文献詳細
原著
シスプラチンによる聴力障害について—とくに年齢との関係について
著者: 南吉昇1 渡辺聡哉1 立木孝1
所属機関: 1盛岡赤十字病院耳鼻咽喉科
ページ範囲:P.962 - P.966
文献概要
1965年,Rosenbergによって発見されたシスプラチン(cis-platinum (II) diammine dichlor-ide:以下CDDPと略す)は,C12H6N2Ptの化学式を有する白金化合物で,その作用機序がアルキル化剤と類似しており優れた抗腫瘍作用を示すため,泌尿器科領域,婦人科領域や耳鼻咽喉科領域などの悪性腫瘍に広く利用されている。CDDP投与による副作用としては,腎毒性や骨髄機能抑制などのほかに耳鼻咽喉科的には難聴,耳鳴などの聴覚障害が発症するとされている。聴覚障害については,Helsonら1),Reddelら2),Nakaiら3)やその他多くの者により発現頻度,障害をきたす投与量,障害の性質や側頭骨標本による障害部位などについての報告がみられる。CDDPは小児から老人まで幅広く使用される薬剤であるため,年齢による聴力変化についても検討する必要性があると考えられる。しかしそれについての報告は少ない。今回CDDPを使用した腫瘍症例を対象として年齢と聴力障害について検討したので報告する。
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