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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科68巻6号

1996年06月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

動静脈奇形様の所見を呈した筋肉内血管腫の1例

著者: 中村公美 ,   和田公平 ,   志熊道夫 ,   牧本一男

ページ範囲:P.466 - P.467

 良性の血管腫が横紋筋組織内にびまん性浸潤様増殖をきたすことがあり,これらは筋肉内血管腫として通常の血管腫とは区別されている1,2)。今回われわれは側頭筋に発生した筋肉内血管腫の1例を経験したので報告する。
 症例:16歳男性。平成5年8月に左耳後部の腫脹に気づき,放置していたところ徐々に増大してきたため平成6年4月1日,市立枚方市民病院耳鼻咽喉科を受診した。家族歴,既往歴に特記すべきことなく,病変部に外傷の既往はなかった。

原著

MRIによる原発性上皮小体機能亢進症の術前部位診断

著者: 井上貴博 ,   冨田俊樹 ,   新田清一 ,   加納滋 ,   佐藤俊彦

ページ範囲:P.469 - P.472

 はじめに
 原発性上皮小体機能亢進症の治療にあたって,術前部位診断の進歩が切望されている。上皮小体病変の術前部位診断には,これまで超音波,sub-traction scintigraphy,CTなどが用いられてきたが,改善の余地は少なくなかった。近年はMRIが,術前部位診断に試みられるようになってきた。MRIは解剖が複雑な軟部組織を扱う耳鼻咽喉科頭頸部外科医にとって,現在,必要不可欠な検査の1つとなっている。したがって,周囲軟部組織との鑑別が重要な上皮小体病変の同定においても,MRIによる術前部位診断率の向上が期待される。今回われわれは,上皮小体病変の術前部位診断にMRIが有用であるか否かの検討を行ったので報告する。

側頭骨原発低分化型腺癌の1例

著者: 松井玲子 ,   東松琢郎 ,   川堀眞一 ,   海野徳二

ページ範囲:P.475 - P.479

 はじめに
 側頭骨腫瘍はまれな疾患であり特徴的な症状を欠くため早期発見は困難である。手術では解剖学的に制限を受け,また放射線での根治も難しく一般的には十分な治療成績があげられていない。今回われわれは,激しい疼痛と顔面神経麻痺を伴い,中頭蓋窩まで進展した側頭骨原発の低分化型腺癌を経験した。化学療法(5-FU+THP-ADM+CDDP)と放射線治療の同時併用療法を行い,疼痛は消失しComplete Response (CR)の治療効果が得られたので報告する。

下咽頭にみられた悪性リンパ腫の1例

著者: 岩崎真一 ,   八木昌人 ,   水野信一 ,   荒井直樹 ,   松本和彦

ページ範囲:P.480 - P.483

 はじめに
 下咽頭腫瘍は耳鼻咽喉科領域において比較的よくみられる疾患であるが,そのほとんどは扁平上皮癌であり,その他の腫瘍の発生はまれである1)。なかでも下咽頭の悪性リンパ腫は,その発生頻度が全頭頸部悪性リンパ腫の1%にも満たず,過去の報告もわずかに散見されるにすぎない2〜5)
 今回われわれは下咽頭に生じた悪性リンパ腫の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する。

急激な聴力低下をきたしたUsher症候群III型症例

著者: 大島猛史 ,   平野浩二 ,   池田勝久 ,   髙坂知節

ページ範囲:P.484 - P.487

 はじめに
 網膜色素変性症に感音難聴を合併した疾患としてUsher症候群が知られている。これは遺伝性疾患の1つであり,常染色体劣性遺伝形式をとる。I〜IV型に分類されるが,I,II型に比較して進行性感音難聴を特徴とするIII型はまれである。今回,われわれはUsher症候群III型と考えられる症例を経験したので,当科におけるUsher症候群I,II型を呈示し,文献的考察を加え報告する。

