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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科68巻9号

1996年09月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

ヘリカルCTによる披裂軟骨の三次元表示

著者: 石川雅洋 ,   火伏宏美 ,   沖田有弘 ,   田中久哉 ,   饗場和子 ,   磯野道夫 ,   村田清高

ページ範囲:P.748 - P.749

 従来のCT画像は二次元画像であるが,これを三次元表示(以下3D画像)することにより,病変の立体的把握が容易になり臨床的に極めて有用である。近年,ヘリカルCTが臨床応用され容積スキャンであるという利点から様々な疾患に対して三次元再構築が可能になった1)。今回われわれは,単純ヘリカルCTを用いて披裂軟骨を次元表示し,その描出について検討したので報告する。

Current Article

頭頸部癌における染色体,遺伝子異常研究の現況

著者: 佃守

ページ範囲:P.751 - P.766

 はじめに
 頭頸部癌は大部分が扁平上皮癌で,比較的放射線治療に感受性が高く,そのため早期に見つかると喉頭癌のように予後の良い癌もある。その一方で進行して発見される症例も多く,根治治療である手術,放射線治療にさらに化学療法や免疫療法を加味した集学的治療が施行されている。しかし下咽頭癌を筆頭に頭頸部進行癌の予後は悪い。
 予後を左右する因子としてはPerformance status,免疫学的背景などの宿主の因子,さらに病理学的因子,臨床病期などの腫瘍因子,さらに治療形態などの因子がある。また近年,細胞そのものの特性を研究し,予後との関連性が検討されている。すなわち腫瘍細胞のDNAの異型性を見るDNA ploidy pattern,またcell cycleから細胞増殖性を検討するpotential doubling time (T pot),proliferative index,proliferating cell nuclear antigen (PCNA),Ki67 proliferation antigen検索などの手法が取り入れられてきた(表1)。さらに最近の分子生物学的手法の進歩に伴い,腫瘍細胞の生物学的特性をより詳細に把握する目的で腫瘍増殖因子,転移因子を腫瘍そのものの染色体,遺伝子の異常から研究し,その異常と病理,臨床像との関連性が検討され始めている。そこで今回,頭頸部扁平上皮癌の染色体や遺伝子の異常に焦点を当て,その現状を概説する。

原著

旭川市における16年間の花粉飛散状況と日内変動

著者: 金関延幸 ,   高橋光明 ,   海野徳二 ,   熊井恵美

ページ範囲:P.768 - P.772

 はじめに
 花粉症の原因である花粉の飛散状況を長期的に観察した報告は少ない。本州ではスギ花粉を中心に長期観察報告があるが1),本州とは気候風土の異なる北海道の花粉飛散状況について長期間の報告はみられない。北海道では春の雪解けとともに様々な花粉が飛び始める。それらの中で花粉症を引き起こす主なものは,シラカンバ,イネ科,よもぎ花粉である2〜5)。われわれはこれらの花粉の飛散状況について昭和55年(1980年)以来観測を続けている。今回,昭和55年から平成7年(1995年)までの16年間にわたる旭川市の飛散状況を検討し,さらにシラカンバとイネ科の両花粉について飛散の日内変動を調査したので報告する。

環状13番染色体症候群症例の側頭骨病理所見

著者: 小山悟 ,   加我君孝 ,   大平泰行 ,   小川恵弘 ,   福嶋義光

ページ範囲:P.774 - P.777

 はじめに
 環状13番染色体症候群(以下,13リング症候群)は13番染色体が環状構造をとる染色体異常症であり,Niebuhr1)はその臨床徴候より13q-症候群の1型として分類している。臨床所見としては,重度の精神発達遅滞,中枢神経の異常,心・腎の奇形,小頭症,鎖肛,生殖器異常,翼状頸などの外表奇形が指摘されており,耳科学的所見として,耳介奇形,低在耳介を認めることがあると報告されている2〜5)
 しかしその側頭骨病理所見については,われわれの検索したところでは報告されていない。今回われわれは13リング症候群の側頭骨病理を観察する機会を得たので報告する。

難治性低音障害型感音難聴の臨床—治療と病因を中心として

著者: 坂田英明 ,   古屋信彦 ,   小島好雅 ,   石塚洋一

ページ範囲:P.779 - P.782

 はじめに
 低音域に発症する感音難聴の存在は古くから知られ,数多くの報告がされてきた。めまいをともなわず,反復する聴力障害を呈することも多く,蝸牛型(不全型)メニエール病などと呼ばれることもある。一般に予後は良好で,自然寛解例も多い。しかし,長期観察下では,再発を繰り返したり,メニエール病に移行したり,あらゆる治療に抵抗を示す難治例も少なくない1)
 今回はとくに,これら難治例についての治療,病因について検討したので報告する。

