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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科66巻10号

1994年10月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

両側乳突部にみられた木村病

著者: 稲葉順子 ,   坪井陽子 ,   宮永敏 ,   森満保

ページ範囲:P.850 - P.851

 木村病は,皮下軟部組織の好酸球性肉芽腫症で,頭頸部領域では主に耳下腺部,顎下腺部に単発性あるいは多発性に発症する。
 今回われわれは両側乳突部に対称性に腫瘤を形成した症例を縫験した。

Current Article

Küttner Tumorについて

著者: 谷垣内由之

ページ範囲:P.853 - P.861

 はじめに
 1896年,南西ドイツ,チュービンゲンの医師H.Küttnerは,顎下腺に悪性腫瘍を思わせる腫瘤を生じた2名の患者の外科的治療を行い,2名とも炎症によるものであった例を報告した1)。これが今日Küttner Tumorあるいは,慢性硬化性顎下腺炎と呼ばれ認識されている疾患の最初の報告であった。彼の報告がドイツ語であったためか,その後の2回の世界大戦の関係か,Küttner Tumorの名称はドイツ語系の成書では,Walter BeckerらのHals-Nasen-Ohren-Heilkunde2)のような小さなものにでも記載されているが,英語系では記載がない。日本医学の源流がドイツにあるためか本邦の耳鼻咽喉科学書には記載のあることが多く,耳鼻咽喉科医・口腔外科医,特に唾液腺を専門とする者にはよく知られた疾患名である。
 本疾患については,病理学者のG.Seifert3)が総説的な論文を出しているが,原因との関係,特に唾石について反対の意見を述べる者もいて混乱がある。また近年の症例報告をみると当初のKüttnerの報告からみて,やや異なる例も報告されており,疾患概念についても問題があるように思われる。本論説においては,当科で行った顎下腺摘出手術例の中から数例を呈示し,原典との比較においてKüttner Tumorとの関係を考え,いくつかの問題点を提起しようと思う。

原著

外耳道に発生した化膿性肉芽腫の1例

著者: 高橋秀明 ,   新川敦 ,   田村嘉之 ,   相原均 ,   石田克紀 ,   坂井真

ページ範囲:P.863 - P.866

 はじめに
 化膿性肉芽腫は,口腔粘膜や手指,顔面の皮膚が好発部位とされている1)が,外耳道に発生したとする報告は少ない。今回,われわれは外耳道に発生した化膿性肉芽腫の1症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。

他覚的筋性耳鳴の1例

著者: 久保富隆 ,   斎藤武久 ,   斎藤等 ,   青木佐知子

ページ範囲:P.867 - P.870

 はじめに
 他覚的耳鳴は比較的まれな疾患であり,その音源および原因から筋性,血管性,呼吸性および顎関節の異常によるものに大別され,過去の報告では血管性が最も多く,筋性耳鳴がそれに次いでいる。今回われわれは小児の随意性筋性耳鳴の1例を経験し,耳鳴音の周波数分析および時間分析,鼻咽腔ファイバー検査により音源を推察したので報告する。

メニエール病様の経過を呈した錐体部巨大コレステリン肉芽腫の1例

著者: 結縁晃治 ,   大道卓也 ,   渡辺周一 ,   白川武志 ,   浅利正二

ページ範囲:P.871 - P.874

 はじめに
 メニエール病の病態生理は内リンパ水腫であるとされている1)。内リンパ水腫の成因については,内リンパの分泌過剰によるという説2)と,吸収障害によるという説3)が提起されてきた。今回われわれは,錐体部に発生した巨大腫瘤により内リンパ嚢の正常構造が破壊され,内リンパ液の吸収が障害された結果,内リンパ水腫を生じメニエール病の臨床経過を呈したと考えられる症例を経験しこので報告する。

