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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科65巻12号

1993年11月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

多房性Thyroglossal duct cystの1症例

著者: 西平茂樹 ,   山内博幸

ページ範囲:P.896 - P.897

 Thyroglossal duct cyst(TGDC)は,一般的に球形,卵円形,梨形の単一嚢胞である1,2)。舌骨をはさむdumb-bell typeのものも少数例報告されている3,4)が,今回,多房性のTGDCを経験したので報告する。

原著

頭頸部癌組織内のインテグリンα3,α5の局在に関する免疫組織学的検討

著者: 松浦一登 ,   鈴木守 ,   大井聖幸 ,   小池修治 ,   佐竹順一 ,   高坂知節

ページ範囲:P.899 - P.903

 緒言
 インテグリンは2つのサブユニット(α鎖,β鎖)からなる細胞膜貫通型の細胞表面蛋白質であり,またα/βの組み合わせにより細胞外基質との接着特異性を有するレセプター群である。個々のレセプターは,認識する相手,すなわちリガンドを通常複数個有する。このうちα3β1はラミニン,コラーゲン,フィプロネクチン,インベイシン,エピリグリンをリガンドとし,α5β1はフィプロネクチン,インベイシンをリガンドとしている1)
 これまでわれわれは細胞外基質であるラミニン,タイプIVコラーゲン,フィプロネクチンの局在を頭頸部癌組織において免疫組織学的手法を用いて観察し,癌胞巣周囲のラミニン陽性度の低いものにリンパ節転移が多いことを報告した2)。今回はラミニン,フィプロネクチンのレセプターであるインテグリンα3,α5の局在を免疫組織学的手法を用いて検討したので報告する。

めまいを主訴とした小脳橋角部病変の臨床統計

著者: 浅井美洋 ,   梅村和夫 ,   野末道彦 ,   武林悟 ,   安原秋夫 ,   関敦郎 ,   松井和夫

ページ範囲:P.905 - P.908

 はじめに
 一側性感音難聴や,進行性のふらつきを主訴とする症例の初期診療において聴神経腫瘍は重要な除外診断の対象である。しかし,めまいを主訴とする聴神経腫瘍症例は比較的まれであり1),とくに回転性めまい発作となると聴神経腫瘍例の主訴としては非典型的である2,3)。ところが小脳橋角部には髄膜腫などの聴神経腫瘍以外の病変も発生し,ときとして突発性回転性めまい発作で発症するものもある4)。そこで今回われわれはめまい・ふらつきを主訴とした小脳橋角部病変の臨床統計を検討したので,若干の考察を加えてここに報告する。

当科における聴神経腫瘍の統計的観察—画像診断の変遷と診断における耳鼻科医の役割

著者: 長場章 ,   五十嵐秀一 ,   関聡 ,   中野雄一

ページ範囲:P.910 - P.914

 はじめに
 聴神経腫瘍は難聴,耳鳴,めまいなど耳鼻咽喉科領域の症状で発症することが多く,これまで耳鼻科医が診断に大きな役割を果たしてきた。近年CTやMRIの発達によりその診断は容易となり,患者が脳外科や神経内科を受診しても,機能的な精査を行うことなくCT,MRIなどで内耳道腫瘍,小腫瘍が発見される例も多い。そのため神経耳科学的検査のもつ意義,耳鼻科医の聴神経腫瘍診断に対する寄与を再検討する必要がある。今回われわれは聴神経腫瘍について統計的観察を行い,画像診断法の変遷とそれに伴う耳鼻科医の聴神経腫瘍診断における役割について,若干の文献的考察を加えた。

鼓室形成術後鼓膜が化骨した3症例

著者: 大平泰行 ,   山根仁 ,   中本吉紀

ページ範囲:P.915 - P.919

 はじめに
 慢性中耳炎の治療として鼓室形成術が行われるようになり,今日ではその成績もきわめて向上してきた。しかし,ときには術後に十分な聴力改善が得られない症例も見受けられる。
 今回われわれは,耳手術後一時聴力が改善したにもかかわらず,その後鼓膜の化骨をきたし聴力が悪化した症例を3例経験した。

