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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科68巻10号

1996年10月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

顔面動静脈奇形の治療経験

著者: 朝信輝樹 ,   中島智子 ,   宇野欽哉

ページ範囲:P.848 - P.849

 今同われわれは顔面に限局した動静脈奇形(AVM)の1症例を経験したので報告する。
 症例:27歳,男性。既往歴:3歳よりてんかん 現病歴:平成6年3月右耳前部に軟性腫瘤が出現し11月頃より増大してきたため,平成7年1月30日当科に紹介された。

Current Article

オステオポンチンの内耳での役割

著者: 阪上雅史 ,   嶽村貞治

ページ範囲:P.851 - P.858

 I.オステオポンチン(osteoPontin:OPN)
 オステオポンチンとは,1985年に骨を形成する物質として見い出され1),そのアミノ酸配列の特徴から骨芽細胞(osteoblast:Os)とヒドロキシアパタイトを結ぶ橋(pons)のような働きを持つ糖蛋白質と考えられ,このように命名されている。OPNは骨化過程に関与している非コラーゲン骨基質蛋白であり,骨や歯の石灰化に重要な役割を果たしている2)。また,OPNは生化学的にacid-rich phosphorylated glycoproteinであり,Arg-Gly-Aspというアミノ酸配列を含むことから細胞接着3),連続Asp配列からCa2+との結合4)に関与することが報告されてきた。臨床上,OPNは尿路結石5)や大動脈粥状硬化6)などの病的な石灰化に関係していることも解明されている。
 以上により,OPNは骨形成に関係しているだけでなく,多彩な機能を持っていることが想像される。本稿では主に,非コラーゲン骨基質蛋白であるオステオポンチン(OPN)をプローブとし,解像力の優れたnon-RI法によるin situハイブリダイゼーション法を用い,内耳におけるOPN-mRNAの発現を検討した。

原著

化学療法中にToxic Epidermal Necrolysis(TEN)を発症した悪性リンパ腫の1症例

著者: 阿部倫子 ,   松永達雄 ,   酒向司 ,   坂本裕

ページ範囲:P.860 - P.863

 はじめに
 Toxic Epidermal Necrolysis (以下TENと略す)は,臨床症状および自覚症状が著しく熱傷に類似した中毒性皮疹であり,全身的な治療を必要とする症候群である。今回われわれは,鼻腔原発非ホジキンリンパ腫に対するCHOP療法施行中に,TENが発症した症例を経験したので報告する。

鼻副鼻腔平滑筋肉腫の1例

著者: 川浦光弘 ,   行木英生

ページ範囲:P.864 - P.867

 緒言
 鼻副鼻腔における平滑筋肉腫は非常に稀な疾患である。われわれは,64歳の男性で再発した鼻副鼻腔平滑筋肉腫に対し,冠状頭皮切開で前頭蓋底経由による腫瘍摘出術を行い良好な結果を得たので文献的考察を加え報告する。

前頸部腫瘤として初発した腺様嚢胞癌の1症例

著者: 菊地仁 ,   朝倉美弥 ,   芋川英紀 ,   佐藤成樹 ,   大橋徹 ,   加藤功 ,   品川俊人

ページ範囲:P.868 - P.870

 はじめに
 気管原発の悪性腫瘍の発生頻度は極めて低いものの1),その中では腺様嚢胞癌は過半数を占めている2,3)。腺様嚢胞癌は腫瘍の発育が遅く,気管閉塞などの症状が緩徐に進行するため確定診断に時間を要するものが多い4)。また,稀な疾患であるために治療方針などについても諸種の問題点が存在する5)。われわれは最近,前頸部腫瘤として初発した腺様嚢胞癌の1症例を経験したので,その治療経過を,若干の文献的考察とともに報告する。

頭頸部扁平上皮癌進行例におけるDNA ploidyの解析

著者: 周莉新 ,   佃守 ,   湯山誠一郎 ,   新井泰弘 ,   河野英浩 ,   榎本浩幸 ,   河合敏 ,   深谷純教 ,   井上十与子 ,   石井明子

ページ範囲:P.872 - P.877

 はじめに
 悪性腫瘍細胞の核DNA ploidy解析は,癌の診断にきわめて有用な腫瘍マーカーの1つであり,悪性度の判定や予後推定の指標として利用されている1)。さらにFlow cytometry (FCM)の使用により,大量の細胞を短時間に客観的に測定することが可能となり,各領域の悪性腫瘍の核DNA量と病期,予後などとの関連性を示す結果が集積されている2)。頭頸部悪性腫瘍にも核DNA量の異常が多くみられ,頭頸部扁平上皮癌進行例におけるDNA ploidyの解析はその悪性度の判定,予後予測のパラメータになるのではないかと考えられている。今回われわれは頭頸部扁平上皮癌進行例の手術凍結材料を用いploidyパターンと臨床,病理の因子との関連性を検討したので,その結果を報告する。

