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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科65巻5号

1993年05月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

難治性口腔・咽頭潰瘍

著者: 稲木勝英

ページ範囲:P.342 - P.343

 日常臨床で遭遇する口腔・咽頭の潰瘍性病変のうち原因不明で治療抵抗性の疾患をいわゆる難治性潰瘍として扱っている。しかし,この疾患の定義もなく,また,疾患概念もつかめていないのが現状である。そこで,我々は,口腔・咽頭に生じた不定形の潰瘍性病変で,様々な検査でその原因をみいだすことができず,再発傾向を持ち,さらに適切な治療が行われないと1カ月以上も治癒しない病変を難治性潰瘍と定義し,ひとつの疾患と考えている。
 この疾患は30〜40歳の男性に多くみられ,肉眼所見上,潰瘍は周囲に発赤や腫脹を伴わない不定形で,しかも天疱瘡や類天疱瘡などの水疱症や再発性アフタ性口内炎よりも深めの潰瘍であり(図1〜4),比較的軽度の瘢痕を残して治癒し(図1右),また,治癒と病状の進行が共存する(図1,3)という特徴がある。主病変の部位は咽頭特に口蓋扁桃を中心とした部位に生じることが多く,また,病変の広がりからみると口蓋扁桃に病変が認められるものは,口蓋扁桃に限局するもの(図2),口蓋扁桃より主として口腔側へ広がるもの(図1),さらに主として咽頭側へ広がるもの(図3,4)がある。これらの部位と同時もしくは前後して口腔(特に舌)や喉頭蓋や下咽頭に多発(図3右,4右)するものもある。主病変の出現前後および随伴して再発性アフタ性口内炎を伴う症例が多く,さらに非常に高い確立で潰瘍およびアフタ病変が再発をする。

原著

内耳奇形に脈絡膜欠損症を合併し,混合性難聴を呈した小児の1例

著者: 吉本世一 ,   室伏利久 ,   加我君孝

ページ範囲:P.345 - P.349

 はじめに
 内耳奇形は近年の画像診断の技術の進歩により診断が容易になってきた1)。内耳奇形のタイプ,またそれに伴う臨床症状は症例ごとに様々であることも知られてきた2)。したがって,難聴,平衡機能の評価,さらにしばしば合併する他部位の先天性異常に対して,1例1例充分な検討をする必要があると考えられる。われわれは内耳奇形を伴う難聴に先天性脈絡膜欠損症を合併し,さらに成長してからの聴力検査にて混合性難聴であることが判明した小児の1例を経験したので報告する。

Sipple症候群の2症例

著者: 片橋立秋 ,   嶋田文之 ,   武宮三三 ,   小村健

ページ範囲:P.351 - P.356

 はじめに
 Sipple症候群は甲状腺髄様癌(以下MCT),副腎褐色細胞腫まれに上皮小体の腺腫あるいは過形成を合併する疾患で,多内分泌腺腫症(multipleendocrine neoplasia, MEN)のType IIaに分類される比較的稀な疾患である。また常染色体優性遺伝の遺伝形式をとり,家系内発症を多く認める。
 本邦では褐色細胞腫を多く取り扱う,内科,泌尿器科よりの報告が多い。しかし,本疾患は頸部腫瘤を初発症状とすることも少なからずあり,頭頸部領域疾患を取り扱うわれわれも見逃してはならない疾患の1つである。今回,われわれは本疾患2例を経験したので本邦報告例に若干の考察を加えて報告する。

有茎性に発育した巨大な下咽頭悪性リンパ腫の1例

著者: 川島宣義 ,   横溝道範 ,   宮崎総一郎 ,   草刈潤

ページ範囲:P.357 - P.361

 はじめに
 下咽頭原発の悪性リンパ腫は,全悪性リンパ腫の0.2%程度1)で日常の診療で遭遇することは稀な疾患である。
 今回われわれは有茎性に下咽頭輪状後部より発生し易可動性で時々発声を障害するといった特異な症状を示した巨大な悪性リンパ腫の1例を経験したので症例を呈示するとともに若干の考察を加えて報告する。

喉頭疾患における免疫組織化学的研究—サイトケラチンについて

著者: 李雅次 ,   平出文久 ,   吉田知之 ,   佐伯哲郎 ,   長谷川達哉 ,   舩坂宗太郎 ,   芹澤博美 ,   清水亨

ページ範囲:P.363 - P.367

 はじめに
 近年免疫組織化学的手法を用いることにより病変を構成する成分を調べることが可能となり,その本態を究明する上で大きな役割を果たしている。とりわけ腫瘍診断への免疫組織化学の応用は腫瘍細胞の起源を決定するために盛んに行われている1)
 粘膜上皮細胞の主な構成蛋白成分であるサイトケラチン(以下CKと略す)の局在を調べることによって診断の一助にしようとする研究が耳鼻咽喉科領域でも盛んに行われている2-4)。CKにはそれぞれ分子量の異なる19種類のサブクラスが知られており5,6),それらがどこに,どのような形で局在し,病的状態ではどのように変化するのかは興味のもたれる問題である7,8)

転移性喉頭腫瘍(腺癌)の1症例

著者: 波多野篤 ,   齋藤龍介 ,   宇野芳文 ,   金谷真 ,   大原利憲 ,   枝廣徹 ,   浜家一雄

ページ範囲:P.369 - P.372

 はじめに
 喉頭の悪性腫瘍は,大部分は原発性であり転移性のものは稀である。今回,直腸癌の手術後,肺転移をきたし,右肺中葉切除をうけた患者で経過観察中に喉頭に腫瘤を生じ,転移性喉頭癌と診断された1例を経験したので報告する。

