icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科67巻5号

1995年05月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

両側耳下腺に発生したbasal cell adenoma

著者: 鈴木茂憲 ,   赤池徹哉 ,   菅野秀貴 ,   柏原一成 ,   大谷巌 ,   大河内幸男

ページ範囲:P.380 - P.381

 耳下腺に発生する腫瘍は日常診療において時折経験する疾患の1つである。病理組織学的分類では多形腺腫が約70%を占め,そのほとんどが片側性に発生し,両側に発生することはまれである。耳下腺腫瘍の両側発生は全耳下腺腫瘍の1〜3%と少なく,両側に発生する腫瘍としてWarthin腫瘍が多いとされている。今回,われわれは病理組織学的にまれなbasal cell adenomaが両側耳下腺に発生した世界でも4例目のきわめてまれな症例を経験したので供覧する。

Current Article

動揺病と空間識

著者: 高橋正紘

ページ範囲:P.383 - P.395

 I.動揺病をめぐる諸説
 動揺病は車酔い,船酔い,あるいは無重力環境で起こる宇宙酔いなどの総称である。顔面蒼白,冷汗,唾液分泌亢進,吐き気,嘔吐,頭痛などから成る。脊椎動物では魚類から高等哺乳類まで,症状の内容は異なるが動揺病の起こることが知られている。良く知られた現象であるが,いまだ発現メカニズムの定説はない1)
 動揺病をめぐる一番の謎は,生体にとって不快な現象(嘔吐)が何故人類にまで受け継がれてきたか,という問題である2)。この事実は,長い間研究者を悩ませてきた。Reasonらは感覚混乱説(Neural conflict theory)を発展させ,感覚配置変え説(Sensory rearrangement theory)を提唱した3)。この説によれば,矛盾する感覚情報は統合を妨げ,中枢の感覚配置変えが達成されるまで,自罰的な不快症状(self-inflicted symptom)が出現する。

原著

鼻腔神経内分泌癌の1例

著者: 松田秀樹 ,   佃守 ,   古川政樹 ,   山本博子 ,   加賀潤 ,   北村均

ページ範囲:P.399 - P.404

 はじめに
 鼻・副鼻腔の悪性腫瘍で,従来未分化癌あるいは嗅神経芽細胞腫に分類されていたもののなかに,免疫組織化学染色あるいは電子顕微鏡での検索によって,神経内分泌癌(neuroendocrine car-cinoma)と診断される症例の存在が1980年以降知られるようになった1,2)。しかし,本邦においては鼻腔神経内分泌癌の報告は,1980年から,わずかに8例見られるのみである1,3〜6)
 今回われわれは,免疫組織化学的検索によって,鼻腔神経内分泌癌と診断された症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

聴力変動を示した前庭水管拡大症候群の1症例

著者: 山本幸代 ,   藤本政明 ,   中島智子 ,   渡辺周一 ,   増田游

ページ範囲:P.405 - P.409

 はじめに
 画像診断の飛躍的な発達により内耳の形態が詳細に観察できるようになったため,様々なタイプの内耳奇形が発見されるようになってきた。それに伴い,幼児高度感音難聴の原因として,これまでより詳細な内耳奇形の分類を行う必要性が高まってきていると考える。
 1978年,Valvassoriら1)は,多軌道断層撮影にて前庭水管(VA)の拡大を示した症例を前庭水管拡大症候群(Large vestibular aqueduct syn-drome,以下LVASと略す)として報告した。以後,LVASは内耳奇形の1型として認識されるようになり,同様の報告が続いて行われるようになった。今回われわれは,典型的な症状を示したLVASの1症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。

頸部腫瘤を主訴とした頸部頸動脈瘤の1例

著者: 森美果 ,   後藤田裕之 ,   大沼秀行 ,   福田諭 ,   犬山征夫

ページ範囲:P.410 - P.413

 はじめに
 頸部頸動脈瘤は末梢性動脈瘤のなかでもまれな疾患とされている。この度われわれは頸部腫瘤を主訴として来院し,諸検査の結果,頸部頸動脈瘤と診断された1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

