icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科65巻7号

1993年07月発行

雑誌目次

トピックス 耳鼻咽喉科とリハビリテーション

難聴のリハビリテーション—1)補聴器

著者: 石神寛通

ページ範囲:P.527 - P.532

 はじめに
 聴覚障害の補償にっいての論議のさい,その障害が言語習得以前からのものか,習得以後のものかによって,取り組み方が全く異なってくることはよく知られている。
 “Rehabilitation”という用語については,未だに適切な訳語がないが,傷害あるいは疾病によって失われた機能の回復を目指すものであって,WHOのいう医学の第4相に当たる。第3相に当たる狭義の治療などは一応終了したものを対象とする。したがって本稿では主として成人の中途からの聴覚障害者を対象とした話となる。対象の大部分が中年以降であり,近年年配者の数および比率が増大してきていることに問題がある。

難聴のリハビリテーション—2)Cochlear Implant

著者: 舩坂宗太郎

ページ範囲:P.533 - P.539

 はじめに
 言語の聴取は,音声の分析→語音の識別→語の解読→文法構造にしたがって文の内容の理解という過程を経て行われる。音声の分析はまず蝸牛でなされ脳幹で完成し,語音の識別以降は大脳で行われる。
 蝸牛での音声分析は1960年代までは粗なものと考えられていたが,研究がすすむにしたがい,進行波の頂点の軌跡よりもきわめて精密なものであることが分かり,いわゆるsecond fiterの概念が生まれた。さらにドップラー法の応用により生体での基底膜振動の計測が可能となり,基底膜自身が鋭い周波数分析に合う振動をしていることが分かった。この機構は,外有毛細胞が振動刺激に対して自発的な伸展・収縮を起こし,その結果基底膜振動を制御する(cochlear amplification1))ためとされている(図1,2)。

めまいのリハビリテーション

著者: 松永喬

ページ範囲:P.541 - P.552

 はじめに
 めまい・平衡障害のリハビリテーションとしての平衡訓練の治療への導入は,リハビリテーション医学でも国内ではまだ経験が少ない。
 平衡訓練のめまい・平衡障害治療への導入は1946年Cawthorne1),Cooksey2)により提唱されて以来,McCabe3),Dix4),Brandt5)らによってなされた。

音声のリハビリテーション

著者: 山口宏也

ページ範囲:P.553 - P.559

 はじめに
 発声機能回復のための治療すなわち音声障害のリハビリテーション(以下リハビリ)には他の疾患と同様に,正確な診断,適切な治療と再発の予防が要求される。治療法には音声外科,薬物療法それに音声治療がある。この3つの治療法はそれぞれ異なる特徴があり,音声障害を起こしている疾患,誘因,原因あるいは疾患の程度,病期(Stage)によって使い分ける必要がある。3者の特徴を生かすことにより十分な音声障害のリハビリが可能となる。ここでは音声治療を中心として代表的な喉頭病変のリハビリについて述べたい。

嚥下のリハビリテーション

著者: 進武幹 ,   前山忠嗣

ページ範囲:P.561 - P.567

 はじめに
 最近わが国も高齢化社会を迎え,脳血管障害,各種変性疾患,頭頸部腫瘍の手術に起因する嚥下障害が増加しており,その治療は重要な問題となってきている。また鼻腔胃管チューブにより必要な栄養は摂取できるが,口から食物を摂取するという人間の根元的な欲求を満たすことはqualityof lifeの面からも大切なことである。嚥下障害の治療の1つとしてリハビリテーションがあるが,それは単に嚥下運動を繰り返し行うことを強いるものであってはならない。嚥下のリハビリテーションに携わる者は嚥下のメカニズムを熟知しておく必要があり,また病態は症例により様々に異なるため,各種検査を行って詳細に分析し,病態に応じたきめ細かなプログラムを作成する必要がある。さらに,嚥下訓練中は大量の誤嚥や食物による気道閉塞の危険性があり,窒息への対処の仕方や蘇生術の心得も大切である。嚥下のリハビリテーションは多方面にわたり,多くの者が関与するため,緊密なチームワークも大切である。
 なお嚥下は第1期(口腔期),第2期(咽頭期),第3期(食道期)に分けられるが,ここでは主として第2期について解説する。

