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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科67巻6号

1995年06月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

下顎骨筋突起に発生した骨軟骨種の1例

著者: 木下卓也 ,   井野千代徳 ,   山下敏夫

ページ範囲:P.480 - P.481

 下顎骨下顎枝の上縁は深くくぼんだ下顎切痕により筋突起,関節突起という前後の突起にわかれる。筋突起は三角形の薄い骨板であり側頭筋が付着している。筋突起は関節突起に比して臨床上注目されることが少ない。今回,一側の筋突起が腫瘍性に増大した珍しい症例を経験したので,供覧する。

Current Article

頸部リンパ節転移の超音波診断—有用性と問題点について

著者: 古川政樹

ページ範囲:P.483 - P.491

 はじめに
 超音波断層法(ultrasonography:以下US)の普及により,リンパ節腫脹とりわけリンパ節転移の診断精度は飛躍的に向上し,客観的な記録が可能となった。USを使いこなすことで,最小限の侵襲により的確な診断をつけられるのは間違いのないところだが,一方で問題点もある。本論では具体的な症例を提示し,USによって得られたリンパ節転移に関する情報を詳細に記述して,現時点におけるUSの有用性と問題点について述べる。

手術・手技

Mandibular Swingによる口腔および咽頭癌に対する治療経験

著者: 川浦光弘 ,   斉藤秀行 ,   大野芳裕 ,   塩谷彰浩 ,   藤井正人 ,   神崎仁

ページ範囲:P.492 - P.497

 はじめに
 近年,再建術の進歩のため口腔や咽頭の悪性腫瘍に対して積極的に手術を行えるようになった。しかし切除や再建術を満足に施行するためには術野において十分な視野の確保が必要である。過去において,口腔・咽頭癌では下顎骨の浸潤の有無にもかかわらず,腫瘍とリンパ経路を一塊にして摘出する考えから,下顎骨を共に切除していた1)。しかしMarchettaら2)は,口腔癌に対し下顎骨または下顎骨膜に直接浸潤がみられない場合は下顎骨切除の必要性がないと報告している。そしてpull through法など下顎骨を温存する手術法が推奨されたが,その場合下顎骨が術野の妨げとなる欠点を生じる。下顎骨を正中で離断し,外側に拡げ展開していくMandibular Swing Approach(MSA)は上記の欠点をなくすことにより口腔および咽頭の腫瘍に対して,よりよい視野が得られること,再建術を施行することが容易であることから主として悪性腫瘍に対して適した手術法と考えられる。MSAによる摘出術は舌,舌根部,扁桃,咽頭側壁,さらに前頭蓋底,翼突窩,側頭下窩,斜台,上咽頭の手術に応用されている3,4)。口腔および咽頭癌の治療にこの手術法を経験したので文献的考察を加え報告する。

軟口蓋全層欠損に対する裏打ち大胸筋皮弁による再建術

著者: 高橋光明 ,   林達哉 ,   中島築 ,   安達俊秀 ,   横山貴泰 ,   斉藤泰一 ,   高橋竜二

ページ範囲:P.499 - P.503

 はじめに
 軟口蓋は口腔にまたがる筋組織からなる運動器官である。その機能欠損は予想以上に大きく,嚥下機能,構音機能,呼吸機能,中耳機能の障害を引き起こす。成人では舌咽神経麻痺以外に,癌腫症例で口蓋切除後の機能損失,特に嚥下機能障害が問題となる。この場合,軟口蓋の再建後に適度の軟口蓋咽頭間隙(velopharyngeal space)の確保が困難であったり,誤嚥のために喉頭機能の保存が難しい症例があり,軟口蓋の欠損に対する再建術は頭頸部再建外科の未解決の領域の1つとされている1)
 今回,われわれは軟口蓋深く浸潤した中咽頭癌症例(T3N2bMO)の手術時の軟口蓋全層2/3と中咽頭側壁の欠損に対し,分層遊離皮弁で裏打ちした大胸筋皮弁で再建術を施行した。術後,嚥下,構音機能ともほぼ満足のいく結果を得たのでその手術法について紹介する。

