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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科66巻1号

1994年01月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

ピアスによる耳垂のケロイド症例について

著者: 石井豊太 ,   西山耕一郎 ,   久野健志 ,   古沢慎一

ページ範囲:P.6 - P.7

 耳垂およびその付近に腫瘤形成を認める疾患には痛風結節,皮様嚢腫などがあげられるが,黒人には稀にケロイドによる耳垂の腫瘤をみる。今回われわれは,ピアスによる耳垂への刺激によると考えられた,両側の耳垂腫瘤を経験した。ピアスは,金属アレルギーや感染の原因となるばかりでなく,ケロイド体質では腫瘤形成も起こすことが考えられ,耳鼻科医にとっては,耳垂病変をみたら,たえずピアスの使用について考慮しなければならないと思われる。
 症例は,52歳の日本人女性で,1年前より徐々に両耳垂が腫脹し当院を初診した(図1)。14年前に18金のピアスをしていたことがあった。49歳時に乳癌疑いで手術し,ケロイドの形成を認めている(図2)。

原著

サイログロブリンの免疫染色により確定診断がなされた右側頸部原発甲状舌管癌の1例

著者: 貝森光大 ,   高谷彦一郎 ,   神均 ,   宮野和夫 ,   黒滝日出一 ,   沢田美彦

ページ範囲:P.9 - P.13

 はじめに
 甲状舌管嚢胞および鰓溝性嚢胞は先天性頸部腫瘤の大半を占め,ごくまれに悪性化するが,両者の発生部位的特異性などから鑑別診断は比較的容易と考えられている1〜3)。最近,著者らは,解剖学的発生部位などから鰓溝性嚢胞癌を強く考えたが,1)組織学的に甲状腺癌類似の乳頭状腺癌であること,および2)免疫組織学的に嚢胞壁上皮と癌細胞の両方にサイログロブリンが証明されることから甲状舌管癌と診断したまれな1例を経験したので報告する。

術後,聴力の著明な改善をみた聴神経腫瘍例について—症例報告

著者: 石川和夫 ,   桃生勝己 ,   中沢操 ,   宮崎総一郎 ,   戸川清 ,   安井信之

ページ範囲:P.15 - P.18

 はじめに
 聴神経腫瘍の患者は,蝸牛または前庭症状で発症することが多く,したがって耳鼻科医を初診するケースがほとんどである。この意味で早期発見は耳鼻科医に委ねられているわけであるが,実際は非典型的な経過を示し診断の難しい例もときどきある。一方,最近のMRI導入による画像診断の飛躍的な進歩により,内耳道内に限局した小腫瘍でも正確に診断ができるようになってきており,いきおい聴力障害の軽微な小腫瘍の発見例も増えてきている。聴神経腫瘍の治療における最終目標は,腫瘍の全摘出と顔面神経および聴力の機能保存であるが,この目標に向かって,手術方法1,2),γ線療法3,4),術中モニタリング4),聴力保存の可否の基準などについて検討されている5)。聴力保存の対象症例は純音聴力50dB以下,語音明瞭度50%以上である5,6)ことが1つの目安とされるが,この基準では保存の適応にならない聴神経腫瘍例に対して中頭蓋窩法で摘出したところ,術後著明に聴力の改善した症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

純音聴力が正常であった小脳橋角部腫瘍症例の術前後の聴覚障害の推移

著者: 小林謙 ,   相原康孝 ,   井上英輝 ,   佐久間文子 ,   石田祐子 ,   神尾友和 ,   杉浦和朗 ,   加我君孝

ページ範囲:P.19 - P.22

 はじめに
 聴性脳幹反応,CTやMRIなどの検査法の進歩により聴神経腫瘍をはじめとする小脳橋角部腫瘍が早期に発見される機会が多くなった。その結果,最近では純音聴力が正常な症例も見出されるようになった1〜4)。われわれは,耳閉感,難聴,耳鳴を主訴として来院し,純音聴力が正常であった小脳橋角部腫瘍を経験した。この症例では,術後も純音聴力が正常であったが,語音聴力検査やABRなどの聴覚検査には異常が認められ,術後の改善に検査間で差が認められた。症例の詳細を若干の考察を加えて報告する。

