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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科68巻5号

1996年05月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

落石による左側頭骨異物の1例

著者: 魚住真樹 ,   毛利光宏 ,   石田春彦 ,   天津睦郎

ページ範囲:P.382 - P.383

 1995年1月神戸・淡路地域を襲った兵庫県南部地震は甚大な被害をもたらした。今回われわれはこの地震の影響による落石事故で左の耳介裂傷と側頭骨への岩石の陥入を認めた症例を経験した。
 症例:52歳,男性
 主訴:左耳介変形
 経過:1995年1月23日,軽四輪自動車を運転中落石に遭遇し受傷した。落石は車のフロントガラスを破り患者の左側頭部、左肩に当たった。受傷時一時的に意識消失をきたしたため本院救急部に運ばれた。同部受診時には意識清明で,頭部CTでは頭蓋内に病変を認めず,左耳介に裂傷があったため当科に紹介された。

Current Article

頸部郭清術・分類の現況—われわれの4分と和名の提案

著者: 松浦秀博 ,   長谷川泰久 ,   中山敏 ,   藤本保志 ,   新谷悟 ,   亀井壯太郎 ,   鹿野真人 ,   下郷和雄

ページ範囲:P.385 - P.389

 はじめに
 癌のいずれについても,病態に応じた治療を目指すことは新しい分野を開拓していく1つの方向である。最近,頸部郭清術もさまざまな手術術式が頸部リンパ節転移の病態に応じて行われているのも,そのような実状を反映している。それらを整理,分類する必要性が指摘されて久しい。

原著

若年者(21歳)頸胸境界部食道癌の1例

著者: 村上匡孝 ,   秋山優子 ,   八木正人 ,   福島龍之 ,   安田範夫 ,   塩飽保博 ,   大内孝雄 ,   久育男

ページ範囲:P.390 - P.395

 はじめに
 食道癌は,特に高齢者に多く発症する癌腫であり,若年発症例はきわめて稀であり,20歳台の症例報告は皆無に近い1)。また,食道癌のなかでも頸胸境界部食道癌の頻度は比較的低い。今回,われわれは21歳男性に発生した頸胸境界部食道癌を経験した。ネオアジュバント療法として化学療法と放射線療法の併用の後に喉頭を温存した手術を行ったので,若干の文献的考察を加えて症例を報告する。

口蓋垂軟口蓋咽頭形成術施行上の問題点

著者: 望月高行 ,   岡本牧人 ,   長沼英明 ,   佐野肇 ,   設楽哲也 ,   星野真里子 ,   後藤文夫

ページ範囲:P.399 - P.403

 はじめに
 口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(Uvulopalatopharyn-goplasty,以下UPPP)1)は,閉塞性睡眠時無呼吸症候群(Obstructive sleep apnea syndrome,以下OSAS)あるいはいびき症に対して有効な手術法と考えられている。一方,OSASの臨床的特徴としては,中咽頭が狭く,舌が大きいといった局所の解剖学的要因と,肥満,心肥大,不整脈,高血圧,多血症,糖尿病といった合併症を伴った全身的な要因が挙げられる。こうした局所的,全身的な要因はしばしば手術および麻酔のリスクファクターとなる。今回,咽頭腔の拡大を目的としてUPPPを施行したOSAS,およびいびき症についての臨床的特徴を検討し,全身麻酔下におけるUPPP施行上の問題点について考察を行ったので報告する。

気管切開を繰り返しカニューレ抜去困難をきたしたクルーゾン病の1例

著者: 石川雅洋 ,   田中久哉 ,   原一彦 ,   寺尾恭一 ,   細井裕司 ,   村田清高

ページ範囲:P.405 - P.408

 緒言
 クルーゾン病は早期頭蓋骨癒合,上顎骨形成不全,眼球突出を主訴とする発育不全症候群で,約半数に常染色体優性遺伝を認める1)
 本疾患では,上顎骨の低形成のため気道狭窄が問題となることがある2)。そのため気管切開をうける可能性があるが,本疾患と気道狭窄,気管切開についての詳細な報告は少ない。今回,われわれは気管切開を繰り返しカニューレ抜去困難をきたしたクルーゾン病の1例を経験した。狭窄部の病理所見から本疾患における気道狭窄発生の原因を考察し,本疾患における気管切開時の注意点に言及する。またカニューレ抜去困難の治療にRotary door flap法が有用であったのでその方法も併せて紹介する。

