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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科66巻13号

1994年12月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

耳介前・下部に発生する石灰化上皮腫

著者: 佐古田一穂 ,   牧野邦彦 ,   田原真也 ,   木西實 ,   天津睦郎 ,   木村照

ページ範囲:P.1024 - P.1025

 石灰化上皮腫(calcifying epithelioma)は,若年者の頭頸部に好発する比較的稀な腫瘍である。頭頸部のなかでも耳前部,耳下部に多くみられ,術前診断に際して耳下腺腫瘍などとの鑑別が問題となる。
 最近われわれが経験した石灰化上皮腫3症例を示す(図1〜3)。患者はいずれも若年者で,耳前部または耳下部に半年から1年前より徐々に増大する腫瘤を認めた。

Current Article

微小血管吻合による遊離組織移植の臨床

著者: 田原真也 ,   高木正 ,   木西實 ,   牧野邦彦 ,   天津睦郎

ページ範囲:P.1027 - P.1034

 はじめに
 微小血管吻合とは手術用の顕微鏡下に内径0.5〜2.0mmの血管を吻合して血流を再開させる技術である。歴史的には1959年Seidenbergの遊離空腸移植1)をはじめとして,遊離腸管移植が1960年代に散見される。しかし当時は自動吻合器を用いたものが主で,内径2mm以下の血管吻合はかなり困難であったと推測される。1960年代後半から切断肢指再接着2),1970年代に入って遊離組織移植3)の2つの分野で微小血管吻合の技術が目覚ましく発達した。さらに1980年代後半には,頭頸部癌摘出後の再建にも微小血管吻合を利用した組織移植が盛んに行われるようになり,現在では頭頸部外科の標準術式にもなろうとしている。われわれも1987年から遊離組織移植による頭頸部再建を本格的に開始し,現在までに400余例を経験した。本術式の有利な点は,癌摘出で生じた組織欠損に対して,必要とする組織を自由に移植できることである4)。しかもその移植組織自体が豊富な血行を有していることは創傷治癒の面からも有利である。現在われわれが行っている遊離組織移植による頭頸部再建についてその概要を紹介する。

原著

頬部悪性リンパ腫の2症例

著者: 原田竜彦 ,   行木英生

ページ範囲:P.1036 - P.1039

 はじめに
 頭頸部領域における悪性リンパ腫は,頸部リンパ節,ワルダイエル輪,鼻副鼻腔などが多くを占め,頬部への発生は稀であるとされている。しかし,このたびわれわれは頬部に発生した悪性リンパ腫2例を5か月の間に相次いで経験したので若干の文献的考察を加え報告する。

癌性変化が疑われた頬粘膜腫瘍症例

著者: 松浦徹 ,   湯田厚司 ,   原田輝彦 ,   山田弘之 ,   岡本耕典 ,   福山智子 ,   山田哲生 ,   坂倉康夫

ページ範囲:P.1040 - P.1043

 はじめに
 耳鼻咽喉科領域では鼻腔や喉頭の乳頭腫が癌性変化をきたしうることが示唆されており,注意を要するとされている。一方,口腔内乳頭腫は比較的よくみられる疾患であるが,その悪性変化についての報告は極めて稀である。
 今回われわれは,口腔内乳頭状腫瘍に対し頻回の生検と手術を行ったが悪性像を認めなかった症例が,その治療の約1年後に頬粘膜癌として再発をした1症例を経験したので報告する。

頬部の巨大な嚢胞形成を伴う多形性腺腫症例

著者: 藤村和伸 ,   牧嶋和見 ,   黒田嘉紀 ,   工藤香児 ,   杉本卓矢

ページ範囲:P.1044 - P.1047

 はじめに
 耳下腺および耳下部の嚢胞には,唾液腺導管由来の嚢胞,鰓原性嚢胞,類皮嚢胞や類表皮嚢胞(表皮嚢胞)などがある。多形性腺腫は唾液腺腫瘍の過半数を占める頻度の高い腫瘍であるが,その嚢胞形成についてはあまり知られていない1,2)。今回われわれは,頬部の巨大な嚢胞形成を伴う多形性腺腫症例を経験したので,若干の考察を加え報告する。

