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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科65巻10号

1993年10月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

呼吸困難を呈した頭蓋髄膜瘤の1症例

著者: 木場玲子 ,   川端五十鈴

ページ範囲:P.804 - P.805

 出生直後より鼻呼吸障害による呼吸困難を呈する疾患としては後鼻孔閉鎖が挙げられる。発生頻度としては稀であるが,髄膜瘤も鑑別疾患として念頭に入れておく必要がある。頭蓋髄膜瘤は後頭部に最も多いが,時に前頭部,眼窩内,鼻,鼻咽頭部(図1)にも見られる。
 新生児の呼吸困難の原因が,図1に示すAのルートより鼻咽腔に生じた髄膜瘤であった症例を経験したので供覧する。

原著

顔面骨折の臨床統計—スポーツ外傷と一般外傷の比較検討

著者: 飯沼壽孝 ,   広田佳治 ,   加瀬康弘 ,   田中利善 ,   沖田渉 ,   水野文恵

ページ範囲:P.807 - P.811

 はじめに
 顔面骨折は一般外傷(対人,対物,交通事故)とスポーツ外傷から発生し,その一部が耳鼻咽喉科を受診する。また耳鼻咽喉科を受診する顔面外傷の大部分は顔面骨折あるいはその疑いである。以下に検討する221症例において203症例は骨折症例であった。われわれは本誌においてスポーツ顔面外傷の臨床統計を発表してその特徴を述べたが1),従来の報告において,顔面外傷をスポーツ外傷とそれ以外の一般外傷に分類して詳細に比較検討を行った報告がないので,本稿ではこれらの2群について臨床統計上の異同を検討した。

喉頭癌細胞性免疫能におよぼす放射線照射量の影響

著者: 八尾和雄 ,   高橋廣臣 ,   岡本牧人 ,   稲木勝英

ページ範囲:P.813 - P.818

 はじめに
 頭頸部悪性腫瘍の発生や増殖,転移あるいは治療効果には宿主の細胞性免疫能が強く関与するといわれている1)。治療効果は,宿主の免疫能により残存腫瘍細胞を排除することができるまで各治療手段で腫瘍細胞数を減少させられることに依存するといえよう。しかし,いかなる治療手段も,やり過ぎは宿主の免疫能を低下させ2)逆効果となる。治療法による患者侵襲をできるだけ少なくして免疫能をいかに温存,増強させるかが頭頸部悪性腫瘍の治療に重要となる。われわれの治療は常にこの考え方を重視し,特に上顎洞癌の治療法は患者自身の既存の免疫能,ないし治療により賦活したと考えられる免疫能を利用し治療する方法である3〜5)
 今回は放射線治療を第1選択とし,照射野がほぼ一定であり,他の部位より症例数が多い喉頭癌症例で,放射線治療中の全身状態の監視検査の1つである細胞性免疫能に放射線治療がいかに影響を与えているかについて,二重染色法によるフローサイトメトリー法で,リンパ球の各サブセットおよびNK細胞活性の照射量による経時的変化を測定し検討したので報告する。

舌小唾液腺悪性腫瘍の2症例

著者: 長谷川誠 ,   茅野照雄 ,   北川昌伸 ,   海老原秀和 ,   中村弦 ,   石川紀彦 ,   堤内邦彦 ,   宮沢正純 ,   岡安勲

ページ範囲:P.819 - P.823

 はじめに
 舌の悪性腫瘍としては,扁平上皮癌が圧倒的に多く,その他の悪性腫瘍の発生は極めて少ない。発生部位の多くは舌側縁であり,舌の上縁や舌根部に発生することもあるが,その頻度は舌側縁に比べると少ない。初期より舌の疼痛が著しく,患者は比較的早期にそれを自覚することが多い。
 一方,舌に小唾液腺悪性腫瘍のできる頻度は非常に低く,その報告例もわずかである。そして,腫瘍による症状の発現が遅く,かなり大きくなってから初めて気づかれることが少なくない。1978年より1992年までの15年間に東京医科歯科大学耳鼻咽喉科において治療した舌の小唾液腺悪性腫瘍の症例は2例である。本論文においては,これらの症例について,その病理組織,治療,臨床経過について述べてみたい。

