耳鼻咽喉科・頭頸部外科67巻9号

1995年09月発行

連載エッセイ 【Klein aber Mein】・14

下顎正中断の応用—副咽頭に拡展した耳下腺腫瘍の摘出例

著者： 浅井良三¹² 毛利学³ 西尾正博³

所属機関： ¹神戸大学 ²兵庫医科大学 ³大阪歯科大学

ページ範囲：P.858 - P.860

文献概要

下顎を切断して口腔，咽頭の手術に便ならしめようとの考えは古くからある。代表的な下顎切断法はBer-gmannの下顎側断法である。この方法は下顎再建でずれが起こって醜形を残すことがある。浅井は術後下顎の再建が癒合しない場合を考慮して下顎正中断法を考案した。（「月刊耳鼻咽喉科」，昭和16年，現在の「耳鼻咽喉科・頭頸部外科」の前身）
　下顎正中断は下口唇，顎下部の皮切の下に下顎骨の正中断を行う。下顎を左右に開いて口腔，口底，咽頭への広い術野を提供しようとの目的である。術後銀線または鉄線で縫合して骨癒合をはかるが，不幸にして骨が癒合しなくても咀嚼，発声，嚥下等に支障なく，ガタガタすることもない（浅井は一例経験している）。