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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科68巻1号

1996年01月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

心筋に転移をきたした舌癌の1症例

著者: 松崎勉 ,   花牟礼豊 ,   大山勝

ページ範囲:P.6 - P.7

 舌癌の治療後,経過中に心筋に転移をきたした稀な症例を経験したので報告する。
 症例:55歳男性。平成5年4月初め舌の腫瘤形成に気づき,4月26日紹介受診する。舌右縁に42×32mmの腫瘤を触知(図1),頸部に数個のリンパ節を触知した。

Current Article

中耳炎に関する一考察—炎症性メディエーターを中心に

著者: 山下敏夫 ,   南豊彦 ,   古川昌幸

ページ範囲:P.9 - P.19

 はじめに
 中耳炎は耳鼻咽喉科の日常臨床において極めて高頻度に遭遇する疾患であるが,その分類は必ずしも統一されておらず,またその病態や成因についてはいまだ不明な点も多い。しかし一方,1975年に第1回の国際滲出性中耳炎シンポジウムが開催されたのが1つの契機となり,さらに周辺基礎医学の進歩とも相俟って,最近のこの方面の研究の成果には目をみはるものがあり,多くの新しい知見が得られ,中耳炎そのものの概念が以前とかなり異なったものとなってきた。
 そこで著者らは,中耳炎の分類,病態,成因,さらには各中耳炎間の相互関係について,殊にその研究の進歩の著しい炎症性メディエーター,なかでも血小板活性化因子(PAF)の関与に重点をおいて,総説的に考察を試みる。

手術・手技

舌全摘症例に対する誤嚥防止対策の検討

著者: 塩谷彰浩 ,   行木英生 ,   加藤高志 ,   保谷則之 ,   佐倉伸洋 ,   永竿智久 ,   福積聡 ,   宮川昌久

ページ範囲:P.22 - P.26

 はじめに
 舌口腔癌の外科的治療においては,筋皮弁などによる再建手技の発展に伴い,広範囲切除が積極的に行われるようになった。舌全摘術(舌根を含む)もその1つと言えるが,舌全摘術施行時の喉頭の処理方針には論議があり,誤嚥が制御不能の場合が多いという考えのもとに,喉頭全摘を併施する方針をとっている施設も少なくないように思われる。しかしながら,喉頭を保存すれば,舌全摘による構音機能低下はあるものの,聞き慣れた人との会話は可能であり,また鼻呼吸も保存され,味覚喪失による障害を嗅覚により,ある程度補うことができる。したがって,できる限り喉頭保存に努めるのが,望ましいと思われる。
 今回われわれは,舌扁平上皮癌に対し,喉頭を保存して舌根を含む舌全摘および右臼後部および軟口蓋,舌骨,喉頭蓋舌根面粘膜を合併切除後,遊離広背筋皮弁による舌再建と種々の誤嚥防止策を施し,経口摂取開始直後より,誤嚥することなく摂食可能であった症例を経験したので若干の検討を加えたい。

原著

補体系に異常を認めたKüttner腫瘍の1症例

著者: 陣内賢 ,   相原康孝 ,   八木聰明

ページ範囲:P.28 - P.31

 はじめに
 Küttner腫瘍は1896年にH.Küttnerがはじめて報告した悪性腫瘍に似た硬化性の顎下腺炎である1,2)。Küttner腫瘍の成因には種々の説が述べられているが未だに定説がない。今回,補体系に異常を認めたKüttner腫瘍を経験したので報告する。

C-ANCAの測定が早期診断と治療効果の判定に有用であったWegener肉芽腫症の1例

著者: 藤田健一郎 ,   山際幹和 ,   伊井裕一郎 ,   野口光也 ,   幸治隆一 ,   石原明徳

ページ範囲:P.33 - P.37

 はじめに
 Wegener肉芽腫症をはじめとする一連の血管炎症候群において,血清中の好中球細胞質に対する自己抗体,すなわち(anti neutrophil cytoplas-mic antibody:ANCA)の存在が認識され,特にC (cytoplasmic pattern)—ANCAはWegener肉芽腫症,P (peri-nuclear pattern)—ANCAは顕微鏡的多発動脈炎などの細動脈以下の血管炎を示す疾患に特異性が高いといわれ,その臨床的意義が広く注目されている1〜6)
 今回,われわれはC-ANCAの測定結果が早期診断および治療効果の判定に有用であったWegener肉芽腫症の1症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。

