icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科67巻2号

1995年02月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

頬部乳児線維性過誤腫の1例

著者: 大谷尚志 ,   窪田哲昭 ,   大橋一正

ページ範囲:P.104 - P.105

 過誤腫とは,病巣部分に通常存在する成熟細胞および組織の過形成からなる良性腫瘍様結節と定義される。

Current Article

内耳免疫傷害病の概念とメニエール病

著者: 富山俊一

ページ範囲:P.107 - P.115

 はじめに
 メニエール病は反復性めまい発作,変動する感音難聴,耳鳴の三主徴と特発性リンパ水腫を特徴とする疾患である。その病因には諸説あり,いまだにその実態究明は解決していない。メニエール病の病理学知見のほとんどは病理解剖材料に由来している。病因の本体に迫るには生検材料での検索が不可欠だが,内耳のもつ解剖学的,生理学的特性のゆえに,今日でも満足な生検材料を得ることは極めて困難である。これまでの研究の成果では,反復性めまい発作の成立機序として,内リンパ水腫による内リンパ圧亢進や膜破裂あるいは膜透過性亢進が高カリウムを有する内リンパ液(中毒性の神経ブロックを引き起こすのに十分な量)を外リンパ腔へ流漏出させる結果,前庭神経線維の一過性のカリウム麻痺,末梢神経伝導阻害を引き起こし,めまい発作を誘発すると考えられている1,2)。一方,内リンパ水腫の発生機序としては,メニエール病罹患側の前庭導水管や内リンパ嚢の発育不全3)や内リンパ嚢の線維化4)が著明であることから,内リンパ嚢機能低下が内リンパ水腫の主成因であろうと考えられている。一般に奇形,発育不全,細菌およびウイルス性内耳炎,梅毒,血行不全,外傷,骨折,前庭導水管の閉塞,膠原病,免疫反応など様々な病変で内リンパ嚢の機能が低下し,メニエール病類似の症候が出現することが知られている。
 メニエール病の内耳免疫傷害病因は,Quincke5)の提唱からすでに1世紀になる。この間,内耳免疫機構の解明,内耳免疫傷害の病態,内耳特異的抗原,抗体の検索など様々な課題が研究されてきた。特に1980年代に入ってからは,内耳の免疫学的知見が多数集積し,内耳免疫学としての項目が今日の米国医学成書に記載されるに至っている。1994年には遂に,病歴の明らかなメニエール病症例で手術摘出した完全な内リンパ管,内リンパ嚢組織像が明らかにされた6)。内リンパ嚢,内リンパ管はリンパ球を主とした活発な免疫反応像を呈しており,メニエール病の発症機序に免疫反応の関与を強く示唆するものであった。本稿では内耳免疫傷害病の概念とメニエール病との関連について述べることにする。

原著

悪性腫瘍を疑った上顎洞血瘤腫症例

著者: 秋定健 ,   折田洋造 ,   佐藤幸弘 ,   半田徹 ,   堀香苗 ,   日高利美 ,   卜部吉博 ,   粟飯原輝人 ,   広川満良

ページ範囲:P.118 - P.121

 はじめに
 血瘤腫は比較的まれな疾患で,ほとんどが上顎洞に発生し,鼻腔・篩骨洞に進展する。しかし本疾患名は臨床上の名称であって,病理組織学的には血管腫や壊死組織が多い。またその成因についても,多くの報告があるが定説はない。さらに臨床症状,検査所見からも悪性腫瘍との鑑別が問題となることが多い。今回われわれは悪性腫瘍を疑った上顎洞血瘤腫を経験したので,鑑別診断や成因についての若干の考察を加えて報告する。

鼻すすり癖が誘因の真珠腫—その頻度と特徴

著者: 小林俊光 ,   八木沼裕司 ,   高橋由紀子 ,   熊谷重城 ,   朴沢孝治 ,   高坂知節

ページ範囲:P.123 - P.127

 I.目的
 耳管閉鎖不全に起因する鼻すすり癖が誘因と考えられる中耳病変はMagnusonら1〜4)によって報告され,わが国でも最近注目されつつある。われわれも,鼻すすり癖に基づく中耳病変を報告して以来その重要性を痛感し,種々の角度より検討を加えてきた5〜9)
 しかし,各疾患,とくに真珠腫において鼻すすり癖が誘因と考えられる症例の全症例に対する割合は調査されておらず,鼻すすり癖が持つ重要度が,どの程度かは不明である。

