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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科69巻11号

1997年10月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

レーザーとマイクロデブリッダーシステムによる鼻茸手術

著者: 斎藤久樹 ,   渡辺貴和子 ,   寺田一仁 ,   細川美佳

ページ範囲:P.746 - P.747

 炭酸ガスレーザーによる鼻内手術は,表面麻酔のみ,あるいは少量の局所浸潤麻酔との併用で実施できる手術法で,手術時の出血や疼痛が少なく術後の過剰な肉芽形成や瘢痕形成をも予防でき,その多くは外来手術として施行されている。当院では,1993年11月より最高出力15ワットの日本赤外線工業社製小型炭酸ガスレーザー手術装置を使用して下甲介手術,癒着剥離術,小鼻茸手術などを行っているが,大きな鼻茸の手術は困難であった。
 1994年にSetliffら1)の報告したマイクロデブリッダーシステム(以下,M.D.システムと略称)は,整形外科領域で内視鏡下関節手術用に開発されたシェーバーシステムを副鼻腔手術用に小型化したもので,外来で鼻茸手術ができる。当院では,1995年2月よりレーザーと併用して鼻茸手術を行い,好結果を得ている。

Current Article

耳科・頭蓋底外科における迷路操作について

著者: 小林俊光 ,   田中藤信 ,   佐藤利徳

ページ範囲:P.749 - P.757

 はじめに
 近年の中耳手術においては,真珠腫による迷路瘻孔の治療が従来よりも積極的に行われ,かつてはタブーであった瘻孔部母膜の除去が一般に行われるようになった1)。また,眩暈治療においても,半規管充填2〜5),アミノ配糖体系薬剤による外リンパ腔灌流6,7),レーザー内耳手術8)などが行われており,聴力保存的迷路操作に関する経験がわれわれ耳鼻咽喉科医の間に集積されつつある。また,人工内耳手術や頭蓋底外科手術9,10)の普及もこの傾向に拍車をかけている。
 本稿では,迷路瘻孔治療とその基礎動物実験,錐体部真珠腫摘出時の上半規管切断術などの筆者の経験11〜14)をもとに,中耳手術時の半規管の取り扱い方,とくに部分的迷路摘出術につき論ずるとともに文献的考察を行う。本稿では主として器械的迷路部分摘出について論ずるものとし,レーザー内耳手術(野村ら8)),薬剤を用いたpharmacolo-gic (chemical)labyrinthectomy15)には触れないこととする。

原著

発作時に間接ビリルビン値の変動を伴った両側メニエール病例

著者: 西原信成 ,   暁清文 ,   柳原尚明 ,   高田清式

ページ範囲:P.761 - P.765

 はじめに
 メニエール病の病態とされる内リンパ水腫の原因については,内リンパ管や内リンパ嚢の閉塞1),ウイルス潜伏感染2),内リンパ嚢静脈の循環不全3),血管条の循環障害4),水代謝ホルモンの異常5)など種々の説があるが,まだ不明な点も多く原因は1つではない可能性もある。
 今回,発作時に間接ビリルビン値が低下し,間歇期にはこれが上昇した両側メニエール病の1例を経験した。溶血の程度と聴力閾値やめまい発作との関係から,本例では内耳の血流障害が発症に関与していると考えられた。このような症例の報告はわれわれが文献を調べた限りでは認められないことから,本例の臨床経過の詳細を示すとともに発症機序について考察を加え報告する。

喉頭結核の3症例

著者: 沖田渉 ,   國方竜太郎 ,   吉田克也 ,   水野正浩 ,   武本欣也

ページ範囲:P.768 - P.771

 緒言
 抗結核剤による化学療法の発達や予防法の普及,向上により結核性疾患は激減したが,決して根絶されたわけではなく,昭和50年代前半から減少傾向が鈍化しはじめ,特に39歳以下でこの傾向が顕著であるという1)。平成7年には全国で43,078人,東京都においても3,984人の新たな患者が発生している2)。非定型抗酸菌症はむしろ増加傾向であり,免疫不全患者の増加と相まって結核は現在でも極めて重要な感染症である。平成7年以降当科においても3例の喉頭結核症例を経験したので報告し,文献的考察を含めて診療上の問題点などを検討した。