沖縄県の頭頸部癌の罹患率—癌登録からの統計的観察

著者: 古謝静男 ,   糸数哲郎 ,   真栄城徳秀 ,   下地善久 ,   大輪達仁 ,   野田寛 ,   田盛広三 ,   上原隆

ページ範囲:P.878 - P.880

 はじめに
 沖縄県では琉球大学医学部の設置以来,耳鼻咽喉科学教室を中心に頭頸部癌の治療を行ってきた。われわれは頭頸部癌の治療のなかで,沖縄県における頭頸部の各癌の罹患頻度が日本の他の地域と異なるであろうとの印象を持っていた。なかでも咽頭癌,特に下咽頭癌の罹患頻度は高率であろうと推察していた。しかし沖縄県全体としての患者数,罹患頻度の把握は1施設では困難であった。沖縄県では1987年から沖縄県衛生環境研究所を中心に癌登録が開始され,頭頸部癌の県全体の状況が把握可能となった。今回1988年から1990年までの3年間の登録資料に基づき,頭頸部癌の各癌の罹患頻度を算出し,統計学的検討を行った。その結果に若干の文献的考察を加えて報告する。

内頸静脈奇形の1症例

著者: 新田光邦 ,   髙橋廣臣 ,   岡本牧人 ,   中山明仁 ,   馬越智浩 ,   望月高行

ページ範囲:P.882 - P.884

 緒言
 内頸静脈の奇形には,内頸静脈高位,内頸静脈拡張症,内頸静脈瘤などがあり,臨床的にしばしば問題となる。われわれは,口腔底平扁上皮癌頸部転移症例の手術の際,偶然みられた珍しい内頸静脈奇形の1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。

慢性鼻副鼻腔炎患者の頭痛・顔面痛に関する臨床的検討—(その2)非頭痛群との比較

著者: 内藤健晴 ,   大山俊廣 ,   小森真由美 ,   三嶋由充子 ,   高須昭彦 ,   岩田重信

ページ範囲:P.885 - P.889

 はじめに
 慢性の鼻副鼻腔炎患者の訴える頭痛や顔面痛は程度も責任部位も曖昧なことが多く,その因果関係も不明瞭である。しかし,鼻疾患患者にみられる頭痛の頻度は21.2〜59.4%と意外に高い1〜3)。それゆえ,慢性の頭痛と副鼻腔炎の関係について明確にすることは,日常の実地臨床において極めて重要なことと思われる。前回,われわれは慢性の鼻性頭痛の臨床的特徴を明確にする研究の一環として,慢性の鼻炎および副鼻腔炎患者の訴える頭痛や顔面痛の臨床的特徴について報告した4)が,今回は慢性鼻副鼻腔炎患者に前鼻鏡検査,副鼻腔X線撮影,鼻腔通気度測定を行い,頭痛を有する群と有さない群で比較検討し若干の知見を得たので報告する。

口腔底に発生した巨大類表皮嚢胞の1症例

著者: 竹内啓 ,   善浪弘善 ,   石尾健一郎 ,   加瀬康弘 ,   水野正浩

ページ範囲:P.890 - P.893

 はじめに
 頭頸部の類表皮嚢胞は,一般的に胎生期における第1・2鰓弓の癒合線上に遺残した外胚葉組織の迷入,または外傷・炎症・手術などによる上皮組織の迷入により生じる疾患である。本嚢胞は頭頸部の各所に発生しうるが,口腔領域においては,特に口腔底に発生したものが多く報告されている1,2)。今回,われわれは,口腔底に発生した巨大な類表皮嚢胞の1例を経験した。MRIにより嚢胞と口腔底筋群の位置関係を診断することが本症例の術式の選択の際に有力であったので,文献的考察を加えて報告する。

鼻茸を伴う鼻・副鼻腔病変のCT,MRIによる評価—上顎洞,前頭洞病変の出現頻度に対する検討

著者: 真崎正美 ,   米本友明 ,   橘敏郎

ページ範囲:P.899 - P.902

 はじめに
 鼻茸とは固有鼻腔内にみられる炎症性のポリープ病変そのもの,あるいはその病態に対して使われる言葉であるが,内視鏡下鼻内手術や画像診断の進歩により個々の症例によってその副鼻腔病変は種々様々であり,全副鼻腔に病変のみられる場合もある一方,全く副鼻腔に病変のみられないことがあることがわかってきた。副鼻腔病変の存在については不規則ではなく,ある一定の規則性があり,例えば蝶形骨洞に病変がみられる症例では前篩骨洞,後飾骨洞にも病変がみられ,蝶形骨洞に孤立性病変がみられることは極めてまれである。そこでこのような各副鼻腔病変の有無についての規則性と,さらに内視鏡下鼻内手術への応用を考慮した分類を1994年に報告した1)。この分類は鼻腔,篩骨洞,蝶形骨洞における病変の有無による分類を基軸としたグループと,上顎洞と前頭洞について評価したグループから構成されており,今回はこの2つのグループの関連性,すなわち鼻腔,篩骨洞,蝶形骨洞における病変の有無が上顎洞と前頭洞における病変の発現とどのような関連を示しているのか,あるいは全く独立して発現するのかについて検討したので報告する。