慢性鼻副鼻腔炎患者の頭痛・顔面痛に関する臨床的検討—(その1)痛みの臨床的特徴

著者: 内藤健晴 ,   大山俊廣 ,   小森真由美 ,   三嶋由充子 ,   高須昭彦 ,   岩田重信

ページ範囲:P.798 - P.801

 はじめに
 耳鼻咽喉科領域の患者が頭痛を訴えることにしばしば遭遇する。特に欧米では鼻副鼻腔疾患を有する症例にその頻度が高い1)。急性副鼻腔炎における頭痛・顔面痛の責任部位や症状の程度との因果関係は比較的明瞭であるが,慢性の場合は単純ではない。慢性の鼻性頭痛については今のところ明確な定義もなく,またその病態についても曖昧である。しかし,本邦でのこの領域の研究は意外に少ない。そこで今回われわれは,慢性の鼻性頭痛・顔面痛の実体を明確にする一環として,慢性鼻炎および副鼻腔炎患者が有する頭痛・顔面痛について臨床的研究を行い若干の知見を得たので報告する。

篩骨洞に発生した異所性髄膜腫の1症例

著者: 下地善久 ,   古謝静男 ,   糸数哲郎 ,   野田寛 ,   金城利彦

ページ範囲:P.802 - P.805

 はじめに
 髄膜腫は一般に頭蓋内・脊椎管内のクモ膜細胞から発生することが知られている。しかし,これらの領域以外に発生する,いわゆる異所性髄膜腫もまれながらいくつか報告されている。これまで報告されている異所性の発生部位としては,眼窩内,皮膚および皮下組織,側頭骨内,鼻・副鼻腔内などがある。今回,われわれは篩骨洞に発生した髄膜腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

急性扁桃炎として発症した抗甲状腺剤による重症汎血球減少症

著者: 東松琢郎 ,   松井玲子

ページ範囲:P.806 - P.809

 はじめに
 抗甲状腺剤の重篤な副作用として無顆粒球症は広く知られている1)。また顆粒球だけではなく二次性再生不良性貧血の原因となって汎血球減少症をきたすことも知られてはいるが,その頻度はきわめて低い。最近われわれはバセドウ病に対して抗甲状腺剤チアマゾール(以下MMI)が使用され,重篤な汎血球減少症に至ったまれな症例を経験したので報告する。

誤嚥防止を目的に喉頭全摘術を施行した4症例

著者: 菅家稔 ,   田中一仁 ,   小形章 ,   犬山里代 ,   鈴木理文 ,   立川浩 ,   本多虔夫

ページ範囲:P.811 - P.815

 はじめに
 不可逆的な嚥下障害やそれに伴う慢性の誤嚥は長期にわたり気道を汚染し,生命をおびやかす存在である。患者は度重なる入退院を課せられ,また患者を介護する家族にとっても負担が大きい。今回,われわれは高度な誤嚥と音声・言語機能障害を有する筋萎縮性側索硬化症(以下ALS)2例,小児脳性麻痺1例,Shy-Drager症候群(以下SDS)1例に対し,誤嚥の防止を目的に喉頭全摘術を施行した。術後経過は良好で早期の退院が可能になり,患者・家族のQuality of Life (以下QOL)は向上した。また,われわれは音声・言語機能の永久喪失などを理由に敬遠されていた喉頭全摘術を見直し,その適応について考察した。

鏡下咡語

中鼻道の風景—19世紀末

著者: 飯沼壽孝

ページ範囲:P.784 - P.787

 世紀末を迎えようとしているが,前世紀末はどのような風景であったかを,中鼻道の解剖を通して描いて見たい。中鼻甲介を取り除いて中鼻道を現すと節骨胞と鈎状突起,その間の半月裂孔,半月裂孔が深まって生ずる篩骨漏斗の影,が見える。見えるというよりは,このように見るようにしつけられてきたのである。何の予備知識あるいは偏向した見方なしに中鼻道を見れば,篩骨胞を篩骨胞とは呼ばず,半月裂孔も半月ではなく三日月であると感ずるであろう。この断章の意とする所は中鼻道の現在の風景,あるいは風景の見方が前世紀末にどのようにして形成されたかを手短に紹介することである。解剖学書は一般に無味乾燥な記載であると受けとられるが,一方では見えるものの見方を示す記載でもある。
 時代によって名付け方にも好みがあるので,現代の名称から始めたい。篩骨胞はBulla ethmoidalis,篩骨胞と鈎状突起(Processus uncinatus)が囲む裂け目が半月裂孔Hiatus semilunaris,そして半月裂孔の深まりが篩骨漏斗,Infundibulum ethmoidale (いずれもP.N.A.パリ国際解剖学名)である。いい換えれば,半月裂孔は2次元,篩骨漏斗は3次元の構造である。