アレルギー性鼻炎における嗅覚障害の特徴

著者: 肥後隆三郎 ,   市村恵一

ページ範囲:P.875 - P.879

 はじめに
 嗅覚障害は単一疾患としてとらえられるものではなく,種々の疾患により惹起される症状であり,症候上嗅覚減退・嗅覚脱失・異臭症などに分類される。嗅覚は視覚・聴覚などにくらべ,異常が生じた場合一般になおざりにされがちであり,特に慢性副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎が背景疾患として存在すると,原疾患にとらわれるあまり嗅覚障害に対しては目が向けられないことも多い。調所ら1)によれば,アレルギー性鼻炎の発作時における嗅覚障害の発生率はアレルギー性鼻炎が中等度以上の場合50〜60%にのぼり,花粉症に限ればシーズン中約70%の患者が嗅覚障害を訴えるという。また一般に嗅覚減退を示すことが多いが約10%に嗅覚脱失を認めるとされる。また花粉症の患者で,花粉飛散時のみならず,その後も嗅覚障害が持続する場合があり,アレルギー性鼻炎の嗅覚障害=発作時の粘膜腫脹による呼吸性嗅覚障害とは必ずしもいうことはできない。
 今回われわれは,嗅覚障害を主訴として当科鼻外来を受診した患者を対象としアレルギー性鼻炎との関連を検討したので報告する。

頸部外傷の緊急止血における総頸動脈の一時的遮断

著者: 小出千秋 ,   鈴木正治 ,   今井昭雄 ,   廣瀬保夫 ,   金沢宏 ,   市川高夫 ,   岡本学

ページ範囲:P.881 - P.884

 はじめに
 教科書にみられる頸部の外傷の記事は喉頭・気管に集中している1,2)。喉頭・気管は頸部において損傷を受けやすく,また急性の気道閉塞や後に生じる気道の瘢痕狭窄など多彩な臨床像を有するためと考えられる。一方,頸部外傷に伴う血管の損傷についてはあまり詳しくは述べられていない。頸部の損傷で頸動脈が切断された場合はほぼ即死状態となるので救急救命の対象にはならないし2),通常中・小血管の損傷は結紮止血で済むためである。しかしながら頸部の大きな損傷では,中程度の血管が切断されただけでも出血が激しくて止血操作が困難となることがある。
 われわれは激しい出血を伴った頸部切創で,総頸動脈の一時的遮断が止血処置に効果的であった2症例を経験したので報告する。

甲状腺手術症例の統計と術前診断の有用性

著者: 吉田耕 ,   三橋敏雄 ,   森豊 ,   夜久有滋 ,   今野昭義

ページ範囲:P.893 - P.898

 はじめに
 近年甲状腺疾患手術症例の報告は増加しつつある。この一因としては種々の画像診断法の進歩や穿刺細胞診の普及により術前に本疾患の部位的,質的診断がより正確に行われるようになったことがあげられる。従来甲状腺の外科的治療については一般外科からの報告が主であったが,最近では,耳鼻咽喉科や頭頸部外科が取り扱った症例も多く報告されている。そこで,われわれも最近4年間に経験した甲状腺疾患手術症例について,その一般的臨床統計および術前診断法について検討したので報告する。

翼口蓋窩に発生した巨大神経鞘腫の1症例

著者: 藤田健一郎 ,   加藤昭彦 ,   間島雄一 ,   坂倉康夫

ページ範囲:P.899 - P.903

 はじめに
 神経鞘腫はSchwann鞘から由来すると考えられている外胚葉系の腫瘍で,遠城寺ら1)による良性軟部組織腫瘍の統計では,血管腫,脂肪腫に次いで多く発現し,部位別にみると頸部,頭部に多いが,翼口蓋窩に発生する頻度は比較的まれであるとされている。今回われわれは左翼口蓋窩から左側頭下窩にかけて発生した巨大な神経鞘腫の1症例を経験したので報告する。

甲状軟骨に浸潤がみられた頸部リンパ節結核症例

著者: 安部裕介 ,   中根東 ,   大崎隆士 ,   高橋光明

ページ範囲:P.905 - P.908

 はじめに
 結核症は,近年の化学療法の普及,進歩により著明に減少したものの平成4年の新規登録患者は48,956人1)とわが国最大の感染症であることに変わりはない。また,ここ数年の罹患率減少速度の鈍化,在日外国人の結核発症の問題2)など,結核感染症の新たな局面の展開があり,結核症は決して過去の疾患ではなく,日常診療上常に念頭におく必要がある疾患と考えられる。
 今回われわれは甲状軟骨に浸潤した稀な頸部リンパ節結核の1例を経験したので報告する。