上皮小体癌の1例

著者: 石田春彦 ,   杉多雅美 ,   天津睦郎

ページ範囲:P.1048 - P.1051

 はじめに
 原発性上皮小体機能亢進症をきたす病変は過形成,腺腫,癌に大別される。そのなかで癌は決して多いものではないが,本邦では欧米に比べてその頻度が高いといわれている1)。上皮小体癌では頸部に腫瘤を触知することも多く,また著明な高カルシウム血症を呈することが知られている。それに伴う様々な全身症状がみられるが,手術により劇的に改善する症例もある。
 今回われわれは頸部腫瘤とともに,著しい高カルシウム血症と骨病変を呈した上皮小体癌症例を経験したので報告する。

成人に発症した鎖骨上窩嚢胞状リンパ管腫の1例

著者: 村上匡孝 ,   丁剛 ,   四ノ宮隆 ,   丸山晋

ページ範囲:P.1052 - P.1054

 はじめに
 頭頸部領域のリンパ管腫の大多数は出生時から2歳未満に発見される小児症例であり1),成人症例は比較的稀である2)。今回われわれは,老人の鎖骨上窩に発生した嚢胞状リンパ管腫を手術する経験を得たので,若干の文献的考察を加え報告する。

頸動脈小体腫瘍摘出術における内シャントチューブの応用

著者: 石山哲也 ,   勝野哲 ,   坂口正範 ,   根津公教 ,   宮下浩一 ,   佐々木修 ,   荻場貴夫 ,   菊川正人 ,   竹前紀樹 ,   長島久 ,   石井恵子

ページ範囲:P.1055 - P.1058

 はじめに
 頸動脈小体腫瘍の摘出術では腫瘍と頸動脈の剥離および出血のコントロールが問題となる。今回われわれは頸動脈内シャントチューブを用いた頸動脈小体腫瘍摘出術を2症例に対して行い,良好な結果を得たので報告する。

鼓室内顔面神経鞘腫の1症例

著者: 滝沢竜太 ,   上野博史 ,   八木聰明

ページ範囲:P.1059 - P.1062

 はじめに
 顔面神経鞘腫は日常の診療上,比較的まれな疾患であり,その早期診断は一般に困難とされている。最近われわれは,左耳痛と同側の急激な感音難聴を主訴に受診し,さらに経過中,左顔面神経麻痺を呈し,鼓膜切開下の生検にて鼓室内顔面神経鞘腫を診断し得た1症例を経験した。本症例では10年前にも左顔面神経麻痺に罹患し,保存的治療によって治癒した既往がある。本症例における臨床経過および手術所見を中心に若干の考察を加えて報告する。

多発神経症状を呈したRamsay Hunt症候群の4症例

著者: 鈴木香代 ,   横島一彦 ,   渡辺秀行 ,   山岸茂夫 ,   馬場俊吉 ,   八木聰明

ページ範囲:P.1063 - P.1066

 はじめに
 Ramsay Hunt症候群(以下Hunt症候群)は水痘帯状疱疹ウイルス感染によりおこる耳介の帯状疱疹,末梢性顔面神経麻痺,内耳障害を3主徴とする症候群である。外耳道や耳介の帯状疱疹内耳障害のいずれかの症状を欠く不全型Hunt症候群が存在する一方,3主徴の他に第Ⅶ,Ⅷ脳神経以外の神経症状を合併することが知られている。多発神経症状を合併するHunt症候群について本邦では1952年に川岡ら1)が初めて第Ⅴ,Ⅹ,ⅩⅡ脳神経症状を合併した例を報告しており,渉猟し得た範囲では,以降17例が報告されているのみである1〜15)。今回われわれは,多発神経症状を合併したHunt症候群の4例を経験したので報告する。

