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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科65巻6号

1993年06月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

両側反回神経麻痺(両側声帯正中位固定)に対する前方開大術

著者: 古川浩三

ページ範囲:P.416 - P.417

 両側反回神経麻痺のなかで,両側の声帯が正中位にあり声門が開大しないものを一般的には両側声帯正中位固定と呼んでいる。両側声帯正中位固定に対する声門開大術には多くの方法が報告されている。ひとつの病態にいろいろな治療法があるということは,決定的な治療法がないということにもなる。
 この声門開大術を施行するにあたって一番の問題は,治療の対象となる症例があまり多くないため,手術を経験することが少なく手術法に慣れない,ということであろう。

原著

慢性副鼻腔炎の細菌学的検討

著者: 佐々木康 ,   中村光士郎 ,   兵頭政光 ,   湯本英二

ページ範囲:P.419 - P.425

 はじめに
 慢性副鼻腔炎の成因については,細菌感染がすべてではないが大きな要因として存在する。当科では,慢性副鼻腔炎患者に対する内視鏡下鼻内副鼻腔手術時に細菌検査を行ってきた。従来の報告では,検体を上顎洞粘膜や中鼻道分泌物としたものがほとんどであり1-3),節骨洞粘膜を検体とした報告は多くない4)。今回われわれは,内視鏡下手術時に部位を確認しつつ採取した節骨洞粘膜を主な検体として細菌学的検討を行った。また術後の経過観察時に感染を起こした例についても細菌検査を行っているのであわせて報告する。

スポーツ顔面外傷の臨床統計—最近5年間の経験

著者: 飯沼壽孝 ,   広田佳治 ,   善浪弘善 ,   吉岡克己 ,   松崎真樹

ページ範囲:P.427 - P.430

 はじめに
 顔面外傷全般に関する臨床統計の報告は数多いが,スポーツに限った報告は少ない。またここに言う顔面外傷はそのほとんどが骨折症例に関するもので,われわれの以下に報告する74症例において71症例が骨折である。顔面外傷のうち,スポーツ外傷が占める比率は,報告者の専門科によって異なるが,藤野1)の150症例では14%,椋代ら2)の52症例では38.5%,松永ら3)の68症例では21%,われわれの221症例では33.5%である。今回はスポーツ外傷に限っての臨床統計を発表して,その特徴を述べるが,顔面外傷全般との比較検討は稿を改めることにする。

下咽頭・頸部食道癌の臨床的検討—当科における過去10年間の治療経験

著者: 山田弘之 ,   宮原幸則 ,   服部雅彦 ,   山際幹和 ,   間島雄一 ,   鵜飼幸太郎 ,   坂倉康夫

ページ範囲:P.431 - P.436

 緒言
 下咽頭および頸部食道癌は頭頸部腫瘍の中で症例数は少ないもののその予後はとりわけ不良であり,頭頸部外科の各施設において常に課題となる疾患群である。近接する喉頭癌の治療成績が向上する中で,さらに手術手技が開発されているにも拘わらず,依然として予後を向上させられないのが現実である。その理由は既に諸家1-3)においても検討されてはいるが,今回われわれは三重大学耳鼻咽喉科において行われた下咽頭・頸部食道癌治療症例を検討し,治療成績の向上に何が欠けているのかを明瞭にするべく,若干の文献的考察を加え報告する。

ロック難聴と急性音響外傷の臨床的検討

著者: 山村幸江 ,   高山幹子 ,   石井哲夫

ページ範囲:P.437 - P.442

 はじめに
 1950年代後半に出現したロックンロール(ロック)は,電子楽器を用い,強いアフタービート,社会性のある歌詞,そして強大な音を特徴とする1)。1962年のビートルズの登場とともに世界中に飛躍的に広がるが,時を同じくするように,諸外国では1960年代後半より,強大な音響による急性難聴(ロック難聴)の発症が認められるようになった2,3)。わが国では1970年代後半より報告がみられ4〜9),1986年には全国的なアンケート調在をもとに120症例が報告されている10)。これらの音楽聴取による難聴は,立木の分類11)における,予期している強大音の短時間負荷による難聴に相当すると考えられ,爆発音などの予期しない突発的強大音による急性音響外傷とは臨床像や機序に異なる点があるとされる。今回,あるロックコンサートを聴取した後に発症した,ロック難聴の3症例を経験したので,その臨床経過を提示した。また,過去に当科を受診した他のロック難聴症例および急性音響外傷症例とをあわせて,臨床像を検討したので報告する。

