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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科66巻11号

1994年10月発行

雑誌目次

特集 耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域 腫脹の診断

1.耳介・外耳道の腫脹

著者: 青柳優

ページ範囲:P.5 - P.9

 はじめに
 耳介と外耳道の腫脹・腫瘤をきたす主な疾患は,表1と表2のようにまとめることができる。診断は視診,触診により比較的容易なものが多く,随伴症状,合併症,病歴なども診断の助けになることが多いが,ときに表3にあげるような検査をしなければ診断できないこともある。それぞれの疾患についての詳細や画像診断などについては成書に譲り,ここでは視診,触診,病歴聴取時の要点について述べる。

2.鼓膜の腫脹

著者: 新川敦

ページ範囲:P.11 - P.15

 はじめに
 鼓膜の腫脹をきたす疾患は多く,そのなかには鼓膜切開術・鼓室形成術などの手技により,致命的な病態をひきおこすことがある。術中,術後の偶発症,合併症を防止するためには,常日頃から顕微鏡下の詳細な鼓膜の観察により,腫脹している場所,炎症の程度,石灰化,腫脹の色調,拍動の有無,鼓膜上皮の有無などを詳細に観察することを習慣づけておくことが大切であると考えられる。また,合併症を起こす危険性の大きな疾患と考えられる場合には,高分解能CT (HRCT),MRI,Angiographyなどの画像診断を行う必要がある。今回はわれわれが経験した症例を中心に鼓膜の腫脹をきたす疾患について鑑別診断を中心に述べる。

3.乳突部の腫脹

著者: 相川通

ページ範囲:P.17 - P.20

 はじめに
 乳突部は,解剖学的に乳様突起とそれを被覆する皮膚および皮下組織からなる。したがって,乳突部の腫脹をみた場合,乳突洞,乳突蜂巣あるいは耳周囲の病変を,さらにはまた頸部疾患からの波及なども考慮しながら診断を進めていかなければならない。本項では特に乳突洞,乳突蜂巣あるいは耳周囲の病変を中心に,乳突部腫脹の診断について記載する。

4.外鼻の腫脹

著者: 楠見彰

ページ範囲:P.21 - P.25

 はじめに
 外鼻は骨および軟骨組織による支持組織に皮膚,皮下組織,筋肉などの軟部組織からなる。これら組織由来の腫瘍や胎生期の発育異常によると考えられる特異な先天性腫瘍が発生する。さらに,突出していることにより外的刺激を受けやすい。しかしながら,外鼻の腫脹は発症年齢,外傷の既往,炎症の有無や鼻腔や鼻骨との関連について問診,視診,触診により,おおよその見当がつけられる。それにより画像診断や生検を中心とした検査を行うことになる。本項では鑑別すべき疾患をあげ,その臨床像を中心に述べる。

5.下鼻甲介の腫脹

著者: 川堀眞一 ,   野中聡

ページ範囲:P.26 - P.29

 はじめに
 鼻腔は呼吸道の門戸であり,下鼻甲介粘膜は温度と湿度の調節,吸気の浄化および共鳴作用に大きく関与している。下鼻甲介の腫脹により患者は主に鼻閉を訴えて耳鼻咽喉科を受診する。嗅覚についても腫脹により呼気が嗅部に到達しないと呼吸性嗅覚障害をきたす。鼻閉が一側性か,両側性か,交代性かを問診するとともに下鼻甲介の腫脹をきたす疾患には鼻漏,鼻出血などを伴うこともあり,診断を進めるうえでこれらの症状を聞いておくことが重要である。
 下鼻甲介の腫脹を示す主な疾患と診断手順を表1にあげた。下鼻甲介の腫脹の観察は前鼻鏡,後鼻鏡が基本である。最初に下鼻甲介の鼻腔での占める状態を正常者のCT像(図1),MRI像(図2)で示す。下鼻甲介が明らかに両側性に腫脹しているときと一側性に腫脹しているときでは診断を進めるうえで異なる。また色調,表面の性状の把握も重要である。特に,一側性の腫脹の場合は鼻腔全体を十分に診察し,X線,CT,MRIなどの画像検査もすべきである。表1に診断を進めるうえでのポイントを示した。

