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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科68巻7号

1996年07月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

鼻咽腔内視鏡検査

著者: 山下公一 ,   木谷真里

ページ範囲:P.552 - P.553

 鼻咽腔の視診は,狭い鼻腔を経由して内視鏡を挿入するか,口腔側から後鼻内視鏡で咽頭反射をコントロールしながら行わねばならないので,臨床では敬遠されがちである。しかし鼻咽腔は,副鼻腔炎,鼻閉,腫瘍,耳管障害,鼻咽腔閉鎖不全,睡眠時呼吸障害,鼻出血などの診断治療に直結する情報の宝庫でもあり,ルーチンに検査すべきである。

連載 症状から見た耳鼻咽喉科・頭頸部外科シリーズ【新連載】

①嗄声(させい)

著者: 田山二朗

ページ範囲:P.555 - P.563

 嗄声は発声障害に伴う症状の1つで,喉頭における声の音源(喉頭音源)産生の異常による声の音質(音色)の病的変化をいう。発声時の声門閉鎖不全と声帯振動の異常と関係し,これらを引き起こす喉頭疾患はすべて嗄声を生じうる。
 本稿では嗄声を引き起こす喉頭疾患のうち,外科手術が必要な喉頭病変を中心に症例を提示しながら述べる。

原著

耳下腺唾液瘻の治療—特に臭酸スコポラミンとの併用療法の有用性について

著者: 田村嘉之 ,   所芳男 ,   堀内正敏 ,   坂井真

ページ範囲:P.566 - P.570

 はじめに
 耳下腺腫瘍の外科治療に生じる唾液瘻の頻度は3%前後である。また,唾液瘻は導管の損傷部位の違いから2つに大別される。腺外の主管損傷による管瘻性唾液瘻と腺内の導管損傷による腺瘻性唾液瘻である。管瘻性唾液瘻の治療は導管形成術や耳下腺全摘出術などの外科治療が行われる。腺瘻性唾液瘻の治療は,局所圧迫などの保存的治療や,耳介側頭神経から顔面神経に交通枝を介して移行する副交感神経線維を切断するLericheの手術などの外科的治療が行われる。
 われわれは腺瘻性唾液瘻9例に対して局所圧迫単独治療と抗コリン作動性効果遮断薬である臭酸スコポラミンを併用した治療の2種類の治療法を行った。過去に臭酸スコポラミンによる治療報告はなく,われわれは腺瘻性唾液瘻の臭酸スコポラミンによる併用治療の有用性を検討した。

鼓室硬化症の臨床的ならびに病理組織学的観察

著者: 平出文久 ,   野原忍 ,   大橋伸也

ページ範囲:P.571 - P.576

 はじめに
 鼓室硬化症は一般に慢性中耳炎の後遺症とみなされており,病理組織学的に極めて特異な像を示す。特徴となる硬化物質は耳小骨連鎖の可動性を制限し,伝音難聴を起こさせる厄介な疾患である。今まで経験した鼓室硬化症症例の病態について臨床的に検討を加え,併せて,一部の症例で手術時に採取した硬化病変組織を形態学的に観察する機会を得,若干の知見を得たのでここに報告する。

頭蓋底再建例における合併症の検討

著者: 三浦隆男 ,   岸本誠司

ページ範囲:P.578 - P.581

 はじめに
 鼻・副鼻腔と頭蓋腔を確実に遮断し得る再建手術手技の進歩などにより,従来手術不能とされてきた頭蓋底浸潤のある鼻・副鼻腔悪性腫瘍症例に対して,頭蓋底と顔面骨を一塊として摘出する手術1〜6)が,当科でも脳神経外科の協力を得て行われている7〜9)。今回は,頭蓋底再建症例の術後合併症を検討し,頭蓋底の骨再建の必要性の有無について考察を加えた。

再建中咽頭の術後機能評価法

著者: 三浦隆男 ,   岸本誠司 ,   土師知行

ページ範囲:P.583 - P.586

 はじめに
 遊離皮弁移植手術が一般的に行われるようになり,中咽頭悪性腫瘍摘出後の再建においても,再建材料として種々の皮弁が選択可能となっている1〜4)。再建皮弁の違いによる術後機能の差異についてはすでに報告した5)が,今回は問診と発語明瞭度の各評価項目ごとの点数化を試み,中咽頭の欠損範囲ごとに構音機能と嚥下機能の関係について比較検討した。

骨組織の迷入をともなった甲状舌管嚢胞の1例

著者: 坂田英明 ,   古屋信彦 ,   小島好雅 ,   山本邦夫 ,   石田康生

ページ範囲:P.588 - P.590

 はじめに
 甲状舌管嚢胞(正中頸嚢胞)は,甲状舌管の遺残に由来し1),前頸部に出現する腫瘤のなかでも比較的よくみられる。
 今回われわれが経験した甲状舌管嚢胞は,嚢胞内に,舌骨との連続性のない,骨髄をともなった骨組織そのものが迷入したものである。
 甲状舌管嚢胞の壁内に認められる付属器官としては,粘液腺組織,異所性甲状腺組織,杯細胞などがあると報告されている2〜4)。しかし甲状舌管嚢胞内に迷入組織が存在したとの報告は全くなく極めてまれな症例である。

頭蓋外内頸動脈瘤の3症例

著者: 渡邊健一 ,   鈴木秀明 ,   川瀬哲明 ,   池田勝久 ,   髙坂知節

ページ範囲:P.592 - P.596

 はじめに
 頭蓋外内頸動脈に発生する動脈瘤は稀な疾患である。本疾患では,脳虚血の徴候を呈することが文献的に多く報告されている1〜3,5)。しかし,頭頸部領域の腫瘤のみの症状で発見されることもあり1〜3,6),この場合には症状が軽度であっても破裂,血栓,塞栓などの重篤な合併症の可能性を念頭において精査を進めなくてはならない。今回われわれが経験した本疾患3症例(分岐部近くに発生した2例,副咽頭間隙に発生した1例)について文献的考察を加えて報告する。

