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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科69巻1号

1997年01月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

小児耳下腺悪性腫瘍の2症例

著者: 坂本菜穂子 ,   茂木五郎

ページ範囲:P.6 - P.7

 小児の頭頸部悪性腫瘍は,悪性リンパ腫などの非上皮性腫瘍が多く,上皮性悪性腫瘍の頻度は低い。唾液腺腫瘍においては,上皮性腫瘍のうち,小児症例は全体の10%以下であるが,小児唾液腺腫瘍の50〜60%は悪性といわれており,まれな疾患でありながら注意が必要である。今回われわれが経験した小児耳下腺悪性腫瘍2症例を示す。治療法は手術治療が第一であり,顔面神経に腫瘍が浸潤していない限り神経は温存し,切断した場合も,積極的に神経吻合を行うべきである。放射線治療や化学療法は,若年者では急性障害のほかに,顔面発育不全,下垂体障害,放射線誘発癌,性腺機能の発達障害などの晩発性の後遺症が問題となるため,治療のみならず後遺症に対する対応を含めた,長期にわたる経過観察と集学的治療を行う必要があると考える。

Current Article

下顎再建の術式と術後機能に関する検討

著者: 足立雅利 ,   鎌田信悦 ,   川端一嘉 ,   高橋久昭 ,   中溝宗永 ,   苦瓜知彦 ,   保喜克文

ページ範囲:P.9 - P.13

 はじめに
 頭頸部癌の治療成績の向上は近年の再建手術の進歩によるところが大きいことは周知の事実である。しかしこの再建手術の成否は術後の機能,整容に多大な影響を与え,特に口腔,中咽頭癌で下顎区域切除を余儀なくされた症例では,骨組織,軟部組織の同時再建を必要とし術式はより複雑なものとなる。これまで当科では,このような症例に対して多くの術式を用い積極的に下顎再建を行ってきた。今回これらの症例を比較検討し,各術式の特徴と術後機能の2点について検討する。

原著

咽頭後壁の脂肪腫の1例

著者: 河合敏 ,   佃守 ,   持松いつみ ,   河野英浩 ,   三上康和 ,   山岡秀之 ,   ,   河野尚美 ,   亀田久仁郎 ,   稲葉鋭

ページ範囲:P.14 - P.18

 はじめに
 咽頭の良性腫瘍の頻度は低く1),良性腫瘍のなかで一般によくみられる脂肪腫も咽頭では極めて稀である。
 今回われわれは,中咽頭から下咽頭にかけて,咽頭後壁に発生した脂肪腫の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する。

Waardenburg症候群Ⅱ型の1症例

著者: 舘田勝 ,   大島猛史 ,   池田勝久 ,   髙坂知節

ページ範囲:P.20 - P.23

 はじめに
 Waardenburg症候群は1951年,オランダの眼科医であるWaardenburgにより初めて報告された1)。本症候群は,1)内眼角側方偏位,2)鼻根部の拡大,3)両側眉毛の合流,4)前頭部白髪,5)部分的または全虹彩異色症,6)先天性聾または難聴の6つの項目を様々な割合で含んだ,常染色体優性遺伝の形式をとる疾患である。現在では内眼角の側方偏位のあるものをⅠ型(WS1),ないものをⅡ型(WS2)とし,Ⅰ型の症状に上肢の異常をもつものをⅢ型(WS3)としている13)。本症候群は先天性難聴をきたす遺伝性疾患として知られているが,本邦では約30例7)と比較的報告例は少ない。今回われわれはWaardenburg症候群Ⅱ型の1症例を経験したので文献的考察を加え報告する。

Pasteurella multocidaによる副鼻腔炎の2症例

著者: 東松琢郎 ,   松井玲子 ,   安達俊秀 ,   高橋光明

ページ範囲:P.24 - P.27

 はじめに
 Pasteurella multocida (以下P.multocida)は家畜,野生動物の口腔,呼吸器,腸管などの常在細菌であるが,しばしば宿主に敗血症などの重篤な疾病を引き起こすこともあるグラム陰性短桿菌である1)。感染動物による咬傷などにより,ヒトにもまれに感染症を引き起こすとされているが,耳鼻咽喉科領域での報告はきわめて少ない。われわれはこれまでP.multocidaによる副鼻腔感染症を2例経験したので報告する。

顔面神経鞘腫が発見された成人急性乳突炎

著者: 村上匡孝 ,   福島龍之 ,   牛嶋千久 ,   八木正人 ,   安田範夫

ページ範囲:P.30 - P.34

 はじめに
 側頭骨内顔面神経鞘腫は比較的まれであり,骨破壊を伴って進展してから発見される例が多く,部位が限局した小さな腫瘍の段階で発見された症例は少ない。今回われわれは,急性中耳炎から乳突炎の臨床像を呈し,急に顔面神経麻痺が出現した成人の症例を経験し,手術を施行したところ顔面神経水平部に限局した神経鞘腫を認め,神経束を保存して腫瘍を切除できたので,若干の文献的考察を加えて報告する。