聴神経鞘腫に対するリニアック分割定位的放射線療法

著者: 坂本徹 ,   白土博樹 ,   福田諭 ,   佐藤信清 ,   柏村正明 ,   犬山征夫 ,   影井兼司 ,   加藤功 ,   澤村豊 ,   中川雅史 ,   鈴木恵士郎 ,   北南和彦 ,   井須豊彦

ページ範囲:P.772 - P.776

 はじめに
 聴神経鞘腫に対する放射線治療としては,コバルト1回大量照射であるガンマナイフによる定位的放射線外科(stereotactic radiosurgery:SRS)が国内でも1990年より数か所の施設で行われているが,われわれは1992年より本邦では唯一,リニアックを用いた分割照射である定位的放射線療法(stereotactic radiotherapy:SRT)を施行している。今回SRTの腫瘍制御率,合併障害,聴力障害につきガンマナイフとの報告1〜4)の比較を検討したので報告する。

副咽頭腫瘍が疑われた内頸動脈瘤の1症例

著者: 川上理郎 ,   猪飼重雅 ,   金井龍一 ,   竹中洋 ,   山本博史

ページ範囲:P.778 - P.781

 はじめに
 副咽頭間隙の疾患は稀であり,またその解剖学的特徴から比較的小さい間は自覚症状に乏しく,その存在を臨床的に疑うことは難しい。今回われわれは,咽喉頭の違和感を訴えて来院し,精査目的で行ったCTにて副咽頭の占拠性病変が発見され,副咽頭腫瘍として手術を行い内頸動脈瘤と判明した1例を報告する。

巨大な鼻口蓋管嚢胞の1例

著者: 中尾一成 ,   堀口利之 ,   市村恵一

ページ範囲:P.782 - P.785

 はじめに
 鼻口蓋管嚢胞は,胎生期に存在し生後1年以内に消褪するとされる鼻口蓋管(切歯管)の残存上皮より形成される顎骨内嚢胞である。従来,顔裂性嚢胞の1つに分類されてきたが,近年この発生学的論拠は疑問視されつつある。今回われわれは,口蓋および鼻腔底に著明な膨隆をきたし,巨大な鼻口蓋管嚢胞と考えられた1例を経験したので,ここに報告する。

呼吸困難を呈した上咽頭奇形腫の1症例

著者: 真栄城徳秀 ,   古謝静男 ,   安田忍 ,   神谷義雅 ,   諸見里安紀 ,   野田寛

ページ範囲:P.787 - P.790

 はじめに
 奇形腫の発生部位は仙骨部,睾丸や卵巣,縦隔などが一般的で上咽頭に発生する奇形腫は少ない1)。今回われわれは,1か月女児で呼吸困難のため,気管内挿管を施行された上咽頭奇形腫症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。

鼻副鼻腔に発生した平滑筋腫の1症例

著者: 端本陽子 ,   緒方洋一 ,   村上知之 ,   下郡博明 ,   沖中芳彦 ,   中野博孝 ,   高橋正紘

ページ範囲:P.791 - P.794

 はじめに
 平滑筋腫は,子宮や消化管といった平滑筋の多い組織に高頻度で発生することが知られている。鼻副鼻腔領域における平滑筋腫については,1930年に大澤1)が右鼻翼内側に発生した症例をはじめて報告している。それ以降これまでに本邦で45例,諸外国で19例の報告があるにすぎない。
 われわれは左鼻腔から発生し,上顎洞に進展した平滑筋腫の1例を経験した。平滑筋腫は他の非上皮性腫瘍との鑑別のために免疫染色を行うが,過去に免疫染色の施行された症例は少ない。過去の免疫染色結果と本症例の染色結果とを比較し,文献的考察を加えて報告する。