6.鼻中隔の腫脹

著者: 大久保公裕

ページ範囲:P.30 - P.32

 はじめに
 鼻中隔は鼻腔の構造を形成し,鼻腔を左右に分けるように存在するが,本項では,鼻中隔が腫脹をきたすとき,どのような症状を形成し得るのか,また実際の臨床の場において鼻中隔の腫脹をみたとき,どのような疾病を考慮すべきか,その鑑別診断を中心として述べる。
 解剖的には鼻中隔は前方の軟骨の多い部分(鼻尖軟骨,中隔軟骨,篩骨垂直板),後方の骨部(篩骨垂直板,鋤骨,口蓋骨鼻稜)とそれを左右で覆う皮膚と粘膜とから構成されている。一般に腫脹を呈する疾患は外傷,炎症,腫瘍であるが,鼻中隔では原発性の腫瘍は少なく,外鼻の腫脹を伴わない鼻中隔の腫瘍はまれである。

7.頬部の腫脹

著者: 長舩宏隆

ページ範囲:P.33 - P.40

 はじめに
 耳鼻咽喉科領域において頬部は外見上最も目につきやすい部位であるため,その部位の腫脹には比較的早く気がつくものと思う。しかし腫脹をきたすまでの期間は疾患によってそれぞれ異なり,感染などによる炎症性疾患では短期間で腫脹をきたすが,悪性腫瘍などでは副鼻腔に充満した後に骨壁を破り,軟骨組織に浸潤してはじめて頬部が腫れてくるものなど長期間を要するものも多く,それが生死を左右することもあり注意を要する。
 頬部には解剖学的に歯芽,骨,軟部組織,腺などの臓器があり,発生する疾患も様々で診断が困難なことも多いと思われる。したがって頬部腫脹を呈する患者を診察する際には,患者の年齢,現病歴,既往歴,家族歴の聴取,局所所見,全身所見の観察,さらにX線学的検査などを施行し,的確かつスムーズに診断,治療を行うことが大切である。

8.眼球突出

著者: 宮田守

ページ範囲:P.41 - P.47

 はじめに
 眼球突出の原因は様々であるが,耳鼻咽喉科医が扱う(耳鼻咽喉科に紹介されてくる患者の)眼球突出はほとんどが一側性の眼球突出である。患者が眼球突出を自覚した場合,まず眼科を受診することが多く,眼球突出の訴えで耳鼻咽喉科を受診する場合,その約60%は眼科からの紹介であるとされている1〜3)。これは,その原因が鼻・副鼻腔にある場合でも鼻症状が少ないこと,あるいは鼻閉,鼻汁などの症状があっても眼球突出という顔貌の変化が目立つため,患者が外見上の症状をもとに医療機関を訪れるためであろう。鼻・副鼻腔に原因がある場合でも比較的早期には鼻・副鼻腔に関する症状に乏しい傾向は良性疾患に多く認められるが,これに対して悪性腫瘍では早期に鼻・副鼻腔に関する症状が強く出現するため眼科を最初に受診する率は良性のそれと比較すると少ないとされている3)。本項では鼻・副鼻腔以外の疾患については概略にとどめ,主に鼻・副鼻腔に起因する眼球突出についてその診断のポイントを述べる。

9.額部の腫脹

著者: 山岨達也

ページ範囲:P.49 - P.52

 1.額部に腫脹を呈する疾患
 前額部に腫脹をきたす原因としては,主に腫瘍,炎症,外傷などがあり,その病変部位は軟部組織,前頭骨内組織(副鼻腔を含む),頭蓋内組織の3つの部位に分けられる。眼窩や他の副鼻腔領域からの病変が進展した場合にも腫脹をきたしうる。

10.口唇の腫脹

著者: 桜井一生

ページ範囲:P.53 - P.55

 はじめに
 口唇の腫脹をきたす疾患には,口唇に限局した疾患,口腔内病変の波及したもの,全身疾患の部分症によるものなど様々な病態が考えられる。したがって口唇部の腫脹の診断に際しては,局所の病変のみにとらわれることなく,口腔内病変の有無や全身疾患の検索も必要となる。本項では,口唇部に限局する病変を中心に比較的頻度の高い疾患について述べる。