内リンパ嚢原発と思われた乳頭状腺腫症例

著者: 天野肇 ,   木下吉史 ,   伊藤久子 ,   星野知之

ページ範囲:P.128 - P.132

 はじめに
 側頭骨原発の腺腫はまれな腫瘍で,診断が困難である。側頭骨原発の腺腫のなかに乳頭状構造と特徴的な臨床症状をもつ群があり,これを内リンパ嚢原発腺腫とする報告が近年になり海外でみられるようになった1,2)。今回,われわれは側頭骨に原発し頭蓋内に進展した乳頭状腺腫症例を経験し,臨床経過と病理組織学的検討から内リンパ嚢腺腫と考えられたので報告する。

耳下腺嚢胞の3症例

著者: 田渕経司 ,   森田康久 ,   高橋邦明 ,   原晃 ,   草刈潤

ページ範囲:P.134 - P.137

 はじめに
 耳下腺内に発生する嚢胞性疾患は比較的まれであるといわれており,Yoelら1)は耳下腺腫瘤526例中14例2.7%が非腫瘍性嚢胞であったと報告している。耳下腺に発生する嚢胞性疾患としては鰓裂性嚢胞,貯留嚢胞,類皮嚢胞などを挙げることができるが,当科において経験した鰓裂性嚢胞2例および貯留嚢胞1例について若干の文献的考察を加え報告する。

埋没耳手術(いわゆる猫耳皮弁法)の検討—長期的経過を含めて

著者: 相原正記 ,   脇坂長興 ,   伊沢宏和 ,   石田寛友 ,   荻野洋一 ,   楠見彰

ページ範囲:P.139 - P.142

 はじめに
 埋没耳は,耳介上半部が側頭部の皮下に埋没しており耳介を牽引すると耳介の全貌が現れるが,牽引をやめると再びもとの形にもどる先天異常である1)。欧米では稀であるといわれているが,本邦では比較的よく遭遇する耳介の変形の1つである。欧米では本症をCryptotiaまたはPocket earと呼んでいるが,わが国では久保により当初Tas-chen Ohr (袋耳)と命名された2)。しかし最近ではその形態から埋没耳と言われることが一般的である。
 われわれは以前,荻野ら(1963)1),西村(1975)2)の方法で手術を行ってきた。しかし荻野らの方法では全例植皮術を要し,西村の方法でも植皮術を要する可能性があった。その後,植皮術が必要でない方法を求めて試行錯誤していたところ,横浜市立大学の吉田ら4),安瀬ら5)が植皮術の不要な埋没耳の手術法を報告した。それ以来,われわれも彼らの言う「いわゆる猫耳皮弁法」による埋没耳の手術を行うようになった。本法は比較的簡単で,術後の形態もよい手術法であるが,本法を施行している施設は少なく,また長期的な経過観察の報告も見当たらない。そこで今回,本法について術後10年を越える長期的な例を含め検討を加え,再評価を行った。

血清コリンエステラーゼ欠損症例の全身麻酔下手術経験

著者: 大上研二 ,   野口高昭 ,   宮内善豊

ページ範囲:P.151 - P.153

 はじめに
 血清コリンエステラーゼ活性値の低下は肝機能障害,有機リン中毒などの全身疾患や消耗性疾患によるもののほかに,遺伝子異常によって起こるとされ,脱分極性筋弛緩薬の使用により遅延性の無呼吸をきたすことがある。遺伝性の血清コリンエステラーゼ欠損症は,1957年にKalowら1)の最初の報告以後数十例の家系が報告されている。本邦においては比較的まれな疾患とされており,1967年のShibataら2)の報告を初めとして現在までに20数家系の報告がある。
 今回われわれは術前検査でコリンエステラーゼの異常低値を認めた副甲状腺嚢胞症例の全身麻酔手術を経験した。同胞に対し家系調査を行ったので,文献的考察を加え報告する。

開業21年間異物症例の統計

著者: 西浦勇夫

ページ範囲:P.155 - P.160

 はじめに
 昭和44年(1969年)8月より平成2年(1990年)8月まで21年間に摘出した異物2,969例についての統計的検索を行い,若干の知見を得たので報告する。
 異物症例の統計は大学病院,国公立病院などの総合病院では気管食道の異物症例が多いが1,2),容易に摘出可能な異物症例は診療所のほうが当然ではあるがはるかに多いと思われる。筆者は過去に開業11年間の異物症例の統計3)を報告し,都市計画による環境の変化,生活様式・食生活の変化により異物症例にも変化が起こることを述べた。その後10年間の当地域の異物症例を加え,21年間をIV期に分けて比較を行い考察を加えて述べる。

