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原著
突発的1kHz-dip型難聴で発症し完全治癒した聴神経腫瘍症例
著者: 鳥原康治12 春田厚3 林明俊3
所属機関: 1国民健康保険中部病院耳鼻咽喉科 2現:宮崎医科大学耳鼻咽喉科 3宮崎医科大学耳鼻咽喉科
ページ範囲:P.233 - P.236
文献購入ページに移動突発性難聴の症状で発症し,諸検査の結果,聴神経腫瘍と判明した症例報告1-4)が増えている。聴神経腫瘍の初期症状は,耳鳴,難聴あるいは平衡障害であり,いずれも耳鼻咽喉科臨床医を最初に受診することが多い症状である。画像診断法の進歩によって今では小腫瘍でも比較的容易に診断がつけられるようになったが,初期診断の手掛かりになる所見についてはいろいろな報告5-7)がある。また,突発性難聴としての発症は1.0cm以下の小腫瘍例に多くみられるとの報告8)もあるが,その聴力が完全治癒することは稀である。現実には内耳道内に限局した状態で発見される頻度は低く,臨床像についての報告は充分でないように思われる。そのためにともすればせっかく初期に訪れたにもかかわらず聴神経腫瘍症例を見逃してしまう可能性が少なくない。今回,われわれは突発性難聴として治療を開始し難聴は完全治癒したが,その特異な聴力像から聴神経腫瘍の存在を疑って諸検査を進め,最終的にはMRIにて内耳道内に限局する小腫瘍を確認し得た症例を経験したので報告する。
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