第VIII脳神経障害を伴う混合性喉頭麻痺(X・XI・XII)で発症した小脳半球腫瘍の1例

著者: 高松一郎 ,   山下耕太郎 ,   澤島政行

ページ範囲:P.443 - P.446

 はじめに
 難聴,嗄声,誤嚥などの訴えや,それを裏づける所見は耳鼻咽喉科領域では決して珍しいものではない。しかし,それらの訴えや所見の組み合わせによっては診断に苦しむことがあり得る。
 今回われわれは,第VIII・X・XI・XII脳神経麻痺で発症し診断に苦慮した小脳半球腫瘍(髄芽腫)の1例を経験したので報告する。

眼窩内偽嚢胞を伴った篩骨ならびに上顎嚢胞の1症例

著者: 菊地茂 ,   山岨達也 ,   肥後隆三郎 ,   飯沼壽孝

ページ範囲:P.447 - P.451

 はじめに
 副鼻腔炎または副鼻腔膿嚢胞に伴う鼻性眼窩内合併症は,一般にその経過が急性であり,その眼症状は重篤となる。今回の報告例は症状が軽微でありながら,多発性副鼻腔嚢胞に眼窩内偽嚢胞を併発したものである。各々の嚢胞内容液の生化学分析およびMRIにおける緩和時間の測定を併せて行った。症例の報告とともに,本症例における各嚢胞の成因に関する考察を試みた。

耳下腺部悪性黒色腫の1例

著者: 小田一成 ,   鈴木衞 ,   大口泰助 ,   井藤久雄

ページ範囲:P.453 - P.458

 はじめに
 耳下腺部の腫瘍のうち悪性黒色腫の頻度は,0.2から0.4%と稀であり1),その多くは側頭部の皮膚からの転移であるといわれている2)。今回われわれは,耳下腺部に転移し,腎細胞癌を合併した原発部位不明の悪性黒色腫の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する。

MRIにおいて興味ある造影効果を示したHunt症候群の1症例

著者: 南野雅之 ,   柳田昌宏 ,   北尻雅則 ,   鶴原敬三 ,   牛呂公一 ,   山下敏夫 ,   熊澤忠躬 ,   加藤勤

ページ範囲:P.459 - P.465

 はじめに
 末梢性顔面神経麻痺の主たる病変部位については,これまで膝神経節1),第2膝部2),MeatalForamen (Fisch3)),などさまざまな議論がなされてきている。われわれは,造影MRIが顔面神経麻痺の病態,および病変部位を考察するうえで有用であると考え,これまで検討を重ねてきており4-6),造影効果からは,顔面神経の主病変はMeatal Foramen部付近にあると推測している。今回,造影MRIにおいて興味ある造影効果および手術所見を示したHunt症候群の1症例を経験したので,若干の文献的考察を加え,報告する。

基底細胞母斑症候群の2症例

著者: 東松琢郎 ,   今田正信 ,   吉田真子 ,   大坪誠治 ,   山崎清仁

ページ範囲:P.471 - P.475

 はじめに
 基底細胞母斑症候群は,母斑などの皮膚症状,脊椎や肋骨などの骨格異常,多発性顎嚢胞などを主症状とする遺伝性疾患であり,本邦においてはおもに皮膚科,口腔外科領域で報告されてきた。
 最近われわれは本症候群と考えられる母子の2症例を経験したので報告する。

耳前部外傷性動静脈瘻の1症例

著者: 沖田渉 ,   加瀬康弘 ,   山根雅昭 ,   飯沼壽孝

ページ範囲:P.477 - P.481

 緒言
 頭頸部は外傷を受けやすい部位であるが,複雑な構造,機能を有するためこれに起因する疾患もさまざまである。今回われわれは耳前部の外傷が原因による動静脈瘤(瘻)の症例を経験したので報告する。

