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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科68巻3号

1996年03月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

右上顎洞に発生したhemangiopericytomaの1例

著者: 谷川徹 ,   夜陣紘治

ページ範囲:P.184 - P.185

 Hemangiopericytomaはすべての血管性腫瘍の1%程度のまれな腫瘍で,鼻・副鼻腔に発生したものは本邦において10数例の報告を見るのみである。今回われわれは遺伝子組み換え型ヒトインターロイキン2(以後rIL−2と略す)を投与後,上顎拡大全摘術を施行した症例を供覧する。

Current Article

喉頭機能検査の空気力学的側面

著者: 北嶋和智

ページ範囲:P.187 - P.197

 はじめに
 音声機能検査は表1に示すように分類できる。このうち空気力学的検査は,歴史も古く臨床的にも頻用されていると思われる。本論文では,この空気力学的検査の分野での著者らの研究を述べたい。
 喉頭の機能の1つは,肺からの連続する呼気流を断続流に変換して声道の空気柱を震わせて音を発生することである。声帯の振動により声門の開閉が起こり,連続流が断続流になる。この空気の流れの性状を分析して喉頭の機能の評価をするわけである。

原著

感音難聴およびめまいを呈したWegener肉芽腫症の1症例

著者: 後藤田裕之 ,   土田伸子 ,   大渡隆一郎 ,   西浦洋一 ,   間口四郎 ,   滝沢昌彦 ,   福田諭 ,   宮武由甲子 ,   犬山征夫

ページ範囲:P.201 - P.206

 はじめに
 Wegener肉芽腫症は,上気道,下気道の壊死性肉芽腫性病変,全身性の壊死性血管炎,巣状壊死性糸球体腎炎を3主徴とする疾患であるが,全身のあらゆる臓器を冒し,以前は非常に予後不良な疾患であった。しかし,1983年にFauciら1)が免疫抑制療法を報告して以来予後が改善され,早期発見,早期治療の重要性が高まった。耳鼻咽喉科領域においても鼻腔などの上気道はもちろん,耳症状を呈するものが数多く報告されているが,今回われわれは,経過観察中に,突然,一側性感音難聴およびめまいをきたした症例を経験した。診断に際しては苦慮したが,1985年にVan derWoudeが報告した,抗ヒト好中球細胞質抗体Anti-neutrophil cytoplasmic antibody (ANCA)測定を行い,32倍陽性であったため,Wegener肉芽腫症と診断し,免疫抑制療法を施行した。以後,感音難聴,めまいの耳症状をはじめ,呼吸器症状,腎機能などの全身症状が改善された。また,定期的なANCAの測定によって,臨床経過とANCA値との相関性についても確認できた。本症例によって,病理組織学的検査などでの確定診断が困難なWegener肉芽腫症の早期診断にANCA測定が有用なことも再確認したので,症例を呈示するとともに,文献的考察を含めて報告する。

両側急性感音難聴を発症したHIV感染症の1例

著者: 高橋秀明 ,   甲田晶子 ,   丸山博 ,   新川敦 ,   坂井真

ページ範囲:P.207 - P.212

 はじめに
 欧米諸国において,AIDSは耳鼻咽喉科領域にも様々な症状を呈していることが報告されている。しかし,本邦において,耳鼻咽喉科領域に症状を呈したAIDS報告例1〜7)は,まだ少ない。今回,われわれは両側急性感音難聴を発症したHuman Immunodeficiency Virus (HIV)感染症の1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。

頸動脈小体腫瘍の1例—本邦報告132症例の検討

著者: 香取秀明 ,   佃守 ,   古川政樹 ,   河合敏 ,   松田秀樹 ,   蒔野裕子 ,   太田純一 ,   山下耕太郎 ,   新井泰弘 ,   北村均

ページ範囲:P.214 - P.221

 はじめに
 頸動脈小体腫瘍は比較的まれな疾患で,腫瘍そのものは一般的に良性のものが多いが,化学受容器である頸動脈小体から発生するため,頸動脈と強く癒着している場合は摘出中に大量出血することが多く,頸動脈合併切除を余儀なくされる。
 今回,われわれは,術前にBalloon Matas'testを施行し,対側内頸動脈からのcross circulationの有無を確認することによって,術中,内頸動脈遮断を行い,安全に摘出することができた頸動脈小体腫瘍の1例を経験したので,その概要を報告するとともに,本邦報告例132例の文献的考察を行った。