11.舌の腫脹

著者: 中島格 ,   宮城千里 ,   中島寅彦 ,   後藤弘毅

ページ範囲:P.57 - P.61

 はじめに
 日常の外来診療でしばしば経験する主訴の1つに舌に関する訴えがある。味覚の異常や舌の痛みがその主なものだが,筆者の所属するような癌専門病院で最も多いのが舌の形態異常を自覚して受診するケースである。それらの多くがふとした機会に自分の舌の一部を異常と感じるもので,有郭乳頭や舌扁桃などわれわれ医師からすれば教科書に記載されている構造であることが多く,その説明に苦心した経験をもつ医師は少なくないだろう。一方こうした日常の外来診療のなかで見逃してしまいがちな重大な舌の変化が隠されていることもあり,的確に診断していくためには一定の手順を有していることが大切である。

12.硬口蓋の腫脹

著者: 吉原俊雄

ページ範囲:P.62 - P.68

 はじめに
 硬口蓋および軟口蓋を含む口蓋の腫脹を呈する疾患は数多くみられ,炎症性疾患や良性および悪性腫瘍,骨組織の増殖性疾患などがあげられる。疼痛,出血や異和感などの自覚症状で気づくものもあればかなりの大きさになって初めて気づくもの,病院を受診し指摘されるまで全く無症状で見過ごされるものもみられる。
 硬口蓋は上顎洞と鼻腔の基底部である口蓋骨が基板となっており、口腔の屋根を形成している。硬口蓋の粘膜は重層扁平上皮で粘膜下組織とともに骨膜に密着しており,粘膜の移動は生じない。硬口蓋の中央は盛り上がって線条となり口蓋縫線を形成する。粘膜下には口蓋腺(小唾液腺)が多数存在し,リンパ組織も散在してみられる。したがって硬口蓋の腫脹の診断,治療を進める場合,その解剖学的特徴より,1)上顎洞の炎症や腫瘍の下方進展,2)口蓋骨自身の腫大。骨腫,骨形成性線維腫(ossifying fibroma)などの骨性疾患,3)粘膜下の小唾液腺由来の腫瘍,4)歯性疾患やその他周辺組織の疾患の波及を念頭に置かねばならない。本項では硬口蓋の腫脹をきたす疾患の具体例を挙げ,その特徴,検査所見,治療法につき述べる。

13.歯肉部の腫脹

著者: 吉田廣

ページ範囲:P.69 - P.74

 はじめに
 歯肉部の腫脹は,歯肉自体あるいは歯や歯槽骨の病変によって生じるため,歯肉のみならず,周辺の歯や歯槽骨を含めて診査することが大切である。また疾患は,とくに障害がなければ放置してもかまわないものから,ただちに治療を要するものまで多岐にわたっているため,適切に診断することが要求される。本項では主として歯肉部に腫脹を呈する疾患の特徴と鑑別診断法について述べる。

14.口腔底の腫脹

著者: 藤吉達也

ページ範囲:P.75 - P.79

 はじめに
 口腔底腫脹の主な原因は,炎症性,嚢胞,および腫瘍によるものに大別される。その診察に際しては,口腔底粘膜表面のみならず,頤下部,顎下部,さらには頸部全体の変化に注意を払うことが肝要である。口腔底領域には,互いに連絡する疎性結合組織性の間隙が存在し,深頸部,縦隔洞まで病変が及ぶ経路となり得るためである。このような解剖学的特徴を理解したうえで,口腔底の腫脹をきたす疾患の系統的診断手順を整理してみたい。

15.頬粘膜の腫脹

著者: 牧本一男

ページ範囲:P.81 - P.85

 はじめに
 頬粘膜の腫脹は臨床的にはよく見られる所見であるが,著者の知る限りではこれまで,その原因,病態,診断,治療に関してそれが1つの論題として取り上げられたことはなかった。このテーマは耳鼻咽喉科,頭頸部外科,歯科,口腔外科に関連しており多くの角度より検討されるべき内容を含んでいる。したがって解剖学的にも病理学的にも,頬部が腫脹をきたす可能性は枚挙にいとまがない観すらある。しかしここでは理論的な可能性ではなく,著者が日頃の臨床で経験した症例に基づき,まずそれらの疾患を分類して列挙してみることにする。
 頬粘膜の腫脹は,狭義にとると粘膜のみに腫脹のある病態に限られるが,臨床的には頬軟部組織の腫大・腫脹も含めてとらえるのが実際的であると考えられる。

