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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科68巻2号

1996年02月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

シェーグレン症候群における唾液腺病変

著者: 渥美和江 ,   甲能直幸 ,   市川銀一郎

ページ範囲:P.98 - P.99

 シェーグレン症候群は,口腔および眼乾燥症状を主徴とする外分泌腺組織の慢性炎症性疾患である。本症候群では,しばしば大唾液腺の腫脹を伴うが,その組織内には,導管上皮の過形成と,上皮間へのリンパ球浸潤を特徴としたbenign lymphoepithelial lesion (BLEL)と呼ばれる病変が知られている1)。また,シェーグレン症候群は時に悪性リンパ腫などのリンパ増殖性疾患を合併することも知られている2)
 BLELは通常良性病変とされているが,そのなかには悪性リンパ腫に移行するものがあることが報告されている3)。今回われわれは,シェーグレン症候群の経過中に顎下腺のBLELを呈し,その後,耳下腺悪性リンパ腫を発症した症例を経験したので供覧する。

原著

反対側に伝音性難聴を伴った小脳橋角部腫瘍の1症例

著者: 小田ゆかり ,   福島典之 ,   島健

ページ範囲:P.101 - P.104

 はじめに
 一側に高位頸静脈球を伴う癒着性中耳炎,反対側に聴力正常で耳鳴のみを症状とする小脳橋角部腫瘍を合併した1例を経験した。患者は癒着性中耳炎側の聴力改善を希望して受診したが,最終的には小脳橋角部腫瘍の手術を優先して行った。本例は術後,残念ながら聾となったが,伝音難聴側に補聴器を装用し,日常生活を行っている。本例の診断,手術に至る経過の問題について考察を加え,報告する。

側頭骨鱗部に発生した巨大真珠腫の1例

著者: 石本晋一 ,   伊藤依子 ,   小林恵子 ,   吉本世一 ,   深谷卓

ページ範囲:P.106 - P.109

 はじめに
 今回われわれは,37年前に中耳根本術を受け,最近になって外耳道から水様性の耳漏を呈し,画像診断で側頭骨鱗部に巨大な腫瘤を形成している所見をもつ症例を経験した。手術所見では側頭骨鱗部の外板は紙のように薄くなり,内板は大きく小脳硬膜を圧排し,板層間には巨大な真珠腫が認められた。水様性耳漏は脳脊髄液瘻であった。中耳炎手術既往があるので,板間層の類上皮腫(=先天性真珠腫)とは考えにくいが,成長がゆっくりしていること,その好発部位が頭蓋内では小脳橋角部,脳下垂体周囲であり,また板層間にも発生し,側頭骨や頭頂骨に好発することから1),診断に苦慮した。この症例の発生機転,鑑別診断などにつき若干の文献的考察を交えて報告したい。

副鼻腔グロームス腫瘍の1例

著者: 樋口香里 ,   和田義正 ,   三牧三郎 ,   鷹巣晃昌 ,   金榮治 ,   星谷徹

ページ範囲:P.111 - P.116

 はじめに
 グロームス腫瘍は,未梢動静脈吻合の特殊型であるglomus bodyより生じる腫瘍である1)。主に手指の爪床内に発生し,耳鼻咽喉科領域における報告は非常に稀である。今回われわれは,副鼻腔に発生したグロームス腫瘍の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

上顎洞に発生した類上皮血管腫の1例

著者: 佐伯忠彦 ,   栗原憲二 ,   竹田一彦 ,   小林丈二 ,   西原信成

ページ範囲:P.118 - P.122

 はじめに
 類上皮血管腫(epithelioid hemangioma,以下EHと略す)は,1969年にWellsら1)によって初めて記載され,1983年にEnzingerら2)が血管内皮細胞の形態学的特徴に着目して命名したまれな良性の腫瘤様病変である。本疾患は頭頸部に好発するが,上顎洞に発生することは極めてまれである。
 今回われわれは,左上顎洞に発生し骨破壊を呈したため悪性腫瘍を疑った極めてまれなEHの1例を経験したので若干の考察を加えて報告する。

翼口蓋窩由来と考えられる血管腫の1症例

著者: 前田陽一郎 ,   石尾健一郎 ,   加瀬康弘 ,   水野正浩

ページ範囲:P.123 - P.127

 緒言
 血管腫は頭頸部領域の上皮や粘膜,肝臓などに発生する良性腫瘍とされ,しばしば先天性に発生し,小児および若年者に多く生じると考えられている1)。今回われわれは若年女性の翼口蓋窩に発生した静脈性血管腫の1症例を経験し,経上顎外側法により摘出して良好な結果を得た。本稿では手術における翼口蓋窩,側頭下窩への到達方法を比較検討し,文献的考察を加えて報告する。

