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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科67巻13号

1995年12月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

篩骨洞軟骨粘液線維腫(Chondromyxoid fibroma)の1症例

著者: 西平茂樹 ,   山内博幸 ,   藤盛圭太 ,   高木道夫

ページ範囲:P.1100 - P.1101

 軟骨粘液線維腫は軟骨組織由来の稀な良性腫瘍であり,大腿骨,腓骨,脛骨などの長管骨骨端から発生する。非常に稀に顎骨1),頭蓋骨2),眼窩3),頬骨4)などでの発生が報告されている。今回,篩骨洞原発と思われた症例を経験した。

手術・手技

孤立性蝶形骨洞病変への内視鏡下鼻内経由のアプローチ

著者: 池田勝久 ,   大島猛史 ,   鈴木秀明 ,   石垣元章 ,   須納瀬弘 ,   鈴木雅明 ,   平野浩二 ,   近藤芳史 ,   下村明 ,   稲村直樹 ,   髙坂知節

ページ範囲:P.1103 - P.1107

 緒言
 蝶形骨洞は全副鼻腔のなかで最後部に位置し,しばしばその孤立性病変は見逃され,重篤な症状が出現するまで長期間放置されることも報告されている1)。病変として炎症,嚢胞,真菌症,動脈瘤,腫瘍などが挙げられる。CTやMRIなどの画像診断の発達により,その孤立性病変が発見される機会が多くなってきている。無症状の病変でも将来の神経症状の出現や癌病変の合併は画像診断では予知しにくく2〜5),積極的な手術的治療や生検が必要と考えられる。しかしながら,蝶形骨洞外側壁には視神経,内頸動脈,脳神経などの重要な臓器が存在しており,慎重な手術アプローチを要する。従来のアプローチは経篩骨洞(経鼻的),経上顎洞,外切開,経口蓋,経中隔などの種々の方法であり,手術侵襲も高く,副損傷の合併の危険性も高いものであった。しかし最近になって,内視鏡の副鼻腔手術への導入により経鼻的に明視下の蝶形骨洞へのアプローチが報告されてきた6,7)。われわれが経験した7例の孤立性蝶形骨洞の病変への手術法を中心に報告する。

喉頭気管分離術の経験

著者: 田中信三 ,   田辺正博 ,   岩永迪孝 ,   箕山学 ,   廣芝新也 ,   川本亮 ,   藤田隆夫

ページ範囲:P.1108 - P.1111

 はじめに
 高度の誤嚥で嚥下性肺炎を繰り返す例では,誤嚥を防止するために様々な手段が講じられる。例えば,脳梗塞後の下位脳神経障害に伴う誤嚥や口腔癌術後の嚥下障害などでは,多くの場合,嚥下機能が回復するまで気管切開孔からカフ付きカニューレを装着して嚥下性肺炎を予防する。しかし,嚥下障害が長期にわたる場合は,恒久的に気道を食物の通過路から切り放す必要が生じる。そのために従来から喉頭摘出術がおこなわれることが多かったが,比較的侵襲が大きく音声機能が永久に失われるという欠点があった。これらの欠点を補うため,喉頭の声門上や声門部を閉鎖する手術や,喉頭と気管を分離する手術などの方法が考案され,それらの有用性が報告されている1〜8)
 最近,われわれは,喉頭水平半切後に嚥下性肺炎を繰り返していたが高度な腎障害のために全身麻酔や侵襲的な手術が困難な症例に対して,喉頭と気管を分離して喉頭側を単に縫合閉鎖し気管側を永久気管孔とする手術(喉頭気管分離術)を行い,良好な結果を得たので報告する。

原著

加齢と口腔癌

著者: 中山明仁 ,   高橋廣臣 ,   岡本牧人 ,   八尾和雄 ,   馬越智浩

ページ範囲:P.1112 - P.1116

 緒言
 日本人の平均寿命は昭和20年(1945年)当初,男女共に50歳前後であった。それからわずか40年弱の間に女性は80歳(昭和60年(1985年)),男性は75歳(昭和61年(1986年))を越え,共に世界一のレベルとなった。世の中はまさに高齢化社会から高齢社会へ突入したのである。この流れに伴って医療の現場でも,患者の高齢化現象にいかに対処するかが問われている。悪性腫瘍についても例外ではなく,腫瘍が加齢によりどのような傾向をもって変化するかを知ることが治療上重要なこととなってきている。今回われわれは頭頸部悪性腫瘍のなかでも咀嚼,嚥下,構語などの重要な機能を支えている口腔領域に発生した癌腫について,加齢による影響に焦点を絞り検討を行ったので報告する。

内耳道内脂肪腫の1例

著者: 小森正博 ,   村上信五 ,   柳原尚明 ,   善家喜一郎 ,   植田規史 ,   辻田達朗

ページ範囲:P.1118 - P.1121

 はじめに
 内耳道に発生する腫瘍の大部分は聴神経腫瘍すなわち前庭神経鞘腫であるが,まれに脂肪腫も発生しうることが知られている。内耳道内脂肪腫は,難聴,耳鳴,めまいなど前庭神経鞘腫と同様の症状をきたすが,その発育・進展様式は異なり,また,MRI画像でも神経鞘腫とは異なった特徴的な所見を呈する。今回,極めてまれな内耳道内脂肪腫の1例を経験し経中頭蓋窩法を用いて摘出した。診断,治療方針などにつき文献的考察を加え報告する。