耳鳴の有無と自律神経機能の自他覚的評価

著者: 山際幹和 ,   藤田健一郎

ページ範囲:P.161 - P.164

 はじめに
 耳鳴は日常臨床で頻繁に遭遇する訴えであるが,それを随伴症状とする場合はともかくとして,主訴として受診する患者は極めて多彩な心的あるいは身体的症状を有している場合があり,多くの例で,心身両面からのアプローチが必要となる1〜4)
 阿部と筒井5)は,耳鳴を自律神経失調症状の1つとしてとらえ,コーネル・メディカル・インデックス(CMI)健康調査表6)のなかの自律神経失調症状を検出するための33問のなかに耳鳴に関する質問を含めている。
 耳鳴を主訴とする患者は,確かに多彩な心身の自律神経失調症状を有している観はあるが,果たして随伴症状としてそれを有するような患者でも同様のことがいえるのか,つまり,一般的に耳鳴はその他のいわゆる自律神経失調症状と確かに関連するのかについては十分検討されていない。
 そこで,今回われわれは,耳鳴の有無により,自覚的な自律神経失調症状数7)や副交感神経機能を他覚的に評価できるとされる心電図R-R間隔変動の解析による自律神経機能検査結果8)に有意な差が生じるか否かを検討し,興味深い成績を得たので,その概略を述べる。

多房状を呈した甲状舌管嚢胞の1例

著者: 坂東伸幸 ,   植原元晴 ,   野中聡 ,   川堀眞一 ,   海野徳二

ページ範囲:P.165 - P.167

 はじめに
 甲状舌管嚢胞(thyroglossal duct cyst)は,甲状舌管の遺残より発生する先天性頸部嚢胞で比較的若年者に発症し,その形態は一般的に球形,あるいは楕円形を呈する単房性嚢胞である1)。今回われわれは生来無症状で過ごし,高齢で初めて前頸部腫瘤を指摘され,その形態が多房状を呈した甲状舌管嚢胞症例を経験したので報告する。

頭頸部癌に対する放射線とCDDP,THP同時併用療法

著者: 宮口衛 ,   酒井俊一 ,   高島均 ,   細川敦之

ページ範囲:P.169 - P.172

 はじめに
 頭頸部領域では扁平上皮癌が多く,この癌腫は放射線感受性が高いので,放射線療法はきわめて重要な治療法となっている。近年,頭頸部扁平上皮癌の治療成績をあげるために,放射線療法に化学療法が併用されるようになってきた。
 併用療法には,通常量の化学療法を放射線治療の前後に併用する方法と,少量の化学療法を同時併用する方法がある。併用化学療法に用いる薬剤の組み合わせや投与法は各施設でいろいろと試みられている。
 Cysplatin (CDDP),Pirarubicin hydrochloride(THP)は単剤でも放射線と同時併用することにより有用な治療効果が得られている1〜3)。今回,両者の薬剤を頭頸部扁平上皮癌の放射線治療中に同時併用し,治療効果および副作用を検討したので報告する。

鏡下咡語

医学生における終末期医療のカリキュラムを考える

著者: 形浦昭克

ページ範囲:P.144 - P.146

 医学教育の流れが変革するなかで,医学部のカリキュラムにおいても終末期医療を中心とする死生学のカリキュラムが問われる様になって,およそ10年の歳月が流れてきた。私どもの大学においてもその時期から最終学年に特別講義として“末期癌患者のケア”について実施してきた。各大学において新しい教育システムが導入されるなかで,本学でも昨年から新入生を対象に,その秋学期から医学概論が講義として実施されるに至った。すなわち医療経済,地域医療,東洋医学,救急医療および心身医学などに加え,ターミナル・ケア(ホスピス),尊厳死の項目とともに,本年度はインフォームド・コンセント,医師と患者との関係,および死についてなどが取り上げられている。今まで検討されなかった科目として,これらの導入は教官および学生には何となく溶け込めないところがあったのも確かであった。これら終末期医療のなかでスタッフは,そして学生は何を学び,研修するかが問題であり,良い医師を育てるためのかかるカリキュラムは,本学にとっては画期的であり,大学としてもどの様にカリキュラムのなかに位置づけるかが大きな関心事であった。

海外トピックス

ヨーロッパに呼吸と発声の原点を求めて—その1.ドイツ篇

著者: 米山文明

ページ範囲:P.148 - P.150

 ここ数年間,私はいくつかの理由で海外に出られなかった。今年(1994年)になって漸く時間がとれ,8月6日から25日まで約3週間の旅に出た。目的は数年来依頼を受けながら実現できなかった2つの講演の約束を果たすためで,1つはドイツでの「呼吸法のセミナー」,2つ目はイタリアでの[歌唱法のセミナー」である。これを機にかねてからの関心事であったこと,①呼吸法の基礎教育はどこまで深いか?(生育から言語取得教育などとも関連して),②呼吸法が発声法と体のどこで,どのように関わるべきか? の具体的メトードを探るきっかけを掴みたいと思った。
 開催地はそれぞれ山と海の著名(?)な避暑地で行われた。日本の猛暑を避けられるかと期待して出かけたが,ヨーロッパも記録的な暑さで閉口した。しかし久しぶりのこの旅は私にとっていくつかの収獲をもたらしてくれた。

