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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科66巻2号

1994年02月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

ハイビジョン立体撮影の耳手術への応用

著者: 八木聰明 ,   望月亮 ,   斉藤博

ページ範囲:P.92 - P.93

 医学教育,とくに卒後教育における視覚材料の利用は極めて有用である。そのなかでも内視鏡あるいは顕微鏡を用いた手術の状況をビデオ画像を通して,on-lineあるいはoff-lineで多くの人に供覧することは,現在最も広く用いられている方法である。この方法には多くの長所があるが,短所がないわけではない。その少ない短所のなかで最も大きなものは,実際に術者が見ているのは立体であるにもかかわらずビデオ画像は平面であり,立体感は自分の解剖学的知識や経験から構築しなくてはならない点である。この短所は中耳や内耳の手術では大きな問題であり,これが解決されることは教育を含めて極めて重大な意味をもっている。
 一方最近,テレビの撮影や再生技術の向上にも目を見張らせるものがあるが,ハイビジョンもその1つである。走査線の数が従来型(525本)のテレビ(NTSC方式)の倍以上(1,125本)あることもあって,画像が極めて鮮明である。

原著

高浸透圧性非ケトン性糖尿病昏睡をきたした喉摘症例—本邦報告169例の検討も含めて

著者: 小川佳伸 ,   松永喬 ,   宮原裕 ,   山中泰輝 ,   岡亮

ページ範囲:P.95 - P.99

 はじめに
 高浸透圧性非ケトン性糖尿病昏睡(以下HNCと略す)は,高齢者に好発し致命率の高い糖尿病の合併症として知られている。本邦では1965年橘ら1)が報告して以来,多くの報告があるが耳鼻咽喉科領域の報告は少ない。最近では脳神経外科領域2〜5)や心臓外科領域6)での報告が多い。
 本症の特徴は,1)著しい高血糖(600 mg/dl以上),2)血漿浸透圧の上昇(350 mOsm/kg以上),3)ケトアシドーシスを欠くか軽度,4)著明な脱水と多彩な神経症状を呈することとされている2)
 われわれは,58歳男性の喉頭全摘出術後に脱水を誘因として生じたHNC症例を経験したので報告するとともに,最近本邦で報告された転帰の明らかなHNC症例について統計的検討を加えた。

舌紡錘細胞癌の1例

著者: 成田七美 ,   今井容子 ,   山村幸江 ,   吉原俊雄

ページ範囲:P.101 - P.105

 はじめに
 頭頸部領域における悪性腫瘍は癌が最も多く,次いで肉腫である。上皮性悪性腫瘍で紡錘細胞を主体とする一見肉腫様の成分を有するいわゆる癌肉腫は,1864年Virchow1)が癌肉腫として最初に報告した。しかし現在では電子顕微鏡および免疫組織化学的組織分類により紡錘細胞は上皮由来の細胞と考えられ,紡錘細胞癌(spindle cell car-cinoma)という名称が一般的に用いられている。頭頸部領域では喉頭に発生したものはしばしば報告されているが,舌は喉頭に比べ発生頻度は低い。われわれは舌に発生し,組織学的診断が困難であった紡錘細胞癌の1例を経験したので報告する。

原発性胆汁性肝硬変の合併をみたシェーグレン症候群の2症例

著者: 前田学 ,   斉藤龍介 ,   宇野芳史 ,   金谷眞 ,   三崎敬三 ,   大内伸介 ,   渡辺周一

ページ範囲:P.106 - P.109

 はじめに
 シェーグレン症候群は涙腺,唾液腺などの外分泌腺を中心に発症する原因不明の疾患であるが,各種の自己免疫現象を示すことから自己免疫性疾患の1つと考えられるようになり,現在では全身性疾患として把握されている。耳鼻咽喉科領域では口渇などの乾燥症状を主訴にして訪れることが多い。近年,患者数増加の傾向にあるが,根本的治療は確立されておらず直接生命に関わる症状ではないため,これらの乾燥症状に対して大半は人工唾液のような対症療法で経過観察がなされていることが多い。
 一方,原発性胆汁性肝硬変(primary biliarycirrhosis:PBC)はルポイド肝炎とともに代表的な自己免疫性肝疾患と考えられており,中年以後の女性に好発し,無症候のまま長期間経過する例があるものの,黄疸発現後は数年で死亡するといわれる1,2)。この両者はしばしば合併することが知られており,その合併の実態を知ることはわれわれ耳鼻咽喉科医にとっても臨床上有意義なことと思われる。今回,われわれはシェーグレン症候群経過中にPBCを合併した症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