下頸部に発生した交感神経鞘腫例

著者: 西田功 ,   工田昌矢 ,   西田俊博

ページ範囲:P.423 - P.427

 はじめに
 神経原性腫瘍は頸部腫瘍のなかでも比較的少ない疾患で,とりわけ交感神経に発生するものは少なく,そのなかでも下頸部に発生したものはまれである。最近,われわれは下頸部に発生し各種画像診断により交感神経鞘腫の診断のもとに手術を施行し,腫瘍が交感神経由来であることを確認し得た症例を経験したので報告する。

喘鳴を主訴としたTracheopathia Osteochondroplasticaの1症例

著者: 久育男 ,   立本圭吾 ,   西山康之 ,   八木正人 ,   秋山優子 ,   内匠千恵子

ページ範囲:P.428 - P.431

 はじめに
 Tracheopathia osteochondroplastica,あるいはTracheobronchopathia osteochondroplasti-caは気管および気管支に骨ないしは軟骨組織が異所性に増生し,内腔の結節状隆起を示す良性疾患である。本症は1857年にWilks1)が報告して以来,外国では約300例,わが国では1938年の城所ら2)の報告を初めとして60例余りの報告があるが3),特異的な症状はなく,剖検時4,5)や全身麻酔時の挿管困難6)によって発見された例も報告されている。
 今回,われわれは喘鳴を主訴としたTrache-opathia osteochondroplasticaの1例を経験したので,若干の文献的考察を加え,報告する。

両側高度感音難聴を伴ったNoonan症候群の1例

著者: 草野英昭 ,   立木孝 ,   村井和夫 ,   金田裕治 ,   村井盛子

ページ範囲:P.432 - P.436

 はじめに
 Noonan症候群は,Turner症候群様身体的特徴を呈するが,染色体の核型は正常であること,また男女両性に見られることからTunner症候群とは異なったものと考えられている。本症候群については本邦でも数多くの報告があるが,先天性心疾患に関するものが大部分で難聴について言及したものは極めて少ない。
 われわれは最近,両側高度難聴を呈し,聴覚管理を必要とするNoonan症候群と考えられる1症例を経験したので若干の考察を加え報告する。

Wegener肉芽腫症診断におけるC-ANCA ELISAキットの有用性

著者: 滝沢昌彦 ,   間口四郎 ,   竹内ミルトン実 ,   中丸裕爾 ,   宮武由甲子 ,   福田諭 ,   犬山征夫

ページ範囲:P.439 - P.444

 はじめに
 Wegener肉芽腫症(以下WGと略す)の診断は従来,臨床症状および生検標本の病理組織診断でなされてきたが,確定診断を得ることは症状が進んだ典型例を除いては非常に困難であった。特に頭頸部領域に症状が限局した早期のWGは,鼻を中心とする壊疽性疾患として悪性リンパ腫,polymorphic reticulosisなどとの鑑別がしばしば問題となっていた1)。1985年Woude2)らは間接蛍光抗体法(indirect immunofluorescenceassay:IIF)でWGに特異的な抗ヒト好中球細胞質抗体(Anti-neutrophil cytoplasmic antibody:ANCA)を報告した。ANCAはIIFの蛍光パターンでcytoplasmic ANCA(C-ANCA)とperinuclear ANCA(P-ANCA)に分けられるが,このうちC-ANCAがWGに特異的に検出される。当科でも平成2年以降IIFにてANCA測定を行い,早期診断における有用性を報告してきた3,4)。さらにRasmussemらの方法5)に改良を加え,ELISA(α-ELISA)によるANCAの測定も行ってきた6)。今回ニプロ社よりANCAの測定ELISAキット,ネフロスカラーC-ANC®(NephroScholar)が発売され保険適用となったこともあり,今後日常臨床で広く利用されるものと考える。われわれはニプロ社の好意によりこのキットを使用する機会を得たので,従来のIIF,α-ELISAとの有用性を比較検討してみた。