スギ花粉非感作・ヒノキ花粉感作例の臨床像

著者: 山際幹和 ,   藤田健一郎 ,   木村則昭 ,   中西やよい ,   行岡茂 ,   中西繁夫

ページ範囲:P.490 - P.493

 はじめに
 わが国の花粉症のなかで最も問題となるのはスギ花粉症であることには異論がない。その患者数は1970年代に入ってから急増し1),近年増加の一途をたどっている。他方,ヒノキ花粉は,近年,樹林面積の増加に伴いスギ花粉を上回るほど多く飛散する花粉となり2),その感作を受ける機会は多いと考えられ3),われわれも,昨今ではヒノキ花粉症を十分念頭においた診察を行っている。
 今日までの研究で,ヒノキ花粉とスギ花粉が共通抗原性を有することも明らかにされており4),われわれの検討でも,ヒノキ花粉特異的IgE抗体陽性例の93%はスギ花粉特異的IgE抗体も陽性であった3)
 なかには,ヒノキ花粉に単独で感作されたと思われる症例も観察され,臨床的に興味が持たれるが,その実体は必ずしも明白ではない。そこで,ここではスギ花粉非感作・ヒノキ花粉感作例の臨床像を若干の文献的考察を加えて報告する。

嚥下障害をきたした強直性脊椎骨増殖症の1例

著者: 藤井守 ,   西田功

ページ範囲:P.494 - P.498

 はじめに
 強直性脊椎骨増殖症(Ankylosing spinal hyperostosis;ASH)はForestier病とも呼称される疾患であり,広範な靱帯骨化をきたす。その主病変である前縦靱帯骨化により臨床症状が出現することは従来まれといわれていたが1,2),今回われわれは本症により嚥下時違和感と誤嚥を訴え,観血的治療により症状の消失した1例を経験したので報告する。

頸部腫瘤を主訴とした顆粒球肉腫の1症例

著者: 熊谷正樹 ,   桜田隆司 ,   菅原知広 ,   伊藤智彦

ページ範囲:P.501 - P.504

 緒言
 耳鼻咽喉科領域,特に口腔咽頭領域に白血病の部分症状が出現することは古くから知られており,坂口ら1)による急性前骨髄性白血病の報告や,鈴木ら2)による髄外形質細胞腫の報告など諸家により報告されてきた。
 顆粒球肉腫(Granulocytic sarcoma)は1811年にBurns3)により初めて報告された疾患で,骨髄細胞由来の腫瘤形成性腫瘍と定義され,古くは緑色腫(Chloroma),骨髄芽球腫(Myeloblas-toma)と呼ばれていた。この他にも単球由来の単球肉腫や単芽球肉腫もこの範疇に含むのが現在は一般的である4)

口蓋形成術前後における滲出性中耳炎の統計学的観察

著者: 中村義敬 ,   西澤典子 ,   佐藤公輝 ,   犬山征夫 ,   井川浩晴 ,   杉原平樹 ,   小橋真美子

ページ範囲:P.505 - P.508

 はじめに
 口蓋裂児に,滲出性中耳炎をはじめとする中耳疾患が正常児に比して多発することはよく知られている。この原因として,口蓋帆挙筋,口蓋帆張筋の走行異常・付着異常および形成不全1〜4),筋の線維化5),耳管自体の形成・形態異常6),耳管粘膜の炎症7)などによる耳管機能障害が考えられている。口蓋裂による鼻咽腔閉鎖機能不全の改善のために,口蓋形成術が施行されるが,口蓋形成術が滲出性中耳炎にいかなる影響を及ぼすかについての評価は一定しておらず,とくに口蓋形成術の術式の違いによる滲出性中耳炎の予後をみた報告は少ない。そこで今回われわれは,口蓋形成術の滲出性中耳炎への影響をみるため術後4週で滲出性中耳炎の有無を観察し,さらに術式の違い,鼻咽腔閉鎖度と滲出性中耳炎との予後についても検討し若干の知見を得たので報告する。

喉頭軟骨腫の1症例

著者: 江谷勉 ,   石井俊二 ,   米田孝明 ,   西川邦男 ,   小池聰之 ,   鈴木徹

ページ範囲:P.518 - P.522

 はじめに
 喉頭腫瘍のうち良性腫瘍の占める割合は小さく,多くは乳頭腫で軟骨腫は極めてまれな疾患である。
 輪状軟骨より発生した軟骨腫の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する。

当科における最近の甲状腺手術例の検討(第4報)

著者: 松浦徹 ,   山田哲生 ,   加藤昭彦 ,   山田弘之

ページ範囲:P.524 - P.528

 緒言
 甲状腺は頭頸部領域に位置する臓器であり,この部は一般外科との境界領域である。しかし,甲状腺の疾患では,咽喉頭異常感や嗄声などの症状を主訴に耳鼻咽喉科を受診することが少なくない1)。また,甲状腺手術は周囲に喉頭,食道,気管といった臓器を有しさらに甲状腺裏面には反回神経も走行していることから,われわれ頭頸部外科医が手術を行うべきと考えている。
 当科では1986年より甲状腺疾患に対して積極的な治療を開始し,過去3回手術例の検討を行い第1〜3報までの報告をしている1〜3)。今回第4報では,1986年から1995年までの術後の合併症である上皮小体機能低下症や反回神経麻痺について検討した。