早期声門部喉頭癌(T1N0M0)の治療成績

著者: 宇野芳史 ,   斎藤龍介

ページ範囲:P.38 - P.41

 はじめに
 比較的予後が良いとされる声門部喉頭癌症例のうちでも,特にT1の早期声門部喉頭癌は,頸部リンパ節転移および遠隔転移が少なく,予後の良い悪性腫瘍と考えられている。また,早期声門部喉頭癌の治療は,喉頭の機能温存をはかるために,放射線治療が行われることが多く,治療成績もほぼ満足すべきものと考えられている1〜10)。しかしながら,レーザー治療の発達により,最近では放射線治療を行わずレーザー手術のみで早期声門部喉頭癌の治療を行っている施設もある11〜16)
 われわれの施設では,これら早期声門部喉頭癌に対し,原則的に放射線治療を主として用い,照射のみでは治療効果が不十分であると考えられる症例に対しては照射期間中にレーザーによる減量手術を行っている。今回われわれは,1979年から1992年までの約14年間に,当科で一次治療を行い,2年以上経過観察のできた早期声門部喉頭癌(T1N0M0)40例について検討を行ったので報告する。

喉頭Adenosquamous carcinomaの1例

著者: 鈴木理文 ,   佐野仁勇 ,   中村宣生 ,   菅家稔 ,   田中一仁 ,   小形章 ,   犬山里代

ページ範囲:P.42 - P.45

 はじめに
 喉頭癌の病理組織型はそのほとんどが扁平上皮癌であり,腺癌系の発生頻度は極めて低い。今回われわれは,扁平上皮癌と腺癌の両者の特徴をあわせもった,いわゆる腺扁平上皮癌と診断し得た,非常に稀な症例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する。

喉頭アミロイドーシスの1例

著者: 糸数哲郎 ,   江州浩明 ,   安田忍 ,   名渡山愛雄 ,   野田寛

ページ範囲:P.48 - P.51

 はじめに
 アミロイドーシスはアミロイドと呼ばれる線維性蛋白が種々の臓器に沈着し,機能障害を引き起こす疾患である。一般には,肝臓,腎臓などの重要臓器に多発し,極めて予後不良な全身性アミロイドーシスと,特定の臓器に限局して発生する限局性アミロイドーシスに分類される。耳鼻咽喉科領域の報告はほとんどが限局性アミロイドーシスであり,そのなかでも上気道,特に喉頭はその好発部位である。
 今回,われわれは限局性の喉頭アミロイドーシスに対し,ラリンゴマイクロ下のレーザー蒸散術とセファランチン®の内服で,嗄声の改善と良好な予後を得た症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

喉頭狭窄を呈した再発性軟骨炎の1例

著者: 熊谷正樹 ,   豊嶋勝 ,   板垣政信 ,   桜井時雄

ページ範囲:P.52 - P.56

 緒言
 再発性軟骨炎は系統的に全身の軟骨組織を侵す自己免疫疾患で,1923年Wartenhorst1)により初めて記載され,現在までの約70年間に世界で約300例が報告されている比較的まれな疾患である2)。われわれは,感冒罹患後,両側耳介軟骨炎・鼻中隔膿瘍にて発症しその後,喉頭狭窄による呼吸困難を呈した本疾患例を経験した。再発性軟骨炎の病因をめぐる最近のトピックスや自己免疫疾患発症におけるスーパー抗原の関与について,文献的考察を加えて報告する。

耳下腺良性乳児血管内皮腫の4例

著者: 野々村直文 ,   川名正博 ,   大倉隆弘 ,   中野雄一 ,   五十嵐文雄

ページ範囲:P.66 - P.70

 はじめに
 小児の耳下腺腫瘍では血管腫が比較的多くみられるが,そのなかに良性乳児血管内皮腫(benigninfantile hemangioendothelioma)と呼ばれ,年長児や成人にみられる海綿状血管腫とは異なった病像を呈する乳児の血管性腫瘍がある。そこで最近経験した良性乳児血管内皮腫4例の経過について述べ検討を加えた。

