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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科67巻12号

1995年11月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

モルモット顔面神経における神経束の立体構築

著者: 横井隆司 ,   村上信五 ,   柳原尚明

ページ範囲:P.1004 - P.1005

 側頭骨内顔面神経は,運動神経である太い神経線維群と知覚線維群や自律経である細い線維群が識別されているが,その詳細な空間的配列は不明な点が多い。一方,側頭骨外顔面神経は神経周膜が発達し複雑な神経束構造を呈している。このような神経構造を理解するために,モルモットを用いてコンピューターによる側頭骨内外の顔面神経の三次元構築を試みた。
 モルモットの側頭骨内外の顔面神経を摘出し,厚さ7μmの連続切片を作成し,アザン染色を行った。側頭骨内では濃く染色される細い神経線維群の輪郭を顕微鏡描画装置で写し取り,側頭骨外では全ての神経束の輪郭を写し取った。これらをスキャナーによりコンピューター入力し,三次元画像解析装置および三次元構築ソフトを使用して立体構築した。

手術・手技

頭頸部再建外科における遊離組織移植の導入—初心者に有用な血管吻合手技について

著者: 西村俊郎 ,   田中佐一良 ,   三輪高喜 ,   古川仭

ページ範囲:P.1007 - P.1010

 はじめに
 頭頸部領域の再建には遊離組織移植が必須であるが,微小血管吻合の技術が必要でありその実施は必ずしも容易ではない1)。一方,先人たちの努力により安全で確実な遊離移植組織が開発され積極的な施行が推奨されている2)。われわれは,再建症例の増加に伴い,当科単独による遊離組織移植を導入した。導入当初は最も問題が多く,この時期を振り返ることは今後この手技を導入しようとする他施設の参考になるものと考えられる。われわれの血管吻合手技の概略を示し遊離組織移植導入時の症例を検討し問題点を探り考察を加えて報告する。

原著

鼻腔原発扁平上皮癌16症例の臨床的検討

著者: 原口秀俊 ,   海老原敏 ,   真島一彦 ,   吉積隆 ,   羽田達正 ,   平野浩一

ページ範囲:P.1012 - P.1016

 緒言
 上顎洞に原発する扁平上皮癌はそれほど珍しい疾患ではないが,固有鼻腔に原発する扁平上皮癌は比較的まれである。
 今回われわれは,当院が1962年に開設されて以来31年間に当科において初回治療を行った16例の鼻腔原発扁平上皮癌の臨床経過,治療,予後などにつき若干の考察を加えて報告する。

縦隔サルコイド病変を合併した下咽頭癌の1例

著者: 加藤修 ,   小野多知夫 ,   土井幹雄 ,   大谷信一 ,   米納昌恵 ,   草刈潤 ,   浦川陽一

ページ範囲:P.1018 - P.1022

 はじめに
 今回われわれは,縦隔サルコイド病変を合併した下咽頭癌の症例を経験した。両者の合併は報告もまれで,悪性腫瘍の臨床上,考慮すべき諸問題を含んでいるため,文献的考察を加えて報告する。

術後性遅発性迷路瘻孔

著者: 石尾健一郎 ,   水野正浩 ,   中村雅一

ページ範囲:P.1024 - P.1029

 はじめに
 迷路瘻孔は主として真珠腫性中耳炎,まれに慢性化膿性中耳炎に伴う肉芽性病変が原因となって迷路骨胞の破壊をきたすことにより生じる。
 本来,open法による乳突蜂巣削開術の目的の1つには,このような中耳炎の合併症である迷路瘻孔の予防がある。
 今回われわれは,open法による乳突蜂巣削開術の術後に長期間を経て遅発性に迷路瘻孔を生じた症例を経験したので報告する。

顔面神経麻痺を主訴とした小児多発性硬化症の1例

著者: 嘉村恵理子 ,   木下俊之 ,   馬場俊吉 ,   八木聰明

ページ範囲:P.1030 - P.1034

 はじめに
 多発性硬化性(multiple sclerosis,以下MS)は,髄鞘を選択的に障害し神経症状の寛解と増悪を繰り返す脱髄性疾患である。MSは若年成人に好発すると考えられてきたが,近年小児期発症例の報告も散見されるようになった1,2)。しかし,このほとんどが小児神経科によるもので,耳鼻咽喉科からの報告は渉猟した範囲では見当たらない。
 今回われわれは顔面神経麻痺を主訴に来院し,その経過とMRI所見よりMSと考えられた7歳女児例を経験したので報告する。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群を合併した末端肥大症の1例