慢性副鼻腔炎が誘因と考えられた血管性浮腫症例

著者: 西井真一郎 ,   洲崎春海 ,   鈴木惠美子 ,   朝比奈紀彦 ,   野村恭也

ページ範囲:P.128 - P.132

 はじめに
 血管神経性浮腫(angioneurotic edema)は皮下,粘膜下組織に原因不明の発作性限局性浮腫を生じる疾患であり,1882年Quincke1)により報告されて以来,その原因にかかわらずクインケ浮腫と呼ばれている。1888年Osler2)は,血管神経性浮腫のなかで遺伝性を有するものを遺伝性血管神経性浮腫(hereditary angioneurotic edema:HANE)と報告し,遺伝性の有無により遺伝性血管神経性浮腫と血管神経性浮腫に大別した。現在では「神経」は省かれ遺伝性血管性浮腫(HAE)や血管性浮腫(angioedem)と呼ばれている。
 今回われわれは慢性副鼻腔炎が発症の誘因と考えられた血管性浮腫症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。

アデノイド切除術が著効した睡眠時呼吸障害の11か月乳児例

著者: 小林正佳 ,   清水猛史 ,   間島雄一 ,   坂倉康夫

ページ範囲:P.134 - P.137

 はじめに
 近年,成人のみならず,小児においても睡眠時無呼吸症候群の存在が注目され,とくに小児ではその原因としてアデノイドや口蓋扁桃肥大が大きく関与していると考えられる1,2)。しかし,乳児における睡眠時呼吸障害やこれに対する手術施行例の報告は極めて少ない。
 今回われわれは,アデノイド増殖症により睡眠時無呼吸をきたしたため手術治療を行った,生後11か月の乳児症例を経験したので報告する。

当科における舌・口腔底癌の臨床統計—治療成績の検討を中心に

著者: 鈴木光也 ,   皿井靖長

ページ範囲:P.139 - P.143

 はじめに
 口腔癌のなかで舌癌,口腔底癌は発生頻度が高く,進行例においては舌と口腔底の両領域にまたがる例も散見される。舌および口腔底に限局した比較的小さな癌は,局所への組織内照射により,その多くは制御可能である1)。しかし,それに携わる人の被曝線量の問題や設備の点から,組織内照射治療に際しては,施設によって制約を受けざるえない。一方,進行例は頸部リンパ節転移の出現率が高く,またその制御が難しいため2),再建を伴った手術法が選択されることが多い。当科における舌癌および口腔底癌の治療は,adjuvant chemotherapyと手術療法を主体としてきた。今回,当科で治療した舌癌および口腔底癌症例をまとめ,主にその手術方法について考察する。

耳下腺に発生したepithelial-myoepithelial carcinomaの1例

著者: 今田正信 ,   野中聡 ,   東松琢郎 ,   海野徳二 ,   吉田真子 ,   高橋達郎

ページ範囲:P.145 - P.148

 はじめに
 唾液腺に発生する上皮性腫瘍の大部分は多形腺腫である。悪性腫瘍としては,粘表皮癌,腺様嚢胞癌,扁平上皮癌,腺房細胞腫,多形腺腫内癌などが挙げられる。一方,epithelial-myoepithelialcarcinomaは1972年にDonathら1)が命名した組織学的に上皮と筋上皮の細胞が2相性の増殖を特徴とする低悪性癌である。今回われわれは,耳下腺に発生した本腫瘍の症例を経験したので,臨床的特徴について考察を加えて報告する。

頸動脈小体腫瘍の1例—頸部傍神経節腫と塞栓術

著者: 朝蔭孝宏 ,   丹生健一 ,   市村恵一 ,   菅沢正 ,   荒井直樹

ページ範囲:P.158 - P.161

 はじめに
 傍神経節腫は神経節内や血管近傍にある傍神経節組織より発生し,神経や血管と密接に関係する腫瘍である。頭頸部領域では比較的まれな疾患で,本邦では約200例の報告がみられている1)
 東京大学医学部附属病院耳鼻咽喉科では1977年から1992年までの15年間に6例の頸部傍神経節腫を経験した。最近経験した1例を報告するとともに,これら6例に関して検討し,若干の文献的考察を加えて報告する。

心身医学的援助を必要とした難聴症例

著者: 酒井丈夫 ,   新木五月

ページ範囲:P.163 - P.165

 はじめに
 身体の器質的・機能的な障害を負ったり,あるいは,身体の部分的な喪失,機能の喪失を余儀なくされた患者は社会的問題だけでなく心理的な問題も多かれ少なかれ抱えている1)。しかし自己の力ではそれらの心理的問題を解決できない場合には何らかの援助が必要となる。今回,心身医学的援助が難聴という障害の受容に有効であった難聴症例を経験したので若干の考察を加えて報告する。

