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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科65巻9号

1993年09月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

側頭骨の三次元再構成—Eトリソミー症候群の1例

著者: 原田勇彦 ,   高原哲夫 ,   石井繁夫

ページ範囲:P.714 - P.715

 近年,コンピュータ・グラフィックスの発達により,医学の様々な領域で三次元再構成が行われるようになった。
 著者らは以前から,通常の方法で作製されたヒト側頭骨切片の三次元再構成を行い,満足すべき再構成画像が得られることを報告してきた1,2)。ここでは奇形側頭骨切片を用いた三次元再構成の結果を報告する。

原著

閉塞性睡眠時無呼吸症候群におけるセファロメトリーの検討

著者: 望月高行 ,   岡本牧人 ,   藤田央朗 ,   佐野肇

ページ範囲:P.717 - P.723

 はじめに
 閉塞性睡眠時無呼吸症候群の発症要因の1つとして上気道の解剖学的異常がある。セファロメトリーは解剖学的異常をとらえるのに有用であり,種々の報告がある1〜3)。岡本らは呼吸および体位を変えてセファロメトリー(ダイナミックセファロメトリー)を施行し,その有用性について報告した4)。今回は,ダイナミックセファロメトリーにより,口蓋垂軟口蓋咽頭形成術Uvulopapalto-pharyngoplasty(以下,UPPP)5)や舌根正中部切除術Midline laser glossectomy (以下,MLG)6〜8)の術前および術後の軟口蓋,口腔,舌,咽頭の側面積の測定を行い,術前の治療効果の予測,および術後の面積の評価を検討したので報告する。

頭頸部領域の神経鞘腫の臨床的検討—埼玉県立がんセンター17年間の経験

著者: 角田玲子 ,   竹生田勝次 ,   西嶌渡 ,   小川雅浩

ページ範囲:P.724 - P.727

 はじめに
 神経鞘腫は神経鞘(Schwann cell)から発生する良性腫瘍である。頭頸部領域での発生は全身のうち25〜45%と比較的多く1〜3),近年は報告例も増えている。これらの文献を検討すると次のような問題点があげられる。すなわち術前に神経症状を呈することの少ない良性腫瘍であるが術後には起源神経の脱落症状をきたすことがあること,また術前に組織診断が困難なことが多いことなどである。
 そこで神経鞘腫の臨床像を明らかにするために,当施設での頭頸部領域における症例を検討した。

Acoustic rhinometryによる副鼻腔評価の試み

著者: 加瀬康弘 ,   石尾健一郎 ,   飯沼壽孝 ,   佐久間信行

ページ範囲:P.728 - P.732

 はじめに
 Acoustic rhinometry(以下ARと略)は近年開発された鼻腔検査法で,鼻腔断面積の変化に応じて反射された音波を検出することにより得た距離と断面積の関係より,任意の部位の鼻腔断面積と任意の範囲での鼻腔容積の測定を可能にした1)。われわれはARによる副鼻腔容積変化検出の可能性を検討中であり,将来副鼻腔検査法の1つとして応用したいと考えている。以前施行した管の側方にピストンを装着しただけの副鼻腔単純モデルによる実験結果によると,音波の伝播経路である管腔に対して,狭い交通路を介し直角に位置する腔(ピストン)であっても,ARにてその腔の容積を比較的正確に測定できた2)。しかし,実際の鼻副鼻腔は単純な管腔構造ではない。今回は鼻副鼻腔術前・術後にARを施行し,術後の容積増加率を術式ごとに比較検討してAR測定値に対する副鼻腔容積の関与を考察した。

Cockayne症候群の1例—20年間にわたる聴力変化

著者: 岩崎真一 ,   加我君孝

ページ範囲:P.733 - P.737

 I.はじめに
 Cockayne症候群は,小人症,精神遅滞,失調,網膜色素変性症,老人様顔貌,頭蓋内石灰化,日光過敏症などの多彩な臨床症状を呈する極めて稀な常染色体劣性遺伝疾患で,1936年Cockayne1)により最初に報告された。
 難聴は,本症候群の主症状の1つであり,その存在についての報告は少なくないが,その程度や進行についての記載はほとんど認められず,その障害部位については,末梢性とするものと後迷路性とするものとがあり,意見が分かれている。

