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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科68巻12号

1996年11月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

咬合により突出する咬筋血管腫の1例

著者: 山形和彦 ,   兵頭政光 ,   湯本英二 ,   柳原尚明

ページ範囲:P.936 - P.937

 血管腫は舌・口唇に好発し,頭頸部領域では珍しい疾患ではない。しかし,筋内血管腫は稀で,全血管腫のうち0.8%である1)。このうち頭頸部領域には13.8%が発生し,咬筋や僧帽筋が好発部位である2)。今回,強く咬合することにより増大する咬筋血管腫を経験したので報告する。
 症例:14歳男性。6歳時に左頸部腫脹を主訴に当科を受診した。咬筋肥大という診断で経過観察となった。14歳時に腫瘤が増大し当科を再診した。

Current Article

ヒト内耳の走査型電子顕微鏡による観察

著者: 星野知之

ページ範囲:P.939 - P.947

 はじめに
 耳疾患についての病理学的知識の大部分は,セロイジン連続切片の光学顕微鏡(光顕)検査から得られたものである。それを集大成したSchukne-chtの名著“Pathology of the Ear1)”はこれからも臨床家にとって良い道標であり続けるはずである。一方電子顕微鏡(電顕)が内耳へも応用されて,個々の細胞の超微の形態さらに分子生物学との連携で機能の解明にまで知識を深めてくれたが,その多くは材料として動物を使って得られたものである。臨床のためにはヒトでの状態を知りたいのであるが,死後変化の問題もあってヒト内耳への電顕の応用は,あまり活発にはおこなわれていない。
 筆者は電顕の中でも走査型電顕(SEM)を使ってこれまで成人25例,胎児12例の内耳を観察してきた。以下にこれまで知り得たヒト内耳の所見を概括してみる。

原著

耳介に発生した血管平滑筋腫の1例

著者: 嶋崎雄一 ,   矢野純 ,   市川朝也 ,   吉村恵理子 ,   武村民子

ページ範囲:P.948 - P.951

 はじめに
 血管平滑筋腫は主に四肢に発生する良性腫瘍で,頭頸部領域に認められることは比較的少ない。今回われわれは,耳介後面に発生した血管平滑筋腫の1例を経験したので報告する。

伝音性難聴を呈した中・内耳奇形の1例

著者: 持木将人 ,   加我君孝 ,   中村雅一 ,   川村理恵 ,   中村雅子

ページ範囲:P.953 - P.957

 はじめに
 先天性高度難聴には原因不明のものが多いが,その中には内耳奇形によるものの存在が知られている。現在,内耳奇形は高分解能CTやMRIなどの画像診断により詳細な検討が可能になり,MondiniやScheibeなど古典的な分類に当てはまらない様々なタイプが確認され,その中に純音聴力検査で気導骨導差を示す例も少数ながら存在する。今回われわれは伝音性難聴,温度眼振反応が無反応を呈した中・内耳奇形の1症例を経験し,神経耳科学的に検討したので報告する。

慢性中耳炎から全聾をきたした1例の側頭骨病理所見

著者: 藤井智子 ,   飯野ゆき子 ,   小山悟 ,   中本吉紀 ,   鳥山稔 ,   神尾友和

ページ範囲:P.958 - P.961

 はじめに
 ヒトの側頭骨病理において,生前の聴力と蝸牛の病理所見との関連は非常に興味が持たれてきた。そのうち後天性に全聾を生じる疾患は,内耳炎,内耳出血,聴器毒,突発性難聴など様々なものがあげられ,その側頭骨病理に関する報告1〜3)も散見されるが,今なお十分には解明されていない。今回われわれは,慢性中耳炎が内耳へ波及し両側聾を生じたと考えられる側頭骨について病理学的検討を行い,若干の考察を加え報告する。