心因により耳下腺部腫脹を反復した小児症例

著者: 中村寧 ,   飯野ゆき子 ,   森田隆匡

ページ範囲:P.166 - P.170

 はじめに
 耳下腺部の腫脹をきたす疾患は,これまで種々報告されているが,その原因の多くが感染,腫瘍,医原性によるものである。特に,小児においてはムンプスに罹患する頻度が高く,また細菌性感染も生じやすい。反復して耳下腺炎を繰り返す場合は,先天的に耳下腺管の拡張が存在し,逆行性に細菌感染が起こる反復性耳下腺炎を念頭におかなくてはならない。
 一方,学童期は,学校や家庭における種々のストレスから心理的葛藤を生じ,身体にさまざまな心因反応が生じる時期でもある。今回われわれは,心理的要因から耳下腺腫脹を繰り返し,さらに意図的に耳下腺気腫を生じさせていた小児例を経験したので,文献的考察を加え報告する。

鏡下咡語

思考とコミュニケーション

著者: 荒木元秋

ページ範囲:P.150 - P.151

 ●はじめに
 私共の日常診療では,主として聴覚と言語に関係する器官の疾病異常を対象としている。
 然しコミュニケーションに関する様々な社会現象に関心が低いのではないかと考えてみる。
 ことば(言語)を話すことは人間固有の行動で,文書(字)を書くことと共に人間文化の根元を支えていると云っても過言ではない。
 自己のことばが他人に知覚され,コミュニケーションが成立し,相互の意志,親密度を認識し,子供のしつけや公共のマナーを修得する。辞書によるとcom-municationとは,伝達,通報,伝染(病気),手紙,伝言,交通,連絡,輸送と,人間が相互に意思を伝達しあうこととある。
 ことばは言語を音として表現したもので,これが文章,身振り,あるいは電波等で伝達され,最近は電子工学の発達と共に,そのメディアは益々複雑化している。旧世代の健常者は,パソコン等の新しい器械を駆使することを敬遠する傾向にあるが,言語あるいはその他の心身障害者にあっては,音や画像によるコミュニケーションが大きな福音となっている。広く地球上の出来事は,今や衛星通信により直ちに全世界に報道され,国家,民族の利益に関するコミュニケーションが害なわれると,紛争や戦争に連なる。

連載エッセイ 【Klein aber Mein】・19

鼻道の開通手術について/頭蓋底手術

著者: 浅井良三

ページ範囲:P.152 - P.154

 鼻呼吸を支障なくできれば鼻道は開通している訳である。嗅覚障害なく,後鼻漏なければまず鼻疾患なしと一応考えてよいであろう。体位(側臥位)や気分により,一側鼻粘膜に起こる鬱血腫脹により鼻閉を起こすことがあるが,体位,気分の変換で鼻道は開通する。しかし中隔轡曲,中隔櫛,鼻茸,副鼻腔炎では中甲介,下甲介等の粘膜腫脹による鼻閉がある。
 鼻呼吸では吸気流は中鼻道を,呼気流は総鼻道を通るから,この原則に則って鼻道を整調する鼻道調整手術が合理的である。

手術・手技

遊離空腸モニター用フラップの有用性

著者: 宮口衛 ,   曽根美恵子 ,   東島哲也 ,   秦維郎

ページ範囲:P.172 - P.175

 はじめに
 咽喉頭頸部食道摘出後の再建法として,遊離空腸移植術が広く用いられるようになってきた。血管吻合を必要とするこの再建法は,血流障害による空腸壊死を予防し,また血流障害が生じたときには早期に対応することが重要である。術前照射や術前化学療法を併用した場合にはより細心な注意が必要となる。血流障害の有無を確認するためにはドップラー血流計を用いて吻合血管の血流を調べたり1),内視鏡下に移植空腸の色調をみる2)のが一般的である。
 今回,術前照射,術前化学療法を併用した2症例に,Katsarosら3)が報告したモニター用フラップを応用した。このKatsarosら3)の報告したモニター用フラップの手技は,原著では,上腸間膜動脈の分枝で栄養される再建に十分に用いうる長さの空腸を血管柄とともに採取する。次いで遠位端を2cm分割する。大きいほうは再建材料として用い,2cmの小さいほうは創外に出す。モニター用フラップは30分毎に出血するか否かで血行状態を確認して5日後に切除するというものである。
 われわれの場合は約30cmの空腸を採取して頸部の動静脈と血管吻合を施行した(図1)。
 次いで血管の走行をよく観察して遠位端より小分割した(図2)。小分割したほうは適当な長さにトリミングし(図3),創外に露出してモニター用とした(図4)。一工夫として,モニター用フラップの両端を閉塞して創の湿潤化を防いだ(図6)。以上の経過を症例毎に報告する。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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