海外トピックス

鼻アレルギーと寄生虫—中国から観た,日本の鼻アレルギー増加

著者: 三好彰

ページ範囲:P.791 - P.796

鼻アレルギーつて,ホントに増えたんだろうか。増えたとすれば,それはなぜ?
 そんな素朴な疑問が,私たちの出発点でした。

手術・手技

改良型顕微鏡による慢性副鼻腔炎鼻内手術

著者: 大越俊夫 ,   臼井信郎

ページ範囲:P.816 - P.819

 はじめに
 慢性副鼻腔炎の手術方法は病的粘膜の完全除去を目的とする根治的手術法と,病的副鼻腔の形態を保持しつつ換気と排泄を行うことにより治癒させようとする保存的手術法に大別される。近年は薬物療法の進歩と相まって鼻内法による保存的手術が多く行われている。副鼻腔炎鼻内手術は篩骨洞を経由して上顎洞,前頭洞,蝶形骨洞を開放する手術であるが篩骨洞が解剖学的に複雑であり,入口が狭く奥が深い術野であるため高度の熟練を要する手術である。この鼻内手術を明視下に安全確実に行うために内視鏡や顕微鏡といった光学機器が導入され,その有用性が報告されている1,2)
 慢性副鼻腔炎手術に顕微鏡が使用された例は成人では1950年代後半3),小児では1970年代後半4)より報告が見られるが,国内外を通じて報告は意外に少ない。慢性副鼻腔炎鼻内手術において顕微鏡の使用の少ない理由としては①死角ができること,②従来の大型の耳科内顕微鏡をそのまま使用しようとしたための使いにくさ,③篩骨洞や蝶形骨洞のように進入路が狭い所では光の到達が不十分な部分があること,などが考えられる。しかしながら①対象に接近することなく解像度の高い立体画像が得られ,②出血が多い症例でも使用でき,③手術手技が従来と同じである,という利点は現在の慢性副鼻腔炎の病変部の主体が節骨洞にあるものが多いことや,危険部位が節骨洞から蝶形骨洞に多い5)ことを考えると,顕微鏡下の慢性副鼻腔炎鼻内手術は有用と思われる。われわれは以前より小型の手術用双眼顕微鏡を副鼻腔炎鼻内手術に使用しているが,従来の顕微鏡の不満足な点に対する改良を行い,より使いやすい改良型小型顕微鏡と,1カメラで2画面の3D方式を備えた撮影装置(永島医科器械製:改良型SN−100T)を試作したので報告する。

Naso-labial flapにより即時再建を行った口唇癌の1例

著者: 黒川英雄 ,   三浦恵子 ,   丸岡由佳 ,   山下善弘 ,   梶山稔

ページ範囲:P.820 - P.823

 緒言
 口唇癌における外科的切除後の再建では,その組織欠損が生じる機能障害を回避するのみならず,審美性を十分に考慮した再建法を選択する必要がある1〜7)
 今回,われわれは下唇癌の症例に対し術前化学療法を行ったところ腫瘍の著明な縮小を認めたため,審美性と機能を温存する目的から口角を含めた下唇の部分切除を行い,naso-labial flap6,7)を用いた即時再建を試み,機能的,審美的にも満足のいく成績が得られたのでその概要を報告する。

医療ガイドライン

鼻咽喉ファイバースコープ洗浄器市販モデルを用いた消毒効果

著者: 板橋隆嗣

ページ範囲:P.824 - P.829

 はじめに
 鼻咽喉ファイバースコープは日常の外来診療に欠くべからざるものになってきている。手軽かつ有用な検査器具であるが,病的な鼻・咽・喉頭の観察による様々な細菌付着の可能性や,気づかぬうちにHB抗原陽性患者,梅毒患者などに使用してしまう可能性を考えると,消毒が十分行われないまま次々と患者に使用することは慎まなければならない。多忙な外来診療においてもファイバースコープの消毒は不可欠であり,人手と時間をかけない消毒法が必要である。
 当施設では鼻咽喉ファイバースコープ使用後はアルコール綿で挿入部を丹念に清拭していたが,先端に向かってしごくために可動部の被覆面が損傷されて先端に寄ってしまい,経鼻的に挿入しにくい状態となり平滑性も失われてしまっていた。被覆面が損傷され,平滑性が失われることは細菌や血液が付着しやすく,また残存しやすくなると考えられる。著者は,挿入部の損傷を生じることなく手軽に用いることのできる鼻咽喉ファイバースコープ消毒器を手作りにて試作し,その消毒効果についてすでに報告済みであるが1),今回はその市販モデルについて同様の成績が得られるか否かの検討を行い得たので,手作りの試作モデルの成績と比較して報告する。

連載 症状から見た耳鼻咽喉科・頭頸部外科シリーズ

③咽喉頭異常感症

著者: 幸田純治 ,   小池靖夫

ページ範囲:P.832 - P.839

 はじめに
 ノドの異常感を訴えて耳鼻咽喉科を受診する患者は多いが,その原因となる疾患は多種多様である。これらの中には,魚骨異物や喉頭蓋嚢胞のように,異常感の原因と思われる病変を通常の耳鼻咽喉科的診察で見出すことができ,かつ治療によって症状が消失する症例がかなり存在する。しかし一方,症状に見合うだけの所見を発見できず,診断に苦慮する症列も多数存在する。これらの因喉頭異常感症は原因疾患が多岐にわたるため,多忙な外来診療のなかにおいては,系統的に診察を行わないと問診不足,検査不足によって見落としを出す危険をはらんでいる。
 ここでは,日常の耳鼻咽喉科診療に役立つように,症例を呈示しながら,咽喉頭異常感症を取り扱ううえでのポイント,注意点について述べる。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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