癌と鑑別が困難であった耳下腺膿瘍の3症例

著者: 峯田周幸 ,   菅沼美佳 ,   岩崎幸司 ,   野末道彦 ,   久保田賢三 ,   上村晃司 ,   安原秋夫

ページ範囲:P.920 - P.925

 はじめに
 成人の耳下部に局在する腫瘤をみた場合,想定する疾患はまず耳下腺腫瘍と思われる。そして,耳下腺造影・シアロCTといった検査を施行して腫瘤を確認し,漏洩像があれば悪性腫瘍を疑うことが一般的である。今回われわれは,術前に耳下腺悪性腫瘍と診断して手術を施行し,術中あるいは術後に耳下腺膿瘍と診断された3症例を経験したので考察を加え報告する。

副鼻腔骨腫3症例とその手術療法

著者: 兵頭政光 ,   湯本英二 ,   中村光士郎 ,   佐伯忠彦 ,   有友宏

ページ範囲:P.928 - P.932

 はじめに
 骨腫は鼻副鼻腔に発生する良性腫瘍のうち,最も多いとされている1)。しかし本症は初期には自覚症状に乏しく,成長が緩慢なことと相まって手術療法の対象となる症例は必ずしも多くない。われわれはこれまでに手術療法を行った副鼻腔骨腫症例3例を経験し,それぞれ異なるアプローチ法により摘出した。症例の概要を報告するとともに,本症に対する手術法を中心に考察を加える。

右反回神経麻痺を合併した胸腔内甲状腺腫の1例

著者: 河合敏 ,   中川千尋 ,   佐藤博文 ,   大石公直 ,   古川政樹 ,   佃守

ページ範囲:P.933 - P.936

 はじめに
 甲状腺腫瘤の全部ないし一部が胸骨切痕を越えて胸腔内に存在する甲状腺腫を,胸腔内甲状腺腫(intrathoracic goiter)あるいは縦隔内甲状腺腫(mediastinal goiter)または胸骨後甲状腺腫(rero-sternal goiter)と呼称している1)。その多くは随伴症状を認めないが,われわれは右反回神経麻痺を合併した胸腔内甲状腺腫の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。

乳突部表皮嚢胞の1症例

著者: 佐久間信行 ,   松本和彦 ,   飯沼壽孝

ページ範囲:P.937 - P.941

 はじめに
 乳突部に発生する嚢胞はまれなものであり,本邦では,1925年の下田1)の報告以来28症例の報告がみられるが,その大部分が病埋学的にコレステリン肉芽腫で,類上皮腫はまれである。今回われわれは類上皮腫による乳突部嚢胞の1症例を経験したので報告する。

顎下部アクチノマイコーシスの1例

著者: 増田敦彦 ,   宇野研吾 ,   須古和之 ,   石川哮

ページ範囲:P.943 - P.946

 はじめに
 放線菌症は,一般的にActinomices israeliiの感染によって起こる疾患であるが1),抗生剤が導入されて以来徐々に減少し,その典型例をみることは少なくなっている2)。最近われわれは顎下部に発症し,悪性腫瘍との鑑別を必要とした放線菌症の1例を経験したので,若干の考察を加えて報告する。

反回神経麻痺を伴ったHunt症候群の1例

著者: 河合敏 ,   中川千尋 ,   岩村節子 ,   佃守

ページ範囲:P.951 - P.956

 はじめに
 水痘帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus:VZV)の感染により,1)外耳道,耳介周辺の帯状疱疹,2)同側の末梢性顔面神経麻痺および3)同側の蝸牛症状,前庭症状を発現した病態がHunt症候群と呼ばれている。
 今回われわれは,反回神経麻痺を伴ったHunt症候群の1例を経験したので若干の文献的考察加えて報告する。

ガス産生を伴った頭頸部蜂窩織炎の1症例

著者: 武林悟 ,   木倉幹乃 ,   佐藤大三

ページ範囲:P.957 - P.961

 化学療法の発達した現在,頭頸部領域の重篤な感染症は稀なものとなってきている。またガス形成菌感染症は,いわゆる「ガス壊疽」として知られ急速な症状の進展をみるが,頭頸部領域に起こることは非常に稀である。
 今回われわれは,ガス産生を伴った頭頸部蜂窩織炎に対し,局所処置と抗生剤投与により治療し得た症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。