鼓室形成再手術例の検討

著者: 廣芝新也 ,   岩永迪孝 ,   箕山学 ,   藤田隆夫 ,   田中信三 ,   田辺正博

ページ範囲:P.529 - P.532

 はじめに
 慢性中耳炎に対し再手術を行う場合,初回手術と同じく耳漏の停止,聴力改善,真珠腫の除去を目的に行う。しかし,前回手術時の鼓室内所見が不明であることや瘢痕,癒着,組織の増生などの術後の器質的変化のため,これらの目的の達成が困難な症例にしばしば遭遇する1〜5)。再手術においては聴力改善が期待できない要因が初回手術に起因する場合もあり,初回手術時の所見が非常に重要となる。今回われわれは主として耳漏と聴力改善の面から再手術耳の術後成績を評価し,再手術耳からみた初回手術の問題点についても考察を加えたので報告する。

鏡下咡語

耳鼻科医の保険医総辞退

著者: 瀬尾攝

ページ範囲:P.510 - P.512

 耳鼻科の保険医総辞退を知っている耳鼻科医もずいぶん少なくなってしまいました。
 今から丁度30年むかしの昭和42年,当時全国でわずか3,000人の耳鼻科医が日本医師会に睨まれながら保険医を総辞退しようとした,あわれにもけなげな事件でした。開業してまだ年数の浅い私にとっては,顔色がまっ蒼になるほど深刻な事件だったのです。

海外トピックス

アメリカ合衆国におけるDissection Courses (体験記)

著者: 鈴木雅明

ページ範囲:P.513 - P.517

 Dissection coursesとは,手術に必要な解剖や手技を,cadaver (死体,献体)の側頭骨や頭部そのものを使い,実際に参加者ひとりひとりに手術を行わせ,指導してくれるコースのことであります。今回私は3つのコースに参加する機会に恵まれましたので,日本の耳鼻咽喉科医の皆様にご報告させていただきます。

手術・手技

Chondrocutaneous Postauricular Island Flapによる難治性耳瘻孔手術後の再建

著者: 大隅昇

ページ範囲:P.535 - P.538

 はじめに
 耳瘻孔はしばしば遭遇する耳部の先天性小奇形であり,その治療も容易であるが,いったん感染すると,外科的治療は非常に困難となる1)。特に瘻孔が耳介に存在する場合,耳介前面の皮膚および軟骨を切除した後の欠損創の修復に難渋することがある。
 今回,感染を繰り返す難治性耳瘻孔手術後に生じた耳甲介腔から外耳道にかけての皮膚および軟骨欠損に対しchondrocutaneous postauricular island flapを用いた再建術を開発し,2症例に応用した結果,本法の有用性を確認したので報告する。

医療ガイドライン

小児副鼻腔炎に対する三者併用療法—小児副鼻腔炎治療における新しい展開

著者: 調賢哉 ,   調信一郎

ページ範囲:P.539 - P.543

 はじめに
 私どもが行っている,小児副鼻腔炎に対する中鼻道経由キリアン洗浄管を用いて行う上顎洞洗浄法(以下,上洗と略)は,特に限局感染型およびその合併症であるいわゆる「原因不明熱」「原因不明頭痛」「副鼻腔気管支症候群」「化膿性上顎洞炎を伴ったアレルギー性鼻炎,気管支喘息および滲出性中耳炎」に著効を示すことは従来より発表してきたとおりであり1,2),症例は2,000例を超している。
 しかし,対象を限局感染型に限定し,起炎菌に対する第一選択剤とされるアンピシリン系抗生剤投与下に上洗を行っても,その20%は全く効果を示さなかった。この20%の難治例,すなわち10回,20回,30回と洗っても多量の膿汁が排出される例に対して,私どもは,その対策に苦慮していた。しかし,ニューマクロライド(CAM・RXM)を使用しながら上洗を行えばさらに治癒率がよくなること,最近,さらに塩酸アゼラスチン内服の併用,すなわち上洗,ニューマクロライド内服,塩酸アゼラスチン内服の「三者併用療法」を行えば,さらに治癒率が向上することを知ったので報告する。これは小児副鼻腔炎治療における新しい展開といえる。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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