甲状腺腫瘍術後に腕頭動脈破裂をきたし救命しえた1例

著者: 石本晋一 ,   吉田克也 ,   伊藤依子 ,   小林恵子 ,   吉本世一 ,   石橋敏夫 ,   深谷卓 ,   浅井昌大 ,   中塚貴志

ページ範囲:P.410 - P.413

 はじめに
 腕頭動脈破裂は頭頸部外科の重篤な術後合併症であるが,救命しうることは少ない1)。これは,気管壁の感染が,動脈壁に波及し,気管腕頭動脈瘻を形成するために破裂が起こることが多く1〜9),腕頭動脈が広範に脆弱化し,結紮切断,直接縫合,パッチ,人工血管置換などを行っても再出血するためである1)
 今回われわれは,甲状腺癌の縦隔および気管浸潤症例で,腫瘍切除と永久気管孔造設後6日目に腕頭動脈破裂をきたしたが,迅速な対処のもと破裂部位を直接縫合したのち縫合部位をテフロンパッチにて補強し,さらに大胸筋皮弁により術創を保護したことで救命しえた1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。

上顎巨細胞腫(Giant Cell Tumor)の1症例

著者: 宇良政治 ,   糸数哲郎 ,   古謝静男 ,   楠見彰 ,   野田寛 ,   岩政輝男

ページ範囲:P.414 - P.418

 はじめに
 下顎・上顎骨・顔面骨の骨腫瘍は比較的まれである。なかでも巨細胞腫(Giant Cell Tumor)は長幹骨の骨端部に好発するが顎・顔面骨における発生はまれとされている。
 われわれは,上顎骨に発生した巨細胞腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

頭頸部領域に転移した腎癌の3症例

著者: 犬飼賢也 ,   松沢真 ,   長谷川聡 ,   坂井豊

ページ範囲:P.420 - P.424

 はじめに
 腎癌は転移の頻度が高く,全身のあらゆる臓器へ転移する可能性がある。頭頸部領域も例外ではなく,腎癌転移について認識する必要がある。当科では最近の5年間に,頭頸部領域へ転移した腎癌を3症例経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。

悪性腫瘍を疑った扁桃結核の1例

著者: 鐵田晃久 ,   岡本牧人 ,   八尾和雄 ,   中山明仁 ,   西山耕一郎 ,   馬越智浩

ページ範囲:P.434 - P.436

 緒言
 化学療法の発達と結核対策の普及に伴って結核症は減少した。耳鼻咽喉科領域における結核性病変も例外ではないが,未だわれわれの日常診療において散見される。平成2年度厚生省の結核統計では今なお年間約5万人もの患者が新たに登録されている1)。今回われわれは,扁桃原発の悪性腫瘍を疑って生検を施行したところ,扁桃結核と判明した1症例を経験したので報告する。

遺伝素因が疑われた完全型Melkersson-Rosenthal症候群の1例

著者: 陣内賢 ,   石川富砂子 ,   野中学 ,   池園弘美 ,   八木聰明

ページ範囲:P.438 - P.442

 はじめに
 Melkersson-Rosenthal症候群(以下MRS)は反復性顔面浮腫,再発性顔面神経麻痺,溝状舌を特徴とする比較的まれな症候群であり,なかでも3主徴が揃う完全型,また家族性発症を認める症例はともに例が少ない。今回われわれは3主徴ともに揃う完全型で,しかも家族性発症が疑われるMRS症例を経験したので報告する。