前頭開頭下に摘出した眼窩内血管腫症例

著者: 徳丸裕 ,   行木英生 ,   塩谷彰浩 ,   保谷則之 ,   佐倉伸洋

ページ範囲:P.1122 - P.1125

 はじめに
 眼窩腫瘍は眼疾患のなかでは比較的まれな疾患ではあるが,その外科的治療では腫瘍の完全摘出を行うとともに,特に良性腫瘍では合併症を最小限とし,美容的にも満足のいく結果を得ることが重要である。
 今回われわれは,眼球突出にて発症し,長期間にわたり経過観察されてきた眼窩内海綿状血管腫に対し前頭開頭下に摘出を行い,良好な結果を得ることができたので報告する。

口腔原発髄外性形質細胞腫の3例の免疫組織学的検討

著者: 貝森光大 ,   高谷彦一郎 ,   神均 ,   宮野和夫 ,   青木昌彦 ,   黒滝日出一 ,   和田龍一 ,   真里谷靖 ,   吉岡治彦

ページ範囲:P.1127 - P.1131

 はじめに
 形質細胞腫の診断は,骨髄原発の場合即ち多発性骨髄腫の時は比較的容易であるが,骨髄外原発の髄外性形質細胞腫の場合は種々の悪性小円形細胞腫瘍との鑑別が必要であるうえ,免疫組織学的にEpithelial Membrane Antigen (以下EMA)やビメンチンが陽性所見を呈する場合には更に慎重に鑑別されねばならない1,2)。今回われわれは,EMAやビメンチンが陽性の口腔原発髄外性形質細胞腫の3例を経験したので,免疫組織学的検討を加え報告する。

新生児側頭骨の顔面神経管裂隙の出現頻度とその部位について—側頭骨病理組織標本による

著者: 太田康 ,   加我君孝 ,   小山悟 ,   桜井尚夫 ,   小川恵弘

ページ範囲:P.1132 - P.1134

 はじめに
 顔面神経管裂隙とは側頭骨の顔面神経管にしばしば存在する骨欠損部であり,中耳手術の際の顔面神経麻痺の原因の1つでもあり,中耳炎の顔面神経への炎症の波及路ともいわれている1,2)。成人側頭骨における顔面神経管裂隙の病理組織学的検討の報告はあるが3〜5),新生児あるいは乳児における顔面神経管裂隙についての報告は極めて少ない4)。今回われわれは,帝京大学耳鼻咽喉科学教室の側頭骨病理コレクションの新生児側頭骨5例8耳の顔面神経管裂隙の出現頻度とその部位について検討したので,ここに報告する。

鼻骨骨折の臨床的研究—上顎骨前頭突起との関連

著者: 善浪弘善 ,   水野正浩 ,   山根雅昭

ページ範囲:P.1143 - P.1147

 はじめに
 鼻骨骨折は顔面骨骨折のなかで最も頻度の高いものであるが,そのなかには鼻骨骨折単独のもの,上顎骨前頭突起骨折を伴うもの,さらに篩骨や眼高壁の骨折を伴うものやLe Fortの2,3型骨折の一部である場合まで広く含まれる。耳鼻科医を受診する外傷患者の多くは前2者であることが多い。しかし,今までにこれらの2者の骨折の形態を比較検討した報告は少ない。
 今回,この鼻骨単独骨折と前頭突起骨折を伴う鼻骨骨折とをCT画像によって比較検討し,若干の知見を得たので報告する。

耳鼻咽喉科外来におけるMRSA検出患者の実態

著者: 山際幹和 ,   藤田健一郎 ,   田中直幸 ,   中条広美 ,   川口米美

ページ範囲:P.1148 - P.1151

 はじめに
 わが国で,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(以下MRSA)による感染症が注目されるようになってから10年余りが過ぎた。当初,入院患者で不幸な転帰をとった例がマスコミに大々的にとりあげられる機会が多かったことから,われわれ医療従事者はそれに対して過敏とも言える対応をとったことは記憶に新しい。
 昨今,MRSA感染症に関する情報が減ったこともあり,一見それが鎮静化したかの感がある。しかしながら,実状は決してそうではなく,MRSAに関する諸問題はなお山積し1),そのひとつとして,病棟で高率に検出されていたMRSAが,外来でも少なからず検出されるようになったことが注目されている1)
 そこで,今回われわれは,平均的な市中病院の耳鼻咽喉科外来で,MRSA保菌患者はどの程度いるのか,特徴的な患者像はどのようであるのか,それらの転帰はどうなるのかに特に注意をはらい,炎症所見を呈する部位よりできるだけ頻回に細菌学的検査を施行し,耳鼻咽喉科外来におけるMRSA保菌者の実態の把握を試みた。
 その結果,今後われわれが耳鼻咽喉科外来診療でMRSA感染症対策を行ううえで念頭におくべきいくつかの点が判明したので,以下に略述する。

