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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科68巻8号

1996年08月発行

文献概要

トピックス 聴神経腫瘍

4.中頭蓋窩法聴神経腫瘍摘出術

著者: 神崎仁1 井上泰宏1

所属機関: 1慶應義塾大学医学部耳鼻咽喉科学教室

ページ範囲:P.671 - P.676

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 1.中頭蓋窩法(MCF)の歴史的背景
 Middle Cranial Fossa Approach (MCF法)は1892年Hartley,1900年Horsley,Cushingらにより,三叉神経痛に対する外科的アプローチとして報告された。この方法を内耳道に対するアプローチとして用いたのはParry (1904年)が最初であり,めまい,耳鳴に対して内耳道内の蝸牛神経と前庭神経の切断術を行った。また,1919年にはHolmgrenが耳硬化症の治療法の1つとして,MCF法による上半規管の開窓を行った。さらに1954年ClercとBatisseは,膝神経節付近の外傷性顔面神経切断例にMCF法を用いて神経移植を行っている。
 1967年にW.HouseがMCF法に用いる開創器を開発し,ドリルを用いて内耳道上壁を削開することにより,聴力良好な,内耳道内に限局した聴神経腫瘍(以下AN)の聴力保存手術に成功した。Houseは,当初この手術方法を広汎な耳硬化症に対する内耳道の減圧手術として用いたが,後にその目的での手術は中止され,内耳道に限局したANの摘出法として有用であることがわかってきた。本法が発表された当時の適応例は,聴力良好な,小脳橋角部への進展が5mm以下の小腫瘍であった。原法では内耳道孔の骨は削除されておらず,後頭蓋窩硬膜の切開も行われていなかったようである。近年では,内耳道孔の削開,後頭蓋窩硬膜の切開も行うようになり,症例によっては小脳橋角部に8〜10mm程度の進展例も摘出可能となった。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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