嗅神経芽細胞腫の1症例

著者: 小川雅浩 ,   竹生田勝次 ,   西嶌渡 ,   角田玲子 ,   上原敏敬 ,   岸紀代三

ページ範囲:P.24 - P.28

 緒言
 嗅神経芽細胞腫は嗅粘膜上皮を発生母地とし鼻腔嗅部に好発する神経外胚葉由来の悪性腫瘍である。悪性度が低く放射線に感受性のあることが知られているが,比較的まれな腫瘍であるため,腫瘍の生物学的特性については不明な点が多い。また,病理組織学的に他の悪性腫瘍との鑑別が問題となる腫瘍である。今回われわれは,鼻腔の未分化癌が疑われたが,頸部の転移リンパ節の病理組織より嗅神経芽細胞腫と診断された1症例を経験した。本症例の経過とともに,嗅神経芽細胞腫の診断と治療について文献的に考察したので報告する。

篩骨洞転移をきたした肝細胞癌の1症例

著者: 武林悟 ,   菅沼美佳 ,   児玉章

ページ範囲:P.29 - P.31

 はじめに
 頭頸部領域における悪性腫瘍は,頸部リンパ節を除くと,そのほとんどが原発性であり,他臓器からの転移によるものは稀といわれている。
 以前われわれは,肝細胞癌が鼻中隔に転移した症例につき報告したが1),今回,肝細胞癌が篩骨洞への転移をきたした症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。

両側上顎癌の3症例

著者: 小笠原誠 ,   田中克彦 ,   三国尚志 ,   西沢典子 ,   西尾正道 ,   成松直人 ,   浅野勝士

ページ範囲:P.32 - P.35

 はじめに
 通常,上顎癌は一側性であり,両側の上顎洞に発症する頻度は非常に低い。このような症例での治療は,当然救命を第一義とするものの,患者のQOLを考えるとはなはだ難しい側面をもつ。両側性上顎癌は,それぞれの洞での原発性発症が確実であれば重複癌とみなされるが,左右の上顎洞の解剖学的に近接した関係から,その診断には慎重を要する。過去,われわれの施設では異時性発症の両側性上顎癌が3例あり,これらの症例について若干の文献的考察を加えて報告する。

口蓋裂児の中耳疾患について—口蓋形成術後症例の検討

著者: 林智栄子 ,   新川敦 ,   飯田政弘 ,   三宅浩郷 ,   坂井真 ,   長田光博

ページ範囲:P.36 - P.39

 はじめに
 口蓋裂児は非口蓋裂児と比較して,滲出性中耳炎などの中耳疾患の罹患率が高いとされている。口蓋裂児にとって中耳疾患の罹患率が高いことは,口蓋裂児が言語を習得するに当たって,構音障害とともに重要な問題となる。われわれは,口蓋形成術後症例の中耳疾患について鼓膜所見とティンパノグラムについて検討したので報告する。

上顎洞に原発した髄外性形質細胞腫の1症例

著者: 清水賢 ,   中村雅一 ,   菅澤正

ページ範囲:P.41 - P.44

 はじめに
 上顎洞粘膜に原発した髄外性形質細胞腫(extramedullary plasmacytoma)の1例を経験したので報告する。副鼻腔原発の本疾患についての報告は少ない。一般に,髄外性形質細胞腫の治療は放射線と手術の併用療法が主流で1),局所の腫瘍が制御できれば,その予後は比較的良好といわれている。しかし,形質細胞腫は血液疾患の1つで,細胞レベルでは比較的初期より全身にびまん性に存在している可能性がある。全身に転移を起こし,いわゆる多発性骨髄腫に移行すると予後は約2年と極めて悪くなり,治療としては化学療法が必要となってくる。本例に対して,形質細胞腫の局所の制御とともに,全身化を予防するために放射線療法・手術療法に化学療法を組み合わせた治療を行い,良好な結果が得られたので,現在までの約2年にわたる治療経過を報告する。

縦隔洞膿瘍を併発した深頸部感染の1症例

著者: 萩野仁志 ,   小林良弘 ,   別所隆 ,   飯田政弘 ,   堀内正敏 ,   坂井真

ページ範囲:P.49 - P.53

 はじめに
 深頸部感染が縦隔まで波及することは比較的まれなことと思われるが,咽喉頭の感染から深頸部感染へ移行し,さらに縦隔へ感染が及ぶ場合がある。抗生物質が発達した現在においても,縦隔に炎症が及ぶと高い死亡率となっており,われわれ耳鼻咽喉科医は深頸部感染を管理するにあたっては的確な判断と対処が要求される。われわれは,上咽頭の炎症が咽頭後壁に波及し,咽後隙の深頸部感染から縦隔洞膿瘍へ移行した症例を経験した。縦隔洞膿瘍を早期に診断し,縦隔ドレナージを施行したため救命し得たので,ここに報告する。

