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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科64巻7号

1992年07月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

頬部有茎皮弁による口腔底小欠損部再建の新しい試み

著者: 井上庸夫 ,   斉藤裕夫 ,   田中康夫

ページ範囲:P.474 - P.475

 口腔底悪性腫瘍の摘出手術による欠損の再建には,前額有茎皮弁,側頸部島状皮弁,頸部有茎皮弁および遊離前腕皮弁などが用いられている。今回,私どもは腫瘍径約2.5×2.0cmの右側下顎歯肉に近い口腔底癌の摘出欠損部を右頬部有茎皮弁で再建し,構音および嚥下に支障なくおおむね良好な結果を得た。
 症例:72歳,男性。

原著

鼻・副鼻腔癌の前頭蓋底手術

著者: 西川邦男 ,   西岡信二 ,   青地克也 ,   小池聰之 ,   行木英生 ,   万代光一

ページ範囲:P.478 - P.487

 はじめに
 鼻・副鼻腔癌が頭蓋底に浸潤した場合,従来の拡大上顎全摘のような外頭蓋底からのアプローチのみでは,癌の一塊切除は不可能である。われわれは1983年より頭蓋底に浸潤した鼻・副鼻腔癌に対して,開頭操作を併用したCombined approachによる前・中頭蓋底手術を12症例に経験している(表1)。
 今回は,前頭蓋底手術を施行した7症例1,2)のうち,最近の2症例について,手術手技を中心に,再建方法および予後について検討を加えたので報告する。

外傷性顔面神経麻痺に対する顔面神経減荷術

著者: 出井教雄 ,   新川敦 ,   三宅浩郷 ,   坂井真

ページ範囲:P.489 - P.493

 はじめに
 近年,交通事故の増加に伴い,外傷性顔面神経麻痺の患者は増加している。これらの外傷性顔面神経麻痺の治療としては,保存的治療と手術療法とがある。手術療法としては,顔面神経減荷術(以下,減荷術と略)を行うことが多いが,その適応や施行時期については議論のあるところである。私達は最近11年間に42例の外傷性顔面神経麻痺を経験し,このうち27例に対し減荷術を施行した。今回この27例を検討し,若干の知見が得られたので報告する。

眼窩内壁欠損例の副鼻腔手術

著者: 善浪弘善 ,   飯沼壽孝 ,   広田佳治

ページ範囲:P.495 - P.500

 はじめに
 篩骨蜂巣開放に際して眼窩内壁(主として篩骨眼窩板)付近の郭清は鼻内手術と上顎洞根本手術に共通して常時行われている。眼窩内壁が境界壁として重要であることは耳鼻咽喉科医には周知の事実である。これが欠損している症例における篩骨開放術では,殊にそれが術前に予想されていない場合には,眼球運動障害や視力障害などの副損傷をきたす可能性があるのみならず,手術中のオリエンテーションが障害される。また,眼窩内壁骨折は,その多くが経過良好であり,本人の自覚もなく経過することが多いので,副鼻腔手術の術前に眼窩外傷に関する既往が不明なことが少なくない。われわれはそのような4症例を経験したので報告する。

前頭蓋底部に達する先天性鼻瘻孔の1症例

著者: 片橋立秋 ,   花沢豊行 ,   大谷地直樹 ,   日野剛 ,   今野昭義

ページ範囲:P.501 - P.505

 はじめに
 頭頸部領域における先天奇形の報告は比較的多いが,外鼻の先天奇形の発現頻度はほかの頭頸部領域における先天奇形の報告に比べると稀であるとされている。われわれは最近,鼻背部に瘻孔を有し篩骨前部より前頭蓋底部に達する先天性鼻瘻孔の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。

扁桃結石の1症例

著者: 西浦勇夫 ,   浜田義臣 ,   鈴木重剛

ページ範囲:P.507 - P.510

 はじめに
 日常の耳鼻咽喉科診療では扁桃結石症例を経験することはほとんどないと思われる。本邦の文献では20例前後の報告例をみるにすぎない。扁桃周囲炎を合併して受診した扁桃結石症例に遭遇したので若干の文献的考察を加えて報告する。

内頸動脈内散弾異物症例

著者: 中尾善亮 ,   小林一夫 ,   河野輝昭

ページ範囲:P.511 - P.514

 はじめに
 本邦での銃創の症例は欧米に比べるとはるかにその数は少ない。最近われわれは,狩猟中に散弾銃にて誤射され,全身に被弾した症例の,第一頸椎前部の留弾を口腔内より摘出操作中に,動脈壁内に留っていたと思われた散弾が脳血管内へ迷入した症例を経験したので報告する。

頭位性めまいで発症した頭蓋内副神経鞘腫の1例

著者: 伊藤靖郎 ,   坂田英治

ページ範囲:P.515 - P.519

 はじめに
 頭蓋内原発性腫瘍の約9%は小脳橋角部腫瘍が占め,その多くは第Ⅷ脳神経鞘腫であることは広く知られている。一方,第Ⅷ,V脳神経以外の神経鞘腫に遭遇することは比較的稀なことである。今回,われわれはめまいで発症した巨大な頭蓋内副神経鞘腫を経験したので,その神経耳科学的所見を中心に報告する。

両側耳下腺に発生したWarthin腫瘍症例

著者: 横山晴樹 ,   野村康

ページ範囲:P.521 - P.525

 はじめに
 Warthin腫瘍は,多くは耳下腺に発生する良性の上皮性腫瘍で,1972年に発表されたWHOの唾液腺腫瘍の分類1)ではadenolymphomaの名称で分類されており,多形腺腫に比べ比較的稀とされ,そのほとんどは一側性,孤在性に発生するが,本腫瘍には他の唾液腺腫瘍とは異なり多発性に発生する性質がある。今回われわれは,両側性に耳下腺に発生したWarthin腫瘍の1症例を経験したので,症例の概要を報告するとともに若干の文献的考察を行った。

