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原著
聴神経腫瘍の1例の聴性脳幹反応(ABR),蝸電図(ECochG)と側頭骨病理
著者: 岩崎真一1 加我君孝2 上房啓祐3 大蔵嗔一3
所属機関: 1武蔵野赤十字病院耳鼻咽喉科 2東京大学医学部耳鼻咽喉科学教室 3帝京大学医学部耳鼻咽喉科学教室
ページ範囲:P.1069 - P.1073
文献購入ページに移動聴神経腫瘍(acoustic neuroma:AN)の診断において,聴性脳幹反応(Auditory brain stem res-ponse:ABR),蝸電図(Electrocochleography:ECochG),耳小骨筋反射などの他覚的聴力検査法は,従来の聴覚心理学的検査(語音明瞭度検査,自記オージオメトリー,SISIなど)と比べて陽性率が高く,現在広く用いられている。とりわけABRは診断率が90%以上と高率で,施行も容易であることから,ANのスクリーニング検査として定着している。
ANにおけるABRの波形は変化に富んでおり,1)Ⅰ波と潜時の延長したⅢ,Ⅴ波,2)Ⅰ波と潜時の延長したV波,3)Ⅰ波のみ,4)無反応,などが認められる1)が,これらの波形の変化とANにおける内耳病態との関係は明らかではない。
ANの側頭骨病理はこれまでにも多数の報告が認められるが,聴力検査の施行してあるものは少なく2〜6),ABR, ECochGの所見のある報告は,われわれの調べた範囲では過去に認められない。われわれはABR, ECochGを施行したANの1例の側頭骨病理を調べたので,これを比較検討し報告する。
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