鏡下咡語

六神丸異考

著者: 本庶正一

ページ範囲:P.948 - P.950

 七夕さんの翌日である。昨日から聖マリアンナ医大の竹山教授の担当で耳鼻咽喉科臨床会の学会が横浜で開催されている。港に近いホテルで朝目がさめる。良く晴れて山下公園や海がきれい。学会場で一日中暗室に閉じこめられ,早口でまくしたてる話を聞かされているには勿体ない日和。一階の食堂で朝食をとっている途中でふと気が変わる。停年退職した身軽な立場,久し振りに元町に行き何か珍しいものでもあればと思う。
 10時頃ホテルを出る。横浜も元町の付近は余り人通りは多くない。両側の歩道を2,3人連れの御婦人や,見るからに親子とおぼしい2人連れが歩いている。しゃれた婦人服店と陶器屋の間にはさまって薬局がある。学会終了後に竹山教授のお世話でゴルフの会がある。いつものように外用消炎鎮痛剤サロメチールを用意しよう。店の中に入って見廻すと,「六神丸富山広貫堂」と書いた色ずつの大きなビラが目に入った。なつかしい!私ども富山生まれの感覚からすると,明治以来文明開化の先駆けを走り今や大阪市を追い越して東京都につぐ第2の大都市横浜市の,しかもオシャレの元町に越中の置き薬の広告があろうとは。思わず店の主人らしい人にたずねる。「良く売れますよ。とくに隣の中華街から買っていただいています」。さらにおどろく。中華街には本場中国の漢方生薬の店が軒を連ねているのに。

医療ガイドライン

頭痛診療における耳鼻科医の新しい役割

著者: 調賢哉 ,   調信一郎

ページ範囲:P.962 - P.966

 いとぐち
 耳鼻咽喉科外来に頭痛を主訴として訪れる患者は多い。片頭痛,緊張型頭痛,群発頭痛のような機能的頭痛もかなり多いが,耳鼻科本来の疾患である副鼻腔炎,アレルギー性鼻炎および中耳疾患などに基づく器質的頭痛もかなり多く,これらについては従来より述べられているところである1)
 今回,私どもは従来より原因が解明されなかった頭痛のうち,画像診断の進歩によって早期診断が可能となった蝶形骨洞病変および小児副鼻腔炎に基づく頭痛およびその治療について述べ,さらに最近,P.Bonaccorsiにより提唱され始めた“primary headache”に対する“neurovascular de-compressive septo-ethmoid-sphenectomy”について言及し,諸賢のご参考に供したい。

講座 頭頸部外科に必要な局所解剖・10

頸部のリンパ系

著者: 佐藤達夫 ,   坂本裕和

ページ範囲:P.967 - P.973

 これまで,このシリーズの総論として,筋,筋膜,動脈,静脈,神経について系統的に説明してきた。リンパ系がその最後となったのは,これらの系統との位置関係を配慮しながら解説するのが分かりやすいからである。近年,癌の外科療法が格段の進歩をとげているが,拡大根治手術にせよ,機能温存手術にせよ,その基盤として最も重要なのはリンパ系の局所解剖である。今回は頸部のリンパ系について,できるだけ実際の剖出所見を示説しながらあらましを述べることにしたい。なお参考までに,頭頸部悪性腫瘍取扱い規約のリンパ節分類の図(図1)1)をかかげておく。
 頸部ではリンパ系がよく発達している。リンパは主として下方に流れ,左右の静脈角に達する。下行するリンパ節鎖の分類は従来2つの視点から行われてきた。

頭頸部外科に必要な形成外科の基本手技・2

止血・縫合・抜糸

著者: 上石弘

ページ範囲:P.976 - P.983

 はじめに
 止血は術中の経過を順調に導き,予測する手術結果を獲得するうえで最も重要な手術操作である。一般的に止血といった場合には出血部に対して何らかの手技を用いて止血することを指すが,出血が予測される部位に対してこれを未然に防止するために行う操作も含まれてくる。ここでは頭頸部外科領域の主な止血法とそのポイントについて解説した。
 縫合は創の一期癒合をはかる手段である。したがって,創傷治癒過程とのかかわりが重要である。佳良な創傷治癒を目指した縫合とはどのようなものか,どのようにして行えばよいかについて述べてみたい。
 抜糸については,その基本手技について解説した。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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