聴神経腫瘍の1例の聴性脳幹反応(ABR),蝸電図(ECochG)と側頭骨病理

著者: 岩崎真一 ,   加我君孝 ,   上房啓祐 ,   大蔵嗔一

ページ範囲:P.1069 - P.1073

 はじめに
 聴神経腫瘍(acoustic neuroma:AN)の診断において,聴性脳幹反応(Auditory brain stem res-ponse:ABR),蝸電図(Electrocochleography:ECochG),耳小骨筋反射などの他覚的聴力検査法は,従来の聴覚心理学的検査(語音明瞭度検査,自記オージオメトリー,SISIなど)と比べて陽性率が高く,現在広く用いられている。とりわけABRは診断率が90%以上と高率で,施行も容易であることから,ANのスクリーニング検査として定着している。
 ANにおけるABRの波形は変化に富んでおり,1)Ⅰ波と潜時の延長したⅢ,Ⅴ波,2)Ⅰ波と潜時の延長したV波,3)Ⅰ波のみ,4)無反応,などが認められる1)が,これらの波形の変化とANにおける内耳病態との関係は明らかではない。
 ANの側頭骨病理はこれまでにも多数の報告が認められるが,聴力検査の施行してあるものは少なく2〜6),ABR, ECochGの所見のある報告は,われわれの調べた範囲では過去に認められない。われわれはABR, ECochGを施行したANの1例の側頭骨病理を調べたので,これを比較検討し報告する。

鏡下咡語

通勤と推理小説

著者: 廣瀬肇

ページ範囲:P.1076 - P.1077

 医者になって以来,毎日片道1時間半ほどの電車通勤を続けている。この程度の時間を掛けて通うのは学生時代からのことでもあるので,人生の2/3位の期間,1日のうち3時間近くを乗物の中で費やしている計算になる。こんな状況は京浜地区や京阪神地区に特有なものらしく,各地の大学などに伺ってみると職住近接,せいぜい車で30分以内という方が多いのがうらやましく感じられることもある。
 こうした通勤時間を無駄と考えるならば,その総和というものは気が遠くなるような数字になってしまうであろう。しかし通勤の時間というものにもそれなりの功徳がないわけでもない。

連載エッセイ 【Klein aber Mein】・5

気管瘻造設法と気管瘻拡大法/舌骨について

著者: 浅井良三

ページ範囲:P.1079 - P.1081

 緊急気管切開のケースは減少した。かつては気管切開は套管抜去困難症を考慮して輪状軟骨を損傷しないこと,気管孔を十分大きくして気管縁軟骨の壊死を生じないよう配慮すること等の注意が唱えられた。実際には気管輪軟骨を正確に正中で2本ないし3本を切除して十分な気管孔を開いている。
 気管軟骨の切除なしに適当な気管孔を造設する方法はないか考案して試みた。

海外トピックス

北欧の耳鼻咽喉科ワークショップ(旅行談)

著者: 中島務

ページ範囲:P.1082 - P.1084

1994年の8月,スウェーデン,ノルウェーを訪問し耳鼻咽喉科ワークショップとソーシャルプログラムに出席したので北欧の情勢共々この欄を借りて報告したいと思います。
 日本からスウェーデンの首都,ストックホルムへの直接乗り入れはスカンジナビア航空(SAS)が行っており,私は旅行社にSASを希望する旨,数か月も前から申し込んでいた。しかし旅行社の話によると,SASによる日本人職員の首切りの為,なかなかそのticketが手に入りにくくなっているという。飛行機は飛んでいるのだからなんとかなるとは思うのだが,結局SASではなく口本航空(JAL)にてパリ経由にてストックホルムに入ることになった。これが一つ,つまづきのもとで8月20日成田から少し遅れて飛行機に乗り込んだは良いが,なかなか出発しない。アナウンスによるとロシアがロシア上空を飛ぶ飛行機の便数を制限しているので順番待ちだという。結局2時間以上も遅れて出発し,パリからストックホルムへの接続便には間に合わなくなった。

講座 頭頸部外科に必要な局所解剖・18

喉頭(1)

著者: 佐藤達夫

ページ範囲:P.1086 - P.1092

 喉頭は飲食道と気道が分離する箇所に,気道の安全装置として発生した器官であり,下咽頭の前に隣接している。
 咽頭は,魚類の消化管では鰓のある区間に相当する。鰓には,湿った薄い膜がひだをつくって重なり表面積を拡大しており,血管に富むのでガス交換の場として活用されている。魚類の心臓は鰓のすぐ尾腹側に作られている。ここは,ガス交換の場である鰓に効果的に血液を送りこむのに最も適した場所である。
 陸生動物の肺は鰓腸の尾側端が膨れ出て作られたから,咽頭とも心臓とも非常に接近している。人体でも,肺は心臓のすぐ傍にあるが,咽頭とはかなり離れている。心臓と肺が胸郭の中に降下してしまったからであるが,もちろん肺は咽頭と連絡を保っているはずである。その連絡管が喉頭と気管である。

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耳鼻咽喉科・頭頸部外科 第66巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

人名索引

ページ範囲:P. - P.

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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