
 自発眼振は,正面遠方視で見られる眼振であり,固視させない状態で出現する。フレンツェル眼鏡をかける,暗所開眼・閉眼・遮眼でENGで記録,赤外線カメラの利用などで,観察される。前庭性眼振の視覚あるいは固視抑制を除外するためである。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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