悪性リンパ腫との鑑別を要したトキソプラズマ性リンパ節炎の症例

著者: 大久保英樹 ,   高橋邦明 ,   堀眞佐男 ,   板橋正幸 ,   西川典秀 ,   草刈潤

ページ範囲:P.36 - P.39

 はじめに
 頸部リンパ節腫脹は咽喉頭炎などの炎症に付随したリンパ節炎や悪性腫瘍でしばしば認められる症候だが,時として炎症によるものなのか,腫瘍なのか,また特異的な炎症が疑われる場合その適切な治療薬の選択に迷うこともある。
 今回われわれは,初診時の症状より悪性リンパ腫が疑われたが,生検と抗体価の測定によりトキソプラズマ感染症による頸部リンパ節炎と診断された症例を経験したので報告する。

OK-432局注療法による成人嚢胞状リンパ管腫の治療経験

著者: 佐武利彦 ,   栗原和直 ,   梅澤久輝 ,   中野聡子 ,   原章彦 ,   山寺仁 ,   長坂不二夫 ,   大塚正彦 ,   長谷川隆光 ,   工藤哲也 ,   若松信吾

ページ範囲:P.40 - P.43

 はじめに
 嚢胞状リンパ管腫は,一般に先天性素因に基づき,約90%が2歳未満に発症する小児例が大多数であり1),成人例は比較的まれである2)。今回われわれは,成人男性の頸部から鎖骨上窩,腋窩部に及ぶ嚢胞状リンパ管腫に対してOK-432(ピシバニール®)局所注入療法を施行し良好な結果が得られたので,若干の文献的考察を加え報告する。

幼児のボタン型リチウム電池食道異物の1症例

著者: 金田裕治 ,   佐藤尚徳 ,   高橋利弥 ,   草野英昭 ,   村井和夫

ページ範囲:P.44 - P.47

 はじめに
 ボタン型電池は生体内に滞留した場合,短時間で化学反応をおこし,時に重篤な障害をもたらすことがあることはよく知られている。食道異物としての報告は1977年Blatnikら1)が初めてとされている2,3)。今回,われわれは幼児のボタン型リチウム電池食道異物1例を経験したので文献的考察を加え報告する。

市販ELISAキットによるc-ANCAの測定の経験

著者: 坂田謙 ,   深瀬滋 ,   太田伸男 ,   稲村和俊 ,   青柳優

ページ範囲:P.57 - P.61

 はじめに
 1985年Woudeら1)により初めて報告された抗好中球細胞質抗体(anti-neutrophil cytoplasmic antibodies:ANCA)のcytoplasmic pattern (c-ANCA)はWegener肉芽腫症(WG)に極めて特異性が高く,病勢の把握にも有用であることが現在広く認知されるようになってきた。ANCAにはc-ANCA以外にも間接蛍光抗体法で異なる蛍光パターンを呈するperinuclear pattern (p-ANCA)もあるが,これは比較的広い範囲の疾患で出現し,疾患特異性における臨床的意義は低いと考えられている。c-ANCAに関しては,本邦では腎臓内科領域では吉田ら2)が,耳鼻咽喉科領域ではわれわれ3〜7)および間口ら8)がヒト末梢血好中球を基質とした間接蛍光抗体法を用いて本抗体の疾患特異性について報告を行っている。近年,c-ANCA抗原の解析が進み,ELISA法による測定も可能となり,欧米を中心として臨床応用されるようになった9〜11)。本邦においても,1993年よりELISA法によるANCAの測定が保険適応として検査可能となっており,今後臨床的に広く利用されるものと考えられる。今回,c-ANCAをELISA法にて測定し,従来の間接蛍光抗体法による測定との比較を行ったので報告する。

下咽頭に発生した小細胞癌の1症例

著者: 塩盛輝夫 ,   牧嶋和見 ,   杉本卓也 ,   黒田嘉紀 ,   工藤香児 ,   橋本洋

ページ範囲:P.62 - P.65

 はじめに
 小細胞癌は,予後が著しく不良であるとされており,肺原発がその大半を占めるが,まれに肺以外の部位に発現することがある。頭頸部領域では,喉頭1),唾液腺2),鼻・副鼻腔3),気管4)などにおける発現の報告があり,また下咽頭に原発した小細胞癌の報告5)もあるが,極めてまれな腫瘍である。われわれは,下咽頭に原発した小細胞癌の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

