icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科65巻13号

1993年12月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

顔面血管腫のサーモグラフィ

著者: 渡辺尚彦 ,   難波玄 ,   大気誠道 ,   久住武

ページ範囲:P.992 - P.993

 顎顔面領域における腫瘍性病変へのサーモグラフィの応用は決して広いものとはいえない。これには皮下組織以下の深部,たとえば副鼻腔の病変には有用でないという理由もある。今回,術前診断にサーモグラフィが有用であった顔面血管腫の3症例を経験したので紹介する。

原著

真珠腫性中耳炎症例における側頭骨CT検査の評価

著者: 小池宣之 ,   伊藤文英 ,   清水祐二 ,   亀井民雄

ページ範囲:P.995 - P.998

 はじめに
 側頭骨高分解能CTは骨および軟部組織の描出に優れ,近年,鼓室形成術の術前検査法の一つとしてほぼルチーンに行われている。しかし,術前CT所見と手術所見が一致しない場合もあり,高分解能CTの限界に関しても検討する必要がある。我々は,鼓室形成術初回手術を施行した真珠腫性中耳炎症例につき,この点の分析を行い,高分解能CTの診断限界および画像描出上の特徴に関して若干の知見を得たので報告する。なお今回,上鼓室型真珠腫,後上部型真珠腫等の病型に関する検討は行わなかった。

メニエール病発作中に温度刺激検査を行い得た1症例

著者: 池田元久 ,   渡辺勈

ページ範囲:P.999 - P.1004

 はじめに
 通常強度の自発眼振を認めるようなめまい発作中には患者の苦痛が強く頭位眼振検査もままならない場合もある。我々が今回報告する症例は,めまい発作中にも関わらず患者が温度刺激検査施行時に苦痛を訴えず,むしろ検査を望んだのでこのような自発眼振の著明な時期に検査を反復することが可能であった。このような症例に遭遇することは稀であると思われたので,臨床経過や検査結果について詳細に報告し,若干の考察を加える。

第4脳室類表皮嚢胞による顔面神経麻痺例

著者: 矢沢代四郎 ,   田中寛 ,   半田讓二

ページ範囲:P.1005 - P.1009

 はじめに
 顔面神経麻痺は他の神経麻痺と同様に核上性麻痺,核性麻痺,核下性麻痺に分類することができる。しかし,臨床的には核上性麻痺や核性麻痺のような中枢性顔面神経麻痺は全顔面神経麻痺の1〜2%程度であり1-4),稀にしか遭遇することはない。一方,一般的に遭遇する顔面神経麻痺の大部分は核下性の末梢性顔面神経麻痺であり,またその原因部位はほとんどが側頭骨内にある。したがって,臨床的には中枢性麻痺であるか末梢性麻痺であるか診断することには注意を傾けるが,一度末梢性麻痺であると診断してしまうとそれ以上の精査を止めて,治療に専念してしまう傾向がある。今回,末梢性顔面神経麻痺の陳旧例と診断し約3か月間内服治療を行っていたが,経過途中でのCT検査の結果,第4脳室の腫瘍による顔面神経麻痺であった症例を経験した。その臨床経過ならびに経過観察上での反省点などを含めて報告する。

気管原発と考えられた扁平上皮癌の1例

著者: 山田弘之 ,   岸岡睦子 ,   浜口幸吉 ,   鵜飼幸太郎 ,   坂倉康夫

ページ範囲:P.1011 - P.1016

 はじめに
 喉頭の腫瘍がわれわれ頭頸部外科医にとって割合よく遭遇する疾患である一方で,気管原発の腫瘍は喉頭に隣接する領域でありながら,経験する機会に恵まれない疾患である。しかし,気管でもその上方の頸部気管は隣接臓器に甲状腺や下咽頭・頸部食道を有し,手術の際に目にする部位であり,操作する機会は多いといえる。気管原発腫瘍は喉頭腫瘍と同じ上気道疾患であることから,われわれ頭頸部外科医が扱うべき疾患であり,たとえその頻度が少ないとはいえ知っておかねばならない疾患であるといえる。
 気管腫瘍,なかでも悪性腫瘍は,本邦では腺様嚢胞癌が多く,扁平上皮癌は少ないとされている1,2)。最近われわれは気管原発と考えられた扁平上皮癌を治療する経験を得たので,若干の文献的考察を加え報告する。

