文献詳細
原著
シスプラチン使用後難聴をきたした1症例の側頭骨病理所見—純音聴力検査とコクレアグラムとの比較
著者: 小山悟1 加我君孝2 原誠3 南風原英之4
所属機関: 1帝京大学医学部耳鼻咽喉科学教室 2東京大学医学部耳鼻咽喉科学教室 3JR東京総合病院耳鼻咽喉科 4帝京大学医学部第二病理学教室
ページ範囲:P.510 - P.514
文献概要
Cisplatin (cis-diammine dichloroplatinum:CDDP)1)は,1970年代から,頭頸部癌,泌尿生殖器系悪性腫瘍2)に対する制癌剤として,臨床に用いられてきた3〜6)。その毒性として腎障害,骨髄障害,内耳障害などが報告されている7〜10)。内耳障害の病理学的研究については動物実験で広く行われており,主に外有毛細胞の障害が認められている11,12)。ヒトでも同様に,外有毛細胞の消失をはじめとし,血管条の変性を生じ13),難聴のタイプは高音急墜型感音難聴を呈することが多く3,4),ある程度可逆的な変化であるとされているが,純音聴力検査と側頭骨病理を比較検討した報告はほとんどない。
今回われわれはCDDP投与開始直前の聴力検査で正常聴力が確認され,CDDP投与後,投与量の増大とともに,聴力低下を認めた1症例の側頭骨病理所見を調べ,コクレアグラムを作成し純音聴力検査所見と比較検討したので報告する。
掲載誌情報