目でみる耳鼻咽喉科

特に治療を要しない口腔病変

著者: 高橋廣臣

ページ範囲:P.512 - P.513

 口腔の病変のなかで特別の治療を要しないものはかなり多いが,今回は腫瘍を心配して来院する病変で比較的頻度の高いものについて述べる。

講座 頭頸部外科に必要な局所解剖・7

頸部の神経—(1)腕神経叢

著者: 佐藤達夫

ページ範囲:P.517 - P.526

 頸部は人体における交通の要衝である。交通路(人梢伝導系)としての動脈については,既にあらましを述べたので,本号から神経に進むことにする。神経には,頭と体幹を縦に連絡する脳神経と交感神経が,脊髄と主に上肢を連絡して横走する脊髄神経と複雑に錯綜している。まず脊髄神経を扱うが,頸神経叢については本シリーズの第1回と第2回で触れたので,本号ではとくに腕神経叢について考えてみることにしよう。

原著

甲状腺に発生したBenign Lymphoepithelial Lesionの1例

著者: 後藤みずほ ,   大橋正實 ,   犬山征夫

ページ範囲:P.569 - P.573

 はじめに
 Benign lyrnphoepithelial lesion(以下BLL)は,1952年Godwinが初めて報告したもので,臨床的には唾液腺や涙腺が片側性,あるいは両側性に,多くは無痛性に腫大する疾患である。組織学的には,腺房細胞の萎縮消失と小葉内導管周囲の線維化と著明なリンパ球浸潤がみられ,筋上皮島(EMEI)の形成を特微としている。
 甲状腺組織には種々の腫瘍および腫瘍様病変があることが知られているが,病理組織学的にBLLと同じ所見を呈ける病変を認めたという報倍は見当たらない。

若年者頭頸部悪性腫瘍の検討

著者: 野々村直文 ,   五十嵐文雄 ,   川名正博 ,   中野雄一

ページ範囲:P.579 - P.582

 はじめに
 20歳未満の頭頸部悪性腫瘍はその頻度は少なく,頭頸部悪性腫瘍の1%を占めるにすぎない1)。成人と若年者の腫瘍では,病理組織ひとつをとっても,成人は扁平上皮癌が多い一方,若年者では非上皮性の占める割合が多く,両者は様相が異なる。それゆえ若年者では成人とは違った注意,対応が必要と思われる。若年者の症例が少ないためか,それをまとめた報告も少ない。そこで若年者の頭頸部悪性腫瘍の実態を把握するため,1981年より92年までの12年間に当科で治療を行った20歳未満の頭頸部悪姓腫瘍患者13名について検討した。

前頭洞・側頭窩へ進展した涙腺悪性多形腺腫の1症例—18年の経過で悪性化した症例について

著者: 田中利善 ,   加瀬康弘 ,   飯沼壽孝 ,   北原伸郎

ページ範囲:P.583 - P.588

 はじめに
 涙腺には耳下腺と同様に多形腺腫が好発するが,再発性耳下腺腫瘍の悪性化と同様に,涙腺多形腺腫の再発例にも悪性化の報告がある。われわれは初回手術から18年の経過で悪性化した涙腺腫瘍の1症例を経験したが,現在まで最終手術後7年の経過観察を行い経過は順調である。症例の画像所見および進展経路について,文献的考察とともに報告する。

MRIによる副鼻腔炎保存療法の客観的評価—塩化リゾチームカプセルの効果

著者: 橋本省 ,   高坂知節

ページ範囲:P.591 - P.596

 はじめに
 いうまでもなく副鼻腔炎は耳鼻咽喉科領域における主要疾患のひとつであり,これまで種々の治療法が考案され,試みられてきた。保存治療としては抗生物質,抗炎症剤,消炎酵素剤,抗アレルギー剤などが用いられるが,中でも最も頻用されるのは消炎酵素剤であろう。ところが,その効果に関しては数多くの報告があるもののほとんどが自覚症状,鼻内所見および単純X線写真所見の変化によって判定を行っており,厳密な意味での客観的評価を試みた報告は極めて少ない。
 筆者らは1984年に本邦で初めて耳鼻咽喉科領域のMRI所見を報告1)して以来,鼻副鼻腔病変の診断につきたびたび報告してきた2〜4)が,副鼻腔炎においては粘膜肥厚程度の軽度病変でもこれを把握できることがわかっている。したがって,副鼻腔炎の治療効果の客観的判定法としては,MRIは極めて正確で信頼性があることは明らかであるが,同時に,評価される側にとっては厳しい判定法であるといえる。すなわち,X線写真やCTなど従来の方法では病変の完全消失と判定されるような例でも,MRIにおいては炎症の残存が確認される可能性がある。