左前頭葉梗塞にともなう中枢性顔面神経麻痺の1例—筋電図による麻痺所見の検討

著者: 小島好雅 ,   進藤美津子 ,   広瀬明美 ,   加我君孝

ページ範囲:P.1153 - P.1157

 はじめに
 中枢性顔面神経麻痺は核上性麻痺と核性麻痺に分けられるが,両者を合わせても顔面神経麻痺の1〜2%を占める程度であり1〜4),耳鼻科領域では稀にしか遭遇することがない疾患である。顔面筋の随意運動をつかさどる直接的な皮質中枢は,前頭葉の中心前回,Brodmann第4野の脳底面に近い1/3を占め,顔面領域(face region)と呼ばれている5)。中心前回の顔面領域の障害により中枢性の顔面神経麻痺を生じるが,四肢の麻痺に比較して症状が軽度のことが多い。また中心前回が運動性言語領野である下前頭回に近接しており,失語症状を併発することが多いため,中枢性顔面神経麻痺が臨床場面で主たる問題として取り上げられることは稀である。
 今回われわれは,脳梗塞により発症した四肢の麻痺を伴わない中枢性顔面神経麻痺の1例において,顔面神経麻痺スコアによる評価と,筋電図検査の結果を比較した。そして,顔面神経麻痺についてこれまでいわれてきた,中枢性顔面神経麻痺では前頭筋,眼輪筋領域に麻痺症状を生じない6),とする点に関して,従来とは若干異なる見解が得られたので報告する。

小脳橋角部から咽頭に及ぶ巨大Neurofibromatosis type 2の1例

著者: 甲田晶子 ,   高橋秀明 ,   新川敦 ,   坂井真

ページ範囲:P.1158 - P.1162

 はじめに
 Neurofibromatosis(NF)は,神経皮膚症候群の1つであり,頻度は人口10万あたり30〜40人と推定されている1)。1988年に,厚生省特定疾患調査研究班によりNFの診断基準が制定され,現在も研究が進められているが1),その治療法や,治療方針は様々である。両側聴神経腫瘍としては3cm以上を巨大としているが2),今回われわれは右側小脳橋角部から内耳道,中耳腔,咽頭腔へと及ぶ広範囲かつ巨大な腫瘍を有し,左側内耳道にも腫瘍を認めた小児のNeurofibromatosis type 2の1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。

舌Verrucous Carcinomaの1症例

著者: 今井容子 ,   吉原俊雄

ページ範囲:P.1165 - P.1169

 はじめに
 Verrucous carcinoma (疣贅状癌)は1948年にAckerman1)によって最初に報告された扁平上皮癌の1亜型であり,肉眼的には局所的に疣状あるいは乳頭状に増殖するが発育は緩徐で転移は極めて少ないとされている。病理組織学的にも分化度が高く,臨床的には悪性度が低いとされている。
 今回われわれは,舌左側縁に発生した疣贅状癌で,高齢かつ全身の合併症を有していたため局所麻酔下に切除を行った症例を経験したので,文献的考察を加え報告する。

鏡下咡語

医療における看護

著者: 河本和友

ページ範囲:P.1136 - P.1137

 以前,全国の看護婦研修会で医師から見た看護のあり方について話を求められたことがあり,開き直って看護とは,と考えると自分の知識がいかにお粗末かに驚かされ,あわてて書物をひもといたことがありました。
 たしかに,大学にいる時に順番で看護学校の講義を数年間ずつやらされたことがあり,話の内容といえば殆んどが耳鼻咽喉科疾患の病因・病態であり,看護といえば外来診療やアデノイド手術時の幼児保持法とか術後出血,呼吸管理などを話した記憶はあるものの,医師側からみた看護理念やチーム医療における看護のあり方などを勉強する意欲などを持ち合わせていなかったことを今さらながら後悔させられました。

連載エッセイ 【Klein aber Mein】・17

Schwartze氏手術とその意義・炎症は経過すれば治る

著者: 浅井良三

ページ範囲:P.1138 - P.1139

 小児の急性中耳炎で耳後部に膿瘍を形成してくることがある。耳後部切開排膿が行われ,その後この膿瘍が乳様蜂窠由来とわかり,含気蜂窠開削が行われた。これがSchwartze氏手術の由来と聞いている。急性中耳炎の手術として発展した。
 中耳は耳管,鼓室,乳様蜂窠の総称で,蜂窠が最も大きい。その炎症を乳様蜂窠炎(mastoiditis)と別称して診断・治療は重要視された。その手術をSchwart-zeの手術と称し耳科の研修として鼓膜穿刺と並び早期に教育された耳科臨床の第一歩である。

連載 ケーススタディー めまい・難聴

ケーススタディー〔12〕

著者: 岡本牧人

ページ範囲:P.1171 - P.1177

 初診時診断が老人性難聴であった症例のなかでその後,難聴外来に依頼された患者のなかから4例を紹介する。

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耳鼻咽喉科・頭頸部外科 第67巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

人名索引

ページ範囲:P. - P.

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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