下口唇血管腫の1例

著者: 工田昌矢 ,   西田功 ,   平良達三 ,   西田俊博

ページ範囲:P.446 - P.449

 はじめに
 顔面領域は血管腫の好発部位の1つと言われており1〜4),中でも口唇部に発生が多い5)。今回,われわれはその腫大により出血,摂食困難をきたした下口唇の血管腫を経験したので,その治療法に対して,若干の文献的考察を加えて報告する。

放射線障害による側頭骨壊死から脳膿瘍を起こした1例

著者: 宇野芳史 ,   斎藤龍介 ,   金谷真 ,   西崎和則

ページ範囲:P.450 - P.455

 はじめに
 放射線による骨壊死は,晩発性の放射線障害として知られており,いったん発症するとその治療に難渋することが多い。頭頸部に発症する悪性腫瘍は,病理組織学的には扁平上皮癌がその大部分を占めているため,癌に対する集学的治療の一環として放射線治療を行う頻度も他の部位の悪性腫瘍に比較して高い。そのため,原発の悪性腫瘍が治癒しているにもかかわらず放射線骨壊死のため治療に難渋する症例もかなり認められる。
 今回われわれは,上咽頭癌に対して放射線療法を受けた後,16年経過してから右外耳道癌と左側頭骨壊死を生じ脳膿瘍を続発し,不幸な転帰をとった1例を経験したので,画像診断を中心に報告する。

下咽頭に突出した甲状軟骨上角過長症の1例

著者: 井口芳明 ,   小川克二 ,   星野功 ,   中村要 ,   鎌田利彦 ,   望月高行

ページ範囲:P.456 - P.458

 はじめに
 甲状軟骨上角の過長症は通常みられることは少ない。今回われわれは両側の甲状軟骨上角が下咽頭に棒状に突出し甲状軟骨上角過長症と診断した症例を経験したので報告する。

鏡下咡語

声帯手術を行う立場と受ける立場

著者: 米山文明

ページ範囲:P.416 - P.417

 本年5月に開催される第96回日本耳鼻咽喉科学会総会のプログラムでは,「患者の立場と医師の立場」というパネルディスカッションが予定されている。筆者が本誌3月号に書いた声帯の外来手術の中でその点について書き残したこともあるのでこの場で補足したい。

連載エッセイ 【Klein aber Mein】・10

口蓋裂形成と私の遍歴

著者: 浅井良三

ページ範囲:P.418 - P.419

 口蓋裂形成が耳鼻科で取り扱われるようになって久しい。最近では形成外科が取り扱う。私の記憶では京都大学耳鼻科で昭和10年(1935年)頃かと憶う。口蓋裂とともに唇裂も外科から耳鼻科に移ったと記憶している。
 口蓋裂形成はLangenbeckの減張切開法が行われた。京大耳鼻科ではこの成績が十分でなかった。星野主任教授は回診のあとの講評の時,「口蓋裂の成績が思わしくない,誰か専属にやるか」と云われて上を向かれたらたまたま私がそこに居て私の顔を見ながら「浅井君,君が専属にやるか」。この弁,鶴の一声で口蓋裂形成をやることに決まった。

医療ガイドライン

ジフテリア抗毒素血清は果たして不必要か?—最近経験した喉頭ジフテリア2症例

著者: 調賢哉 ,   調信一郎

ページ範囲:P.459 - P.462

 はじめに
 最近,咽喉頭ジフテリアは,先進国では予防接種の普及により殆んど発生はみていない。わが国においても同様であることは厚生省の統計(表)1)に示す通りである。しかし発生は皆無ではない。厚生省の統計では,その発生数は昭和20年(1945年)の8万6千人をピークとして次第に減少し,昭和39年(1964年)には200人,昭和59年(1984年)には100人以下となり,さらに最近数年は10人以下となっている。Ballenger2)によると,ジフテリアはアメリカでは幼児における積極的な予防注射の普及によって免疫化されているので極めて稀である。しかし,クループ鑑別診断を行うのには,考慮に入れねばならない。特に予防注射を受けていない子供には要注意とされている。