16.扁桃の腫脹

著者: 林泰弘

ページ範囲:P.87 - P.91

 はじめに
 口蓋扁桃を中心とするワルダイエル咽頭輪は気道と消化管の入口に存在するmucosa-associatedlymphoid tissue (MALT)の1つである。MALTは外的環境に直接曝露している粘膜を防御するための免疫器官であり,常に軽微な感染を許容しながら免疫応答を繰り返している。乳幼児期よりリンパ濾胞の数,大きさが増え,通常5〜7歳をピークとする生理的肥大が起こる。この肥大は学童期後半に漸次退縮していくが,成人まで持続することがある。また強い急性炎症が起こると扁桃は一時的に腫脹する。そのほか,腫瘍性に腫脹することも比較的多く認められる。口蓋扁桃,咽頭扁桃,舌扁桃(領域)に腫脹をきたす主な疾患を表1に掲げる。このなかで,遭遇する頻度の高い口蓋扁桃,咽頭扁桃の腫脹を中心に,日常臨床上重要と思われる項目に関して述べる。

17.咽頭の腫脹(副咽頭間隙・後咽頭間隙を含む)

著者: 稲村直樹

ページ範囲:P.92 - P.95

 1.腫脹をきたす部位の解剖
 副咽頭間隙(parapharyngeal space)は,咽頭側壁にある粗鬆な結合組織で充たされた間隙であり,内方は扁桃窩と接しており,後方には頸動脈や舌咽神経・迷走神経・副神経・舌下神経を含み,下方は縦隔洞に通じている。図1に模式図を示すが,茎状突起により前後2つの部位に分けられ,副咽頭前隙・後隙と呼ばれる。
 後咽頭間隙(retropharyngeal space)は頸筋膜椎前葉(prevertebral fascia)と咽頭の収縮筋間の疎性結合組織で充たされた間隙であり,小児の場合にはリンパ節を含んでいる(図2)。

18.喉頭蓋の腫脹

著者: 平林秀樹

ページ範囲:P.97 - P.100

 はじめに
 喉頭蓋の腫脹は種々の原因で起こることが知られている。局所的疾患や全身疾患に起因するものなど様々である。本項ではこれら諸疾患の診断のポイントを挙げる。なお治療法に関しては誌面の制限上他の成書などを参考にされたい。

19.仮声帯の腫脹

著者: 湯本英二

ページ範囲:P.101 - P.106

 はじめに
 仮声帯は声帯の上方に位置する粘膜のヒダであり,嚥下時に内転して下気道の保護に役立つ。しかし,声帯の内転による強い声門閉鎖と比較するとその意義は比較的小さい。また,発声機能における役割もほとんど無いと考えられている。したがって,仮声帯の腫脹自体よりも,高度の仮声帯腫脹あるいは合併する声帯の腫脹が気道狭窄や声帯振動の障害を引き起こして初めて症状を発現する。
 本項では,仮声帯の腫脹をきたす主な疾患の特徴と鑑別診断について喉頭像や種々の画像を交えて紹介する。

20.声帯の腫脹

著者: 吉田哲二

ページ範囲:P.109 - P.112

 はじめに
 声帯が何らかの病変で腫脹すると,必ず嗄声をきたす。さらに病変が進むと呼吸困難に進展し,生命の危険をも伴ってくる。声帯は発声をする部位でもあるし,気道でもあるからである。
 そこでまず声帯の腫脹に対する検査法,次に腫脹を呈する疾患とその鑑別法,最後にそれらの治療法について述べる。

21.唾液腺の腫脹

著者: 岡本美孝 ,   戸川清

ページ範囲:P.113 - P.120

 はじめに
 唾液腺部の腫脹は,唾液腺周囲の臓器の疾患,例えば外耳・中耳の炎症,下顎骨,口腔内,特にう歯の炎症波及や腫瘍などによる場合ももちろんあるが,本稿では唾液腺自体の病変による唾液腺腫脹を中心に,その鑑別,診断,治療について記載する。
 腫脹をきたしうる唾液腺疾患は表1に示すごとく多種にわたるが,大別すると1)炎症性疾患,2)腫瘍性疾患,それに自己免疫疾患も含めた3)特殊疾患になる1,2)

22.甲状腺の腫脹

著者: 宮尾源二郎

ページ範囲:P.121 - P.125

 はじめに
 甲状腺の腫脹は炎症性疾患,腫瘍および腫瘍類似疾患,機能異常を伴う疾患などで生じる。甲状腺の炎症性疾患には亜急性甲状腺炎,慢性甲状腺炎,急性化膿性甲状腺炎などがあり,機能異常を伴う疾患としてはバセドウ病が有名である。これらの診断,治療の要件はすでに多くの成書に記述されているので,屋上屋を架するがごとくの愚は避けることにする。本稿においては,主として腫瘍による甲状腺の腫脹について記述することにする。