深頸部膿瘍—当科における9年間,37例の検討

著者: 奥野敬一郎 ,   金井憲一 ,   渡辺尚彦 ,   徳丸敬 ,   吉見健二郎

ページ範囲:P.67 - P.71

 はじめに
 近年,化学療法の進歩に伴い深頸部膿瘍の発生頻度は低下しているが,成人病の増加などの関連もあり,特に救急外来を持つ施設においては深頸部膿瘍に遭遇する機会は稀ではない。本疾患はCT,MRIなど画像診断の向上で早期診断も可能となってきているが,緊急気管切開を要し術前検査が十分できない症例や,縦隔など広範に進展し致命的になる症例もあり,治療に苦慮する場合も少なからず経験する。われわれは,1987年5月から1996年6月までの9年間に37例の深頸部膿瘍を経験し,若干の検討を行ったので報告する。

顔面痙攣の手術後に遅発性に生じた多発性脳神経障害の1例

著者: 小出千秋 ,   川合優子 ,   今井昭雄 ,   清野修 ,   花沢秀行

ページ範囲:P.72 - P.75

 はじめに
 中耳手術や内耳道手術の合併症として遅発性顔面神経麻痺があり,その原因には手術後の炎症,血腫,浮腫,循環障害が言われているが1,2),手術による機械的刺激が原因で起こる単純疱疹ウイルス(以下,HSV)や水痘帯状疱疹ウイルス(以下,VZV)の再活性化も考えられている3,4)
 われわれは顔面痙攣に対する神経血管減圧術後8日目に生じた多発性脳神経障害の1例を経験したが,神経への機械的刺激でウイルスの再活性化が生じたことが原因と考えた。神経への機械的刺激によるウイルスの再活性化について文献的考察を加え,報告する。

振子様扁桃の4症例

著者: 細川美佳 ,   渡辺貴和子 ,   松本一仁 ,   斉藤久樹 ,   冨永健 ,   西谷武一

ページ範囲:P.76 - P.79

 はじめに
 扁桃より発生する有茎性の腫瘤を総括して広義の振子様扁桃と呼んでいる。一般診療においてときに遭遇する疾患であるが,病理組織学的には種々のものを含んでいる。
 最近われわれは,口蓋扁桃からの振子様扁桃症例を4例経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。

甲状腺手術におけるラリンゲルマスクと神経刺激装置の応用

著者: 吉田昭男 ,   相馬啓子 ,   吉原重光 ,   福田秀徳 ,   福山透

ページ範囲:P.80 - P.83

 はじめに
 甲状腺の手術の際に反回神経を保存することは極めて大事であるが,挿管麻酔下では術中声帯の運動の確認が不可能であることは言うまでもない。われわれは麻酔科医の協力を得て全身麻酔にラリンゲルマスク(以後LMAと略)を用い,神経刺激装置によって反回神経を刺激し,声帯の可動性を術中モニターする方法を試みたので若干の文献的考察を加えて報告する。

鏡下咡語

再び耳鼻咽喉科の将来を考える

著者: 岡本健

ページ範囲:P.50 - P.52

 昭和49年(1974年),耳鼻咽喉科46巻3号の鏡下耳語に「耳鼻咽喉科の将来に対する不安」という一文をのせて以来,その内容があまりにも将来に対して悲観的であるとの理由から,「耳鼻咽喉科滅亡論」とのレッテルを貼られ,その後あまり省みられないようでありました。
 昨年長く勤めた国立東京第二病院を定年退職しましたが,その間すでに22年が経過し,今日の耳鼻咽喉科診療の問題点を考える時に,もう一度これを読み返してみると,その当時の指摘がほとんど当たっていることに自分でも驚いている次第です。22年前というと,ドイツ留学から帰国し,若い耳鼻咽喉科医長として多忙な臨床の毎日を送っていたときですが,その当時感じた率直な意見を投稿したわけで,その要点をここにもう一度あげてみますと

連載 症状から見た耳鼻咽喉科・頭頸部外科シリーズ

⑦嗅覚障害

著者: 古田茂

ページ範囲:P.85 - P.89

 I.問診による診断
 嗅覚機能に影響を与える因子は,性別,喫煙,化学物質への曝露,加齢,薬物の服用状況やアルコールの経験,合併症の有無などである。問診ではこれらの点について質問をするべきである。一般的に女性は男性よりも嗅覚閾値,弁別,識別能において良好な結果となる。また,官能度においても差がみられている。喫煙歴は明らかに嗅覚機能を低下させることが知られている。揮発性有機物質を扱う職業の従事者は嗅覚機能の低下が疑われる。最近,テガフール服用後に嗅覚機能が低下することが報告されている。
 また,患者の訴える嗅覚障害状態を的確に捉える必要がある。それは量的または質的変化である。前者はその程度により正常,嗅覚減退,嗅覚脱失および嗅覚過敏症に分類される。後者はニオイ感覚におけるすべての質的異常嗅感覚を総括し,異常嗅感症または異臭症と呼ばれるものである。これには嗅覚錯誤症,悪臭症,幻臭など色々な病態がある。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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