著者: 松田英賢 ,   鈴木健男 ,   周藤裕治 ,   井上雄一

ページ範囲:P.1036 - P.1040

 はじめに
 睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome:以下SAS)は,無呼吸の頻度や持続時間が増大すると肺高血圧,右心不全,高血圧,不整脈などの循環障害を引き起こし,患者の生命予後に大きな影響をもたらすことが知られている。末端肥大症にSASが高率に合併することは知られている1〜3)が,本邦での報告例は少ない4,5)
 今回,換気障害から肺性心を生じ,気管切開術で救命できた閉塞性睡眠時無呼吸症候群(obstructive sleep apnea syndrome:以下OSAS)を合併した末端肥大症の1例を経験したので報告する。

急性感音難聴,平衡障害で発症した前下小脳動脈領域の脳幹梗塞症例

著者: 藏内隆秀 ,   矢部多加夫 ,   吉本裕 ,   大藏眞一 ,   澤木誠司

ページ範囲:P.1041 - P.1046

 はじめに
 前下小脳動脈(AICA)に障害が起こると多彩な耳科的症状を呈し,これらはしばしばメニエール病や突発性難聴と鑑別が困難なことがある。しかし,十分な神経耳科学的検査および画像検査を行うことによって病巣診断ができうると考えられる。今回われわれは,急性感音難聴と回転性のめまいで発症した前下小脳動脈領域の脳幹梗塞の1例を経験したので報告する。

鼻副鼻腔髄外性形質細胞腫の1剖検例

著者: 宇野芳史 ,   斉藤龍介 ,   金谷真 ,   波多野篤

ページ範囲:P.1048 - P.1051

 はじめに
 軟部組織に原発する髄外性形質細胞腫は比較的まれな腫瘍であるが,頭頸部領域,特に鼻副鼻腔を含む上気道に原発することが多い。その治療には従来,手術,放射線あるいは両者の併用などが主として行われてきたが,局所のコントロールができれば予後は比較的良好であるといわれている1〜3)。しかしながら,形質細胞腫は,元来血液疾患の1つで,再発例や多発性骨髄腫へ移行した例も少なからず報告されており,その予後については必ずしも予断を許さない一側面をもっている4〜6)
 今回われわれは,M蛋白を認めず,鼻副鼻腔領域に孤立性髄外性形質細胞腫として発症しながら,比較的急速に全身転移をきたした髄外性形質細胞腫の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

異常眼球運動を示した転換型ヒステリーの1症例

著者: 三枝英人 ,   青木秀治 ,   八木聰明

ページ範囲:P.1063 - P.1068

 はじめに
 精神分裂病,躁うつ病,ヒステリーなどの精神疾患で観察されるさまざまな異常眼球運動について,数多くの報告1〜3)があるが,実際の眼球運動を記録したものは少ない。今回,初診時の異常眼球運動所見より中枢性めまいが疑われ,最終的に転換型ヒステリーと診断され,精神医学的アプローチによって,めまいおよび異常眼球運動の消失をみた症例を経験したので,その異常眼球運動の記録を示すとともに,文献的考察を加えて報告する。

喉頭に発生した成人型横紋筋腫の1症例

著者: 前田陽一郎 ,   加瀬康弘 ,   中嶋正人 ,   佐々木毅

ページ範囲:P.1070 - P.1074

 緒言
 横紋筋腫は心臓に発生する良性腫瘍として知られ,左右対称性の皮脂腺腫や再発性痙攣発作,結節性硬化症を伴うBourneville-Pringle病の1病変とも考えられている。しかし,心臓以外での横紋筋腫の発生は比較的まれである。この心臓外横紋筋腫はこれまで頭頸部,腋窩,胸壁,胃,子宮,外陰部,膣などが報告されているが1),なかでも頭頸部領域は心臓外横紋筋腫の好発部位と考えられている。
 最近われわれは喉頭に発生した横紋筋腫を経験し,その切除および標本の特殊染色を施行した。この症例について,若干の文献的考察を加えて報告する。

