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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科68巻13号

1996年12月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

3D-CTによる甲状軟骨形成術1型の評価

著者: 箕山学 ,   田辺正博 ,   田中信三 ,   村岡紀昭

ページ範囲:P.1024 - P.1025

 片側反回神経麻痺症例の嗄声改善の1つの方法として,喉頭枠組手術が行われている1)。発声時の声門閉鎖不全の程度が中等度以下の症例は甲状軟骨形成術I型の適応,声門閉鎖不全の程度が大で声帯にレベル差のある症例は披裂軟骨内転術の適応としてきた1,2)
 声帯のレベル差は麻痺側披裂軟骨が外転位にあるために起こる現象で,披裂軟骨自体を直接内転させない限り矯正できないと考えてきたが,声帯は披裂軟骨声帯突起に付着しているので,輪状披裂関節に可動性があれば声帯後部を十分に内転させることにより披裂軟骨声帯突起も内転,下降し,レベル差も矯正可能と考えられる。甲状軟骨形成術I型の軟骨開窓部を後方にずらし,シリコンブロックの形状に工夫を加えたI型変法3)を行い,3D-CTで術後の評価を行った。

Current Article

内リンパ嚢に関する電気生理学的・形態学的研究—最近の知見から

著者: 森望 ,   古田浩 ,   星川広史 ,   呉大正

ページ範囲:P.1027 - P.1034

 はじめに
 内リンパ嚢は蝸牛・前庭とともに膜迷路の一部を形成しており,球形嚢・卵形嚢から内リンパ管を通して繋がっている(図1)。前庭水管内の部分と硬膜およびS字状静脈洞に接した頭蓋内の部分がある(図2)。内リンパ嚢は近位部,中間部,遠位部に分けられ,各部位とも1層の細胞よりなっている。形態学的に近位部,遠位部は1種類の細胞であるが,中間部は2種類の細胞からなっている1〜3)
 内リンパ嚢の機能として表1にあげるようなことが推測されている。内リンパ嚢・内リンパ管を閉塞した動物(モルモット,マウス,家兎など)で蝸牛・前庭に内リンパ水腫が形成されることから内リンパ嚢が内リンパ液の吸収に関与していると推測されている4〜6)。最近,内耳の免疫に関して,内リンパ嚢が重要な役割をしていることが報告されてきている7,8)。しかしながら,内リンパ嚢についてはその生理,形態など,まだ不明な点が多い。われわれは数年来,内リンパ嚢に関する電気生理学的,形態学的研究をしており,それらの研究結果を含めて内リンパ嚢についての最近の知見を述べたい。

原著

唾液腺腫瘍に対する穿刺吸引細胞診の有用性

著者: 海沼和幸 ,   坂口正範 ,   横山晴樹 ,   勝野哲 ,   石山哲也 ,   田口喜一郎

ページ範囲:P.1035 - P.1039

 はじめに
 唾液腺腫瘍は,良性,悪性を問わず多彩な組織像を呈する。また腫瘍以外にも炎症性腫瘤や,腫瘍類似疾患などの病変も多い。
 耳下腺に好発する腫瘍として,多形腺腫およびワルチン腫瘍があげられるが1),臨床的に良性腫瘍を疑って手術した後,摘出標本で組織学的に悪性と診断される症例も少なくない。したがって,これらの腫瘍の性質が術前に分かることは,術式の決定に際して非常に有用である。しかし,唾液腺腫瘍に対する切除生検および大口径針による針生検は,穿刺経路への腫瘍細胞の播種の危険を伴い一般に禁忌とされている2)。一方,穿刺吸引細胞診(fine needle aspiration biopsy:FNA)は,操作が簡単,安全であり,その結果が迅速に得られるため,近年,唾液腺腫瘍に対して施行される頻度が高まりつつある3)
 今回われわれは,唾液腺腫瘍の良性,悪性の鑑別ならびに組織型推定のおけるFNAの有用性について検討してみたので,若干の文献的考察を加えて報告する。

インターフェロン投与中に感音難聴を生じた3症例

著者: 片野宏明 ,   飯野ゆき子 ,   澤木誠司 ,   今村祐佳子 ,   水谷俊美

ページ範囲:P.1040 - P.1045

 はじめに
 近年慢性活動性肝炎に対し,インターフェロン療法が積極的に行われるようになってきている。それに伴い精神神経症状1),眼症状2),甲状腺機能異常3)など種々の副作用が臨床の場において報告されてきている。耳鼻科領域における副作用としては難聴,平衡障害,耳鳴などの報告4〜8)があり,何らかの内耳障害が示唆されているが,報告例も少なく,その詳しい機序に関しては不明の点が多い。現在までのインターフェロン(以下IFNと略)投与中に生じた感音性難聴例では,ほとんどの症例が投与中止後に聴力の回復をみている。今回われわれの経験したIFN投与中に骨導閾値上昇をきたした3症例では,これまでの報告と異なりIFN中止後も聴力改善がほとんど認められなかった。本稿では,これらの3症例を報告するとともに,若干の文献的考察を加え,その作用機序について検討を加えた。