鼻副鼻腔悪性黒色腫の2症例

著者: 假谷伸 ,   赤木博文 ,   結縁晃治 ,   宇野欽哉 ,   小川晃弘 ,   西崎和則

ページ範囲:P.598 - P.602

 はじめに
 悪性黒色腫は,メラノサイトから発生する悪性腫瘍で,理論上メラノサイトが存在する部位であれば体中どこにでも発生する。一般には,皮膚原発のものがよく知られているが,鼻副鼻腔,口腔咽頭などの粘膜に発生する悪性黒色腫は,皮膚原発のものに比べ予後不良である。今回われわれは,鼻副鼻腔原発の悪性黒色腫を2例経験した。1例は外鼻錐体翻転術による腫瘍全摘出術および放射線治療,他の1例は,インターフェロンβの局所注射による保存的治療を行い,対照的な経過をたどったので報告する。

外傷性咽後血腫の1例

著者: 古謝静男 ,   神谷聰 ,   崎原幸美 ,   大嶺稔 ,   野田寛

ページ範囲:P.604 - P.606

 はじめに
 咽後血腫は血液疾患や血管疾患の合併症として生じるほか,頸部外傷や異物によっても生じる。本疾患は稀であり1)治療法も保存的治療,外科的治療の両意見があるが対処が遅れると死亡する可能性もある。最近われわれは外傷性の咽後血腫の1例を経験したので若干の考察を加えて報告する。

上顎洞の嚢胞として発生したエナメル上皮腫の1例

著者: 得居直公 ,   青柳満喜 ,   杉本卓矢 ,   牧嶋和見

ページ範囲:P.612 - P.615

 はじめに
 エナメル上皮腫は,歯原性腫瘍のなかでは比較的発生頻度の高い腫瘍であり,下顎に多く発現するが,上顎に発現することは稀といわれている。
 われわれは上顎洞の嚢胞として発症したエナメル上皮腫の1症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。

回転性めまいの既往を有した聴力正常な聴神経腫瘍例—非典型的病像を呈した聴神経腫瘍(その4)

著者: 藤井守 ,   吉本裕 ,   矢部多加夫

ページ範囲:P.617 - P.622

 はじめに
 聴神経腫瘍(以下AT)の多くは進行性の一側性難聴・耳鳴を主訴とし,検査上一側性感音難聴を認め,温度眼振検査で高度の反応低下を示すものとされてきた1,2)。しかし,近年の放射線学的診断技術の進歩により早期に発見されるため,最近は前述の症状を欠くいわゆる非典型例の報告が増加している1)
 今回われわれは,既往に回転性めまいを有し,その後の軽度の浮動感のみを主訴とした聴力正常のAT症例を経験したので報告する。

鏡下咡語

謎の「京大式舌圧子」—そもそもあの切れ込みはなんぞや

著者: 山際幹和

ページ範囲:P.608 - P.609

 読者の先生方は,京大式舌圧子の一方の先端の小さい切れ込みが何の目的で作られているのかご存じであろうか? または,その使用目的について疑問を持たれたことがあるだろうか? つまり,図中のBの舌圧子の切れ込みに関する疑問である。
 『日本医事新報』にその切れ込みの使用目的に関するご質問が鹿児島のH先生より寄せられ,その回答を私が命ぜられ,同誌質疑応答欄にその「迷答」を掲載させていただいたことがある(日本医事新報No.3470,平成2・10・27)。

手術・手技

外鼻再建におけるBi-lobed flapの応用

著者: 楠見彰

ページ範囲:P.623 - P.627

 はじめに
 Bi-lobed flapは二葉の皮弁を作成し修復再建する方法であり,1918年Esser1)が鼻尖部の再建に用いたのが最初とされている。その後身体のさまざまな部位での応用が報告されている。Zitelli2),Elliott3),McGregorら4),Tardyら5)は,外鼻の再建でその有用性が高いと報告している。外鼻皮膚欠損における再建での本術式の利点は,Tardyら5)が述べているように色調に極めて優れていることと一期的手術が可能な点である。しかしながら,本邦での本術式の外鼻再建における有用性を報告したものは少ない。今回,著者はbi-lobed flapを用いた外鼻再建を3症例に行った。Bi-lobed flapの欠点であるdog ear (縫合端の余剰皮膚)の軽減のために茎を細くし,症例によっては部分的に皮下茎弁とすることにより,本術式の外鼻再建における有用性を確認したので報告する。

下咽頭癌切除後欠損の結腸再建における補助血行

著者: 片桐聡 ,   河田了 ,   山本敏也 ,   村上泰 ,   保島匡和 ,   高橋俊雄

ページ範囲:P.629 - P.632

 はじめに
 下咽頭癌はその局在により進展の方向特異性があり,梨状陥凹癌では粘膜面に腫瘍の露出のない粘膜下不可視病変が中咽頭に向かって拡がるのが特徴的である。そこで切除手術に際しての上限は口蓋扁桃下極レベルとするのが安全である1)。したがって食道全摘を併せて行う場合には,欠損の上端が高位となるため,胃管吊り上げでは届かず,結腸による再建が必要となる。このとき懸念されるのは再建結腸の上端における血流減少による壊死である。そこで下咽頭食道癌に対し咽喉頭食道全摘後,結腸による再建を行った症例において,頸部での補助的血行再建を試み良好な結果を得たので報告する。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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