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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科69巻11号

1997年10月発行

鏡下咡語

お面と顔の話

著者: 中野雄一1

所属機関: 1新潟労災病院

ページ範囲:P.798 - P.800

文献概要

 昔は縁日などでセルロイド製,今はプラスチック製と思うが,いろいろなお面ばかりをずらりと何段にも並べて売っている店があった。主にその時々のキャラクターの面が主役で,今ならさしずめウルトラマンとかキューティー・ハニーといったところであろうか。昔はそんな中に天狗の面とかひょっとこやおかめの面があった。図の1,2は渋紙で作られたひょっとことおかめの面で,いずれも人形店で見つけたものである。ひょっとこは火男の変化した語で火を吹くときの顔から生じたといわれるが,私には顔面神経麻痺の顔に映る。またおかめの面は,おたふくかぜの顔貌にそっくりである。事実,おたふく(お多福)はおかめともいう。おかめの面から分かるように不美人の代表であるが,人相学上からは福相の一つといわれる。しかし,このようなどちらもおかしな顔がお面として通用するからにはそれなりの裏がありそうに思う。天狗の鼻については巷間いろんなことがいわれている。
 ところでイタリアはベネチア。ベネチアというと水の都,ゴンドラとベネチアグラスが有名であるが,サン・マルコ広場周囲に広がる迷路のような通路にはたくさんのみやげもの店が並び,そこには色とりどりのマスクが飾ってある。あまりにも色鮮やかというか,超派手な色彩とユニークな面の形に最初はあっけに取られたが,生来の物好きから比較的おとなしそうな色と形をした図3のような面を求めた。素材は石膏のように思われる。あとで知ったことだが毎年2月に開催されるベネチア・カルネヴァーレ(カーニバル),アスケラ(マスク)祭りは有名でヨーロッパ各地から人々が集まり,そのルーツは中世にさかのぼるという。コスチュームにも奇をてらうということで,要するに仮装行列のようなものであろう。いずれにしても普段とは違った顔にするということで,おかめ,ひょっとことは一脈通ずるところがあるように思われる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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