小児の耳下腺内神経鞘腫の1例

著者: 本橋宜子 ,   國弘幸伸 ,   行木英生

ページ範囲:P.824 - P.827

 はじめに
 今回われわれは小児に発生した耳下腺内神経鞘腫を1例経験した。まれな症例であると考えられるので若干の文献的考察を加えて報告する。

小児の顎下腺唾石症3例—成人例との比較

著者: 井野素子 ,   張久幸 ,   木下卓也 ,   加藤真子 ,   柳田亜由子 ,   井野千代徳

ページ範囲:P.829 - P.833

 はじめに
 顎下腺唾石症は,成人では外来診療においてしばしば遭遇する疾患であるが,10歳未満の小児における報告は比較的稀である。今回著者らは10歳未満の小児における顎下腺唾石症を3例経験したので,その概要を報告した。また当科における過去6年間の唾石症例について調べ,小児例と成人例における唾石症の位置,主訴,病悩期間の違いについて比較検討し,若干の文献的考察を行った。

特異な経過をとった聾型突発性難聴の1例

著者: 浅井俊幸 ,   繁英一 ,   佐藤信清 ,   酒井昇 ,   犬山征夫

ページ範囲:P.835 - P.838

 はじめに
 突発性難聴の聴力予後については多くの報告があるが,一般には前庭症状を伴うもの,聴力障害が高度なものほど予後が悪いと言われている。また聾になったものでは,治癒はほとんど望めないと考えられる。
 今回われわれは,突然のめまい発作で発症し16日間経過後,めまい発作がかなり落ち着いてから難聴が出現して聾になり,これが最終的には治癒に至った,稀な経過をとった聾型突発性難聴の1例を経験したので報告する。

舌癌に対するシスプラチン動注療法により顔面神経麻痺と難聴を生じた1症例

著者: 上村隆一郎 ,   吉田昭男 ,   佐藤彰芳 ,   森末まり

ページ範囲:P.843 - P.847

 はじめに
 シスプラチン(Cis-diammine-dichloroplatinum,cisplatin:CDDP)は,抗癌剤として近年頭頸部悪性腫瘍に優れた治療効果をあげている。用法として,しばしば浅側頭動脈動注療法が用いられるが,副作用として腎障害,骨髄抑制などとともに内耳障害をきたすことが知られている。また,動注療法のまれな合併症として顔面神経麻痺が報告されている1〜5)。今回われわれは,舌癌に対してシスプラチンの動注療法を施行し,その合併症として顔面神経麻痺と聴力障害をきたした症例を経験したので報告する。

慢性の経過をたどった海綿静脈洞炎の1例

著者: 大平泰行 ,   芦川英通 ,   山根仁 ,   指田純 ,   間中信也

ページ範囲:P.849 - P.854

 I.はじめに
 蝶形洞のmucoceleまたはpyoceleにより,周囲の骨が破壊され頭蓋内や眼窩内を圧迫し,眼球突出や視力低下,眼球運動障害などを呈した報告は数多く見受けられる。
 しかし,骨破壊を伴わず骨壁や静脈路を介し炎症が副鼻腔外に波及した報告は比較的稀である。

下鼻甲介に発生した若年性血管線維腫の1症例

著者: 立松正規 ,   中本節夫 ,   鵜飼幸太郎 ,   坂倉康夫 ,   鈴村恵理 ,   平田圭甫

ページ範囲:P.855 - P.858

 はじめに
 若年性血管線維腫は思春期の男性に好発する良性腫瘍で特異的に鼻咽腔に発生することが知られているが,その拡張的増殖と易出血性のため,悪性腫瘍に準じて取り扱われている。また,鼻咽腔以外に発生することは極めて稀とされている。今回われわれは,15歳女性で下鼻甲介に広基性の茎をもち,鼻腔内より上顎洞内へ進展した血管線維腫を経験し,術前の栄養動脈塞栓術と経上顎洞的手術療法を用いて腫瘍を完全に摘出しえたので若干の文献的考察を加え報告する。