原著

Antral Balloon Techniqueを用いた眼窩吹き抜け骨折症例の手術治療の検討

著者: 青柳聡 ,   岡本牧人 ,   八尾和雄 ,   平山方俊 ,   斉藤大 ,   山本一博

ページ範囲:P.505 - P.509

 緒言
 耳鼻咽喉科領域の外傷は,交通手段の多様化による交通外傷,産業の発達による労働災害,あるいはスポーツの幅広い普及によるスポーツ外傷などの発生の増加に伴いその患者数も増えてきている。なかでも鼻・副鼻腔領域における外傷は,解剖学的条件に従って嗅覚や鼻呼吸といった鼻の機能ばかりでなく,視力,眼球運動などの眼科的機能障害や咀嚼機能にも障害を加えることがある。
 したがって治療の目的は醜形を残さないような顔面の形態修復に加えて,従来の機能の回復をめざす必要がある。このため鼻・副鼻腔領域の外傷では耳鼻科が直接的に治療することは当然として,形成外科,皮膚科,歯科・口腔外科,眼科,脳外科などの積極的参加も必要とされることが多い1)

シスプラチン使用後難聴をきたした1症例の側頭骨病理所見—純音聴力検査とコクレアグラムとの比較

著者: 小山悟 ,   加我君孝 ,   原誠 ,   南風原英之

ページ範囲:P.510 - P.514

 はじめに
 Cisplatin (cis-diammine dichloroplatinum:CDDP)1)は,1970年代から,頭頸部癌,泌尿生殖器系悪性腫瘍2)に対する制癌剤として,臨床に用いられてきた3〜6)。その毒性として腎障害,骨髄障害,内耳障害などが報告されている7〜10)。内耳障害の病理学的研究については動物実験で広く行われており,主に外有毛細胞の障害が認められている11,12)。ヒトでも同様に,外有毛細胞の消失をはじめとし,血管条の変性を生じ13),難聴のタイプは高音急墜型感音難聴を呈することが多く3,4),ある程度可逆的な変化であるとされているが,純音聴力検査と側頭骨病理を比較検討した報告はほとんどない。
 今回われわれはCDDP投与開始直前の聴力検査で正常聴力が確認され,CDDP投与後,投与量の増大とともに,聴力低下を認めた1症例の側頭骨病理所見を調べ,コクレアグラムを作成し純音聴力検査所見と比較検討したので報告する。

髄膜炎および眼窩蜂窩織炎を併発した急性副鼻腔

著者: 太田伸男 ,   大木誠 ,   新井邦夫

ページ範囲:P.516 - P.518

 はじめに
 鼻性頭蓋内合併症は戦後の抗生剤の発達に伴い減少傾向であったが,最近再び報告例が増加してきている。今回,われわれは急性副鼻腔炎から髄膜炎および眼窩蜂窩織炎を併発した症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。

内視鏡下レーザーで行った後鼻孔閉鎖症手術の1例

著者: 善浪弘善 ,   船井洋光 ,   北原伸郎

ページ範囲:P.528 - P.531

 はじめに
 先天性後鼻孔閉鎖症は比較的まれな疾患である。両側性の場合は生下時より呼吸困難が生じ緊急処置が必要となるが,一側性の場合,症状が現れず,成人まで発見されない例も多い。
 さて後鼻孔閉鎖症の手術は,視野確保,術後再閉鎖など検討すべき問題点を多く含んでいる。われわれは成人で発見された一側性先天性後鼻孔閉鎖症の1例にNd-YAGレーザーを使用した鼻内内視鏡手術を施行した。この経験を報告し,レーザー内視鏡手術に対して考察する。

頸動脈小体腫瘍の1例—術前画像診断と治療の検討

著者: 井上貴博 ,   冨田俊樹 ,   川崎篤 ,   加納滋 ,   山崎一人

ページ範囲:P.532 - P.536

 はじめに
 頸動脈小体腫瘍(carotid body tumor)は比較的まれな疾患で,頸動脈分岐部に発生し非常に血流が豊富である。解剖学的位置および易出血性のため手術は困難を極める。今回われわれは,頸動脈小体腫瘍の1例を経験し,術前画像診断および治療につき検討したので報告する。