縦隔洞へ進展した深頸部膿瘍の1例

著者: 甲斐智朗 ,   大前由紀雄 ,   山口健吾 ,   北原哲 ,   井上鐵三 ,   渡辺真純

ページ範囲:P.1019 - P.1024

 はじめに
 深頸部膿瘍は,抗生物質の進歩に加えて,CT,MRI等の画像診断が普及して病巣の拡がりを的確に診断し迅速に対処することが可能となったため,死に至ることは比較的稀となった。しかし依然として楽観できない疾患のひとつであることに変わりはない。なかでも,縦隔洞へ進展した場合はしばしば致命的となるため,縦隔洞への進展の有無を的確に診断し迅速に対処することが要求される。
 今回著者らは,縦隔洞へ進展し膿瘍を形成したため開胸ドレナージを実施し救命し得た深頸部膿瘍の症例を経験したので,その臨床経過を報告するとともに,縦隔洞膿瘍に対する開胸ドレナージの有用性に関して文献的考察を加えて報告する。

錐体骨から発生した類上皮腫と両側嚢胞性腫瘍の2症例

著者: 大滝一 ,   高橋姿 ,   藤崎俊之 ,   佐藤斎 ,   中野雄一

ページ範囲:P.1025 - P.1029

 はじめに
 錐体骨から発生する腫瘍性病変はある程度の大きさになって内耳あるいは内耳道に進展すると,はじめて顔面神経麻痺,感音難聴,めまいといった症状を起こしてくるが,単純耳X線撮影,内耳道断層撮影では骨破壊像をとらえることがなかなか難しい。同様の症状を示す他疾患との鑑別が困難て,発見も遅れがちとなり,CT, MRIを行ってようやく診断がつくことが多い。そのため発症から診断,手術までの経過が長く,神経変性も高度となって,予後不良となりやすい。さらに部位的に手術操作が困難で全摘術が難しいことも多い。
 今回われわれは,難聴と顔面神経麻痺を伴った錐体骨原発と思われる類上皮腫と両側の嚢胞性腫瘍を経験したので,文献的考察を加え報告する。

めまい患者のQOL

著者: 浅井美洋 ,   梅村和夫 ,   野末道彦 ,   安原秋夫 ,   関敦郎 ,   永田勝太郎

ページ範囲:P.1031 - P.1034

 はじめに
 近年,社会の高齢化や医療の専門分化が進み,医療の量的側面に加え質的側面までもが問われるようになってきた。いわゆるQOL(Quality ofLife)という概念が登場し,「生命の質」1)に重きを置いた診療の必要性が叫ばれている。従来,めまいの治療効果判定は主として自覚症状や他覚検査所見を指標として行われてきたが,今後,このQOLという観点から評価することも検討されるべきである。そこで今回我々はめまい患者における治療前後のQOLについて自記式質問紙法による追跡調査を行い,めまい症状並びに日常生活支障度との相関を中心に統計学的に検討したのでここに報告する。

大学入学時健診における聴力検査成績と健診の意義について

著者: 室伏利久 ,   青木彰彦 ,   工藤裕弘

ページ範囲:P.1035 - P.1038

 はじめに
 東京大学保健管理センター耳鼻咽喉科では,入学予定者健康診断(以下,入学時健診と略す)の一環として,1988年から選別聴力検査(1次検診)を実施してきた1)。1次検診にて聴力障害の疑われる学生に対しては,さらに,精密検査を2次検診として施行し,有所見者に対しては,入学後も継続して診療にあたってきた。本論文では,1988年から1992年の5年間に実施された17,461名の新入生の入学時健診(耳科学領域)の結果について報告するとともに,入学時健診の意義および問題点について検討した。

壮年の両側埋没耳の治療経験

著者: 山田直人 ,   南條昭雄 ,   内沼栄樹 ,   塩谷信幸

ページ範囲:P.1039 - P.1042

 はじめに
 埋没耳は日本人には比較的多くみられる耳介の先天奇形のひとつで,一般的に就学前までには治療されるため成人にはほとんど見られない。
 今回著者らは61歳の男性の埋没耳を経験し,小児における症例との比較を行ったので,若干の文献的考察を含め報告する。

鏡下咡語

船旅

著者: 鳥居浩

ページ範囲:P.1044 - P.1045

 私はこの十年ほど船旅に凝っている。最近2,3年クルーズブームに沸いているが,古い港町門司に生まれ育った私にとって船旅への想いは戦前の子供のころにさかのぼる。大連航路の豪華船や関釜連絡船,初めて乗って迷子になった瀬戸内海航路の客船むらさき丸などなど。しかし客船の旅など夢のまたゆめと思っていたある日,先輩の故丸岡修三先生と話していて,夏のアラスカクルーズに誘われたのがきっかけであった。丸岡先輩はその乗船が火事になり救命ボートで漂流したという稀有の経験もお持ちの,知る人ぞ知る船旅の先達であることを後に知った。このときのクルーズでその面白みを知って以来,何とか暇を作り出して船旅をしている。マイアミの学会の時には,滝本教授たちと一緒にバハマクルーズをしたし,ドイツではバーゼルからケルンまで2泊3日のライン川下りクルーズやコブレンツからのモーゼル川下り,上海,基隆,香港など日本近海のクルーズや,時には思いきってセントローレンス川からニューイングランドクルーズに出かけたりしている。
 クルーズを楽しむにはいろいろな形があるが大きく分けて,目指す海域に乗りにいくこと,目指す船に乗ることであろう。それは夏のアラスカやバルト海,秋はニューイングランド,冬のカリブ海,春のエーゲ海など美しい海にさまざまな国からさまざまな船が集まる季節に予定をあわせることであり,ロイヤルバイキング・サン,ロッテルダム,サガフィヨルドなど特色のある名船の運航スケジュールに予定を合わせての努力(必要経費と暇を作るために)する事である。経費は1日あたり2〜3万から5万円,航海日数は3泊4日から1週間というところが限度であろうか。