外耳道中耳に生じた巨大角化性腫瘍の1例

著者: 多田雄一郎 ,   青柳優 ,   戸島均 ,   前山裕之 ,   小池吉郎 ,   安斎真一

ページ範囲:P.859 - P.863

 I.はじめに
 中耳の角化性病変には真珠腫性中耳炎,外耳道真珠腫,keratosis obturans,扁平上皮癌などがある。扁平上皮癌はしばしば頭蓋内進展をきたし不幸な転帰をとるが,真珠腫性中耳炎でも再発性,難治性の経過をとり,頭蓋内進展をきたした症例が報告されている1〜10)
 われわれは外耳道,中耳に発生し,良性の病理組織を呈しながらも再発を繰り返し,最終的に腫瘍が頭蓋内進展をきたし,剖検病理所見より悪性増殖性外毛根鞘性腫瘍(malignant proliferatingtrichilemmal tumor)と診断された1例を経験したので若干の考察を加えて報告する。

PTP食道異物症について

著者: 川端五十鈴 ,   田部浩生 ,   小山内龍一 ,   小鷹和美

ページ範囲:P.865 - P.870

 I.はじめに
 Press Through Pack包装薬剤(以下PTPと略す)による食道異物症は,疾患予防や治療の目的で服用した薬剤の包装材によって生じる極めて特異な異物症である。本症は薬剤がPTP包装されるようになった時期に一致してみられるようになり,本邦では1970年迎ら1)による2例の報告を嚆矢として,以後多くの症例が報告されている。そしてPTP誤嚥の予防法について,いくつかの案が提唱されているにもかかわらず,報告例はわずかであるが年々増加の傾向がみられる2〜4)。当科でも1987年から1993年までの約7年間に17例のPTP食道異物症例を経験したので,症例を供覧して,若干の考察を加えて報告する。

アレルギー性鼻炎に対する炭酸ガスレーザーによる鼻腔粘膜焼灼術

著者: 斉藤彰治 ,   新川敦 ,   橘田豊 ,   鈴木秀則 ,   飯田政弘

ページ範囲:P.871 - P.876

 はじめに
 アレルギー性鼻炎に対しては,薬物,減感作療法,手術などいろいろな治療法が行われている。なかでも非吸収性ステロイドの点鼻薬,抗アレルギー剤を中心とした薬物治療は,アレルギー性鼻炎の基本的な治療となっている。さらに,薬物治療にも抵抗する患者に対しては,以前より種々の手術療法や星状神経ブロックなどの治療が行われている。手術治療のうち炭酸ガスレーザーによる下鼻甲介手術は須藤ら1),福武ら2),友田ら3)が有効な治療法であると報告している。著者らは前者らとは異なり,1回の焼灼術にてどの程度の効果が得られるかを主目的として,保存的治療に抵抗する通年性アレルギー性鼻炎患者に対して,外来での炭酸ガスレーザーによる鼻腔粘膜焼灼術を施行した。今回は56症例において自覚症状の術前術後の変化を問診し,本治療法の有効性,手術効果について検討したので報告する。

鏡下咡語

国際会議での日本語講演

著者: 森満保

ページ範囲:P.840 - P.841

 今年6月20〜25日,イスタンブールで第15回世界耳鼻咽喉科頭頸部外科会議が開催された。開会冒頭のple-nary sessionで講演の機会を得たので,official languageとして認められた日本語で講演した。
 国際会議でのofficial languageが1つなら英語が使用され,2つなら英語と主催国語というのが通例である。世界的な会議となると仏語,独語,スペイン語,伊語とヨーロッパ圏の言葉が国の格順に採用される。

講座 頭頸部外科に必要な形成外科の基本手技・1

皮膚の切開・剥離の基本

著者: 上石弘

ページ範囲:P.879 - P.887

 はじめに
 その昔,切り口をみれば剣術の腕前がわかったという。昨今では同様のことがメスを持つ外科医についても言えることである。腕の良い外科医と称される人の切開創をみると,切開線の方向・長さ・皮膚との角度・深さなどが程よく条件を満たしていて実に美しいものである。さらに剥離という操作をみれば,もはや9分通りその外科医の技量がわかってしまうと言っても過言ではない。なぜならば,手術は切開と剥離操作の連続が大半を占めているからである。
 上手な剥離を見ると,出血が少なく剥離した創面が平坦で,剥離の範囲・深さ・方向など剥離の具備条件ともいうべき事項が全て満たされているからである。
 頭頸部外科領域では,頭部・顔面・頸部と解剖学的に異なった特徴をもった皮膚が隣接しており,身体他部の切開や剥離に比較して数段の難しさを秘めている。
 本稿では,頭頸部領域の切開はどのように行うか,剥離はどのようにしたら良いか筆者の考え方を述べてみたい。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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