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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科65巻8号

1993年08月発行

講座 頭頸部外科に必要な局所解剖・8

頸部の神経—(2)迷走神経

著者: 佐藤達夫1

所属機関: 1東京医科歯科大学医学部第2解剖学教室

ページ範囲:P.694 - P.706

文献概要

 頸部を通る神経群は,頸部本来の神経,すなわち頸髄から起こり頸神経叢と腕神経叢という2つの大きな神経叢にまとまるグループと,源を頭部あるいは胸部に発して頸部を縦断する神経とに大別することが出来るだろう。後者の代表的神経が迷走神経と交感神経幹であり,局所解剖のみならず機能的にも影響の大きい神経であるので,総論的にとりあげておくこととし,本号では迷走神経を検討する。なお,舌咽神経については臓器各論で言及することでカバーしうると思われるので,触れないでおく。
 迷走神経をわれわれはワーグスと呼びなれている。vagusとは,ラテン語のvagari (歩きまわる)に由来するという。和名の“迷走”神経,あるいは古いドイツ語名unherscweifender Nerv1)(さまよえる神経)は適訳かもしれないが,誤解を招くおそれがある。よく考えてみると“迷走”とは,走行方向そのものが不安定なことを意味する。しかし実際の迷走神経の下行走路は少なくとも頸胸部では安定している。したがって,ここでいう“迷走”とは分布先が多彩で広い範囲にわたり,限定しにくいというように解釈すべきであろう。ちなみに,この神経が分布する最も代表的器官として胸部の肺と腹部の胃をとりあげ,n.pneumogas—tricusという名称が用いられたことがあり,現在でもフランスで継承して使われている。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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