シスプラチンによる聴力障害について—とくに年齢との関係について

著者: 南吉昇 ,   渡辺聡哉 ,   立木孝

ページ範囲:P.962 - P.966

 緒言
 1965年,Rosenbergによって発見されたシスプラチン(cis-platinum (II) diammine dichlor-ide:以下CDDPと略す)は,C12H6N2Ptの化学式を有する白金化合物で,その作用機序がアルキル化剤と類似しており優れた抗腫瘍作用を示すため,泌尿器科領域,婦人科領域や耳鼻咽喉科領域などの悪性腫瘍に広く利用されている。CDDP投与による副作用としては,腎毒性や骨髄機能抑制などのほかに耳鼻咽喉科的には難聴,耳鳴などの聴覚障害が発症するとされている。聴覚障害については,Helsonら1),Reddelら2),Nakaiら3)やその他多くの者により発現頻度,障害をきたす投与量,障害の性質や側頭骨標本による障害部位などについての報告がみられる。CDDPは小児から老人まで幅広く使用される薬剤であるため,年齢による聴力変化についても検討する必要性があると考えられる。しかしそれについての報告は少ない。今回CDDPを使用した腫瘍症例を対象として年齢と聴力障害について検討したので報告する。

めまいを主訴とした異型Fisher症候群の1症例

著者: 設楽明子 ,   大久保公裕 ,   相原康孝 ,   八木聰明

ページ範囲:P.968 - P.970

 はじめに
 Fisher症候群は眼筋麻痺,運動失調,深部反射低下を3主徴とする,急性多発性神経炎の1亜型である1〜3)。現在までの報告では,複視で発症し,上記3主徴が次第に完成し,最終的にFisher症候群と診断されている症例が多い4,5)。今回われわれは,めまいを主訴とし,3主徴のほか意識障害,無呼吸など多彩な中枢神経症状を呈し,神経耳科学的検査から小脳および脳幹病変の合併が示唆され,異型Fisher症候群と診断した症例を経験したので報告する。

長期経過を経て悪性化したと考えられる上顎悪性線維性組織球症(malignant fibrous histiocytoma)の1例

著者: 篠昭男 ,   吉原俊雄 ,   田中雅代 ,   今井容子

ページ範囲:P.976 - P.980

 はじめに
 悪性線維性組織球症(malignant fibrous his-tiocytoma,以下MFHと略す)は,全身の軟部組織に生じ四肢に好発する腫瘍で頭頸部領域での発生は比較的少ないとされている。今回われわれは,良性腫瘍として手術をうけ,25年間という経過を経て悪性化したと考えられる上顎MFHの1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する。

内頸静脈血栓症の1例

著者: 陣内賢 ,   渡邊健一 ,   八木聰明 ,   波多野吟哉 ,   大河原大次

ページ範囲:P.982 - P.985

 はじめに
 静脈血栓症はほとんどが下肢の静脈に起こり,内頸静脈の血栓症は比較的まれな疾患と考えられる。今回,扁桃周囲膿瘍による炎症が原因と考えられる内頸静脈血栓症で保存的治療が奏効し,また造影CTによる評価が診断と経過観察について有効であった症例を経験したので報告する。

重篤な縦隔洞炎を起こした深頸部感染症の1例

著者: 清水弘則 ,   児玉章 ,   武林悟 ,   篠昭男

ページ範囲:P.986 - P.989

 はじめに
 抗生剤や画像診断の発達した現在では,深頸部感染症から縦隔洞に炎症が波及することは,早期の抗生剤投与と外科的処置により少なくなっている。しかしながら,われわれは,糖尿病と閉塞性動脈硬化症の基礎疾患をもつ患者で,急性扁桃炎から深頸部感染症を生じ,抗生剤投与と頸部に外科的ドレナージを行ったにもかかわらず,さらに急速に縦隔洞炎を生じ,極めて重篤な状態に陥った患者を経験した。経過中に,細菌性ショック,膿胸,肺炎の併発,閉塞性動脈硬化症の悪化による右足壊死がみられたが,集中治療室管理として無事救命し得たので,この経過を文献的考察を加え報告する。

喉頭リンパ管腫の1症例

著者: 堀内譲治 ,   山形和彦 ,   湯本英二

ページ範囲:P.992 - P.996

 はじめに
 リンパ管腫は頭頸部領域に発生する頻度が高いが,喉頭における発生はきわめて稀で,過去に16例の報告1〜16)を認めるにすぎない。今回われわれは,喉頭に発生したリンパ管腫の1症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。