舌アミロイドーシスの1症例

著者: 浅井俊幸 ,   酒井昇 ,   古田康 ,   高須毅 ,   佐藤公輝 ,   後藤田裕之 ,   犬山征夫

ページ範囲:P.527 - P.531

 はじめに
 アミロイドーシスは線維構造を持つ特異な蛋白であるアミロイドが全身の各臓器に沈着することによって機能障害をきたす疾患で,その原因は不明である。
 耳鼻咽喉科領域におけるアミロイド沈着部位は喉頭が多く,舌病変は全身性原発性あるいは骨髄腫合併アミロイドーシスによる巨舌または陰嚢舌として報告される例が多い。
 今回,われわれは稀とされる限局性の舌アミロイドーシスの1症例を経験したので,文献的考察も加えて報告する。

早期に診断し得た悪性高熱症の1例

著者: 大橋校 ,   古川政樹 ,   澤木修二 ,   澤島政行

ページ範囲:P.537 - P.541

 はじめに
 悪性高熱症は全身麻酔で発症する恐るべき合併症として知られている。わが国でも年間20例以上は発症している1)といわれているが,以前には麻酔科医師の間に一般的な知識として知られておらず,治療の開始が遅れることなどの理由により致命率の高い疾患であった。最近はこの疾患に関する知識の普及により早期に発見されるようになり,早期治療とともに予防方法および治療薬としてのダントロレンナトリウムが開発され,予後が改善されるようになった。
 しかし遭遇する頻度が少ないため,未だ医師の間の知識が乏しく,そのため治療の開始の遅れや発症後の患者の管理において問題が起こる場合がある。耳鼻咽喉科で行われる手術においても,全身麻酔の合併症として発症する可能性があることを思えば,この疾患について正しく認識している必要がある。
 われわれは早期に発見し,しかも早期に治療を開始したため良好な経過をたどった悪性高熱症の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群の診断におけるダイナミックセファロメトリーの有用性について

著者: 岡本牧人 ,   藤田史朗

ページ範囲:P.543 - P.549

 緒言
 閉塞性睡眠時無呼吸症候群治療における口蓋垂軟口蓋咽頭形成術Uvulopalatopharyngoplasty (以下,UPPP)1)の有用性については懐疑的意見もあるが50%ないし60%の症例に改善が得られるというのが一般的考え方である2,3)。術者にとって現在の最大の関心はどうすれば術前に手術が有効かどうかを予測出来るかということであり,そのためのさまざまな研究が行われている4,5)
 本疾患の診断におけるセファロメトリーの有用性については種々の報告がある6〜8)が,セファロメトリーも他の検査と同様,術前の予測性を十分に達成しているとはいい難い3)。そこでわれわれはセファロメトリーにおける計測点を増やすとともに呼吸および体位変化時の計測(ダイナミックセファロメトリー)を施行することにより,本疾患の診断およびUPPPの有効性についての術前の予測性に有用なパラメータを見いだしたので報告する。

高分解能CTによる真珠腫性中耳炎の骨破壊に関する研究

著者: 菊地茂 ,   山岨達也 ,   肥後隆三郎 ,   仙波哲雄 ,   飯沼壽孝

ページ範囲:P.552 - P.558

 はじめに
 高分解能CTを用いて,真珠腫による耳小骨および中耳腔に面する側頭骨各部位の骨欠損の頻度を,単純性化膿性中耳炎との比較により検討した結果を報告する。

突発性難聴の性別,年齢別発症頻度の変遷

著者: 中島務 ,   柳田則之 ,   大野良之 ,   設楽哲也 ,   神崎仁

ページ範囲:P.559 - P.562

 はじめに
 厚生省特定疾患『急性高度難聴』研究班(神崎仁班長)は,『難病の疫学調査』研究班(柳川洋班長)と共同して1987年を対象として突発性難聴の全国疫学調査を行った。本論文ではこの全国疫学調査における発症数,発症年齢,性差についてまとめ,この結果を厚生省特定疾患『突発性難聴』研究班(三宅弘班長)が,1971年7月1日より1973年6月30日までの突発性難聴を対象として行った全国疫学調査結果1)と比較し時代的変遷を含めて検討を行った。

鏡下咡語

茂吉の葉書

著者: 鈴木篤郎

ページ範囲:P.534 - P.535

 私が短歌に凝っていた頃,一度だけ斉藤茂吉氏より葉書を頂いたことがある。私が短歌に凝っていたなどと書いても,「まさか」と誰も信じてくれそうもないが,実は昭和11年の夏頃から約1年ちかくかなり熱心にやったことがある。
 私は昭和9年の春,医学部入試合格の報をきくと同時に発病し,入院した。病気は重症の結核性腰椎カリエスで,腐骨の膿がももの付け根から流れ出ていた。その上,胸膜炎を併発し,一時は生死の境をさまよったが,運よく生き延びることができた。病床生活は昭和12年4月医学部に復学するまで,結局満3年続いたが,歌を始めたのはその終わりに近く,何とか健康を取り戻す自信がつきかけてからである。水瓶社という結社にはいって作歌の指導を受け,有名な歌人の歌集や歌論も読みあさった。しかし大学に戻って医学の勉強に興味が移るとともに,作歌の意欲は自然に消減し,結局ものにはならなかった。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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