鼓膜穿孔閉鎖におけるキチン膜の有用性について

著者: 千葉恭久

ページ範囲:P.739 - P.743

 はじめに
 熱傷や創傷時の被覆保護剤として,ポリ-N-アセチルグルコサミン(一般名キチン)繊維で作られた医用材料が広く使用されている。頭頸部領域においても,穿孔鼓膜に対する保存的穿孔閉鎖や中耳手術1),副鼻腔手術後の鼻内タンポンとしての使用などが報告されている1,2)。キチンは創面への密着性に優れ,生体親和性が高く,表皮形成を促進する作用などを有している3,4)。そこでキチンのこれらの性質を利用し,鼓膜の穿孔部位にキチンを密着させ慢性中耳炎の鼓膜穿孔が閉鎖される割合について検討を行った。

当科における鼻骨骨折症例の検討

著者: 中丸裕爾 ,   本間明宏 ,   飯塚桂司

ページ範囲:P.745 - P.748

 はじめに
 鼻骨骨折は,日常診療において遭遇する顔面骨骨折のなかでもっとも頻度の高い骨折てある。しかし,鼻骨の上部には,結合織と表皮しかないため整復時のわずかなずれが目立ちやすく,整復法に関しては,いまだに意見の一致した方法が得られていない。治療に関する検討は多いが,その成因について詳しく検討をしている論文は少ない。さらに整復時,整復後の固定期間の苦痛についても余り検討が行われていない。
 今回われわれは,過去約6年間に当科を受診した鼻骨骨折症例について成因を中心に検討し治療内容に対する満足度等についてアンケート調査を行ったので文献的考察を加えて報告する。

頸動脈置換を施行した頭頸部癌の2症例

著者: 神谷紀之 ,   佃守 ,   持松いづみ ,   土屋幸造 ,   小勝敏幸 ,   三上康和 ,   山本勇夫

ページ範囲:P.751 - P.756

 はじめに
 頭頸部癌の頸部転移の手術として頸部郭清術が用いられている。この場合頸部大血管とくに頸動脈への浸潤例では従来手術の適応とならないことが多かった。しかし最近の医療技術の進歩,医療機器の改良により症例によっては頸動脈そのものも摘出する拡大した頸部郭清術が考慮されている。今回われわれは,頸動脈への浸潤が疑われた頭頸部癌2症例に対し,頸動脈置換術を施行したので報告する。

側頭骨内原発と考えられた悪性リンパ腫の1例

著者: 野口浩男 ,   望月高行 ,   鎌田利彦 ,   小川克二 ,   上野裕壹

ページ範囲:P.757 - P.760

 はじめに
 頭頸部悪性リンパ腫の初発部位は,ワルダイエル輪が最も多いが,リンパ節外原発や頸部リンパ節原発の報告も多くみられる。しかし,側頭骨内に原発した悪性リンパ腫の報告はない。今回われわれは,乳突蜂巣と外耳道内および中頭蓋窩から後頭蓋窩にかけての硬膜下腔に浸潤し,側頭骨内原発と考えられた悪性リンパ腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。

喉頭カルチノイドの1例

著者: 西山耕一郎 ,   古川浩三 ,   高橋廣臣 ,   岡本牧人 ,   八尾和雄 ,   籾山安弘 ,   鎌田利彦 ,   稲木勝英 ,   設楽哲也

ページ範囲:P.761 - P.764

 I.はじめに
 カルチノイド腫瘍は消化管や気管支などの原腸由来の臓器より発生する腫瘍で,内分泌性のホルモン産生踵瘍であり,頭頸部領域の報告は極めてまれである1)。今回われわれは,喉頭左披裂部に発生したカルチノイド腫瘍を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。

