文献詳細
トピックス 聴神経腫瘍
5.ガンマナイフによる聴神経腫瘍の治療
著者: 菅澤恵子1 栗田浩樹2 伊藤健1
所属機関: 1東京大学医学部耳鼻咽喉科学教室 2東京大学医学部脳神経外科学教室
ページ範囲:P.678 - P.684
文献概要
最近,聴神経腫瘍の新しい治療法としてガンマナイフによる定位脳放射線外科(stereotacticradiosurgery)が注目されている。1969年Lek-sellによりスウェーデンのカロリンスカ病院で始められたこの治療法12)は,その良好な治療成績と機能保存率が報告される19,20)に従い,更にCT,MRIなどの画像装置の発達とあいまって急速に広まった。日本では1990年東京大学脳神経外科で導入され,現在国内では十数施設に普及しガンマナイフによる聴神経腫瘍の治療(以下,ガンマナイフ治療と呼ぶ)例は急増している9,18,25)。導入期には,手術療法が困難な症例を対象としていたが,良好な治療成績を背景に手術療法に対するalter-native therapyとしての期待が高まりその適応は拡がってきている。一方,従来の手術療法も術式の工夫,各種モニターの導入により,より安全なものとなり,また聴力や顔面神経の保存率もかなり向上している3,6,24)。症例によってはどちらの治療法を選択することも可能であり,逆に言えばどちらかを選択しなければならないことになる。ガンマナイフ療法は脳外科の治療法であるが,聴神経腫瘍を扱う耳鼻科医としてもこの治療法について精通する必要がある。今回は,東京大学附属病院での経験と現在までの文献報告をもとに聴神経腫瘍のガンマナイフ治療の現状と問題点について述べたいと思う。
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