連載 ケーススタディー めまい・難聴

ケーススタディー〔2〕

著者: 調所廣之

ページ範囲:P.174 - P.177

1.症例
 35歳,男性。会社員(工場勤務)
 ①病歴
 現病歴:平成6年9月20日,いとことロックコンサートに行った。本人は舞台左そでのスピーカー正面より約7mの所に座り,聴いていた。演奏が始まり1時間ほどして,左耳の圧迫感と耳鳴を感じたが,その後1時間そのまま聴いていた。コンサート終了後,左難聴と耳鳴を自覚した。帰宅後も症状が改善しないため翌日来院した。本人は20〜30歳頃にディスコに数回,ロックコンサートにも数回行ったことがあった。しかし,その時は耳の症状は全く認められなかった。この時本人は数日寝不足で,過労気味であった。なお同席した18歳のいとこは難聴などの自覚症状は全くなかった。

連載エッセイ 【Klein aber Mein】・7

減衰回転検査法の理論—模型実験から

著者: 浅井良三

ページ範囲:P.178 - P.179

 迷路の回転検査法を理解するためにモデル実験を試みた。
 半規管を代表する円形のビニール管,その中を水で充満して一か所にクプラ(Cupula)として布を付着させる。ビニール管を振って水を動揺させると布が動く。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

95巻13号(2023年12月発行)

特集 めざせ! 一歩進んだ周術期管理

95巻12号(2023年11月発行)

特集 嚥下障害の手術を極める! プロに学ぶコツとトラブルシューティング〔特別付録Web動画〕

95巻11号(2023年10月発行)

特集 必見! エキスパートの頸部郭清術〔特別付録Web動画〕

95巻10号(2023年9月発行)

特集 達人にきく! 厄介なめまいへの対応法

95巻9号(2023年8月発行)

特集 小児の耳鼻咽喉・頭頸部手術—保護者への説明のコツから術中・術後の注意点まで〔特別付録Web動画〕

95巻8号(2023年7月発行)

特集 真菌症—知っておきたい診療のポイント

95巻7号(2023年6月発行)

特集 最新版 見てわかる! 喉頭・咽頭に対する経口手術〔特別付録Web動画〕

95巻6号(2023年5月発行)

特集 神経の扱い方をマスターする—術中の確実な温存と再建

95巻5号(2023年4月発行)

増刊号 豊富な処方例でポイント解説! 耳鼻咽喉科・頭頸部外科処方マニュアル

95巻4号(2023年4月発行)

特集 睡眠時無呼吸症候群の診療エッセンシャル

95巻3号(2023年3月発行)

特集 内視鏡所見カラーアトラス—見極めポイントはここだ!

95巻2号(2023年2月発行)

特集 アレルギー疾患を広く深く診る

95巻1号(2023年1月発行)

特集 どこまで読める? MRI典型所見アトラス

94巻13号(2022年12月発行)

特集 見逃すな!緊急手術症例—いつ・どのように手術適応を見極めるか

94巻12号(2022年11月発行)

特集 この1冊でわかる遺伝学的検査—基礎知識と臨床応用

94巻11号(2022年10月発行)

特集 ここが変わった! 頭頸部癌診療ガイドライン2022

94巻10号(2022年9月発行)

特集 真珠腫まるわかり! あなたの疑問にお答えします

94巻9号(2022年8月発行)

特集 帰しちゃいけない! 外来診療のピットフォール

94巻8号(2022年7月発行)

特集 ウイルス感染症に強くなる!—予防・診断・治療のポイント

94巻7号(2022年6月発行)

特集 この1冊ですべてがわかる 頭頸部がんの支持療法と緩和ケア

94巻6号(2022年5月発行)

特集 外来診療のテクニック—匠に学ぶプロのコツ

94巻5号(2022年4月発行)

増刊号 結果の読み方がよくわかる! 耳鼻咽喉科検査ガイド

94巻4号(2022年4月発行)

特集 CT典型所見アトラス—まずはここを診る!

94巻3号(2022年3月発行)

特集 中耳・側頭骨手術のスキルアップ—耳科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻2号(2022年2月発行)

特集 鼻副鼻腔・頭蓋底手術のスキルアップ—鼻科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻1号(2022年1月発行)

特集 新たに薬事承認・保険収載された薬剤・医療資材・治療法ガイド

icon up
あなたは医療従事者ですか?