94歳で呼吸困難をきたした巨大正中頸嚢胞の1例

著者: 小林正佳 ,   鵜飼幸太郎 ,   鈴村恵理 ,   坂倉康夫

ページ範囲:P.222 - P.225

 はじめに
 正中頸嚢胞は胎生期の甲状舌管の遺残より発生する先天性頸部嚢胞の一種である。主に頸部腫瘤の触知にて発見され,ときに咽喉頭異常感や嚥下時違和感などの臨床症状をきたすこともある1)。しかし,明らかな呼吸困難をきたした例は極めて稀である。今回われわれは,正中頸嚢胞が原因で呼吸困難をきたし,しかも94歳という高齢であったが手術加療により全快した1例を経験したので,若干の考察を加えて報告する。

両側性Zenker憩室の1症例

著者: 武市紀人 ,   中丸裕彌 ,   庄田英明 ,   樋口栄作 ,   飯塚桂司

ページ範囲:P.226 - P.229

 はじめに
 頸部食道憩室は,大部分が無症状で,X線造影で偶然に発見されることが多い。その成因については多くの要因が関連すると考えられてはいるが,嚥下時の輪状咽頭筋と上部食道の協調不全が深く関与するとされる。今回われわれは,嗄声を唯一の症状とした両側性頸部食道憩室を経験し,憩室切除および輪状咽頭筋切除により治療したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

回転性めまいで発症した後下小脳動脈解離性動脈瘤症例

著者: 藤井守 ,   矢部多加夫 ,   吉本裕

ページ範囲:P.230 - P.234

 はじめに
 頭蓋内に発生する解離性動脈瘤については近年,脳神経外科領域や神経内科領域からの報告が増加している1〜14)。しかし,その多くは主幹動脈に生じるもので,分枝動脈に生じることは極めてまれといわれている2)。組織学的に解離性動脈瘤と確認できたManzら5)の報告では,内頸動脈系では中大脳動脈起始部に多く,椎骨・脳底動脈系では椎骨動脈や脳底動脈に多い。
 今回われわれは,回転性めまいで発症し,典型的なワレンベルグ症候群の症状を呈した後下小脳動脈の解離性動脈瘤というまれな1例を経験したので報告する。

S状静脈洞血栓症の1例

著者: 河合敏 ,   中川千尋 ,   兒玉達樹 ,   北村佳久 ,   古川政樹 ,   持松いづみ ,   佃守

ページ範囲:P.244 - P.249

 はじめに
 中耳炎では種々の合併症が起こり得ることが知られている。頭蓋内合併症としては,髄膜炎,硬膜炎・硬膜外膿瘍,脳膿瘍,S状静脈洞炎・血栓症などがあるが,抗生剤が普及した今日では稀である。
 今回われわれは,真珠腫性中耳炎が原因で横静脈洞,S状静脈洞および内頸静脈にかけての血栓症を合併したものの,強力な抗生剤の点滴加療により全身状態の改善を図った後中耳手術を行い,無事救命することができた症例を経験したので報告する。

当科における甲状腺腫瘍症例—臨床統計と術前診断の有用性

著者: 太田伸男 ,   原田次郎 ,   大木誠 ,   武田一彦 ,   坂田謙 ,   新井邦夫

ページ範囲:P.250 - P.253

 はじめに
 甲状腺腫瘍は重要な甲状腺疾患であり,近年甲状腺腫瘍手術症例の報告が増加している。この理由として種々の画像診断法や穿刺細胞診などの術前診断法が進歩し,術前に本疾患の部位的および質的診断がより正確に行われるようになったことがあげられる。われわれは当科にて最近約4年間に経験した甲状腺腫瘍手術症例について,その一般的臨床統計と術前診断法の有効性について検討したので報告する。

原発性結核性中耳炎の1例

著者: 内田真哉 ,   小野寿之 ,   村上泰 ,   只木信尚 ,   林戸功 ,   立木圭吾

ページ範囲:P.255 - P.259

 はじめに
 結核性中耳炎は,近年典型的な病像を示さないことや臨床例の少ないことから診断に苦慮することが多いとされ,また過去に集団発生の報告1〜3)もあり,忘れてはならない疾患の1つである。しかし,早期に診断を下して適切な治療を行えば,聴力を保存して治癒させることも可能である。今回われわれは抗結核剤および鼓室形成術にて治療を行い聴力を保存しえた原発性結核性中耳炎の1例を経験したので報告する。

同一児童生徒群の成長とスクラッチテスト陽性率の変化—白老町における6年間の観察

著者: 三邉武幸 ,   松井猛彦 ,   尾登誠 ,   小島幸枝 ,   有田昌彦 ,   程雷 ,   徐其昌 ,   三好彰

ページ範囲:P.261 - P.265

 はじめに
 われわれは北海道白老町と栃木県栗山村において,学校健診の精度を高める目的から健診と共にティンパノメトリとスクラッチテストを施行している1〜5)。今回ここでは,3年ごとに実施されている本方式の健診において,白老町の6年間の経過観察から,同一の児童生徒群の成長に伴いスクラッチテスト陽性率がどう変化するのか,検討する。