両側高度難聴,片側外耳道閉鎖を伴ったKniest dysplasiaの1症例

著者: 杉村浩美 ,   加我君孝 ,   君塚葵

ページ範囲:P.111 - P.115

 緒言
 Kniest dysplasiaは非常にまれな骨系統疾患の1つであり,小人症,特有な顔貌,運動障害など特異な臨床所見を示す。本疾患には難聴が合併することが知られているが,まれな疾患であるため耳鼻咽喉科領域での詳細な報告はほとんどない。歴史的には,1952年にKniest1)がatypical chon-drodystrophyとして初めて報告し,1973年Mar-oteauxら2)が1独立疾患であるとし,1978年公表の国際命名案3)によってKniest dysplasiaと改訂されている。われわれは両側性高度難聴,片側性外耳道閉鎖を伴ったKniest dysplasiaの1例を経験したので報告する。

深頸部膿瘍を生じた下咽頭魚骨異物の1例

著者: 石川健 ,   南吉昇

ページ範囲:P.117 - P.120

 はじめに
 頸部筋膜間隙に広範囲に広がった感染症は総称して深頸部膿瘍と呼ばれており,以前は重篤で致死的な疾患であったが,近年は抗生剤の進歩によりその危険性は減少している1〜3)。とはいえ.時には不幸な転帰をとる場合もあり得るので臨床上注意を要する疾患である。今回われわれは,下咽頭に刺入した魚骨異物により深頸部膿瘍をきたした症例を経験したので,その経過を述べるとともに,文献的考察を加えて報告する。

血小板減少症を伴った鼻腔内悪性リンパ腫の1症例

著者: 陣内賢 ,   秋元利香 ,   大西正樹 ,   長谷川修 ,   檀和夫 ,   潮建司朗 ,   横島一彦 ,   青木秀治 ,   八木聰明

ページ範囲:P.122 - P.125

 はじめに
 耳鼻咽喉科領域で遭遇する悪性リンパ腫は,典型的リンパ組織を有するワルダイエル輪や頸部リンパ節に好発し,それらを欠く鼻・副鼻腔での発生頻度は比較的少ない1)。鼻・副鼻腔悪性リンパ腫の初発症状として,鼻閉,鼻出血,頬部腫脹,頬部痛,視力低底下,眼痛が挙げられるが2,3),進行例では骨髄浸潤による造血障害が原因となり貧血,好中球や血小板の減少などがみられる4)
 一方,悪性リンパ腫発症時より造血障害が認められる例として,特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の経過中に悪性リンパ腫が発症した症例が報告されている5〜7)
 今回われわれは,鼻・副鼻腔に限局したstage Iの悪性リンパ腫であるにもかかわらず,初発時から血小板減少をきたしていた症例を経験した。この症例では,上記報告例とは血小板減少の発生機序が異なると考えられ,この点の検討も加え報告する。

頬粘膜に発生した有茎性脂肪腫の1症例

著者: 要英美 ,   森田恵 ,   吉原俊雄

ページ範囲:P.131 - P.133

 緒言
 脂肪腫は成熟した脂肪組織の増殖から成る非上皮性の良性腫瘍であり,脂肪組織の生理的存在部位すべてに発生する。良性軟部組織腫瘍のなかでは最も発生頻度が高く,また頸部は脂肪腫の好発部位であり,脂肪腫の全体数の約10%を占めるといわれている1)。今回われわれは,頭頸部領域では比較的少ないとされている口腔領域に発生した有茎性の脂肪腫を経験したので報告する。

当科における最近の甲状腺手術例の検討(第3報)

著者: 山田哲生 ,   篠木淳 ,   山田弘之 ,   矢野原邦生

ページ範囲:P.135 - P.139

 緒言
 甲状腺手術は甲状腺が周囲臓器とくに喉頭,気管と隣接し,さらに反回神経が裏面を走行することから,一般外科との境界領域疾患とはいえ耳鼻咽喉科頭頸部外科が行う機会がふえている。当科でも1986年より甲状腺疾患に対し積極的に治療を行っており,過去に2回手術例の検討をしている1,2)。前回第2報2)では初期の3年間(1986年〜1988年)の報告をしているが,その後さらに4年が経過し手術症例数も飛躍的に増加した。また手術例数のみならず,その内容にも変化がみられる。今回1989年から1992年までの4年間で経験した241例を1986年から1988年までの96例に加え,合わせて報告するとともに,前半の3年間の96例との比較検討を行った。また1988年より術前検査として穿刺吸引細胞診を取り入れていることは第2報2)で報告したが,1989年からはさらに当院で行われている人間ドックに甲状腺エコーが取り入れられたこと6)から手術症例数およびその内容が変化しており,これも含めて検討を行った。