医療ガイドライン

鼻副鼻腔疾患におけるダイナミックMRIの経験

著者: 沖田渉 ,   飯沼壽孝

ページ範囲:P.1047 - P.1050

 はじめに
 MRIは軟部組織の描出に優れ,頭頸部疾患においてもその有用性は明らかである。しかし通常のスピンエコー(SE)法ではガドリニウム(Gd)-DTPAの増強によっても病変部と正常組織の組織濃度分解能には限界がある。最近超高速撮影法(real time imaging)が導入され,Gd増強効果の経時的変化をみるダイナミックMRIが行われるようになり,すでに他臓器疾患において質的鑑別診断への有用性が指摘されている。今回各種鼻副鼻腔疾患においてMRI超高速撮影を行い,Gd増強効果の経時的変化を検討したのでその経験を述べる。

--------------------

耳鼻咽喉科・頭頸部外科 第65巻総目次

ページ範囲:P. - P.

人名索引

ページ範囲:P. - P.

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

95巻13号(2023年12月発行)

特集 めざせ! 一歩進んだ周術期管理

95巻12号(2023年11月発行)

特集 嚥下障害の手術を極める! プロに学ぶコツとトラブルシューティング〔特別付録Web動画〕

95巻11号(2023年10月発行)

特集 必見! エキスパートの頸部郭清術〔特別付録Web動画〕

95巻10号(2023年9月発行)

特集 達人にきく! 厄介なめまいへの対応法

95巻9号(2023年8月発行)

特集 小児の耳鼻咽喉・頭頸部手術—保護者への説明のコツから術中・術後の注意点まで〔特別付録Web動画〕

95巻8号(2023年7月発行)

特集 真菌症—知っておきたい診療のポイント

95巻7号(2023年6月発行)

特集 最新版 見てわかる! 喉頭・咽頭に対する経口手術〔特別付録Web動画〕

95巻6号(2023年5月発行)

特集 神経の扱い方をマスターする—術中の確実な温存と再建

95巻5号(2023年4月発行)

増刊号 豊富な処方例でポイント解説! 耳鼻咽喉科・頭頸部外科処方マニュアル

95巻4号(2023年4月発行)

特集 睡眠時無呼吸症候群の診療エッセンシャル

95巻3号(2023年3月発行)

特集 内視鏡所見カラーアトラス—見極めポイントはここだ!

95巻2号(2023年2月発行)

特集 アレルギー疾患を広く深く診る

95巻1号(2023年1月発行)

特集 どこまで読める? MRI典型所見アトラス

94巻13号(2022年12月発行)

特集 見逃すな!緊急手術症例—いつ・どのように手術適応を見極めるか

94巻12号(2022年11月発行)

特集 この1冊でわかる遺伝学的検査—基礎知識と臨床応用

94巻11号(2022年10月発行)

特集 ここが変わった! 頭頸部癌診療ガイドライン2022

94巻10号(2022年9月発行)

特集 真珠腫まるわかり! あなたの疑問にお答えします

94巻9号(2022年8月発行)

特集 帰しちゃいけない! 外来診療のピットフォール

94巻8号(2022年7月発行)

特集 ウイルス感染症に強くなる!—予防・診断・治療のポイント

94巻7号(2022年6月発行)

特集 この1冊ですべてがわかる 頭頸部がんの支持療法と緩和ケア

94巻6号(2022年5月発行)

特集 外来診療のテクニック—匠に学ぶプロのコツ

94巻5号(2022年4月発行)

増刊号 結果の読み方がよくわかる! 耳鼻咽喉科検査ガイド

94巻4号(2022年4月発行)

特集 CT典型所見アトラス—まずはここを診る!

94巻3号(2022年3月発行)

特集 中耳・側頭骨手術のスキルアップ—耳科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻2号(2022年2月発行)

特集 鼻副鼻腔・頭蓋底手術のスキルアップ—鼻科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻1号(2022年1月発行)

特集 新たに薬事承認・保険収載された薬剤・医療資材・治療法ガイド

icon up
あなたは医療従事者ですか?