頸部キャッスルマン病の1例

著者: 小林吉史 ,   本間裕 ,   野中聡 ,   川堀眞一 ,   海野徳二 ,   長野悦治

ページ範囲:P.444 - P.448

 はじめに
 キャッスルマン病は1954年にCastlemanら1)が縦隔に発生した腫瘤をhyperplasia of medias-tinal lymph nodesとして初めて報告した特異な組織像を呈するリンパ増殖性疾患である。その後Kellerら2)が本疾患を組織学的見地からhyaline-vascular typeとplasma cell typeとに大別した。また成因については主に免疫組織化学的見地から炎症説,腫瘍説,過誤腫説など諸説があり3,4)意見の統一をみていない。疾患の概念が未だ明確にはされていないなかで,本疾患をリンパ腫境界病変としてとらえる見方もあり悪性リンパ腫との関連が注目されている。
 本論文では頸部に発生したhyaline-vasculartypeのキャッスルマン病を報告し,本疾患と悪性リンパ腫との関連に関して文献的考察を加えた。

多発性脳神経麻痺を呈したEngelmann病症例

著者: 小林吉史 ,   高原幹 ,   野中聡 ,   海野徳二

ページ範囲:P.449 - P.453

 はじめに
 Engelmann病は1920年にCockayneによって初めて報告された骨系統疾患であり,四肢の筋萎縮と長管骨骨幹部の骨肥厚,骨硬化を特徴とする遺伝性疾患である。1929年,Engelmann1)によって8歳の典型例がosteopathia hyperostotica scleroticans multiplex infantilis (先天性多発性肥厚性骨症)として再度報告され,今日彼の名をとってEngelmann病と呼ばれるようになった。Engelmann病の骨病変は四肢骨に好発するが,進行して頭蓋骨にも及び,合併症として脳神経麻痺,脳圧亢進も起こすことがある。今回,経過観察中に顔面神経麻痺,顔面知覚麻痺,難聴など多発性脳神経麻痺を呈したEngelmann病を経験したので報告する。

頭頸部腫瘍の診断,経過観察に有用であった核医学検査法について

著者: 目澤良憲 ,   吉野尚 ,   滋賀秀壮 ,   飯沼壽孝 ,   宮前達也 ,   大日方研 ,   伊勢谷修

ページ範囲:P.455 - P.458

 はじめに
 放射性医薬品のなかには,ある種の頭頸部腫瘍に特異的に集積する核種があり,代表的な腫瘍と核医学検査法として悪性黒色腫における123I-IMP (iodoamphetamine)シンチと神経芽細胞腫における123Ⅰ-MIBG (meta iodobenzyl-gua-nidine)シンチがある。
 今回,われわれはこれらの腫瘍の確定診断,および経過観察において有用であった核医学検査,MRI検査について検討したので若干の文献的考察を加えて報告する。

鏡下咡語

Tan氏の脳

著者: 本庄巖

ページ範囲:P.426 - P.427

 私達は現在,遺伝子治療,臓器移植をはじめ爆発的ともいえる医学の進歩の中にあるといえる。また聖域とされてきた脳の研究にも光が見えはじめている。そのため私達はややもすると,今日の高い医療水準が以前から達成されていたと錯覚し勝ちである。しかしよく考えてみると,抗生物質や抗結核剤が世に出たのは第二次大戦後の,たかだか50年ほど前のことに過ぎない。それまで永く人類は感染症に苦しんで来たのであり,結核が不治の病であったのは衆知の通りである。
 さて医学部では医学の歴史,いわゆる医学史が講じられることはあまりないためか,私達をとりまく近代医学というものが,実はこの100年あまりの短かい歴史でしかないことを,私自身も知らずに過してきた。そこでここでは,最近読んだいくつかの書物を通して,私自身の驚きも含めていくつかのエピソードを紹介してみたい。

医療ガイドライン

耳鼻咽喉科・頭頸部外科におけるMRI鑑別診断表

著者: 寺山吉彦 ,   目須田康 ,   間口四郎

ページ範囲:P.428 - P.429

 はじめに
 最近の画像診断の進歩は目覚ましく,なかでもMRI (Magnetic Resonance Imaging)はその先端をいく1つであり,例えばFSE (Fast Spin Echo)によれば,膜迷路内の内外リンパ液の立体的な描写により,迷路はかつての鋳型標本のごとく示される1)
 一方,MRIはわが国における普及の点でも著しく,日常臨床においてCTと並んで頻繁に用いられるようになっている。その理由は,MRIには独特な長所が幾つかあるからである。その1つとして病変の性状や進展範囲も描出でき,診断に極めて有用な情報を与えてくれることが挙げられる2)

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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