当科におけるバセドウ病手術例の検討

著者: 山田弘之 ,   加藤昭彦 ,   篠木淳 ,   松浦徹 ,   山田哲生 ,   矢野原邦生

ページ範囲:P.1075 - P.1078

 緒言
 バセドウ病は本来内科的疾患であり,本邦では抗甲状腺剤による治療が第一選択とされている。しかし,症例によっては,治療が長期にわたることや治療中止後に再発したり,無顆粒球症などの合併症を引き起こすことから,手術治療が選択される場合もある。手術治療が選択される症例も,そのほとんどが過去に内科的治療が行われており,手術治療はバセドウ病の最終手段であると言っても過言ではない。
 当科では1986年以後甲状腺手術を積極的に行ってはいるが,バセドウ病の手術は少なく,施行した症例も全例内科において抗甲状腺剤治療が行われた既往をもつものである。

白老町学校健診におけるスクラッチテスト陽性率—第2報:鼻アレルギーとの関連

著者: 三邉武幸 ,   有田昌彦 ,   松井猛彦 ,   尾登誠 ,   小島幸枝 ,   三邉武右衛門 ,   程雷 ,   徐其昌 ,   三好彰

ページ範囲:P.1080 - P.1085

 はじめに
 鼻アレルギーは増加しているのだろうか。われわれはそんな臨床上の疑問に答える目的で,白老町の全児童生徒を網羅する学校健診1)の成績を分析した。今回は,その健診で鼻アレルギーと臨床診断名のついた児童生徒に関し,検討する。

鏡下咡語

臨床医学の将来について気になること

著者: 金子敏郎

ページ範囲:P.1056 - P.1057

 定年退職をしてから既に1年が経過し,新しい生活様式にも次第に馴れてきたところである。特別に茶道を行っているわけではないが,退職後は「和敬清寂」を旨として過ごして行きたいと願っている。しかし清寂を維持することは沈黙を守ることではないと考え,ここで臨床医学の将来について,気になることを述べさせて頂くことにした。ただこれから申し上げることも,外から見れば要らぬお世話といわれるかも知れないし,あるいは単なる杞憂に過ぎないことであるかも知れない。
 クロード・ベルナールは『実験医学序説』の冒頭で「医学がその起源以来提出してきた問題は,健康を保ち,病気をなおすことである」と述べている(三浦岱栄訳・岩波文庫)。医の倫理が叫ばれ,インフォームド・コンセントなどの問題が社会の大きな関心を惹いている現在においても,医学の究極の目的はなおクロード・ベルナールの考えと符合するものと思われる。

連載エッセイ 【Klein aber Mein】・16

頭頸部外科にどっぷり(その2)

著者: 浅井良三

ページ範囲:P.1058 - P.1059

3)舌ガン,口底ガン 舌ガン,口底ガンの患者が耳鼻科に受診するようになりました。その大部分が舌縁に発生した潰瘍で,そこから口底にひろがった潰瘍です。唯一例,舌の中心性に指頭大球形可動性の腫瘍で弾力性硬の症例があり,摘出組織検査で扁平上皮ガンと判明した珍しい45歳の男子を診た。腫瘍摘出後再発なく20年後に肝ガンで死亡しました。
 かつて京大耳鼻科で舌ガン入院例を調査したところ5年以上の治癒率25%の低率でした。これをもとにして治療法を反省し ①Keilexzionはよくない。常にHemiglossektomieであること,②口底の清掃顎下リンパ節摘出,顎下腺,舌下腺を摘出,③リンパ節転移があれば頸部郭清,を原則としてその後7年の成績をみると50%の治癒率を得ました(京都府医師会雑誌)。Hemiglosse—ktomie後単純縫合でも,また,D-p flapによる再建でも術後の発声障害,嚥下障害には大差ありません(熊倉。耳鼻臨床誌)。舌の亜全摘でも舌根部が残れば発音,嚥下機能は回復します。咀咽が困難で食物塊が頬嚢にはいり込み口腔に出ないので箸を使って出さないと嚥下できないようです。

連載 ケーススタディー めまい・難聴

ケーススタディー〔11〕

著者: 馬場俊吉

ページ範囲:P.1087 - P.1091

1.症例の呈示
 症例1 47歳,男性
 主訴:めまい,右難聴
 現病歴:1995年1月10日就寝中めまいのため目覚めた。めまいは回転性で約1時間ぐらい続き,徐々に軽減してきたため就寝してしまった。翌朝,起床時に右耳が聞こえないことに気づいた。また,フラフラ感が持続するため同日,当科を受診した。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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