術前診断として超音波断層法が有用だった頸部交感神経鞘腫の1例

著者: 古川政樹 ,   古川まどか ,   大石公直 ,   佃守 ,   久保田彰

ページ範囲:P.597 - P.602

 はじめに
 頸部交感神経由来の腫瘍は比較的まれであり,特異的な臨床所見に乏しいので,術前診断は困難であることが多い。今回われわれは画像診断,なかでも超音波断層法(US)による精査の結果,交感神経由来神経鞘腫の術前診断のもとに手術を施行し,腫瘤が頸部交感神経鞘腫であることを確認し得た貴重な症例を経験したので報告する。

甲状軟骨の形態異常により咽喉頭異常感をきたした1例

著者: 多田直樹 ,   牛呂公一 ,   友田幸一 ,   熊沢忠躬

ページ範囲:P.605 - P.607

 はじめに
 日常診療において咽喉頭異常感を主訴として来院する患者は非常に多く,その約半数は器質的異常による症状であるといわれている。その器質的異常を伴う原因疾患としては慢性咽喉頭炎,扁桃炎,あるいは慢性副鼻腔炎,アレルギー性鼻炎といった慢性炎症によるものが多く,さらに,腫瘍性疾患も見逃してはならない重要な疾患である1)。また,茎状突起過長症などの咽喉頭部の形態異常による症状発現も知られている。
 一方,精査の結果器質的な異常発見できない場合も多く,この場合全身的要因の検索2)や整形外科的検討3),慎重な経過観察が必要とされ,また治療に当たっては心身症的な配慮4)も必要とされている。

鏡下咡語

力士の言う「相撲ずき」から学ぶもの

著者: 松浦鎭

ページ範囲:P.576 - P.577

 この世の中,ふと面白い言葉を耳にすることにより,それに派生して似たような現象をいう言葉が新たに甦ってくる。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

95巻13号(2023年12月発行)

特集 めざせ! 一歩進んだ周術期管理

95巻12号(2023年11月発行)

特集 嚥下障害の手術を極める! プロに学ぶコツとトラブルシューティング〔特別付録Web動画〕

95巻11号(2023年10月発行)

特集 必見! エキスパートの頸部郭清術〔特別付録Web動画〕

95巻10号(2023年9月発行)

特集 達人にきく! 厄介なめまいへの対応法

95巻9号(2023年8月発行)

特集 小児の耳鼻咽喉・頭頸部手術—保護者への説明のコツから術中・術後の注意点まで〔特別付録Web動画〕

95巻8号(2023年7月発行)

特集 真菌症—知っておきたい診療のポイント

95巻7号(2023年6月発行)

特集 最新版 見てわかる! 喉頭・咽頭に対する経口手術〔特別付録Web動画〕

95巻6号(2023年5月発行)

特集 神経の扱い方をマスターする—術中の確実な温存と再建

95巻5号(2023年4月発行)

増刊号 豊富な処方例でポイント解説! 耳鼻咽喉科・頭頸部外科処方マニュアル

95巻4号(2023年4月発行)

特集 睡眠時無呼吸症候群の診療エッセンシャル

95巻3号(2023年3月発行)

特集 内視鏡所見カラーアトラス—見極めポイントはここだ!

95巻2号(2023年2月発行)

特集 アレルギー疾患を広く深く診る

95巻1号(2023年1月発行)

特集 どこまで読める? MRI典型所見アトラス

94巻13号(2022年12月発行)

特集 見逃すな!緊急手術症例—いつ・どのように手術適応を見極めるか

94巻12号(2022年11月発行)

特集 この1冊でわかる遺伝学的検査—基礎知識と臨床応用

94巻11号(2022年10月発行)

特集 ここが変わった! 頭頸部癌診療ガイドライン2022

94巻10号(2022年9月発行)

特集 真珠腫まるわかり! あなたの疑問にお答えします

94巻9号(2022年8月発行)

特集 帰しちゃいけない! 外来診療のピットフォール

94巻8号(2022年7月発行)

特集 ウイルス感染症に強くなる!—予防・診断・治療のポイント

94巻7号(2022年6月発行)

特集 この1冊ですべてがわかる 頭頸部がんの支持療法と緩和ケア

94巻6号(2022年5月発行)

特集 外来診療のテクニック—匠に学ぶプロのコツ

94巻5号(2022年4月発行)

増刊号 結果の読み方がよくわかる! 耳鼻咽喉科検査ガイド

94巻4号(2022年4月発行)

特集 CT典型所見アトラス—まずはここを診る!

94巻3号(2022年3月発行)

特集 中耳・側頭骨手術のスキルアップ—耳科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻2号(2022年2月発行)

特集 鼻副鼻腔・頭蓋底手術のスキルアップ—鼻科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻1号(2022年1月発行)

特集 新たに薬事承認・保険収載された薬剤・医療資材・治療法ガイド

icon up
あなたは医療従事者ですか?