側頸嚢胞の臨床病理学的検討

著者: 阿部元 ,   迫裕孝 ,   梅田朋子 ,   沖野功次 ,   小玉正智

ページ範囲:P.909 - P.912

 はじめに
 側頸嚢胞は,頭頸部領域に発生する比較的まれな嚢胞性疾患で,病理組織学的に上皮と上皮下リンパ組織によって特徴づけられ,一般的には胎生期の鰓性組織の残存上皮から発生すると考えられているが,いまだ不明な点も多い。1978年4月より1993年12月までに,当科および関連病院において,第4鰓裂より発生したと思われる1例を含む側頸嚢胞の7例を経験したので,臨床病理学的検討を加えて報告する。

Lennert病変の1例

著者: 清水啓成 ,   鳥山稔 ,   安部治彦 ,   井上都子

ページ範囲:P.913 - P.916

 はじめに
 1968年LennertとMestdagh1)は,リンパ腫の中から多数の類上皮細胞の小胞巣が,広く散在することを最大の特徴とする病変を区別し,Epitheloid cell lymphogranulomatosisとして報告した。この病変はLennertにより初めは,ホジキン病の1型として提唱された歴史をもつが,現在ではその本態に関して種々の見解があり,最近では主として末梢性T細胞リンパ腫の1型という見方が有力である。今回われわれは,本型に相当すると考えられた1例を経験したので,文献的考察を加え報告する。

顎下腺異物の1症例

著者: 渡辺芳江 ,   上野則之 ,   服部康夫 ,   弓削庫太

ページ範囲:P.917 - P.920

 はじめに
 唾液腺あるいはその導管内に異物が迷入することは稀なことで,国内の文献では,1936年鈴木1)(顎下腺)の1例報告を初めとして,現在まで15例の報告があるにすぎない。
 今回われわれは,顎下腺内に刺入した魚骨により唾疝痛を呈し唾石症を疑った顎下腺異物症例を経験したので報告する。

高齢者餅異物症の救命例

著者: 南吉昇 ,   渡辺聡哉 ,   大浦雅之

ページ範囲:P.921 - P.924

 緒言
 高齢者の餅誤嚥による気道閉塞のための死亡の報道記事は,しばしば見受けられる。しかし臨床の現場においては,救急車で搬送された患者を実際に診察する段階で生命を維持している場合はほとんどないと考えられる。稀に搬送の途中悪路のため異物を吐出し,そのため救命し得たとする救急隊員の話も聞かれることがあるが,医療機関において完全に蘇生救命したとする報告例はきわめて稀なものである。今回われわれは,救急隊員の指示により患者の家族が掃除機を使用し異物の一部を除去し,かつ適切な人工呼吸を施したため,その後の病院においての救急処置で蘇生救命し得た症例を経験したので,その経過を述べるとともに文献的考察を加えて報告する。

鏡下咡語

滝沢敬一氏のこと

著者: 鈴木篤郎

ページ範囲:P.886 - P.887

 3年ほど前,書斎の奥から,昔読んだ本が何冊か出てきて懐かしかったが,その中の一冊に滝沢敬一氏の『第3フランス通信』があった。昭和15年刊行だから,私が医学部4年生の時である。滝沢氏のことは,その名著『フランス通信』とともに,年配の方なら覚えておられる向きも多いと思われるが,当時フランス好みだった私は,滝沢氏の『フランス通信』は新刊がでる度に,必ず買い求めて熱心に読み耽った記憶がある。しかし残念ながら,この本以外はどこへ行ってしまったのか,探しても見当らない。紺の縞模様に紅色で印刷された書名は,著者によるとフランスの三色旗に見立てた由だが,ペーパーナイフでページを切るフランス綴りとともに,その洒落たスタイルの斬新さにまず感心したものだった。その上文章が実に軽妙で滞ることがなく,内容の新鮮さと相俟って,フランス好きの若い我々を夢中にさせた。事実,氏の文章には50年以上たった今読み返してみても,少しも古さを感じさせない不思議な魅力がある。
 所で私は,この滝沢氏に一度だけ会ってお話を伺ったことがある。しかもその内容は,大方の予想するような『フランス通信』の一読者に対する文学的雑談ではなく,フランスにおける医療制度や医師養成制度といった,およそ氏にはあまり馴染みのない問題の解説をたっぷり2時間伺ったのであった。

連載エッセイ 【Klein aber Mein】・3

耳鼻科の手術と神経障害

著者: 浅井良三

ページ範囲:P.888 - P.889

 耳鼻科の手術ではその局所解剖の関係で細心の注意を払っていても種々の副損傷で術後神経障害を残すことがある。その処理に苦労する。記憶に留めている興味ある1,2について述べ私の考え方を記す。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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