下咽頭癌患者の細胞性免疫能の検討

著者: 周莉新 ,   佃守 ,   持松いつみ ,   河野英浩 ,   河合敏

ページ範囲:P.267 - P.271

 はじめに
 下咽頭癌(Hypopharyngeal Carcinoma:HPC)の発癌因子として,飲酒,喫煙が関与することが考えられている1,2)。また,この癌は頭頸部悪性腫瘍のなかでは早期発見が難しく,予後が不良な疾患であり,5年生存率は諸家の報告では35%前後である3〜5)
 有効な治療方法として早期癌には放射線治療が用いられるが,進行癌が多く,手術可能症例には手術療法が選択されている。しかし前述したように予後不良なため,集学的治療が望まれている。
 今回われわれは下咽頭癌症例の治療前と治療後の免疫動態がどのように変動するかを把握するために,リンパ球サブセット,リンパ球幼若化率のパラメーターを用いて,細胞性免疫能を検索し,若干の知見を得たので報告する。

CT画像により迷路性耳硬化症と考えられた1例

著者: 宇野芳史

ページ範囲:P.272 - P.275

 はじめに
 耳硬化症は,内耳骨包,特にその前庭部に生じる海綿様骨増殖(spongiosis)によってアブミ骨底板が前庭窓に固着し,そのために中耳の伝音障害を起こす疾患である。しかしながら,海綿様骨増殖が前庭窓以外の迷路骨包,特に蝸牛骨包を侵襲すると,アブミ骨固着による伝音性難聴だけでなく感音難聴を示すことがあり,この様な病態はlabyrinthine otosclerosisあるいは迷路性耳硬化症と呼ばれている1〜4)。CT等の画像診断が進歩するまでは,迷路性耳硬化症を画像上で診断することは,側頭骨のX線検査によってある程度行えるものの5),その詳細について検討を行うことは困難と考えられていた。しかしながら,近年の画像機器,特に高分解能CTの発達により,従来診断困難であった迷路性耳硬化症をCT画像上で診断することが可能となってきた6〜13)。今回,若年者に発症した原因不明の両側性進行性混合性難聴の症例に対し,高分解能CTを施行し,迷路性耳硬化症と診断し得る1例を経験したので,画像診断を中心に文献的考察を加えて報告する。

鏡下咡語

開業五周年に想う

著者: 二木隆

ページ範囲:P.236 - P.237

 ■そうだ。ウォーターフロントだ!
 都内某私大の教授選考の追い込みも,自校出身者有利との情報であり,永年望みつづけた教室主宰の念願も放棄せざるを得なくなり,「桐一葉落ちて天下の…」の心境になったのは平成元年に入ってからであった。知人の老社長が「やはり先生,開業も私達からみれば商売だから,方角や時期など,一度易にみてもらっては」と勧められて,神田の古ぼけた易断の片目の爺さんにみてもらった。八卦では,方角は辰巳(たつみ=東南〉すなわち江東,江戸川,市川方面,時期は平成2年5月がよいという。選考は延びても今年中であり来年まで待てないと心中思いながら,4万円を払って大学にもどった。大学同期で既に開業歴の長いY君に,開業の旨告げると,早速薬局経営者を伴って上京してくれた。
 この辣腕の薬剤師は手兵を動かしてマーケットリサーチをしてくれるというが,気の早いのが欠点で,「先生どこにするのか,決めてくれ」とたたみ込んでの催促。当方も苦しまぎれに朝読んだ新聞の見出しを想い出して「そうだ,ウォーターフロントだ!」と叫んだものであった。「じゃあ,葛西ですね?」と来たから「そうだ,その辺だ」ということになり,地下鉄東西線葛西駅から3分の角地のビルの一階40坪を借りる運びとなった。名刺をさし出すと,大家はこういう人に貸したかったと喜んで,保証金を500万円安くしてくれるというオマケまでついた。

連載エッセイ 【Klein aber Mein】・20

術後性歯根嚢腫について/扁摘と止血

著者: 浅井良三

ページ範囲:P.238 - P.240

 上顎洞炎根治手術後十年から,十数年後同処に発生した歯根嚢腫を術後性歯根嚢腫と称する。
 大阪歯科大学に耳鼻科が新設されて(昭和44年4月(1969))ちょうどその年,神戸大学を定年退官した私は大阪歯大教授に就任した。その目的は口腔外科が耳鼻科,特に顎外科と密接な関係があるから口腔外科との協同研究をすることであった。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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