頭頸部領域に発生したサルコイドーシス—自験例7例の臨床的検討

著者: 鈴木立俊 ,   髙橋廣臣 ,   八尾和雄 ,   青柳聡

ページ範囲:P.1047 - P.1051

 はじめに
 サルコイドーシスは全身諸臓器に非乾酪壊死性類上皮肉芽腫を形成する原因不明の疾患であり,厚生省特定疾患に指定されている。耳鼻咽喉科としてはこの組織の採取を依頼されることがあり,また頸部リンパ節生検の結果としてその症例に遭遇するが,比較的稀なことである。今回われわれは過去25年間に当科でサルコイドーシスと診断された7症例について,臨床的に検討したので報告する。

キヌタ骨長脚が鼓膜より突出した耳小骨離断の1例

著者: 松井和夫 ,   浅井美洋 ,   星野知之

ページ範囲:P.1052 - P.1054

 はじめに
 外傷性耳小骨離断は日常臨床においてしばしば経験するが,多くは交通事故や,災害事故など他の外傷を伴って生じることが多い。耳清掃中に生じる中耳外傷は鼓膜穿孔,鼓膜裂傷が多く,時に直接損傷により耳小骨離断を生じ,めまい,難聴,耳鳴を起こすことがある。
 今回われわれは,耳清掃時の耳かき棒による鼓膜穿孔と,キヌタ骨長脚が鼓膜より突出した非常に稀な外傷性耳小骨離断の1例を経験したので報告する。

神経サルコイドーシスの1例

著者: 花満雅一 ,   田中寛 ,   矢沢代四郎

ページ範囲:P.1055 - P.1058

 はじめに
 両側顔面神経麻痺の発症する頻度は,顔面神経麻痺全体の2.3%とされ,耳鼻咽喉科医が遭遇することは少ない。さらに,麻痺がほぼ同時に起こる両側同時性顔面神経麻痺はさらに少なく,0.8%とされている1)。両側麻痺は,特に原因疾患を認めないベル麻痺,あるいは系統的疾患の1症状として起こる場合がある。今回,発症間隔が1週間であった両側同時性顔面神経麻痺症例で,原因疾患としてサルコイドーシスを認めた1症例を経験したので報告する。

側頭筋弁と植皮により再建した90歳の外耳道癌の1手術症例

著者: 石本晋一 ,   山岨達也 ,   三上政弘 ,   石井美香

ページ範囲:P.1068 - P.1071

 はじめに
 聴器癌の治療は手術的に全摘することが基本であり,放射線治療や化学療法が補助的に行われる1〜5)。手術的に摘出した後の欠損部位の再建には,その範囲の大きさに応じて側頭筋や胸鎖乳突筋などの有茎筋弁,筋皮弁,腹直筋などの遊離皮弁を用いて行うことになる。
 聴器癌が高齢者に生じた場合,患者の全身状態などのほかに再建上の問題(侵襲の大きさ,動脈硬化のために血管吻合不全から遊離皮弁壊死をきたす可能性)から手術適応の決定をためらうことがありうる。また本人,家族ともに高齢であるがゆえに手術を受けることに消極的になることもあろう。しかしながら,手術治療なしに腫瘍を制御することは困難であり,腫瘍の進行に伴い出現する疼痛,出血,感染などを考えると,患者のQOLの点からも手術的に根治をめざすことが第一選択と考えられる。手術に際してはより侵襲が少なく,壊死などの危険性の少ない再建方法を用つることが重要である。今回われわれは,発見から1年間経過を観察されていた90歳の外耳道癌症例に対し,外耳道・耳介全摘,耳下腺浅葉切除,上頸部郭清術を行い,欠損部位を有茎側頭筋弁と植皮を用いて再建し,QOLの面から良好な結果を得たのでここに報告する。