連載 ケーススタディー めまい・難聴

ケーススタディー〔5〕

著者: 橋本省

ページ範囲:P.464 - P.471

1.症例の呈示
 症例1 65歳,女性
 現病歴
 8年ほど前に突然左耳が聞こえなくなり,近医にて突発性難聴と診断された。めまいはなかった。内服薬を処方されいくらか聞こえるようになったが,それ以上は良くならないと言われた。以後徐々に左難聴が進行し,現在自覚的にはほとんど聞こえない。
 5年前,左側頭部違和感あり,某病院神経内科を受診。CTなどの検査を受けるも異常なしと言われた。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

95巻13号(2023年12月発行)

特集 めざせ! 一歩進んだ周術期管理

95巻12号(2023年11月発行)

特集 嚥下障害の手術を極める! プロに学ぶコツとトラブルシューティング〔特別付録Web動画〕

95巻11号(2023年10月発行)

特集 必見! エキスパートの頸部郭清術〔特別付録Web動画〕

95巻10号(2023年9月発行)

特集 達人にきく! 厄介なめまいへの対応法

95巻9号(2023年8月発行)

特集 小児の耳鼻咽喉・頭頸部手術—保護者への説明のコツから術中・術後の注意点まで〔特別付録Web動画〕

95巻8号(2023年7月発行)

特集 真菌症—知っておきたい診療のポイント

95巻7号(2023年6月発行)

特集 最新版 見てわかる! 喉頭・咽頭に対する経口手術〔特別付録Web動画〕

95巻6号(2023年5月発行)

特集 神経の扱い方をマスターする—術中の確実な温存と再建

95巻5号(2023年4月発行)

増刊号 豊富な処方例でポイント解説! 耳鼻咽喉科・頭頸部外科処方マニュアル

95巻4号(2023年4月発行)

特集 睡眠時無呼吸症候群の診療エッセンシャル

95巻3号(2023年3月発行)

特集 内視鏡所見カラーアトラス—見極めポイントはここだ!

95巻2号(2023年2月発行)

特集 アレルギー疾患を広く深く診る

95巻1号(2023年1月発行)

特集 どこまで読める? MRI典型所見アトラス

94巻13号(2022年12月発行)

特集 見逃すな!緊急手術症例—いつ・どのように手術適応を見極めるか

94巻12号(2022年11月発行)

特集 この1冊でわかる遺伝学的検査—基礎知識と臨床応用

94巻11号(2022年10月発行)

特集 ここが変わった! 頭頸部癌診療ガイドライン2022

94巻10号(2022年9月発行)

特集 真珠腫まるわかり! あなたの疑問にお答えします

94巻9号(2022年8月発行)

特集 帰しちゃいけない! 外来診療のピットフォール

94巻8号(2022年7月発行)

特集 ウイルス感染症に強くなる!—予防・診断・治療のポイント

94巻7号(2022年6月発行)

特集 この1冊ですべてがわかる 頭頸部がんの支持療法と緩和ケア

94巻6号(2022年5月発行)

特集 外来診療のテクニック—匠に学ぶプロのコツ

94巻5号(2022年4月発行)

増刊号 結果の読み方がよくわかる! 耳鼻咽喉科検査ガイド

94巻4号(2022年4月発行)

特集 CT典型所見アトラス—まずはここを診る!

94巻3号(2022年3月発行)

特集 中耳・側頭骨手術のスキルアップ—耳科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻2号(2022年2月発行)

特集 鼻副鼻腔・頭蓋底手術のスキルアップ—鼻科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻1号(2022年1月発行)

特集 新たに薬事承認・保険収載された薬剤・医療資材・治療法ガイド

icon up
あなたは医療従事者ですか?