20年の経過の後,喉頭全摘出術を余儀なくされた喉頭verrucous carcinomaの1症例

著者: 浜村宣宏 ,   福島典之 ,   西田俊博

ページ範囲:P.141 - P.145

 はじめに
 Verrucous carcinomaは扁平上皮癌の亜型であるが,臨床的,病理組織学的に特異な生物学的特性を有することが知られている。その発生部位は頬粘膜が最も多く,喉頭に発生するものは比較的まれである。今回,初診から約20年を経過し,喉頭全摘出術を余儀なくされた喉頭verrucouscarcinomaを経験したので,その概要について報告する。

三叉神経第Ⅲ枝領域痛を初発症状とした術後性上顎嚢胞の1症例

著者: 山田光輝 ,   石原之法 ,   島田早苗 ,   相原康孝

ページ範囲:P.146 - P.149

 はじめに
 術後性上顎嚢胞は顔面の疼痛をきたす耳鼻科的疾患としてよく知られている。症候性三叉神経痛のうち一般的に頬部から上顎歯敵部にかけての三叉神経第Ⅱ枝領域の放散痛を訴え,さらに頬部腫脹や複視,眼球突出,眼窩深部痛などの眼症状があり,副鼻腔手術の既往があれば比較的診断は容易な疾患である。われわれは,嚢胞が側頭下窩に進展した術後性上顎嚢胞で,三叉神経第Ⅲ枝領域痛を初発臨床症状としたため,あたかも特発性三叉神経痛のようであった症例を経験したので報告する。

両側内耳道拡大を伴うbranchio-oto syndromeの1症例

著者: 中島智子 ,   藤本政明 ,   笹木収 ,   増田游 ,   田村耕三

ページ範囲:P.151 - P.156

 はじめに
 胎生4週から5週における第一,第二鰓弓の発生異常により難聴,耳瘻孔,側頸部瘻孔,耳介奇形,副耳,下顎骨発育不全などの奇形が生じ,様々な複合奇形として発現することは周知のことであるが,このうち難聴(伝音性,感音性あるいは混合性),耳瘻孔,側頸部瘻孔を呈するものは,特にbranchio-oto syndromeと呼ばれており1),本邦ではこれまで16例の報告を認めるのみである2〜13)。今回われわれは,両側内耳道の著明な拡大を呈したbranchio-oto syndromeの1症例を経験したので,若干の考察を加えて報告する。

キルシュナー鋼線による頬部骨折の固定法について

著者: 黒川泰資 ,   今井哲也 ,   河北公孝 ,   野田暉夫

ページ範囲:P.157 - P.160

 はじめに
 顔面骨骨折のなかで頬骨骨折の占める割合は,鼻骨骨折に次いで多く約20%である1)。この骨折は,受傷後数日間は顔面の腫脹のため発見されにくい。しかし,鼻翼から上口唇の痺れや開口障害や顔面の変形で後日気づくことが多い。整復路としては,1) Gilliesの側頭部切開法,2)眉毛外側切開法,3)口内法,4)経上顎洞法2),5)頬骨部小切開法があり,転位した骨片を固定する方法には,1)骨縫合,2)バルーンによる固定法3),3)キルシュナー鋼線による固定4〜9)シリコンブロック充填法による固定10),5)特注骨鈎による固定11)が主に使われている。今回,われわれは口内法でapproachし,キルシュナー鋼線による新しい固定法を試み良好な結果が得られた。最近1年間の症例と本手術方法の有用性について文献的考察を加えて報告する。

鏡下咡語

全人的医療—若い耳鼻科医に望むもの

著者: 仙頭哲夫

ページ範囲:P.128 - P.129

 Q.O.L (Quality ofLife)やI.C.(Informed Con-sent)ばやりである。最近では,どの医学雑誌でもたいていQ.O.L.やI.C.の文字を見かける。
 患者のQ.O.L.が大事というが,医師のQ.O.L.も考えろという声も聞く。日本の開業医はいわれなくても昔からちゃんとI.C.をやっている,と主張する人もいる。その当否はともかくとして,これからの医療にとり入れる必要のある要素を指摘する言葉であることは間違いない。

講座 頭頸部外科に必要な局所解剖・12

甲状腺(2)—上・下甲状腺動脈と迷走神経

著者: 佐藤達夫 ,   坂本裕和

ページ範囲:P.162 - P.171

 血中に分泌物を放出する内分泌器官では血管が豊富である。その典型例として副腎とともに甲状腺があげられる。4本の甲状腺動脈の供給総血液量は脳のそれに匹敵し,各1本の太さはおおよそ橈骨動脈に相当するという。このように発達のよい甲状腺の動脈には,次のような特徴がみられる(図1)。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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