診断が困難であった聴器痛の3症例—扁平上皮癌と腺癌

著者: 沖田渉 ,   松崎真樹 ,   田中利善 ,   善浪弘善 ,   山根雅昭 ,   飯沼壽孝 ,   市村恵一

ページ範囲:P.373 - P.376

 はじめに
 聴器の悪性腫瘍は稀であるばかりか,診断,治療に苦慮することが多く,一般にその予後は不良である。今回われわれは術前に確定的診断を得るのに苦慮した聴器癌を3例経験したので報告し,その診断について若干の考察を加える。

稀な頭頸部Nodular Hidradenomaの2症例

著者: 木村正 ,   戸倉新樹 ,   臼井麻美 ,   堀口大輔

ページ範囲:P.381 - P.384

 はじめに
 Nodular hidradenomaは中年ないしそれ以降の頭頸部に好発する比較的まれな良性腫瘍である。腫瘍細胞はepidermoid cellとclear cellにより構成されており,エックリン汗器官由来と考えられている。今回われわれはnodular hidradenomaの2症例を経験したので,若干の文献的考察とともに報告する。

口唇・口腔癌の集学的治療—過去17年間の臨床経験から

著者: 山田弘之 ,   山際幹和 ,   坂倉康夫 ,   野本由人 ,   豊田俊

ページ範囲:P.385 - P.390

 はじめに
 頭頸部癌の中で,口唇・口腔癌は喉頭癌と並んで頻度が高く,その領域が構音・咀嚼・嚥下に関与しているため,治療に際して常にquality of lifeが問題となる。また,その治療成績は期待どおりに向上しているとは言いがたく,発生頻度が高いだけに依然として頭頸部外科医を悩ましている疾患である。しかし一方では,近年の癌治療法の進歩は著しく,その動向によっては,今後治療成績の向上が期待できる疾患であると考える。
 今回,三重大学耳鼻咽喉科において過去17年間に経験した口唇・口腔癌症例を検討し,集学的治療の問題について考察した。

動眼神経麻痺を主症状とした後部副鼻腔嚢胞の1症例

著者: 笹森史朗 ,   渡邊敏明 ,   大和田健司 ,   三河茂喜 ,   村井和夫

ページ範囲:P.391 - P.394

 はじめに
 後部副鼻腔嚢胞は比較的稀な疾患であり,その主要な症状は眼症状と頭痛である1)。これらのうち最も頻度が高く著明な症状は眼症状であるが,その多くは視力障害で2),動眼大神経麻痺のみを呈する例の報告は極めて稀である。
 今回われわれは視力障害を伴わずに動眼神経麻痺で発症した後部副鼻腔嚢胞の1症例を経験したので,その概要を報告するとともに動眼神経麻痺の成因について考察を行った。

大阪大学における鼻アレルギーの現況(第24報)—アスピリン喘息と嗅覚障害

著者: 荻野敏 ,   伊藤敬子 ,   入船盛弘 ,   菊守寛

ページ範囲:P.395 - P.398

はじめに
 アスピリン喘息(aspirin-induced asthma, AIA)はアスピリン過敏症,喘息,鼻茸をtriasとする疾患である。本症については既に多くの報告があり,われわれも耳鼻咽喉科から見たAIAというものについていくつか報告1-4)している。
 AIAの症状としては,喘息,呼吸困難などの下気道症状,くしゃみ,水性鼻汁,鼻閉の鼻アレルギー症状に加え嗅覚脱出などの嗅覚障害を伴うことが多いことも知られている。従来からの報告でも,われわれの経験でも100%に近い症例で訴えている。このような重要な症状にもかかわらず,現在までAIAの嗅覚について詳細に検討した報告は見られない。
 以上のことから,今回AIAにおいて嗅覚検査を行ったところ,興味ある成績が認められたので報告する。

鏡下咡語

耳飾り館の誕生

著者: 川端五十鈴

ページ範囲:P.378 - P.379

 はじめに
 ヒトは昔から身体を美しく飾るため種々の装身具を身につけてきました。ヨーロッパやユーラシア大陸の旧石器時代の遺跡から装身具と想像される玉類,石片,骨片などが出土しているので装身具の歴史は遠い昔に始まります。我が国でも縄文時代早期の遺跡から装身具に相当する出土品が発掘されておりますので,私共の祖先も古くから装身具を愛用していたようです。
 聞くところによりますと,装身具というものは2種類に大別されると云われます。1つは今日のアクセサリーに属するもので,髪飾り,首飾り,指輪,腕輪などで,単に身体につけるものです。もう1つは入れ墨,御歯黒,抜歯,鼻輪など自分自身の肉体に手を加えて飾り立てるもので,その代表的なものが耳飾りでありましょう。

講座 頭頸部外科に必要な局所解剖・5

頸部の動脈(2)

著者: 佐藤達夫 ,   坂本裕和

ページ範囲:P.401 - P.407

 はじめに
 前号で検討した鎖骨下動脈はなるほど広い範囲にわたって頸部に分布しているが,下甲状腺動脈を別にして内臓との係りが薄い。頭頸部外科で大切なのはなんといっても頸動脈であろう。本号では頸動脈を検討し,この動脈に対する認識を深めておきたい。なお適宜,前号の挿図も参照していただきたい。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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