舌に発生した孤立性神経線維腫の1例

著者: 星野功 ,   樋口彰宏 ,   小野雄一 ,   中村要

ページ範囲:P.538 - P.540

 はじめに
 神経線維腫は神経鞘腫とともに良性末梢性神経腫瘍を代表する腫瘍である。今回われわれは,皮膚に色素斑を伴わず,舌に単発した神経線維腫症例を経験したので報告する。

白老町学校健診におけるスクラッチテスト陽性率

著者: 三邉武幸 ,   有田昌彦 ,   松井猛彦 ,   小島幸枝 ,   三邉武右衛門 ,   三好彰

ページ範囲:P.541 - P.545

 はじめに
 アレルギーは増加しているのか。この問題について,近年多方面での研究が行われている。われわれは学校健診の機会を利用し,アレルギーに関する疫学検査1〜4)を施行している。今回は,北海道白老町学校健診(1989・1990・1991年度)の結果を,報告する。

鏡下咡語

恩師故高原滋夫先生をお偲びして

著者: 宮本久雄

ページ範囲:P.520 - P.521

 昭和二十一年十二月二十四日,この日はクリスマスイブとは申せそれは名のみで,先の戦いで殆んど焦土と化した岡山の街並みは無惨な姿をそのまま止めている頃の事でした。
 十歳になったばかりの少女の壊疽性上顎炎の手術が高原先生御執刀の下で行われました。何事もなく進行していった手術でしたが,愈々最終段階に於て何時もの如く創面の清掃の目的でもって介助に付いていた婦長より手渡された注射器よりオキシドールが注入された瞬間歴史的大異変が起こったのであります。大量の酸素ガスが気泡状に発生するものと思っていたのに,実はそうはならず一瞬にして創面及び其処に流れ出た血液が黒褐色に変わって行ったのです。手術に直接関係していた私達は勿論の事,周囲の者もその周章は一通りではありませんでした。先生が教授として広島の地よりお帰りになられてまだ一ケ月も経っていない頃の事でした。実は私,その患者の受持医だったのです。

連載エッセイ 【Klein aber Mein】・11

口蓋裂形成後の咽頭形成

著者: 浅井良三

ページ範囲:P.522 - P.523

 口蓋裂形成後なお開鼻声がのこる場合がある。その原因として軟口蓋が短い,軟口蓋筋が十分機能しない場合,軟口蓋と咽頭後壁との間隔が広い場合などが挙げられる。かかる場合に咽頭形成が行われる。
 咽頭形成には軟口蓋,口蓋弓の位置,機能に応じて種々の方法が行われる。そのうち私の行った方法を述べる。

連載 ケーススタディー めまい・難聴

ケーススタディー〔6〕

著者: 竹森節子

ページ範囲:P.546 - P.554

 症例1 46歳,女性
 主訴:めまい
 現病歴:1994年12月21日,夜中に2回めまいがした。翌日洗濯物を干そうとして上を向くとめまいがした。それ以来寝るとき,起きるときめまいがした。回転性めまいである。
 1995年1月4日,某大学病院を受診したがなおめまいはとれず,1月19日当科外来を受診した。

講座 頭頸部外科に必要な局所解剖・19

喉頭(2)喉頭軟骨と喉頭筋

著者: 佐藤達夫 ,   坂本裕和

ページ範囲:P.556 - P.565

 喉頭は空気の通り道であるから,原則として開いたままでなければならない。したがって軟骨で囲まれている。喉頭軟骨は筋に付着部を提供するほかに,軟骨相互が頑丈な靱帯状の膜で連絡しており,軟骨・靱帯性の筒状の枠組がつくられている(図1)。この筒は,全周が軟骨で囲まれているわけではない点で,気管と似ている。しかし筒が内外二重になっているところが気管と異なるのである。
 外筒は輪状軟骨,甲状軟骨,舌骨の組み合わせであり,三者の間に輪状甲状靱帯と甲状舌骨膜が介在する。内筒は,輪状軟骨,披裂軟骨,喉頭蓋軟骨のシリーズで,弾性円錐と四角膜が連絡役をつとめている。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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