23.頸部リンパ節の腫脹

著者: 安田範夫

ページ範囲:P.127 - P.131

 はじめに
 頸部リンパ節はさまざまな原因で腫脹をきたす。またリンパ節の他にも頸部腫脹の原因となる疾患も多いので,その鑑別診断に苦慮することがある。鑑別しなければならない頸部腫脹の原因となるさまざまな病態や,頸部リンパ節腫脹の原因となる疾患の詳細・治療法については成書にゆずる。本項では頸部リンパ節腫脹をきたす疾患を簡単にまとめるとともに,頸部の腫脹がリンパ節腫脹とわかったあと何を疑ってどのように診察・検査を進めていくべきかという点を中心にまとめてみた。

24.頸部の先天性嚢胞

著者: 竹内裕美

ページ範囲:P.132 - P.136

 はじめに
 頸部の先天性嚢胞の多くは,無痛性の軟らかな頸部腫瘤以外の症状を呈することは少なく,特徴的な症状がないために悪性腫瘍を含めた頸部の腫瘤性病変との鑑別が問題となる。最近のMRIをはじめとする画像診断法の進歩により診断は比較的容易になってきているが,他の腫瘤性病変との鑑別に苦慮することも少なくなく,また摘出に際しては副損傷や取り残しによる再発の危険性があるため,耳鼻咽喉科医にとっては熟知しておくべき疾患の1つである。
 頸部の嚢胞性疾患のうち,その発生原因が胎生期に起因するものには正中頸嚢胞・側頸嚢胞をはじめとして多くの疾患が挙げられるが,本項ではcystic hygromaなどの脈管系の疾患は他項に譲り,正中頸嚢胞,側頸嚢胞,皮様嚢胞,また頻度は低いが上皮小体嚢胞,頸部胸腺嚢胞について述べる。

25.深頸部感染症

著者: 堀内正敏

ページ範囲:P.137 - P.140

 はじめに
 深頸部感染症の報告が最近数年間に増加している傾向が著しい。症例報告が増加しているのみでなく,一施設における頻度の増加も指摘されている1)。しかもこれらの報告には重篤な症例が少なくないことが示されており,死亡例も報告されている。深頸部感染症(膿瘍)は,現在においても死に至らしめる疾患であるという認識が必要であろう。とくに重症な深頸部感染症について診断と治療の要点を述べることとする。

26.その他の頸部腫脹

著者: 宮原裕

ページ範囲:P.142 - P.155

 はじめに
 頸部腫脹をきたす疾患として他の項目で概説されている先天性嚢胞,唾液腺疾患,鰓性癌,頸部リンパ節の炎症,悪性リンパ腫,転移性リンパ節,甲状腺疾患以外について述べていくことにする。それらには皮膚自身,血管性,リンパ管,神経,筋,他の結合織を発生母地とする炎症性疾患,腫瘍性疾患が鑑別の対象となる。したがって,その腫脹の原因疾患を簡単に鑑別診断することは困難が多いことが予想される。また,極めて稀な代謝性疾患も存在するので一層その診断に難渋することになる。存在部位や各種の画像診断によって,その腫脹ないし腫瘍の質を予測することは今もって難しいことが多い。しかし,各々にはやはり鑑別のポイントとなる所見が存在するもので,それをふまえて順に論述する。

[付録]腫脹をきたす疾患と年齢

著者: 髙橋廣臣

ページ範囲:P.156 - P.162

 はじめに
 頭頸部領域において腫脹をきたす疾患は今回の特集にみられるように実に多種多様である。炎症性の腫脹があり,先天性疾患による腫脹があり,腫瘍性の腫脹がある。循環障害による浮腫もある。またどちらとも言い難い木村病のようなもの,血管腫や神経鞘腫のような真正の腫瘍ではなくて組織奇形に属するといわれているようなものもある。しかし,己の首を締めることになりかねないので病因論に言及することは止めることにして,診断が比較的難しいとされている頸部と口腔内の腫脹をきたす疾患について,どのような年齢の患者にどのような腫脹をきたす疾患がみられるかにつき統計的観察を行った結果を述べ,日常診療の一助にしたい。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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