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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科67巻10号

1995年10月発行

鏡下咡語

頭頸部腫瘍と血液型の関連性

著者: 樋口栄作1

所属機関: 1市立釧路総合病院耳鼻咽喉科

ページ範囲:P.960 - P.961

文献概要

 1.ABO式血液型と頭頸部腫瘍との関係
 ABO式血液型は1900年Landsteinerらによって初めて発見され,以来輸血や臓器移植の際に重要な役割を果たしているが,過去の膨大な統計学的調査から,ABO式血液型の違いによってある種の疾患の罹患率に有意な差がみられることが知られている。特に胃癌など消化器系の悪性腫瘍は,O型に比べA型は罹患率が有意に高いことが知られている。ABO式血液型抗原の生化学的本体は糖鎖抗原である。糖鎖抗原にはA抗原,B抗原,H抗原があり,これらは糖転移酵素の活性によって決定される。ABH血液型抗原の生理的な機能はまだよく分かっていないが,何らかの認識機構に関係していることが推測されている。腫瘍とABO式血液型との関連性は,腫瘍のABO式血液型抗原(ABH血液型抗原)の量に依存することが考えられる。何故なら,ABH血液型抗原が何らかの認識機構を担っている場合,抗原量の多寡によって発癌性も左右されると考えられるからである。ABH血液型抗原は全身の組織細胞に分布しているが,その存在部位を大別すると細胞膜上と分泌液中に分かれる。量的に比較すると臓器別には胃が最も多く,次いで十二指腸や胆嚢,膵臓,唾液腺など上部消化管系の分泌臓器に多く分布している(表)。
 O型に比べA型の罹患率が高い腫瘍には,胃癌,結腸,直腸癌,膵臓癌,子宮癌,卵巣癌,乳癌,唾液腺腫瘍などがあるが,この中にABH血液型抗原量の豊富な消化管系の分泌臓器が多く含まれていることは興味深い。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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