鼻中隔腺癌の1例—放射線,化学療法奏効例

著者: 平賀智 ,   井口博善 ,   松本隆博

ページ範囲:P.802 - P.805

 はじめに
 鼻腔領域の腺癌の報告例は少ない。Beatyら1)の約60年間の報告では85例の鼻中隔悪性腫瘍のうち腺癌は12例であり,酒井によれば鼻副鼻腔悪性腫瘍1,297例のうち鼻腔悪性腫瘍は76例あり,そのうち3例が腺癌であったと報告されている2)。今回われわれは放射線,選択的動注化学療法が奏効し,小手術で治療が可能であった原発性鼻中隔腺癌を経験したので報告する。

外耳道骨腫の1症例

著者: 小泉達朗 ,   矢部多加夫 ,   今村祐佳子 ,   秋間道夫

ページ範囲:P.807 - P.810

 はじめに
 外耳道における骨性腫瘍の発生頻度は低く,その中でも外耳道骨腫は比較的稀な疾患とされている。今回われわれは骨腫による外耳道閉鎖により伝音性難聴をきたし,手術的治療を行い良好な経過をとった症例を経験し,外耳道骨腫の病理学的特徴について若干の知見を得たので文献的考察を加え報告する。

3次元CTの神経耳科領域疾患への応用

著者: 矢部多加夫 ,   鵜木美帆 ,   竹野幸夫 ,   吉本裕 ,   佐々木泰志

ページ範囲:P.811 - P.815

 はじめに
 近年,螺旋走査型CT (ヘリカルCT)の導入に伴い3次元画像診断が試みられている。頭頸部領域では頭蓋底手術の術前画像診断1),耳疾患2),上顎・喉頭手術3)などの報告はあるが,神経耳科領域での報告はない。今回めまいを主訴とした椎骨脳底動脈領域の脳血管障害例で3次元CTを試み,部位診断に有用であったので報告する。

鏡下咡語

お面と顔の話

著者: 中野雄一

ページ範囲:P.798 - P.800

 昔は縁日などでセルロイド製,今はプラスチック製と思うが,いろいろなお面ばかりをずらりと何段にも並べて売っている店があった。主にその時々のキャラクターの面が主役で,今ならさしずめウルトラマンとかキューティー・ハニーといったところであろうか。昔はそんな中に天狗の面とかひょっとこやおかめの面があった。図の1,2は渋紙で作られたひょっとことおかめの面で,いずれも人形店で見つけたものである。ひょっとこは火男の変化した語で火を吹くときの顔から生じたといわれるが,私には顔面神経麻痺の顔に映る。またおかめの面は,おたふくかぜの顔貌にそっくりである。事実,おたふく(お多福)はおかめともいう。おかめの面から分かるように不美人の代表であるが,人相学上からは福相の一つといわれる。しかし,このようなどちらもおかしな顔がお面として通用するからにはそれなりの裏がありそうに思う。天狗の鼻については巷間いろんなことがいわれている。
 ところでイタリアはベネチア。ベネチアというと水の都,ゴンドラとベネチアグラスが有名であるが,サン・マルコ広場周囲に広がる迷路のような通路にはたくさんのみやげもの店が並び,そこには色とりどりのマスクが飾ってある。あまりにも色鮮やかというか,超派手な色彩とユニークな面の形に最初はあっけに取られたが,生来の物好きから比較的おとなしそうな色と形をした図3のような面を求めた。素材は石膏のように思われる。あとで知ったことだが毎年2月に開催されるベネチア・カルネヴァーレ(カーニバル),アスケラ(マスク)祭りは有名でヨーロッパ各地から人々が集まり,そのルーツは中世にさかのぼるという。コスチュームにも奇をてらうということで,要するに仮装行列のようなものであろう。いずれにしても普段とは違った顔にするということで,おかめ,ひょっとことは一脈通ずるところがあるように思われる。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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