当院における肺炎球菌感染症の検討—ペニシリン低感受性肺炎球菌を中心に

著者: 福島邦博 ,   頼實哲 ,   小河原利彰 ,   宗包智保美 ,   森山克巳

ページ範囲:P.904 - P.907

 はじめに
 肺炎球菌はヒト上咽頭から10〜40%の頻度で検出される上気道の常在菌で,耳鼻咽喉科領域の主要な急性感染症,ことに急性副鼻腔炎,急性中耳炎の最も頻度の高い起炎菌の1つと考えられている1)。これまで肺炎球菌はペニシリン系抗菌剤に対する感受性が高く,その感染症が実際の臨床現場で問題となることは稀であったが,近年ペニシリンに対して感受性の低い肺炎球菌(ペニシリン低感受性肺炎球菌:PISP)が耳鼻咽喉科領域の臨床検体からもしばしば分離されることが報告されており2〜5),その臨床的意義が注目されるようになってきた。今回,われわれは当院における耳鼻咽喉科領域の急性感染症症例から分離された肺炎球菌で各種経口抗菌剤の最小発育阻止濃度(MIC)を測定し,高いペニシリン低感受性肺炎球菌の分離頻度を経験したので報告する。

耳鼻咽喉科領域の結核症について

著者: 宇野芳史

ページ範囲:P.908 - P.912

 はじめに
 近年,抗結核剤の発達や結核予防法の普及によって結核の発生頻度および死亡率は減少してきている。しかし,ここ数年結核死亡率の減少速度は鈍化してきており,また肺結核の新登録患者数は増加してきている1)
 耳鼻咽喉科領域,特に咽頭喉頭領域は上気道に属し,肺結核に伴う発症の報告が多く認められる。今回著者が経験した耳鼻咽喉科領域の結核症について検討を行ったので,文献的考察を加え報告する。

鏡下咡語

手術の修練—偶感

著者: 星野知之

ページ範囲:P.896 - P.897

 耳鼻咽喉科の修練において手術をどの程度に研修プログラムに入れるのか。専門医になるまでの研修の目やすは示されてはいるが,実際にどのように行われているのかあまりはっきりしていない。筆者は特に耳科学に関連する手術の修練に関心があり,学会などの折,他の施設の方との会話で時々話題にもするが,全体としてガイドラインを作るほどには煮つまっていないし,さしせまってもいないようである。
 欧米ではアブミ骨手術をレジデントの期間にいかに修練したらよいかが,重要な問題としてとりあげられ論じられている。1960年代には毎週毎週60例もの手術を行う耳科医がいて,1970年代のはじめ頃までは症例が多かったが,次第次第に数が減り,レジデントの研修にも支障がでるほどになっているという。良い適応となる症例を手術しつくしたことと,手術を手がける医師の増加,さらにレジデントの手術の守備範囲であった保険の患者を,一般の耳科医までが次第に扱うようになってきたことなどが原因としてあげられている。1988年のヒューストン・ベイラー大学の報告では,レジデントは年2〜3例を手術するだけ。1991年のオハイオ州クリーブランドクリニックの耳科医G.Hughes (彼は耳科学の教科書も書いている耳の専門医である)の報告では,彼自身年に9例のアブミ骨手術をするだけだという。手術の腕の保持には年8例以上の手術をする必要があると考える者があり,レジデントのみならず耳科専門医にとってもゆゆしき状態という。

手術・手技

浅側頭動脈島状皮弁による眼瞼の再建—カニ鋏状皮弁の開発

著者: 内沼栄樹 ,   山本博 ,   酒井直彦 ,   石黒匡史 ,   鈴木雅美 ,   林和弘

ページ範囲:P.915 - P.918

 はじめに
 Dunham1)は1893年浅側頭動静脈を含めた頭部からの皮弁にて顔面の欠損を再建した。
 この報告に刺激を受け,1898年Monks2)は悪性腫瘍切除後の下眼瞼全層欠損に対し浅側頭動静脈を茎とした皮弁にて再建を行っている。しかしながら“島状皮弁”という用語は1917年のEsser3)の報告によるものである。その後,浅側頭動静脈を用いた多くの手術方法が頭頸部の再建に利用され報告されるに至った。
 今回筆者らは,浅側頭動脈島状皮弁を,順行性および逆行性に挙上し眼瞼の再建を行ったので報告する。特に,島状皮弁を2つに分割し,上眼瞼および下眼瞼の一期的再建を行った方法は,今日まで報告をみない新しい手術手技である。

連載 症状から見た耳鼻咽喉科・頭頸部外科シリーズ

④頸部腫瘤

著者: 安田範夫

ページ範囲:P.920 - P.927

 はじめに
 頸部腫瘤は腫瘤以外には無症状で来院することが多く,症状による診断のフローチャートはほとんど役に立たない。一般に触診と適切な検査の組み合わせで鑑別診断を進めなければならない。本稿では特徴ある頸部腫瘤症例を呈示してその診断のポイントを述べ,頸部腫瘤診断の進め方についてまとめてみた。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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