Kartagener症候群の1例

著者: 徳力俊治 ,   野々山勉 ,   川口信也 ,   竹内万彦 ,   間島雄一 ,   坂倉康夫

ページ範囲:P.998 - P.1001

 はじめに
 Kartagener症候群は内臓逆位,気管支拡張症,慢性副鼻腔炎を呈し,全身の線毛をもつ構造に先天的異常をもつ疾患として知られている1)。今回われわれは,慢性副鼻腔炎に内臓逆位を合併し,電顕像にてKartagener症候群と診断し得た1例を経験したので報告する。

腫瘤性病変として認められた口蓋扁桃嚢胞の2症例

著者: 岩崎真一 ,   八木昌人 ,   水野信一 ,   荒井直樹 ,   松本和彦 ,   川端五十鈴

ページ範囲:P.1002 - P.1005

 はじめに
 口蓋扁桃に生じる腫瘤性病変の大部分は悪性であり,良性の病変が生じることはまれである。口蓋扁桃嚢胞は微小なものは扁桃実質内に比較的高率に存在するが,腫瘤性病変として認められるものは極めてまれであり,過去の報告も少ない。著者らは腫瘤性病変を呈した口蓋扁桃嚢胞の2例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する。

経皮的気管穿刺針抜去後声門下狭窄の1例

著者: 島岳彦 ,   將積日出夫 ,   渡辺行雄 ,   小林英人

ページ範囲:P.1006 - P.1008

 はじめに
 経皮的気管穿刺針(トラヘルパー®,図1)は皮膚切開後,輪状甲状靱帯に刺入するだけで容易,迅速,安全に気道確保できるため,近年では上気道閉塞時の緊急気道確保や胸腹部外科などの手術後,貯留した喀痰を吸引する目的でしばしば用いられている。トラヘルパー®の合併症に関する報告は少なく,これまで声門下狭窄に伴う呼吸困難の報告はない。今回われわれは,短期間のトラヘルパー®挿入に続発して生じた声門下肉芽による呼吸困難症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

鏡下咡語

もう一つの震災

著者: 法貴昭

ページ範囲:P.972 - P.973

 早いもので阪神淡路大震災から一年半が過ぎました。さすがに壊れたままの建物は少なくなりましたが,空地と,新しく建築中の建物と,建設関係のトラックや車で渋滞する道路は震災後半年ぐらいから変わらない風景となってしまいました。
 わが家もご他聞にもれず,築23年の棟は瓦が落ちるという半壊状態でしたが,新しい棟で寝ていたので幸い怪我一つしませんでした。私の住む西宮市仁川町は多くの住宅が昭和の初めに建てられ,それなりに風格のある住宅地でしたが,9割が全壊しました。人の声で外に出てみると,町の景色は一変し,なんとも言えない静寂が漂っていました。生き埋めになられた近所の方の家族が寝間衣のまま救助を求めて来られたので,とりあえず着るものと靴を渡し駆けつけてみると,2階建ての家が2mぐらいの高さになり,内から人の声がします。

連載 症状から見た耳鼻咽喉科・頭頸部外科シリーズ

⑤舌痛

著者: 沼田勉 ,   今野昭義

ページ範囲:P.1010 - P.1015

 はじめに
 全身の健康状態に対応して,舌の表面の性状,色調などには微妙な変化が認められる。また,舌は歯牙を含めた口腔局所の状態や,精神的状態にも多大の影響を受ける。さらに舌の機能である味覚も,全身の疾患,服用している薬剤などによって異常を起こすことが知られている。舌の診察では,視診が大部分を占めるが,明らかな器質的疾患が認められる場合を除けば,舌表面に変化を指摘しえないこともしばしばあり,鑑別診断に苦慮する場合も経験する。
 日常臨床の場において,舌の痛みを訴える症例も少なくない。舌痛を訴える患者においても,口腔の視診上明らかな器質的変化を認める場合と,変化を伴わない場合がある。器質的変化がある場合,第一にそれが局所的要因によるものか,あるいは全身疾患の部分症状であるのかを見極める必要がある。さらに,悪性腫瘍である可能性を否定する必要があるであろう。器質的変化を認めない場合には,変化の現れる前段階にある器質的疾患であるか,心身症的疾患としてアプローチすべきものなのかを慎重に鑑別しなければならない。以下に症例を呈示しつつ,舌痛を訴える症例の診断と治療に関して考えてみたい。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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