舌癌手術後の頸動脈再建—シャントチューブの工夫

著者: 石山哲也 ,   勝野哲 ,   佐々木修 ,   根津公教 ,   菊川正人 ,   竹前紀樹 ,   小林澄雄 ,   恒元秀夫

ページ範囲:P.483 - P.487

 はじめに
 頭頸部悪性腫瘍患者の手術で,腫瘍が頸動脈に浸潤している時には,頸動脈の結紮・切除を余儀なくされることがある。この場合脳血流を維持するため頸動脈の再建を行い,腫瘍を摘出することが多いが,われわれは脳血流の遮断時間をできるだけ短くするために,血管吻合する前にシャントチューブを適用することにしている。今回,頸動脈に癒着するリンパ節転移をもつ舌癌患者に対して,シャントチューブの適用に工夫をして手術を行ったので報告する。

DNA分析によって確定診断の得られた輸血後GVHDの1症例

著者: 清水賢 ,   横山正人 ,   菅澤正 ,   田中耕三 ,   斉藤寿仁 ,   古江増隆 ,   飯島正文 ,   王瀝 ,   十字猛夫

ページ範囲:P.489 - P.494

 はじめに
 輸血後GVHD(transfusion associated graftversus host disease)は,移植片(graft)である輸血血液中のリンパ球が宿主(host)である患者体内で生着・増殖して体組織を攻撃して生じる病態である。臨床症状は,輸血後1〜2週で発熱・紅斑が出現し,肝障害・下痢・下血・意識障害などの症状が続く。最終的には骨髄無形成・汎血球減少を呈し,敗血症・肺炎などの重症感染,あるいは大量の出血により死亡するのが典型的な経過である1)
 輸血後GVHDは,1965年にHathawayら2)が免疫不全小児例に認められて以来,出現頻度は少ないものの輸血後の予後不良な合併症として胸部外科領域を中心に報告がある3-5)。以前は輸血血液の生着を拒絶する能力のない重症の免疫不全患者に発症すると考えられていたが,近年免疫学的に異常のない患者にも発症が相次ぎ注目を浴びている6)。耳鼻咽喉科頭頸部外科領域では峯田ら7)が臨床症状より報告をしているが,診断が確定したという報告はされていない。われわれは臨床症状と皮膚組織像より輸血後GVHDが強く疑われ,最終的にはDNA分析にて本疾患が証明された1症例を経験したので報告する。

頭頸部悪性腫瘍動注療法における皮下埋め込み式リザーバーの使用経験

著者: 川名正博 ,   五十嵐文雄 ,   野々村直文 ,   中野雄一

ページ範囲:P.495 - P.498

 はじめに
 頭頸部悪性腫瘍の治療において,抗癌剤の局所動注療法は広く普及した治療法である1)。薬剤注入の方法として,当科では従来より留置したカテーテルの先端を体外に露出させ,滅菌ガーゼで保護する方法をとってきた。しかし,この方法は入浴や洗髪の問題をはじめ,日常生活上多くの制約を伴う。このような患者の負担を軽減する目的で,皮下埋め込み式リザーバー(以下:リザーバー)を1989年に動注留置材料として採用し,その手技を報告した2)。その後の3年7ヵ月間に本法を11例に応用したので,術式,注意点などを含めた使用経験を報告する。

鏡下咡語

耳鼻咽喉科学講義

著者: 朴沢二郎

ページ範囲:P.468 - P.469

 今年3月,定年退官を迎え,私は最終講義を行ったが,しばらく耳鼻咽喉科学の講義について思いつくままを述べて見ようと思う。

講座 頭頸部外科に必要な局所解剖・6

頸部の深部静脈

著者: 佐藤達夫

ページ範囲:P.499 - P.504

 静脈の解剖はとかく冷遇されやすい。複雑で変異に富むからすっきりした成果が得にくい。たいていは動脈に準ずるかたちで処理され,詳細は放置されることになる。しかし手術では,複雑さに加え壁の薄い静脈の処理に思いのほか気を遣うのではないだろうか。それに加え,一般にリンパ系は静脈に沿って発達し,とくに頸部には,全身のリンパ系が集まる静脈角が存在する。もちろん個個の静脈について言及する余裕はないが,基幹静脈について概要を把握するよう努めたい。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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