顎下腺筋上皮腫の1症例

著者: 田渕経司 ,   多田幹夫 ,   豊嶋勝 ,   桜井時雄 ,   浅野重之 ,   望月衛

ページ範囲:P.72 - P.75

 はじめに
 1943年Sheldon1)は,57例の唾液腺腫瘍のうち筋上皮細胞由来と考えられる細胞のみからなる3例を認め,これを筋上皮腫と呼んだ。唾液腺腫瘍中,筋上皮腫は1%以下と比較的まれであるとされる。今回われわれは顎下腺に発生した筋上皮腫の1症例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する。

Chlamydia trachomatis による頸部リンパ節炎症例

著者: 石津吉彦 ,   谷尾進司 ,   吉田春彦

ページ範囲:P.76 - P.78

 はじめに
 最近,性風浴の変化ともに,従来は耳鼻咽喉科領域でみられなかったような病原体によって様々な病態が引き起こされ,こうした感染症患者が直接にわれわれのところを受診するようになった。本邦でも口蓋扁桃,中耳腔や頸部リンパ節などからChlamydia trachomatis(以下C.trachomatis)を検出した報告1〜4)がある。今回,C.trachomatis尿道炎の既往のある成人男性で,C.trachomatisによると思われる頸部リンパ節腫大をきたした症例を経験したので文献的考察を加え報告する。

Pycnodysostosis患者でみられた上顎骨骨髄炎の1例

著者: 三田奈保子 ,   吉原俊雄

ページ範囲:P.80 - P.83

 はじめに
 Pycnodysostosisとは,低身長,指趾短縮,頭蓋骨および上・下顎骨の形成障害など,特異的顔貌と外観をもち,全身のびまん性骨硬化と易骨折性を認める骨系統疾患である。同疾患に伴う下顎骨骨髄炎の報告は散見されるが,今回われわれは,抜歯後,長期にわたり上顎骨骨髄炎を認めた1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。

鏡下咡語

朋友としての患者

著者: 酒井俊一

ページ範囲:P.58 - P.59

 ■上顎癌第1例の患者さんと35年間のおつきあい
 筆者が大阪大学病院耳鼻咽喉科に入局したのは昭和29年であった。2年後に主任教授が交代され,筆者は若輩にもかかわらず,上顎癌の治療を任されることになった。Cさんは筆者が初めて治療した上顎癌患者であり,38歳男性,高知県中村市で小学校の教員をしておられた。3か月前から左鼻閉に気付き,最近頬部腫脹,疼痛,悪臭の血性鼻漏を訴え,歯痛もあったため某歯科医を受診し,抜歯をうけたが軽快せず,1か月前から口蓋に腫脹を来した。
 昭和31年11月24日初診 左鼻腔には大きな鼻茸,下鼻道が腫瘍性に膨隆,硬口蓋左半は膨隆し,その中央は潰瘍形成,X線像により左上顎洞に陰影,眼窩底,頬骨の骨破壊,T3NOMO,口蓋から試験切除した病理組織の結果,扁平上皮癌と診断された。

連載エッセイ 【Klein aber Mein】・18

臨床瑣談—視診について/食道発声法練習中におこったイレウス症例

著者: 浅井良三

ページ範囲:P.60 - P.62

 私はこうして育成されました。その次第をお話しします。特に視診を中心に。
 臨床医は日常診療している患者の訴えを聞き(問診),耳,鼻,のどその他を検査し(現症),その結果X線検査,機能検査,血液検査を加えて症状を理解し得る所見をつかみ,その所見の由来を考案して診断し治療方針をたてます。

連載 ケーススタディー めまい・難聴

ケーススタディー〔13〕

著者: 深谷卓

ページ範囲:P.84 - P.89

 1.症例の呈示
 最近半年間に外リンパ瘻を疑い,試験鼓室開放術を施行した症例のなかから3症例を呈示する。それぞれ異なった誘因で発症し,症状も様々で,外リンパ痩の成因・診断・治療を考えるうえで非常に有益な症例であった。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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