頭頸部癌術後の甲状腺,副甲状腺機能の評価

著者: 山本博子 ,   佃守 ,   持松いづみ ,   作本美樹

ページ範囲:P.55 - P.58

 はじめに
 頭頸部癌の手術では,頸部郭清術などで甲状腺に手術操作が及ぶことが多い。甲状腺疾患の術後の甲状腺,副甲状腺機能の報告は多いが,甲状腺を除く頭頸部癌術後の機能の報告はほとんどみられない。
 今回,本院で施行した頭頸部癌術後の甲状腺,副甲状腺機能について検討を行い二,三の知見を得たので報告する。

鏡下咡語

まずideaが先だtechniqueはついてくる—(附)後鼻孔ポリープ切除法

著者: 浅井良三

ページ範囲:P.46 - P.47

 鼻茸はクラウゼの絞断線にて絞断切除する比較的簡単な手術である。有茎性が多いから出血も少なく一挙に切除できるが,広基性では出血のために手をやくことがある。
 かつて乃木大将の甥,玉木某,60歳の鼻茸で手術をうけ,出血が多くて止血に困り手術を中断したのが京大耳鼻科に入院した。

医療ガイドライン

ヘリカルスキャンによる三次元CTの耳鼻咽喉科領域への臨床応用

著者: 酒井昇 ,   米川博之 ,   大橋正實 ,   栗原秀雄 ,   高木摂夫 ,   西澤典子 ,   小市健一 ,   松村道哉 ,   小橋真美子 ,   依田明治 ,   松島純一 ,   犬山征夫

ページ範囲:P.59 - P.63

 I.序論
 近年CTやMRIなどの画像診断は飛躍的な発展を遂げ,医学の各分野における診断で今や不可決のものとなっている。従来これらの画像は二次元表示であったが,最近コンピューター技術の進歩に伴い,CTを三次元表示することが可能となり,より客観性の高い情報が得られるようになった。しかし,これまでの三次元CTはスライス幅が大きく,大まかな立体像は描出できても耳科領域のような細かい部位の描出は困難であった。今回われわれは新しく開発された高性能のヘリカルスキャン法による三次元CT装置を使い,耳鼻咽喉科疾患診断の有用性を確認できたので文献的考察を加えて報告する。

講座 頭頸部外科に必要な局所解剖・11

甲状腺(1)

著者: 佐藤達夫 ,   坂本裕和

ページ範囲:P.66 - P.74

 前回まで,頸部の局所解剖について,筋,筋膜等の枠構造,ならびに血管,神経,リンパ系という交通路のあらましを述べてきた。それらを背景に今回から各論に入ることにする。はじめに甲状腺をとりあげたい。甲状腺は独立した取り扱いを受けがちで,頭頸部外科になじまない面があるかもしれない。しかし頸部に位置を占める代表的臓器であることに変わりはなく,甲状腺の局所解剖に通じておくことは決して無駄でないと思われる。

頭頸部外科に必要な形成外科の基本手技・3

遊離皮膚移植

著者: 上石弘

ページ範囲:P.77 - P.83

 はじめに
 手術や外傷によって生じた皮膚欠損部をどのように修復するか,その解決法を見出すまでには実に多くのことがらを考えるものである。その思考過程は碁や将棋の手の内を考えるのに似ている。しかし幸いなことに皮膚欠損の修復法を考える場合には,持ち時間の迫った棋士のそれと違って,十分考える時間が持てるのでありがたい。むしろ十分時間をかけて手術を読み切ってから行えばよいわけで,術式の選択を誤まることは少ないものである。
 遊離皮膚移植は皮膚欠損部を修復する際の有力な持ち駒の一つであると考えてよい。
 本項では,頭頸部領域に生じた皮膚欠損部の修復法の選択をどのような手順で進めたらよいか筆者の考え方を述べ,遊離皮膚移植の実際とその要点について述べてみたい。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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