icon fsr

文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科65巻11号

1993年10月発行

文献概要

特集 耳鼻咽喉科の機能検査マニュアル 1.聴覚検査

[6]他覚的検査—②聴性脳幹反応

著者: 青柳優1

所属機関: 1山形大学医科部耳鼻咽喉科学教室

ページ範囲:P.53 - P.63

文献購入ページに移動
 はじめに
 聴性脳幹反応(auditory brainstem response:ABR,あるいはbrainstem auditory evoked pc-tential:BAEP)は頭皮上より記録される蝸牛神経と脳幹部聴覚路由来の聴性誘発反応であり,刺激を与えてから10msec以内に出現する。聴性誘発反応とは音刺激によって起こる末梢受容器あるいは中枢神経系ニューロンの電気活動を記録したもので,ABRのほか,蝸電図・聴性中間反応・聴性定常反応・頭頂部緩反応・事象関連電位(P300,contingent negative variation)などがある。いずれも反応波形が背景脳波(生体雑音)と比べて微小な電位であり,1回の音刺激による記録では反応を同定することはできないので,何回も刺激音を与え,これに同期させていくつもの記録波形(脳波)を平均加算することにより背景雑音を除去して得られる反応である。蝸電図のように発生源と電極の距離が近ければ(near field記録)加算回数は少なくてすむが,ABRのように体表での記録では発生源との距離が大きいため(farfield記録),反応と雑音の電位の比(S/N比)が小さくなり,反応波形の同定には多くの加算回数が必要となる。
 ABRは1970年Jewett1)により初めて報告されたが,聴性誘発反応のなかでは頭頂部緩反応や聴性中間反応より歴史は新しい。しかし,反応の安定性が高いこと,睡眠時の反応閾値が純音聴力閾値に近いこと,および脳幹障害診断などで臨床的有用性が高いことなどから,現在では頭頂部より誘導される聴性誘発反応のなかでは一般臨床に広く応用されている唯一の検査法となっている。ABRの臨床応用は他覚的聴力検査のほか,神経学的検査法として脳幹機能障害の診断法やモニタリングとしても使用されている。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?