喉摘者検診で発見された早期肺癌(重複癌)の1症例

著者: 波多野篤 ,   齋藤龍介 ,   宇野芳文 ,   前川学 ,   金谷眞 ,   大原利憲 ,   浜家一雄

ページ範囲:P.769 - P.772

 I.はじめに
 近年悪性腫瘍の診断,治療の進歩に伴う早期発見,早期治療により治癒および長期生存しうる症例が数多くみられるようになった。その一方治癒に伴う患者の高齢化などのために他の悪性腫瘍との合併例,いわゆる重複癌の症例が増加している。このため第一癌を治療後,局所再発および転移病変ばかりでなく,第二癌の発生も考慮した注意深い経過観察が重要となってくる。今回,第一癌である喉頭の扁平上皮癌術後経過観察中に,喀痰細胞診にて肺癌を早期に発見し,第二癌に対しても根治治療し得た1例を経験したので報告する。

頭蓋底硬膜下膿瘍をきたした鼻中隔膿瘍の1症例

著者: 滝沢竜太 ,   渡辺秀行 ,   大西正樹

ページ範囲:P.775 - P.778

 はじめに
 抗生物質の発達した現在,鼻性頭蓋内合併症はまれな疾患となりつつあり,その報告も数少なくなっている。また,鼻中隔膿瘍も同様に近年ではまれな疾患といえる。しかし,現在でも治療開始時期の遅れや,糖尿病などの全身疾患の合併は,不測の事態を引き起こすことがある。最近われわれは,鼻中隔膿瘍と副鼻腔炎を合併し,さらに化膿性髄膜炎を併発して死に至り,剖検により頭蓋底硬膜下に膿瘍が証明された1症例を経験したので,若干の考察を加えて報告する。

破傷風の原因となった顔面竹片異物の1症例

著者: 鈴村恵理 ,   平田圭甫

ページ範囲:P.779 - P.782

 はじめに
 近年,破傷風の発症頻度は抗生剤の進歩,DPT三種混合ワクチンや破傷風トキソイド接種の普及により減少している。しかし,発症後の死亡率は依然高く,現在でも年間30〜40人が死亡している1)。破傷風菌は芽胞性の嫌気性グラム陽性桿菌で土壌中あるいは動物の下部消化管内に広く存在し,創部が土壌や汚水で汚染されている場合はその予防を念頭におかなければならなし。今回われわれは顔面刺創竹片異物により破傷風を発症し,破傷風治癒後も異物の発見,摘出に長期を要した1例を経験したので,顔面異物の診療上心掛けなければならない問題点などについて若干の考察を加えて報告する。

鏡下咡語

Weberを聴く

著者: 浅井良三

ページ範囲:P.766 - P.767

 最近の聴力検査はオージオメーターを使用するから,従来行われてきたWeber, Rinne, Schwabachなどの検査は行われなくなった。Weber, Rinne, Schwabach試験と呼ばれる聴力検査は気導,骨導検査の比較検査であるからオージオメーターでも当然判定可能である。オージオグラムにおける左右の骨導の比較がWeber,一側耳の気骨導の比較がRinne,骨導聴力値がSchwabachを示すはずである。
 これらのうちWeber検査は聴力検査として1834年に提示された。Weberははじめ外耳道孔を指頭で栓をすると自声強聴になることに気づいた。彼はなぜかと考えつつ音叉を頭頂部において聴くとやはり耳栓した側の耳に音は大きく聞こえる。彼はこれを外耳道や鼓室のresonnanceによると説明した。その後,中耳炎など伝音障害のある場合にその耳に大きく聞こえることを知り,これにもとづきWeber試験が聴力検査の一つとして採り上げられたのである。

講座 頭頸部外科に必要な局所解剖・9

頸部の神経—(3)交感神経系

著者: 佐藤達夫 ,   坂本裕和

ページ範囲:P.785 - P.795

 前号に述べた迷走神経は総頸動脈と内頸静脈の間にはさまれて縦走しており,また咽喉頭など頸部の諸器官に豊富な分枝を与えていることから,頸部の手術においてこまやかな気配りを必要とする神経であった。頸部の交感神経幹は総頸動脈よりもさらに奥の後内側を縦走し,頸動脈鞘の後ろにある。このような位置関係から交感神経幹そのものは術視野に現れる度合いは少ないかもしれない。しかし,その枝は血管に沿って延び,頭部,上肢ならびに胸部と広い範囲にわたって分布している。したがって頸部の交感神経系について深い知識をもつことが望まれるのである。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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