第二鰓嚢由来の上咽頭嚢胞症例

著者: 坂本徹 ,   福田諭 ,   犬山征夫

ページ範囲:P.1072 - P.1075

 はじめに
 上咽頭に発生する嚢胞は,以前は一様にTorn-waldt氏病1)と呼ばれていたが,その病因,病態には不明な点が多く,上咽頭に発生する他の嚢胞と混同されていた。
 近年,上咽頭に発生する嚢胞に対する概念や分類が確立されつつある2〜4)
 今回,われわれは鰓嚢由来と考えられた上咽頭嚢胞の極めて稀な1例を経験したので報告するとともに,画像診断の有効性と本邦における鰓性嚢胞のついての文献的考察を加える。

咽頭脂肪腫の2例

著者: 塚本耕二 ,   坂口正範 ,   石山哲也 ,   佐藤圭司 ,   田口喜一郎 ,   謝孝佳 ,   小木曽嘉文

ページ範囲:P.1076 - P.1080

 はじめに
 咽頭に良性腫瘍が生じることは比較的珍しいが,なかでも脂肪腫は稀である。今回われわれは咽頭に発生した脂肪腫を2例経験したので,主として本邦における文献的考察を加えて報告する。

線維素性唾液管炎の1症例

著者: 木内庸雄 ,   後藤啓恵 ,   入船盛弘 ,   高田憲一 ,   荻野敏

ページ範囲:P.1082 - P.1085

 はじめに
 唾液腺の腫脹をきたす疾患は腫瘍性,非腫瘍性と多岐にわたるが,そのなかで線維素性唾液管炎(sialodochitis fibrinosa)1)は本邦では奥田ら2),吉田3)らの数例の報告を見るにすぎない。今回,喘息の発作に同調して,数時間の単位で両側顎下腺が腫脹しまた消退する,線維素性唾液管炎の興味ある1症例を経験したので,若干の考察を加え報告する。

鏡下咡語

こんなにダニの増えた理由(わけ)—日本の住環境と鼻アレルギー

著者: 三邉武幸

ページ範囲:P.1060 - P.1061

 鼻アレルギーは増えている。この日本で,今もなお。
 私たちは,そう断言しました1)

海外トピックス

ロシア鼻科学会

著者: 茂木五郎

ページ範囲:P.1062 - P.1066

 マスメディア,情報網の急激な発展によって,一党独裁のソ連邦が崩壊し,ロシアはペレストロイカ以降いろいろな分野,ことに政治,経済社会情勢でまさに昏迷の時代を迎えたと言ってよい。
 大統領選挙の最中,1996年6月12〜23日の期間ロシアに滞在した。主な目的はソチ市で開催された第2回ロシア鼻科学会(2nd Russian Rhinology Society)での招待講演と,その前後にGennady Piskunov教授(モスクワ)とMarius Plouzhnikov教授(セントペテルスブルグ)を訪問することであった。私がロシアを訪れたのは,今回で2度目である。初回は1993年11月で,やはりロシア鼻科学会の招待講演であった。これら2回のロシア訪問とロシア韓科学会の方々との交流を中心に,ロシア鼻科学会の紹介とロシア訪問記,また私の見て感じたロシアについて述べてみる。

手術・手技

視神経管開放術を施行した外傷性視力障害

著者: 本多伸光 ,   中村光士郎 ,   木谷伸治

ページ範囲:P.1086 - P.1090

 はじめに
 視神経管骨折は外傷性視力障害のうち80%以上に認められるという報告もあり1),救急外来診療において常に念頭に置いておかなければならない疾患の1つである。視神経管骨折があり,高度の視力障害が認められる場合には,積極的に視神経管開放術を行う必要がある。著者らは外傷による視神経管骨折を強く疑い,鼻内法にて鼻用硬性内視鏡下(以下,鼻内視鏡下と略す)に視神経管開放術を施行した症例を2例経験したので,若干の考察を加えて報告する。

連載 症状から見た耳鼻咽喉科・頭頸部外科シリーズ

⑥鼻出血

著者: 長舩宏隆

ページ範囲:P.1092 - P.1098

 はじめに
 鼻出血はきわめて一般的な症状であり,どの診療科においても日常診療で遭遇する機会が比較的多いと思われる。本来の呼吸道としての鼻・副鼻腔はその他にいくつかの生理的な役割があるが,その1つに吸気の加温,加湿という重要な役目をになっている。そのために粘膜は血管に富んでおり,その血管構築も動静脈吻合,毛細血管,洞様血管などが密接に組み合わされている。これらの理由により,外的影響(打撲,掻傷など),内的影響(高血圧など)により容易に出血をきたすこととなる。
 鼻出血の背景となる疾患については全く無いか不明なものが多いが,時には見逃すと生命に危険を及ぼすような疾患もあり,その診断と治療処置の際には注意を払う必要がある。

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耳鼻咽喉科・頭頸部外科 第68巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

人名索引

ページ範囲:P. - P.

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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